2021/11/04 のログ
■イェリン > 頭を撫でられると、上目遣いに彼女の表情を伺い、
そこに咎める色が無い事を確認すると目を細めてその手の感触に甘える。
「少し冷えてくる季節だから、と思っていたのだけど、
でも、知らなかった事をまた一つ知れたと思わなくっちゃね」
何事も話し合わねば、分かる事も分からない。
おしはかるばかりでは、誤る事もあろう。
「ムーン、ストーン……、これがそうだったのね。
知ってはいたのだけど、本物ってみたこと無くて。
それなら、そのペンダントが嬉しいわ。
付けやすくて、無くしにくそうだもの」
セレネの身に付けたその煌めきに顔を寄せて食い入るように見つめる。
お揃いというだけでも、不思議と気分の高揚はあるが
その名前の響きが気にいった。
「えぇ、今朝届いたのだけど、約束の物よ」
数日遅れの為か、幾分かお祭り騒ぎの当日よりお値打ち価格で売りに出されていたソレ。
裾の部分に小さくパニエの付いた華やかなメイド服。
ボリュームのあるフリルが段々重ねになっていて気づき辛いが、
スカートの丈はかなり際どい物だ。
同じものが、二つ。
未開封を示すパックに包まれて収められていた。
■セレネ > 何とも、彼女は人の…己で言えば神の、母性を擽る事が上手いこと。
血が繋がってはいないとはいえ娘も居た身。自然と仕草や視線が娘へと向けるそれに近づいてしまう。
「えぇ。ポジティブに考えましょう。
相手の知らなかった事を知れたと思えば、少しは気持ちも楽になると思いませんか。」
尤も、その相手が怒って居たり悲しんでいたりしないのなら、だが。
大抵の事では怒る事はない己。むしろ、相手にも色々知って欲しいと思うくらいだ。
「……なら、貴女に似合いそうなペンダントを見繕っておきますね。」
乳白色の、光の加減によっては蒼の光を放つ宝石。
どうせ贈るのなら、何かしら加護でも付与した方が良いだろうかと思いつつ。
己の胸元で煌めくそれを食い入るように見つめる彼女にクスクスと笑ってしまいながら。
「……。」
己はまず着ない、際どい衣服。
未開封のパックを蒼が見つめながら、無言。
…いや、まぁ。此処には同性しかいないのだから良いのだけれど。
…彼女のプロポーションと比べると、己は見劣りしそうで。
■イェリン > 「そうね、せっかく来てもらったのにしょげた顔してるのも性に合わないし」
イェリン自身理解の及んでいることでは無いが、
近しい人からの穏やかな感情の供給は身に宿した魔術特性との相性が極めて良い。
だからこそ初対面と親しい者に対しての態度は無意識ながらに大きく異なる。
「ありがとう、先輩。そしたら貴方は?
何かお望みの物はあるかしら。
装飾品でも料理でも、なんでも言って」
蒼の眼に映る宝石から身を引いて、笑みを浮かべる。
同じか、似た物を身に付けた自身を想像してにへへ、と。
「これを、着てもらうわ」
セロファンで止められた袋を一つ剥き、上下セットのそれを一つ取り出す。
こちらを見る蒼が何か言いたげな色をしていたが、元よりこのために来てもらったのだ。
もっと際どいだけの物であればいくらでも見当たったが、
フリルとパニエのついたコレが一番似合いそうだと、セレネの出で立ちを思い起こしながら選んだもの。
「大丈夫よ、ちょっとだけ写真を撮らせてもらって、
ちょっとだけ触るだけだもの」
■セレネ > 『…貴女、甘え上手というか、擽り方が上手ね。』
思わず北国の異国語で呟いてしまいながら、才能とも言えるかもしれない
仕草に戦々恐々としてしまいつつ。
己にはまず真似できないものだ。
「うーん…そうですね。
私、割と贈り物が好きなのですけれど、どうせ贈るのなら
形として残る物を贈りたいと思ってしまうのですよね。
…だから、装飾品を所望しましょう。」
彼女のセンスが如何なものか、非常に気になるし。
嬉しそうな笑みを浮かべる彼女を見ると可愛さに思わず
心臓を射抜かれつつ。
「…えぇ、着るとも言いましたし、写真を撮るとも仰っておりましたね?
――ただ、触るとは……」
どこを、どう触るのだ。
彼女が取り出した衣服は、メイド服特有の可愛さとフリルやパニエの華やかさを両立させたものだ。
己の身体つきを鑑みるに、どこをどう触っても、良い感触を得られそうではあるのだろうが。
■イェリン > 「……?」
首を傾げながら、聞き取り損ねた言葉を反芻する。
自身の把握する言語と異なる、それ。彼女の言う故郷の言葉だろうか。
「そうね、ずっと贈った人の側にあってくれると嬉しいわ。
もう暫くクリスマスまでは時間があるし、それまでにデパート物色してこなくっちゃ」
口が滑った。
というよりも服を選ぶ際にセレネの事を考えている内に髪や綺麗な肌を想起してしまい、
思っていた事が口から出てしまった。
失態である。
「……綺麗な物って触れたくなるじゃない?」
苦しい言い訳を零しながらも、訂正しない。
誤魔化すようにちょっと待っててと言いながら、
押し入れの奥から何かを取り出してくる。
誰もがチラリとは耳にするような大手メーカーの一眼レフ。
譲り受けた物な為最新の物などでは無いが、性能自体は申し分ない一品。
ポートレート用の単焦点レンズをガチャガチャとはめ込みながら、
充電していたバッテリーを差し込んで机に置く。
「紅茶を飲み終わって落ち着いたら、お願いするわね?」
■セレネ > うっかり口から洩れ出てしまった言葉に、しまったと内心。
ただ流石に国も違う彼女には通じなかったか首を傾げられ。
ウィンクと共、何でもないと小さく首を横に振るだろう。
「早い所贈り物は確保しておかないと、無くなってしまう事もありますものね。
……今年の贈り物、どうしようかな。」
相手への贈り物と、友人達への贈り物。
いくつかは既に決めてはいるものの、少し早めでも決めておかねば困るというもの。
物色、だなんて言葉を聞けば
うん?と首を傾げるも深くは問わなかった。
「――えぇ、まぁ…それは、その。
お気持ちはとてもよく分かりますけれど。」
訂正ナッシング。
彼女の欲望が垣間見えつつも拒否しないのは
信用と信頼が一定数あるからか。
そうして押し入れから取り出して来たのは一眼レフカメラ。
……想像以上に本気だったようだ。蒼に湛える感情が、諦観になる。
「………はい。」
■イェリン > 頭に疑問符を浮かべこそすれど、相手が言い直す事をしないのであれば深く追求はしないだろう。
返されたウィンクによく分かっていないままに同じようにウィンクを返す。
否、返せない。両目を閉じる事を世間ではウィンクとは言わない。
「直前になればなるほど、あっちが良かったなんて後悔しちゃうもの」
まだこちらに来て日の浅い自分には、そう多くやり取りする人はいない。
だからこそ、次の休みにでも全霊を持ってセレネへの贈り物を選べるともいう。
「大丈夫、スキンケアの秘訣を学びたいのよ。
嘘は無いわ」
実際嘘は無い。
ファッションセンスと、スキンケアは別物だ。
上手い人の秘訣は積極的に学ぶべき物。
話を聞くだけで良いのでは? と言われればそれまでではあるが。
「それに、人の体温に触れると安心するじゃない」
わずかに湯気の残る黒いマグカップに息を吹きかけ、コクリと。
オレンジピールの爽やかな甘さが際立つライ麦のクッキーを口に含んで言う。
■セレネ > 己のウィンクを受けてか、彼女は一瞬両目を閉じて返した。
まさか彼女がウィンクを出来ないのだと思わず、
己はただ微笑まし気に柔らかく笑みを浮かべて。
「そうそう。季節に合ったデザインとかもありますからね。
贈り物一つでも、その人のセンスが問われますし…
なかなか難しいですよね。」
形に残るものにせよ、お菓子等形の残らないものにせよ。
無難なものを選べばそれが安牌だろうが、贈り主の個性はない。
だからこそ贈り甲斐もあるというものなのだろうが。
「…とはいえ、私は肌が弱いのもあって教えられそうなものもそこまでないと思いますが。」
己の肌が綺麗だというのは、過去色んな人から言われてきたことだが。
秘訣と言われてもと、首を傾げる。
ただ彼女のその積極的に物事を学ぶ姿勢は非常に好感が持てるものだ
「貴女結構寂しがり屋だったりします?
――あぁ、別に貶している訳ではないのです。
私も、誰かに触れていると安心しますから。」
白いマグカップに両手を添え手を温めながら。
己は寂しがり屋だから、特に誰か安心する人に触れたがる節がある。
尤も、気を惹きたいというのもあるけれど。
紅茶の香りを堪能しながらぽつりぽつりと話を進める。
■イェリン > できているつもりのウィンク。
セレネの笑みをよく分からないままに好意的に解釈して、満足気。
「時期が早すぎると逆にその日に向いた物が無いから塩梅が難しいのだけどね。
ネットが普及しても贈り物だけは自分の目で見て、選びたいから。
相手の事を考えながら物を選んでいると、それだけでも楽しいし。
悩んだり、困ったり。できる相手がいる自分を幸せだと思えるもの」
実際、ネットがあれば無難な物はすぐに手に入る。
誰とも知れぬ人の評価がそこには添えられているし、間違いはない物が選べるのだろう。
ただ、願わくば自己を思い出してくれるような物を送りたい。
そう思ってしまう。
「ふふっ、普段食べてる物のお話でも、使ってる保湿クリームでもなんでも良いのよ。
何かしらの理由を付けて貴方とお話しできたらそれはそれで嬉しいし」
理由などなくても話し相手にはなってくれるのだろうが。
実際、普段何気なく行っている事柄等を事細かに誰かに伝える事などできはしない。
しかしこれだけ綺麗な肌なら何かしらの気づきが得られそうというのを、思ってしまうものだ。
「えぇ自慢じゃないけど、寂しがり屋よ。
この部屋に来て初めて一人で寝た時からホームシックになるくらい。
一人だとできる事って少ないし、一人だと心躍る物を共有できないじゃない」
そんなの辛いじゃない、と自慢じゃないと言いながら、胸を張る。
それを悪い事や汚点だなどとは思っていないが故に。
触れる手の温もりは身の内を流れる血潮と同じほどに、大切なのだ。
カタリ、と。
飲み終えた紅茶のマグカップをテーブルに置き、一息。
すぐにシンクに持っていき水につけてしまうと、段ボールから引っ張り出した衣装を広げる。
「なんだか着方ややこしそうなのよね…
試しに先に着ちゃうけど、先輩はゆっくり飲んでて」
言いつつ、キャミソールの肩紐を外す。
ユニットバスのそう広くない一人部屋に、着替え用のスペースなど存在しないらしい。
■セレネ > 「あの人に似合いそうなデザインとか、色とか。
もしくは、贈った装飾品をふと見てくれた時に自分の事を思い起こしてほしいとか。
…そんな事、色々考えながら選ぶのも良いものですよね。」
好意を向けている相手になら猶更。
彼女の言葉に何度も頷き、肯定する。
その気持ちは己も全く同じだから。
「成程、口実の理由もあるのですね?
…貴女との会話なら、天気の話でも快く受けるつもりですのに。」
相手が関心を持つ会話を探り、そこから広げていくのは恐らく得意だと思う。
他者との会話は好きな方だ。情報を得るなら、会話が一番手っ取り早い。
「…貴女はご家族に愛されて育ってきたのでしょうね。
良ければ貴女のご家族について少し教えてくれませんか。」
慣れた部屋じゃなく、知らぬ部屋で眠り、目が覚めるのは非常に心細いものだ。
その気持ちは痛いほどよく分かる。
胸を張った彼女に、少し気になってそんな事を問いかけた。
「お手伝い出来る事がありましたら仰って下さいね?」
飲み終えたマグカップを机に置き、シンクに持って行った彼女。
そうして次に手に取ったのは例のコスプレだ。
思えば彼女の部屋着は己と違い、かなりラフな格好。
自然と着替える彼女から蒼を逸らしながら、紅茶を少しずつ口に含んで飲んでいく。
耳に聞こえるのは衣擦れの音。
■イェリン > 「ふふっ、パパもママもこっちにいないから、
今年の私のクリスマスプレゼントは先輩の独り占めかしらね」
語るセレネの脳裏にある人はさぞかし幸せ者だな、と
言いながら思う。
親しい人を作るのは、怖い事でもあるから。
できたこの縁を大切にしたいと切に願ってしまう。
「家族? パパとママと、妹が二人と弟が一人。
狭い訳じゃないけど、自分の部屋って無いから妹も弟も同じ部屋で、
怖い事があるとあの子たちが布団に潜り込んできたりもあったわね」
ホントは姉さんも居たけど、と言いにくそうにする。
異界の存在と対峙する家系で、むしろ両親が存命なぶん幸いな方なのだから、割り切っているようではあるが。
「ん、手伝ってもらう事……
洗い物もそんなに多く無いから、大丈夫。
何かあったらその時お願いするわ」
言いつつ、脱いだキャミソールを籠に入れて衣装に袖を通す。
器用に背中のジッパーを上げて丈を確認する。
肘の手前までの控えめなフリルの袖、上だけで見るならクラシックな物に似せたデザインを幾らか華やかにした程度に見えなくはない。
不釣り合いなデニムのまま姿見の前で何度か身体を捻って見せる。
「……なんというか、あれね。
サイトに過激な、とか色々書いてあったはずなのだけど
もしかして私が普段着てるのって……」
浮遊霊の彼と、図書館で会った男性。
随分困り顔で服装を指摘されたのは学校施設に制服以外で立ち入ったからなどでは無いのかもしれない。
■セレネ > 「あら、それはとても嬉しい事を聞いてしまいました。
ならばクリスマスを楽しみにしていますね?」
丁度、その日は己の誕生日だ。そこまでは口にはしないけれど。
クリスマスプレゼントだけで、己は充分なのだから。
己の想い人は、まだ他者には告げないつもり。
口は堅いのだ、己に関する事は猶更。
「……。
随分大人数なご家族なのですね?賑やかで楽しそうではないですか。」
彼女は次女にあたるらしい。
可愛い妹達や弟が居るのなら、成程確かに姉らしくしっかり者の筈だ。
彼女の姉については深くは問わず蒼を細めるだけに留めて置いた。
「そうですか?それなら良いのですけれど。」
本当に必要な事なら彼女も告げるのだろうし、そこは軽く聞くだけにしておいて。
「……あっ。」
彼女の言葉と蒼を向けた光景に、察した声を上げた。
何というか、非常に彼女に似合っている。
恥ずかしがりもしていない所を見るに、こういった衣服を普段着ているのだろうと容易に想像がつく。
「…しかし、貴女やはりスタイルがとても良いですね。
羨ましいくらいです。」
■イェリン > 「そ、賑やかでいつでも騒がしいくらい。
村の皆も何かにつけて心配してくれる、良い人達ばっかり。
でも、世の中って良い人だけじゃ、無いのよね。
寂しくなっちゃうってものよ」
知ってはいたつもりの事柄だが、狭い社会で完結していた頃の知識と現実は違っていた。
転んだ人がいても誰もかれもが献身的に心配する社会はここには無い。
そんなレベルの、文化の違い。
そのせいか、練習中の失敗で最近自覚した術式の不成立。
誰もかれもが大事で、誰もかれもを護り抜く。
そんな一族の術式との、不和。
ちらりと机の上の術具を見やるが、今は考える事はやめようと首を振る。
「先輩は、どうなのかしら。
嫌でなければ、教えて?」
知りたいの、と甘えた声で言う。
無論、異界から来たとなればその家族の事を今知る事も出来ないので、振る事自体がタブーとされかねないような話題だが、
一歩だけ、踏み込む。
「ふふっ。ありがと、先輩。
頑張って綱渡りしてるのよ、結構」
一歩間違えれば筋肉ダルマだから、と笑って言う。
鍛える事自体がルーチンワークになっているせいか、
綺麗を維持できるその先まで踏み込まないように頑張っていると、言ってのける。
「先輩くらいの方が、女性らしくて素敵だと私は思うけど、
隣の芝はっていうし、褒められるのが素直に嬉しいわ」
■セレネ > 「そうですね。世の中そんな善人ばかりではありません。」
その言葉には、隠し切れない冷たさが僅かに滲んでしまったかもしれない。
それでも彼女には最大限、優しい声音で話したつもりだが。
蒼は相手に向けず、マグカップの中の紅茶に落とす。
己も過去、父が善か悪かと悩んだものだ。
「――…。
……私には血の繋がった家族というものはおりません。
居るのは私を育ててくれた養父と、彼が経営している孤児院の子ども達だけです。」
甘えた声で問うてきた彼女には申し訳ないが、己にはそういった血の繋がりなど何もない。
一番古い記憶は、己を育ててくれた父から拾われた記憶。
詳しい部分は靄がかかったように不鮮明だ。
「身長も高いですし、しなやかな筋肉もありますし。
…私ももっと運動して筋肉をつけた方が良いのでしょうが、
身体を動かすのはあまり得意じゃなくて。」
成程、彼女は良い塩梅をキープしているらしい。
そのバランスも絶妙なのか、スタイルの良さを際立たせている気がする。
「そうでしょうか?…肩が凝って仕方がないのですけれどね。」
彼女からの言葉を受け、おどけるように軽く肩を竦めてみせて。
■イェリン > 「誰しも裏も表もあるし、ね。
だから私決めたのよ、善も悪も私が判断するって。
何でも分かった風に正しいとかどうかなんて言えないけれど、
私にとっての良い人かどうかなら、全部背負って立てるもの」
疑心暗鬼になるくらいなら、判断の結果は自分で背負おうと。
例え世間が嫌おうと、自身が気に入ればそれは良い人なのだ。
その温もりを、存在を。愛しく思う自分を信じている。
誰もが善き人という故郷の教えに逆らう事ではあるが。
「……そう。
でも、一人じゃなかったのなら良かったと思っていいのかしら」
貴方が寂しくなかったのなら、それだけでも、と。
お互い育ちが違うのだから、誰かを羨むものでは無い。
「……! ヨガなんてどうかしら。
初めは不格好になるかも知れないけれど、必要な所が締まっていくけどじんわりやれてオススメなの」
共通の話題ができそうな事に嬉しそうに、まくしたてる。
実際慣れた人間の辛くない、痛くないほど参考にならない事は知っているので、自分のメニューを一緒にやろうなどとは言えない。
一通り着方と見栄えを確認しながら、デニムを脱いでスカートを履いてしまう。
普段パンツスタイルの多いせいか、違和感は拭えない。
それにわりとしっかりした生地なせいか、存外重くヒラヒラとしてはいるが勝手に浮いたりはしなさそう。
「……ママも言ってたわ、それ。肩こりだけが対価なら安そうなものだけど」
着替える所を見ていた上で、同じ女性なら気づくかもしれない。
プロポーションを崩さないように、見栄えが良くなるようにというのが主目的だが、多少盛れる物を使っている事に。
■セレネ > 「…貴女は強い人ですね。」
彼女の言葉に、素直にそんな感想が洩れた。
彼女の善悪の判断はどうなのか、少し気になりはしたけれど。
自分が決めた事ならば背負って立てるくらい、心も強いのだと。
それは実に素晴らしい事。
「そうですね。元気で活発な子が多かったので、良くも悪くも賑やかで寂しくはなかったです。
…勉強する環境としては、あまりよくありませんでしたけど。」
己は子ども達の中でもかなり大人しい方で、静かな場所が好みだったから。
己のお気に入りの場所を探すのに苦労した。
懐かしいと思うよう、微笑を口元に。
「ヨガ。
…これでも身体は柔らかい方なので、多分出来るかもしれませんね。
今度ポーズのやり方でも教えてくれませんか?」
どういうものかは知っているが、やってみようとは思っていなかった。
だから、この際チャレンジしてみるのも悪くないかもしれない。
「…あらー。スカートまで履くと可愛らしい服ですこと。
――肩凝りだけだと思うでしょう?色んな人からの視線が多くて嫌になってしまいますよ。
それに走ったりすると弾んで痛いですし。」
だからしっかりとあったサイズの下着を買わないといけない。
そも、ここまで大きくなると流石に色々大変になるのだが。
チラと見えた彼女の胸元。成程、と納得するもそれについて言及するのは避けた。
持っている者が言うのも何だか彼女に失礼かと思ったからだ。
彼女の秘密はひっそりと、己の豊かな胸にしまっておくことにする。
■イェリン > 「ふふっ、強くありたいとは常々願ってるの。
護りたいと思った人の為なら、国でもなんでも相手してあげられるくらいに」
無邪気に言ってのける。
例え血濡れの咎人だろうと、忌み子と謗られる者であろうと。
その個をどう捉えるのかは、自分で決めると。
「先輩は静かなところの方が好きそうだし、そうかもね。
でも、静かな所しか知らないよりよっぽど良いと思う。
まだ数日なのにもう懐かしいわ……皆元気にしてるかしら」
微笑を浮かべるセレネを見つめ、遠い故郷を、思い返す。
自家の魔術を発展させる、と家を飛び出していった娘が、
その本質を捻じ曲げて新しくしようとしている等と言ったら怒られるだろうか、などと思いながら。
「色々あるけど、涼しい所でストレッチ感覚でできる奴の方が先輩には合ってそうね。全身汗まみれ!
なんて趣味じゃなさそうだし」
サウナ文化のど真ん中に居た事もあり、プールとサウナの往復で全身で汗を吐き出す事など日常茶飯事だったが、
目の前の彼女がそれを受け入れる姿がなかなか浮かばない。
「可愛いらしい……ほんと、そうね。
我ながらこれにして良かったわ。」
自分一人でなら、絶対に違う物になっていただろう。
ただ、同じ物を着てくれるのだから、うんと可愛い物にしたかったのだ。
何もはずかしめたいのではなく、可愛い先輩の可愛い姿が見たくて始めたのだから。
「視線? あぁ、確かに向けられそうね。
私はあんまり気にしてなかったのだけれど、人によってはやっぱり嫌な物なのかしら。
痛いのは、それは嫌ね……。走るだけでそうなるのは……」
胸に関しては、神話と戦う術を持つ物としてはむしろ、恵まれたという事なのかも知れない。
思えば彼女ほどのサイズともなれば槍を振るうのにも支障が出かねない。
人の視線に関しては、イェリンはまるで気にしている素振りを見せていない。
普段着る服も出で立ちも、人目を引く物がある一方で、そんな邪悪な目で見られているという認識自体が無かった。
田舎育ちからすれば皆が目をかけてくれているくらいのほほえましさで受け止めてしまっている。
■セレネ > 「心の強さはそれだけ身体にも表れますものね。
…一度くらい、手合わせしてみても面白いかもしれません。」
彼女がどれだけの強さを持ち合わせているのか、興味が湧いた。
…尤も、己はあまり手合わせの経験はないけれど。
無邪気に言う彼女に、己にはない純粋さが見えた気がして。
蒼を細めた。
「人が多い場所だとどうにも、落ち着かなくて。
…心配なら電話なり、メールなりで連絡を取ってみてはどうでしょう?」
彼女がどういった経緯で此処に来たのかを知らないから、不思議そうに問いかける。
己のように世界が違う訳ではないのだし、連絡は取れるのだろうと。
「そうですねぇ。汗をかくのはあまり好きではないですので…。」
多少なら良いが、汗まみれだと流石に…と苦笑する。
尚、己が汗を掻くと普段香るローズの香りが強まるのは自覚無し。
「やはり貴女にも似合うではないですか。
とても可愛らしいですよ。」
普段パンツルックだからだろうか。
スカートを履いている彼女は新鮮で、それを見られただけでも嬉しいもの。
…とはいえ、約束したのだから己も着替えなければいけないのだが。
「まぁ…私は嫌ですねぇ。自分が気にしている所を見られるのは良い気はしないでしょう?
あとは、そう。大きすぎると肺が圧迫されるので仰向けで寝られないとかありますね。」
育った環境もあるだろう。己は目立つ容姿をしているし、
幼い頃から色んな人に声を掛けられて、時には危ない思いもしたので。
若干のトラウマがあったりするのだ。
ご案内:「常世寮/女子寮 一人部屋」からセレネさんが去りました。
ご案内:「常世寮/女子寮 一人部屋」からイェリンさんが去りました。