2020/11/25 のログ
ご案内:「常世寮/女子寮 レイチェルの部屋」にレイチェルさんが現れました。
■レイチェル >
今宵。
レイチェルは、ベッドに腰掛けていた。
何度『送信』をタップする手をするりと滑らせたか、わからない。
また、話がしたいと思ったし、話をしなくてはいけないと思っている。
そう、思っているのだが、またあの時の怖さが脳裏を過ぎっていた。
確かに、華霧はあの時受け入れてくれていた。
あいつは優しいから。取りこぼさないようにしてるから。
でも、自分だってバカじゃない。
伊達に親友だって、名乗ってきてない。
だから、きっと、あれは。
口の中、奥歯を噛み締めながら、遂に彼女にメッセージを送信した。
■レイチェル >
―――。
文面を見直して、レイチェルは眉を僅かに下げた。
胸に宿る燃え盛る思いに今この時は背を向けて、
かつてのあの日の暖かさに向き合って。
自分の想いとこの身に流れる血が、彼女の悩みのタネになっていたとしても。
それでも、何とか手を差し伸べられたらと。寄り添えたらと。
そう、願う気持ちは紛れもなく本物だった。
おこがましい、どの手を差し伸べようとしてるんだ、と。
何度も己に問いかけた言葉は、何とか否定した。
あの浜辺での出来事を繰り返すのだけは、ごめんだ。
行動しない愚か者には、なりたくなかった。
「……オレでも、助けになれるのかな?」
そんなことを、窓の方へ問いかける。窓の前に置いた、くたびれたネコマニャンの
ぬいぐるみが、じいっとこちらを見つめている。
彼女の負担になってしまうのではと、少しばかり距離を置いていたけれど。
触れれば傷つけてしまうのではと、己の牙と心を恐れていたけれど。
それでも、まずは自分が踏み出さなければ何も変わらない。
二人を取り巻く環境がどう変わっても、変えてしまったとしても、
彼女を大切にしたいことに変わりはないからだ。
彼女が抱えている問題は、レイチェル自身のことばかりではない。
他にも、色々と抱え込んでいる筈なのだ。そいつを、何とか横から
支えてやれたらと、そう願った。
「お前に聞いてもわかる訳ねーよな」
当然、ぬいぐるみは何も答えてくれない。
ただ、こちらを見ているだけだ。
見上げれば、今夜も変わらず星が瞬いていた。
ベッドの上、静かに端末を閉じて。
同時に、目も閉じた。
今は何処までも寂しい黒色が、目の前に広がった。
ご案内:「常世寮/女子寮 レイチェルの部屋」からレイチェルさんが去りました。