2020/11/26 のログ
ご案内:「常世寮/女子寮 レイチェルの部屋」にレイチェルさんが現れました。
レイチェル >  
レイチェルの部屋、キッチンに立つレイチェルは穏やかに歌を奏でていた。
それは、母から教わった故郷の歌だった。
料理を作る時は、よくこの歌を歌う。

「……さて、そろそろ完成ってとこか」

鍋の中を見て、腕組みをする。
そうしてふと、昨晩のことを思い出す。
華霧からのメール。
すぐには返せなくて、布団の中でもだもだした後に何とかメールを返した。
今日、この部屋であいつと会うことになっている。

あの夜ぶりだった。

嬉しくて、それでもやっぱりちょっと怖くて。
複雑な感情と共に、鍋の中をかき混ぜた。

今日のメニューは得意のシチューだ。
あいつが来るから、たっぷり作っておいてやるか、と。
そんなことを思いながら作ったは良いが、
流石に作りすぎただろうか。

「……まぁ、あいつのことだから大丈夫か」

そこについては、絶大な信頼があった。
彼女があれやこれやと沢山食べている様子は何度も見てきているからだ。


「よし、と」

ぐつぐつと音を立てる魅惑の白を眺めて、レイチェルは一息ついた。
後は皿に盛り付ければ完成といったところだ。

ご案内:「常世寮/女子寮 レイチェルの部屋」に園刃 華霧さんが現れました。
園刃 華霧 >  
「……さテ、と……」

思うことは様々あれど、兎にも角にも此処まで来てしまった
来てしまった以上はもう、進むしかない

と、気持ちを決めたところでどうせ人の部屋に入るだけなのでやることはたかが知れていて
そんなわけで……

とりあえず、ノックする


「ほーイ、きタぞー」


微妙に落ち着かなかったので、思わず常世渋谷まで行ってI-BOTHでフレンチトーストなんぞ買ってきてしまったのだが……
まあ、小さなことだろう

レイチェル >  
―――
――



ノックの音と、あいつの声
耳が思わずぴくんと跳ねた。

平静な気持ちで迎えようと思っていたが、大丈夫か、オレ。
いや、きっと大丈夫だ。

声を聞いてすぐに、ちくりと牙が疼いた。
呪いが、胸の奥底で昂り始める。

――てめーなんかに負けるかよ。

己の内の獣に対し、ちょっと舌打ちをした後。
気にしないようにして火を止めれば、玄関へ向かうことにした。



そこに立っていたのは、大切なあいつ。

顔を合わせれば、思わずいっぱいに笑みが溢れた。


あれやこれやと考えて沈んじまってたけど。
やっぱり、顔を見ると安心する。嬉しくなる。

「待ってたぜ、華霧。寒かっただろ、入んな。
 ちょうどシチューができたとこなんだ」

部屋の中へ入るようにちょいちょい、と手招きしつつ
オレは後ろを振り返った。

園刃 華霧 >  
「ほイ、じゃオジャマすルよ。あ、コレ土産な」


箱に入ったフレンチトーストを差し出す。
せっかくなんでまあ、デザートか何かにすりゃいいよな、くらいの精神だ


「……ん。確かニ、いい匂いガすンなー」


遠慮なく部屋にあがって上機嫌に笑う
チェルの得意料理だったな、シチューって
とりあえず、出だしは悪くない


「……」


ちらり、と鎮座するデカマニャンを見て
何事もなかったかのように我が物顔で座った

レイチェル >  
「さんきゅー! 甘いもんも大歓迎だぜ。
 何か気を遣わせちまって悪ぃな」

礼を言って受け取る。実際、本当に嬉しかった。
『親友』からの土産でも、ちゃんと嬉しかった。
華霧がくれたそれを受け取って、机の端に置いておく。
机は結構でかいから、シチューを二皿置いたってまだ余裕だ。

「匂いだけじゃないぜ、味だって抜群だ」

上機嫌に笑ってんな。
色々、思ってることはあるんだろうけど、でも多分。
とりあえず、出だしは悪くない。


「はい、あったかいシチューをどーぞ、ってな。
 おかわりもあるぜ」

何事もなかったかのように我が物顔でどかりと座る華霧の前に、
シチューの皿を置いてやる。
山盛りいっぱい、具材いっぱい、盛りだくさんシチューだ。

ついでにオレの分も。華霧のよりはちょいと少なめ。
まぁ、これくらいがオレの限界だな……。

「じゃ、食べるか」

スプーンもほれ、と眼の前に差し出してやる。

園刃 華霧 >  
「や、ほラ。レイチェルが、『なんか食いに行くのも良いかもな』って書いテたじゃン?
 ダから、ツいさー」

思わず買い込んでしまった、というわけである。
これは一時期、「女子力とは」とかワケのわからんことを考えてハマりこんだ際の副産物。
結局、女子力、とやらはよくわからんまま終わったけれど
まあ、あかねちんに言わせれば十分持ってるってことだったんでソレでよしとしたのだった。


「お。なンか盛りガいいナ、レイチェル!
 ひひ、確かにうまソーだ」


目の前に置かれた皿にはコレでもか、と言わんばかりに盛られたシチュー
いやはや奮発したものだ
寒いときに温かいものが食べられる
それだけでもう十分最高なんだが、うまいとくれば至高といってもいだろう


「ン、じゃいったダっきマ―す」

差し出されたスプーンを受け取り、そういうことなら、と
遠慮なくパクつくことにする。


「ん……むぐ、ん」


うん、うまい

レイチェル >  
「まー、そこはな。
 だって華霧、食べるの好きだろ?
 オレもまぁ、お前ほどは食わねーけど、食べるのは好きだからさ」

実際、食べることは昔から好きだ。
そして、誰かが自分の作った料理を食べてくれるのを見るのも、
好きだ。それが大切な存在であれば、尚更だ。

「華霧のお墨付きを貰えるたぁな、盛ったかいがあったぜ」

満足してくれてるようでなによりだ。
ああ、嬉しい……な。

オレもスプーンを持って、シチューを口に運んでいく。
我ながら、こいつだけは美味い。
真琴みたいに器用じゃねぇからあれもこれも上手に作るようなことは
できねーが、シチュー作りならそんじょそこらの奴に負ける気はしない。

シチューを口に運ぶ華霧を見て、胸が締め付けられるような何かを
感じる。嬉しいんだ、こうしてまた二人で食事ができることが。
あんなことがあっても、当たり前のように。
あんなことが。


ああ、こんな時間がずっと続いて欲しい気持ちはあるけれど。
そして今は、うまく『親友』として向き合えている気はするけど。
それでも。
聞いておかなくちゃいけないことがあった。


「……あれから、傷は平気か? 身体、何ともないか?」

そうして。
改めて、気になっていたことをぽつりと聞いてみた。

園刃 華霧 >  
「むぐ、ん、もぐ……」

改めて、温かい食事ってのはホント悪くないと思う、
こっちにきて最初に感じた感動かも知れない

まあ、そんなあれこれはさておき
思わず食べる方に集中してしまうが……


「んん?
 んー! んんん、んんんんん……んん」

思わず、口に入れたまま返事を返すが……まあ、伝わりゃしないよな
一回冷静になって、待って、のポーズを取る

ちょっと名残惜しみつつ、ごくりと飲み込む


「傷? あア、へーきへーキ。ホら、綺麗ナもんダしさー」


ほれ、と首筋を見せる
存外白い肌は、確かに以前と同じ姿を見せていた

レイチェル >  
「ぷっ」

いや、卑怯だろ。
口に入れたまま物を食べる華霧を見て、思わず吹き出しちまった。
……シチューを飲み込んだところで良かったぜ。


「……ごめん、ひとまず食ってからでいいわ」

話したい気持ちはあるけど、正直。
大好きな華霧の、こういうとこ見てるだけでも幸せだ。
ああ、ほんと余裕なかったんだな、オレ。
これも、『拾い忘れてる物』かもしれねぇな。

華霧がシチューを食べている様子を見つつ、
キリの良いところで話を始めることにする。

華霧の首筋を見せられて思わずドキリとした。
牙の疼きが一層強まっていくのを感じる。
そんな感覚は間違っても表に出さないように、
胸の内にしまっておく。無理やり意識の奥へ追いやる。

よし、大丈夫だ。

「……でも、それならよかった。
 お陰様で今は結構何とかなってる。
 無理さえしなきゃ、当分の間は大丈夫そうだ」

そこまで口にして、はっと気づいて聞いてみる。

「……そういえば夢、とか見てないよな?
 その、オレの夢……とか。前に話しただろ、真琴のことで。
 ブラッドリンク……吸血鬼の能力だよ」

血を介して、深い想いを持った他者と夢の中で繋がることができる、
或いは繋がってしまう能力だ。

まさかオレが自分でも知らねー間に華霧の夢に出てて、変なこと言ったり、
したりなんか、してねーだろーなと、ちょっと心配だ。

園刃 華霧 >  
「……デ。さっキ笑ったナ?」

じとーっとした目で見返す。
まあ、笑われても仕方ないけどさ。
そういや前に盛大にレイチェルのこと笑ったっけかそういや。
おあいこか? いや、アレはノーカンだきっと

……ってか、こんな笑い方、すんだなあ


「ン、ならイいけどサ。
 ヤばかッタら、さッサと言ってクれよ?」


なにしろ、メールを貰ったときはそっちか?と思ってだいぶ焦ったものだ
なにごともないならいいんだけど


「……夢? あーアー、なンか言ってタっけカ。
 ン―……多分、ソれっぽイのは見てナいと思うヨ。
 アタシが忘れテるだケかも知ンないけドさ?
 正直、面白ソーだし、見れルもんナら見てミたいケどなー」


けたけたと笑う
よくわからないけど、変わった夢ってことだろう
そりゃ面白そうだ