2021/12/29 のログ
ご案内:「常世寮/女子寮 大浴場」に雪城 氷架さんが現れました。
雪城 氷架 >  
寮の部屋のバスルームだと必ずと言っていいほど同室のゆぇがついてくる
それはそれでいいのだけど、のんびり湯浴みしたい時なんかは、こうやって
大浴場の、人気のない時間帯を狙ってやってくるのだ

「はー…っ、さむ……っ」

──商店街でのやらかしから向こう、異能の普段使いはなるべくしないようにしていた
昔と違って無意識に発現させたりすることがなくなったのは、成長を感じる──

それはともあれ、異能を使っていないので、脱衣所が寒い
今までは気にしなくてよかったことなので余計に気になるけれど、
人の少なくなった時間に暖房が抑えられているのは当たり前と言えば当たり前だった

雪城 氷架 >  
インナーを脱いで、下着も取り払って
髮纏めるのは後でいいやと湯浴み場へ
征く途中で姿見に映る自分となんとなく目が合う
成長を感じない───
いや、それはいい、よくはないけど

「(……またちょっと痩せちゃったかな)」

元々線が細いほうだけれど、こう…肋の浮き方が前より

「……もーちょっと食べないとダメかなぁ」

十二分に食べているつもりなのだけど
小さく溜息を吐きながら、引き戸を開けて湯気烟る湯浴み場へと足を踏み入れた

雪城 氷架 >  
普段は朝からずっと髮は二つ結びに纏めている
自分でもやるけど、場合にはルームメイトにしてもらったり、時間のある時は母親にしてもらったり
湯浴みの時は当然解いて、洗って、アップに纏めて…
洗うのにも気を使うし、当然ケアはもっと大変
短くしたら?と言われることもあるけど、あんまり気乗りはしない

基本的に面倒臭がりな少女が見た目だけには気を使い、髮の手入れも怠らないのは
それが自分の母親から受け継いだ、自分の容姿の中で最も綺麗なものだと思っているからに他ならない
こっ恥ずかしいのでわざわざ母の前で口にしたりはしないけど
なので、僅かな差異にも少女はすぐに気付いた

「───?」

洗い場までの間、解いた髪の毛先が踝に触れる感覚を感じて立ち止まる

「…んー……? 前に少し切ったばっかりなんだけどな…」

小さく首を傾げる
髪が伸びるのが早い…気がした

…とうとう成長期か? いや髪の長さ以外は何も変わってない。さっき鏡で見た

雪城 氷架 >  
「………」

気の所為、だろうか
学園も冬休みに入り、明日には自分も一旦家に帰る
何かとバタバタする年の瀬、時間の流れる感覚は確実に普段よりも早い
……気のせいじゃなかったら?
それは……

「……やめやめ」

考えても不気味に感じるだけだ。なんとか人形じゃあるまいし

雪城 氷架 >  
湯浴み場とはいえ裸では寒い
のんびりしていて風邪は引きたくない
そこそこ髮を洗うのにも時間がかかるし…

───……

疑念はとりあえず置いておいて
丁寧に洗った髮をアップに纏めて、漸く浴槽へ

爪先から、ゆっくり
徐々に身体を沈めてゆくと少し冷えた身体に熱いお風呂が死ぬほど心地よい…

オッサンじゃないから『あ゛~』なんて声はあげないけど
なんとなくそんな声を上げたくなる気持ちはわからないではなかった

「…そういえば、いつもは異能で調整してたからこんなに熱く感じることもなかったな…」

子供の頃は感じていた筈だけど。覚えていない
思い出すたび押し潰されそうになるとある記憶、その地点に氷架は無意識に蓋をしていた
だからか、子供の頃のことはなんだかうろ覚えだった

雪城 氷架 >  
洗い場で冷えた身体にじっくりと伝わる熱
体の芯まで温まるのにそう時間も掛からず
湯の跳ねる音と共に右手を掲げて見てみれば、色素の薄い自分の指先や肘がうっすらとしたピンク色
異能があるのが当たり前になっていて、こういう浴場の良さを忘れてたかも…なんてことも浮かんでくる

商店街での騒ぎは少しばかりのお店と通行人に迷惑をかけてしまったけど、
改めて自分の持っている異能の力と向き合うには良い機会だったのかもしれない
それはともかくとして、注意は受けたけど…

あの騒ぎのことは、両親にはまだ伝えていない
先日、クリスマスの日に家族が揃った時は、水を差すのがイヤだったし

「……っふ」

あの日のことを思い出すと、思わず笑みが零れる

雪城 氷架 >  
今年は父親がクリスマスに帰れる、というので
ケーキを買って帰るという父に、オススメのお店として『ラ・ソレイユ』を教えた
母である涼子がパティシエとして務める洋菓子店
父は、母がそういったお店で働き始めたことこそ知っているけれど店名や場所までは知らない
母は、クリスマスという繁忙期で必ず店の売り場に出てくる
結果として娘の企みは見事成功…というよりは大成功だった
まさか母がサンタクロース風の衣装まで身につけているとは嬉しい予想外だった

お家に帰ってからはケーキよりも甘ったるい空気と惚気を無限に垂れ流していたし
──ふたりとも、幸せそうだった

「──うん、良かった。ほんとに」

目を閉じ、肩までたっぷりとお湯に浸かる
つい先日の話、瞼の裏では鮮明に思い出せる

普段は見せないような、恋する乙女のような母の表情
父も、研究室ではあまり見せないような、とびきり優しい顔をしていた

幸せな、今は父がたまに帰ってくる時しか見られない光景
その時間がどんどん増えたら、それはどんなに幸福なことだろう

雪城 氷架 >  
自分のことを第一に考えてくれる掛け替えのない人達
その幸せな顔を見れることは何よりも、自分が嬉しいから

そんな光景を見るために必要なのは、父のしている研究に終わりが見えること
今は全てを語ることは出来ないし、娘が協力することも母は心配するだろう
父はそう言って、母に全てを話していない
ちゃんと最後には全部打ち明けるよ、という父の言葉に、自分も賛同した

ゆっくりと瞼を開く

もうすぐ今年も終わる
不安に思うことも多いけど、来年に向けて、さらなる躍進の気持ちは固まった

雪城 氷架 >  
「~♪ 部屋のバスルームだと、ゆぇが突撃してきてのんびりこんなこと考えられないからな~」

想いに浸る時間終了

ぱしゃっと派手にお湯を跳ねさせて、広い浴槽に四肢を投げ出すようにしてゆったりと寛ぐ
どーせ他に誰も見てないし、のびのびとさせてもらうのだ

「にしても今日は特にすいてるな…。もう皆家に帰ってんのかな」

帰らない寮生もいるだろうけど
まぁ人の少ない時間を選んでいるのだから、こんなものだ

自分ものぼせないうちにあがるか──と
今年最後の女子寮大浴場貸し切りを堪能して帰るのだった

ご案内:「常世寮/女子寮 大浴場」から雪城 氷架さんが去りました。