2020/11/30 のログ
ご案内:「常世寮/女子寮 レイチェルの部屋」にレイチェルさんが現れました。
ご案内:「常世寮/女子寮 レイチェルの部屋」に園刃 華霧さんが現れました。
■レイチェル >
―――
――
―
「オレ達にとって、眷属っていうのは――」
深呼吸した分、ずっとマシだった。
ちゃんと説明しなくちゃいけねぇから、
オレが取り乱してちゃしょうがねぇ。
しょうがねぇだろ……!
「――眷属っていうのは……」
だってのに、全然声が出やがらねぇ。
はっきりと言ってやりたいのに、
オレの口から出た声は随分と弱々しく聞こえた。
はぁ、と。
大きく息をついて、窓から空を見上げた。
よし、今度こそ。
すぅ、と大きく息を吐いて、華霧の方を向いて、
はっきり言ってやる。
「……一生の内、この人だって決めた……死ぬまでのパートナーってことなんだ。
だから、その……人間でいやぁ……」
いつまで頬に手をやってんだ、オレ。
さっさと手を離して、びしっと指を向けてやる。
「……けっ、結婚と! 変わんねぇんだよ!」
駄目だ、完全に顔真っ赤だな。
一生のパートナー、結婚と変わらねぇ。
だからこそ、華霧からそんな言葉が出た時は思わずドキリとしたし、
随分取り乱してしまった。
今はこいつと親友として付き合うって決めたばかりだったのに、
それを突き崩されるような言葉が華霧の口から出たんだから、当然だ。
……そうして、続く言葉も言わなくちゃならねぇ。
ありがとう、って素直に受け入れられたらどれだけ楽だっただろう。
そうしたら、ずっと一緒に居られるのかな。
でも、違う。
それは違うんだ。少なくとも、今じゃないんだ。
眷属の意味、そいつを理解していない華霧に、それじゃあと言い寄ったら……
それこそ、吸血鬼のことを深く知らない華霧を利用してるみたいじゃねぇか。
そんなの、絶対に許せない。
だから、少なくともちゃんと説明するんだ。
この件で、大事ことは。そう、そうだ。
一度裁断されてめちゃくちゃに散らばっちまったような頭の中の頁を集めて、
言葉を紡いでいく。
「……それに、お前が人間じゃ、なくなっちまう。オレと同じ化け物に、なっちまう」
吸血鬼。血吸いの化け物だ。
勿論、一緒に未来を生きたいってこいつに言った時。
眷属っていう言葉が頭を掠めなかった訳じゃなかった。
それこそ、互いに『なくならないもの』で居られるんだろうな。
それでも、華霧をオレと同じ化け物にしちまうなんて簡単に許されることじゃない。
「眷属になった場合は、な。オレがお前の血なしじゃ駄目なのと同じように……
お前もオレの血なしじゃ駄目になっちまう」
説明を、淡々と続ける。少し視線は合わせ辛いか、それでもまっすぐあいつを見る。
華霧と一緒に居られない未来を生きる勇気は、ないけど。
それ以上に。
一緒に居るためにそんなことを簡単にしてしまえるような勇気は、もっとない。
「……それでもお前、眷属になるっていうのかよ?
化け物になっちまっても。
人間が生きるよりずっと長い間生きることになっちまっても。
それでも……オレと一緒に居る……居て、くれるってのかよ……?」
一緒に居たいに、決まってるだろ。でも。でも。
それは、華霧が本当にそうなることを望んだ時だけだ。
■園刃 華霧 >
なんかレイチェルがあっちこっち忙しない。
一体なんだ
もしかして、悪いこと聞いたかな?
まずったか……?
どうするかな……
相手が口を開くまでの間
こちらはこちらで考える
そして、つっかえつっかえ、レイチェルが口にした言葉
眷属とは
吸血鬼とは
……
…
ああ、なんだ
それくらい――
「 」
口を開きかける
しかし
「 」
脳裏に ある 言葉が はしる
「ぁ……」
口を、とじる
ああ……まただ
また、アタシは……
「……ぁー……悪ぃ。
ちょっと、うん……悪かった。
流石に、考えなし、だったな」
うまく ことばに できない
ちがう
くちに できない
いえない
でも ひとつだけ
ひとつだけ いわないと いけない
「……でも、な……レイチェル。
アタシは……おまえが、化物、だなんて……欠片も、思ってない。
それだけは、確かだ」
■レイチェル >
「……分かってくれたなら、それでいいぜ」
ふぅ、と一息。
伝えるべきことは伝えて、それで華霧も分かってくれた。
それなら、それでいいんだ。これでいいんだ。
実際、安心した。安堵の息を吐いて、オレはテーブルへと戻った。
座椅子に座って、微笑んでやる。いつもみたいに。
「食べよっか」
自分でもびっくりするくらい、穏やかな声が出た。
良かった。華霧にはまだ、日常を与えることができそうだ。
でも、最後の言葉にはやっぱり、どうしても返さざるを得なかった。
「……欠片も思ってないか。ありがとな。そういう風に言ってくれると、嬉しいよ」
本当に嬉しかった。
心が、暖かくなった。
「……本当に小さい頃の話だ。
その時よく遊んでた友達――友達って言っても、うちはよく引っ越してたから、
いつも友達で居られるのはほんとに僅かな間だったけど――まぁ、友達が居たんだ。
でもある日、吸血鬼だってことがバレてさ。
そいつから言われたよ、化物だって……怖いって……気持ち悪いって」
銀色のスプーンを見る。
そこに映っている顔は、しょげていた。
駄目じゃねぇか、バカ。それに、ずっと昔の話だ。
でもって、伝えたいことはそこじゃない。
「だからさ、嬉しいんだ。
オレ、華霧がそういう風に言ってくれることが。
こんなオレでも受け入れてくれることが」
華霧の血を吸う時、華霧は当たり前だって言ってくれた。
世間一般的に見てもそうだろうが、オレにとっては余計、
それは当たり前のことじゃなかった。
「眷属の話は、今は忘れてくれていい。
ごめんな、どうしても説明はしなきゃって……ちょっと必死になりすぎた」
事実、今は落ち着いていた。
笑って、華霧の方を見ることができる。ちょっと心臓はまだ、どくどく言ってるけど。
■園刃 華霧 >
「……うん」
簡単に返事を返す
その間にも
「 」
「 」
脳内でいくつもの言葉が弾けて消える
忘れるな
それは忘れてはいけない
そして、いまはきをとりなおして
別のはなしを べつの話に
「へーンなノ。だっテ、吸血鬼だ、なんダっていウ前に……レイチェルはレイチェルだロ?
そりゃ、別人ニなってリゃキモかったリ、怖カったリするカもしらンけど。」
そこまでいって、ふと考える
「……いや、フリフリドレスのレイチェル、とカだっタら逆に面白いカもしラんな」
ケラケラと笑い出す
いつものへらへらとした笑いで
「ァー……まあ、うん……それは、悪かった、うん。
ちょっと、また考える」
本当は 眷属のことは レイチェルのことだけでもなく
だからちょっと 焦ってしまったところもあって
だからこそ 反省もする
ああ 本当に うまくいかないものだ
■レイチェル >
「レイチェルはレイチェル、か。小さい頃のオレに聞かせてやりてぇよ」
その時の名は、アマリアだったけど。
この名前のことは、またいずれ話すことになるんだろうか。
それにしても、何か華霧の様子がおかしい気がした。
気にならないといえば、嘘だ。
前のオレだったら、ちゃんと話してくれって迫ったんだろうけど。
そんなの、華霧を傷つけるだけだ。
だからただ、静かに言葉を待つだけ。
「フリフリだぁ~!? 却下、絶対却下!
いや、昔は作戦行動の時なんかに着せられたことはあったけど……
あーいうのは自分から着る気はしねぇ……」
かつてのことを思い出して、げっそりする。
あの時は五代先輩やギルバートと一緒だったな。
あいつら元気してっかなぁ。なんて一瞬考えるけど、
せっかく華霧が目の前に居るんだから思考をさっと払う。
「うん、いいよ。答えはいつだって。
オレは、お前に眷属になってくれだなんて無理強いしねぇ。
自由に選択しな。オレは従うだけだ」
重大すぎる決断を、簡単に迫る気にはならなかった。
華霧が眷属になったって、多分それなりに変わらない日常は送れるんだろうけど。
それこそレイチェルはレイチェル、華霧は華霧なんだろう。
でも今はただ、親友として欠け落ちちまった過去の日常、
その一片でも与えられたらと思ってんだ。
こいつの歩幅はそんなに大きくない。
だから、オレも一緒に合わせる。
そうして、隣を歩いていければ、こいつもきっと、もっと笑ってくれる筈だ。
それが、見たかった。
しかし、ドレス。ドレスか……。
そうしてふと、その話を聞いて思い起こすことがあった。
「そういやお前、最近ほんとオシャレしてるよな。
真琴に着させられてんだろうけど……」
そうして、気になっていたことを問いかける。
「真琴とは、うまくやれてるか……?」
■園刃 華霧 >
「そーかー?
なら、マコトに見せよう。アイツ絶対大喜びでなんか色々着せるんじゃないか?」
ドレスとかいやだ、というレイチェルをみて楽しそうに笑う
ああ、ほんとうに あいつなら よろこんで
よろこんで……
「あ、あぁ、うん……ありがと」
其処まで言うのが精一杯
多分 同じことを言うことは 二度とないだろう と思いながら
そこに――
「え?あ? マコト?」
急な問いかけ
なんでここで
驚きのまま 少しだけ戸惑う
けれど すぐに立て直して
「うまく……うまく、ねえ……まあ、別に……
ああいや、嫌がらせみたいに色々押し付けられる、けど……」
でも、それはきっと だから
受け入れるしかない
だから別に うまくやれてないことなど……
■レイチェル >
「……却下」
淡々と一言だけ返した。
着せかえ人形になるつもりはない。
「ああ、いいんだ。気にすんな」
もし、華霧が眷属になるだなんて選択をしなかったとしても。
オレとしては何の憂いもねぇ。
そりゃ、それだけ一緒に居てくれるって気持ちを示してくれんなら、それは嬉しい。
できたらずっとずっと一緒に居たいのも事実だ。
けど、やっぱり。
「もし、お前が選ばなかったとして気にしねぇよ。寧ろ、安心だ。
眷属なんて無理な関係に頼らなくたって。
オレ達はきっと、うまくやっていける。だろ?」
それだけは伝えておく。
問いかけ、というよりは伝えておく意味合いが強い言葉だった。
真っ直ぐ、今の想いを届けた。
いつかの病室の時みてぇだな、と思った。
そして。
「真琴のことで、悩んでんじゃねぇかって思ってな。
あいつ自身の……オレへの想いのことも、あるからさ。
お前に強く当たってたこともあったんじゃねぇかって……。
真琴自身、『あの子を傷つけるようなこと言っちゃったかも』だなんて……
そんなことを、前に言ってたからさ。
お前自身、付き合い辛さを感じることもあるんじゃねぇかって」
そうして、もう一言だけ付け足す。
「真琴の、お前に対する気持ちをオレは聞いてる。
お前の悩みを解決する言葉になるか分からねぇけど……それでも、
きっと今のお前には必要だと思った。伝えても、いいか?」
■園刃 華霧 >
「……ちぇ」
いつか巻き込んでやる、と心に誓う
それはそれとして
「……ああ、うん
そう、そう、だな……」
少しだけ上の空で返す
うまい方法を
うまいやり方を
見つけなければいけないから
そんなことを考えていると
「……は?」
マコトの きもち?
いや ききたく ない
だって そんなもの
でも れいちぇるが
なに なにを
きかされるの
いやだ
「え、いや……べ、べつ、に……え、と」
しどろもどろの言葉になっていた
■レイチェル >
今回、華霧に送ったメール文を思い出す。
お前のとこ行っていいかって聞いたら、こいつははぐらかすように断ってきた。
どんな理由があるだろうと考えてたけど、もしかして。
「……今回、オレがお前のとこに行くのを拒否したのも、真琴のことが原因なんじゃねぇか?」
何となく、そう考えた。
考えすぎかもしれないけれど。
「……真琴はさ、お前のことも、『放っておけない』って言ってたよ」
一言、そう伝えた。
大切なことだ。
もし、居辛さを感じているのなら、素直じゃないあいつの気持ちを代弁してやる
必要があるだろ。
「あいつ、一緒に過ごす内に……お前のことを家族みてぇに感じてるんだよ。
それだけの気持ちじゃないってのも事実みてぇだけど……それでも。
あいつの口ぶり、間違いなくその思いも事実だぜ」
この事実を伝えて、華霧の気持ちがどれだけ楽になるか分からない。
もしかしたら、もう知っている事実なのかもしれない。
でも、オレにできることだけは。とにかく、こいつに施したい。
もしオレの知らないところで苦しんでいるとしたら、それは絶対に嫌だから。
そしてその要因の一つが、オレだとしたら。そんなのは。
■園刃 華霧 >
「…」
れいちぇるの ことばを きく
けれど そんな
そんなの
「……」
そんな、の
「………」
それを レイチェルに きかせるわけには
「…………」
だめ
ことばが でない
■レイチェル >
「……華霧、言いたいことがあったら」
言ってくれ、とは言わない。
それは、かつて水族館でのオレの過ちだ。
「……何を言ってくれても、オレは構わねぇよ」
だから、そうして受け入れる姿勢を持つ。
余裕をもって、彼女の言葉を待つ。
そうして。
「言葉に出さなきゃ、伝わらないこともある。
分かり合えないこともある」
手元のコップを手に取った。
そこに水を注いで、こくりと喉へと流し込む。
「でも、無理強いはしねぇ。好きにしな」
ゆったりと、ただゆったりと待つ。
一人だけで進んでいこうとするだなんて。
こいつを置いていくのだなんて。
もう、二度としたくねぇ。
だから、その為にも、待つ。
無理に言う必要はないということも、伝えた上で。
■レイチェル >
「でもな。
オレは、お前が何か言えないままに悩んでるんだったら。
それを、飲み込みたい。受け入れたいと思ってる。
それだけは伝えておくぜ。
何でも、言ってくれていい。言わなくてもいい。
オレはただ、受け入れるぜ」
本当は、心配で心配で仕方なかった。
だから、この言葉だけは最後に伝えることにした。
■園刃 華霧 >
「あた、し、は……」
口を開く
「あたし、は……ゆる、されない……」
ぼそぼそと、口にする
「あたしは……ふみにじった……」
虚ろに、言葉を継ぐ
「あたしは…… あたしの、かって、で……かって、に……
まきこんで……そんなことも……わからないで……」
意味もなさない言葉の羅列
「 」
「 」
■レイチェル >
「……」
ゆっくりと、華霧が紡いだ言葉を、ただ受け入れる。
受け入れて、受け入れて、受け入れて。
「なん……」
ゆるされない、だとか。
「だよ……」
ふみにじった、だとか。
「ゆるされない、だとか!
ふみにじった、だとか!」
なんだよ、それ。
瞬間、胸の中にどっと、どす黒いものが入り込んできた気がした。
これはオレの感情じゃない。あいつの感情だ。
オレが向き合わなきゃいけないあいつの感情だ。
分かってる、分かってるさ。でも、負けやしねぇ。
オレは、あいつの感情を背負いながら。
それでも、オレの気持ちを絶やしはしない。
「大丈夫だ」
そう口にして、オレは華霧の方へ寄って、
そっと、抱きしめた。
そして、静かに目を閉じた。
「……大丈夫だ」
言葉は優しく、穏やかに。
その手は、あの夜、華霧から血を吸った時のオレの、獣のような手とは違う。
ただ目の前の大切な人の苦しみを、一緒に背負いたいと願う。
そんな、レイチェル・ラムレイの手だった。
ああ、なんてこいつは強い奴なんだろう。
ずっとその気持ちを抱えてたのか。戦っていたのか。