2021/01/16 のログ
ご案内:「常世寮/女子寮 ロビー」に椰月 文霞さんが現れました。
椰月 文霞 > 温かいコーヒーの入ったマグカップと推理小説を持って、パジャマの上にふわふわな上着を羽織った姿でロビーに現れた。
周囲を見回して誰もいないことを確認すると、カップをテーブルに置いてからソファに腰かけた。

「……計算通りですね。」

栞の挟んであったページを開くと、さっそく小説を読み始めた。

椰月 文霞 > 誰もいない、陽気な声も喧騒もない静かなロビーで本が読みたいと思った。
いつもとはちょっと違う場所と空気で本を読みたいというのが理由。
この状況で小説を読むためだけに1か月程度の時間をかけた。時間をかけすぎて小説の残りページも少なくなってしまったけれど。
今日のこの瞬間は間違いないと踏んで来て良かった。

「どんな結末を見せてくれるんですか。私の思ってる星は正解なんですか。」

ドラマのような映像が頭に浮かんでくる。一人一人勝手に声を想像して、本に書かれている通りに登場人物が言葉を発する。

椰月 文霞 > 「……えっと」

読み始めた時から勝手に犯人と決めつけた人物だが、そろそろ動いてくれないとただのモブで終わるのではないか。読んだページと残りのページの厚さを比べてみる。
一度コーヒーを飲んで焦る気持ちを抑えて脳内ドラマを再開した。が、あまりにも出てこなさすぎる。どう見ても怪しいと思える動きがあったり、ずっと主人公の近くにいる人が怪しく見えたり。再度本から目を離し、首をひねって上を見上げてから、本を覆うカバーを外して表紙を見直した。

「見た目絶対この人だと思うのですが」

あくまで判断基準は見た目。派手で性格が怖そうというだけの若者を勝手に犯人と信じ込んでいる。

椰月 文霞 > あれ?あれ?と思いながら文字をドラマにし続ける作業を続けていたが、とうとう終わってしまった。
目を閉じてストーリーを最初から思い返してみる。途中で出てこなくなって、それでも最後にやってくれるのでは!と思ったのに途中降板でもしたのではないか、というくらい全く出てこなかった。気になっていた若者のことを想いすぎて最後の一番おいしい部分を全く味わえなかった。

「何だったんですか、あなたは」

改めて7人の若者が映る写真が描かれた表紙を見る。最初にこの人に目が行かなかったらもっと楽しめたのに、と後悔して止まない。パサ、と手から滑り落ちた本がソファに転がる。自分は転がらず、冷めきったコーヒーをすすった。

椰月 文霞 > もしかしたら作者が途中でこの男のことを忘れてしまったのかもしれない。
栞の挟み方が悪くてページを何頁か飛ばしてしまったのかもしれない。
途中で現場を抜けたけど、そのまま返らぬ人になってしまったのかもしれない。

「でももう、この本はいいです。さよならです。」

ソファに凭れ掛かる。普段は絶対にやらないけれど、今は別。
環境音とソファに包まれて何も考えない時間を、あとちょっとだけ。

椰月 文霞 > ちょっとと言いながら気が済むまで包まれた後、重い腰を上げて立ち上がる。
ソファに乗ったままの本を取るのが億劫で、それでも本は本だからと手を伸ばす。

「本にこんな感情持ったの久しぶりです」

この本にしてみれば八つ当たりも良い所。きっと本と会話できたら怒られるのは私の方。
そう分かっていてもやっぱりヤダ。

「ねんねのお時間です。本棚の奥の方に大事にしまってあげます」

マグカップも忘れずに持って、自分の部屋に戻っていった。

ご案内:「常世寮/女子寮 ロビー」から椰月 文霞さんが去りました。