2022/02/15 のログ
■イェリン >
「そう、先輩が言うなら本当ね」
己の直感に任せた全幅の信頼。
未だこちらに来て日は浅く、それでも故郷や友達への想いは絶えず。
特に、家族に会えないのは寂しい。
だからだろうか、そう歳の変わらないように見える先輩に母性のような物を感じてしまうのは。
「お客様が喜んで食べてくれたわ。
失敗した奴だって見れば分かるのに嬉しそうにしてくれたから、
今度来た時にはあの人達にも綺麗なのを渡せるようにしたいわね……」
申し訳程度に良かったらどうぞ、とサービス品として渡していたのだけれど。
勿論焦がしたりはしていない物を。
「ん、待ってる」
言って、続けられた言葉にパチパチと瞬きをして。
「……?」
己の故郷でバレンタインと言えば親しい人にハート型の菓子を送り合うイベント。
男性と限らず配りあったりするのだけれど、どういう事なのかと少し不思議そうに。
イサナやトーゴ、それにコースケ……ほかにあまり一緒に話した男性というのも思い当たらず。
■セレネ > 疑いもせず素直に己の言葉を信じてくれる彼女。
無論、嘘などついたらバレてしまうだろう勘の良さも知っている。
尤も余程の事がないと言及はされないかもしれないが。
こう見えて母親でもある身だから、どうにも可愛らしい子には滲んでしまう母性。
隠しているつもりでも、どうにも隠し切れないもののようだ。
「あら、それはお優しいお客様ですね。
素晴らしい環境に恵まれているようで良かった。」
バイトも慣れてきているのか、周囲とも馴染めてきている様子。
もう少しで学年が一つ上がるのだ、今後ももっと馴染んで行けるようになるかもしれない。
「…この国では、どうやらバレンタインの日には女性から男性に好意を伝えて贈り物をする日だそうですよ。」
不思議そうにする彼女に、そう説明を。
驚きですよねーと苦笑しながら言葉も添えつつ。
■イェリン >
「いらっしゃいませすら言えなかった私を笑って許してくれる人達だもの。
少しは様になってきたとは思うわ」
事実、日本語の敬語という物がようやく理解できるようになってきた所。
年始近くからこちらに来た事もあってか、馴染み切れないという思いもあった。
次のシーズンではもう少し、馴染めるだろうか。
「好意を……」
少しだけ考えて。
それはきっと友人同士のそれとは違って。
先輩とクロロなる人のそれ。
■セレネ > 「…ふむ。言葉遣い、気になるなら教えましょうか。」
日本語の場合は基本敬語な己。
フランクな言葉遣いも出来ない訳ではないが、時と場所と場合で分けている感じ。
己も年の半ば頃からやってきた身だ。彼女の不安も大いに分かる。
「一般的には好意を伝える日でしょうけど、別に感謝の気持ちを伝えるものでも良いと思います。
他の国だとそういった日ですしね。」
まさか己と己の想い人の事について考えているとは思うまい。
湯気立つ紅茶にはまだ手を付けず、両手を温めるのみ。
■イェリン >
「ちょっとだけ……いえ、結構気になるかしら。
日本語は教えてくれた人の真似になっちゃうから、
あまり丁寧な言葉じゃない自覚はあるのよ」
言葉が丁寧な人では無かった。いっそ粗雑とすら言える。
教わるという点では、先輩の振る舞いの穏やかさや見習う所が多い。
「こっちに来てから沢山の人にお世話になったし送っても良かったのかも知れないわね……」
皆の事は好き。お世話になったし良くしてくれた。
感謝の想いは絶えないのだから、明日以降にはなってしまうのだけれど。
後日になっても、受け取ってくれるだろうか。
■セレネ > 「なら、少しずつでも教えて行きましょうか。
とはいえ私の言う言葉を覚えた方がきっと早いのかもしれませんけれど。」
ね、と微笑んで。言葉一つで印象も変わるのだから、案外侮れないもの。
言葉が丁寧ではないのは己の父もそうだったので、反面教師として育ったお陰なのだろう。
「多少のズレくらいなら大丈夫でしょうし、贈ってみてはどうでしょう。
きっと喜んでくれる筈ですよ。」
思い立ったが吉日と言うし。数日くらいなら誤差だろう。
ニコニコと微笑まし気に、彼女にそう告げる。
■イェリン > 「ようするに先輩の真似をすれば良いのよね……」
微笑む先輩のように。笑顔を――
「……難しいわね」
微笑んで、といわれるとなかなかどうして上手くできない。
むにっと両の頬を指の先で引っ張り、困り顔。
「テスト期間も終わったし、お世話になった先生達にも配ったりしようかしら」
多少遅れたとしても、その時期の贈り物と言えば謝意は伝わると思う。
「……でも好意を伝える、なんて言われてからだと何だか気軽に渡しづらいわね」
微笑ましそうに告げる先輩とは裏腹に眉は下がり。
「……困りますね」
ちょっとだけ、先輩の真似をしてみたり。何だか言っていて自分でもくすぐったい。
■セレネ > 「急がずにゆっくりやっていきましょう。
大事なのは付け焼刃ではなく、きちんと自分の糧にする事なのですから。」
己の前では結構笑顔を見せているような彼女でも、
意図的に笑顔を作る、という事は難しいらしい。
彼女の白い頬をそっとつつこうと、己の指を差し出してツンツン。
「良いと思いますよ。喜ぶんじゃないかしら。」
色んな人と縁を繋いで、良い関係を結んでいければ、きっと彼女も過ごしやすくなる筈だ。
縁は自身の力となり得る。だから己も、父と同じように、色んな人と関わりを持とうとする。
それはいつか、自分を助けてくれるだろう事を知っているから。
「…確かに、下手に勘違いされると厄介ですしね。」
渡す相手と、渡す物は考えないといけないかもしれない。
そんな中己の真似をする彼女に、ふふふと小さく笑みが漏れた。
■イェリン >
「そうね、一朝一夕で身に付く物でもないと思うし」
怪異のや伝承の生物の中には感情に付けこむ者もいた。
だからこそ、平時にあまり感情が出ないようにしている内に出さないようにする事こそできるようになったが、
意図的に作る事は不得手になっていった。
「喜んでくれると良いのだけれど……」
じきに春が来る。桜、花見。話にしか聞いたことの無いシーズンが。
新しい出会いや、別れもあるのかもしれない。
そんな予感に少しだけ思いを馳せて。
「軽い気持ちで贈って大惨事なんて事になっても怖いから、要件等ね」
小さく笑う先輩につられてツンツンされていた頬には自然な笑みが。
「ん、ごちそうさま。本当に美味しかったわ」
皿の端に残ったチョコの一かけらまでをゆっくりと味わって。
ダージリンのすっきりとした味わいで流し切る。
■セレネ > 「えぇ。少しずつ覚えて、成長している所を見てもらいましょう。」
己は所謂、自身の中にスイッチを作っているので切り替えで感情のオンオフが出来る。
というのも、必要な時に感情に流されて冷静な判断を見失わないようにする為だが。
人によっては冷酷とも呼べてしまう程の。
「普通の人なら喜んでくれますよ。」
喜ぶビジョンが浮かばない人は、己は数人くらいか。
折角贈るのだから、喜んでくれる人に贈りたいもの。
もう少し暖かくなれば、彼女とお花見も良いかもしれない。
「修羅場はそうそう潜らない方が良いですよ…。
――うん、今みたいに自然な笑顔が作れるようになれればベストですね。」
指を離せば小さな頷きを。彼女の笑顔も実に素敵なこと。
「なら、またお菓子を作った時には持って行きますね。
…あぁそうそう。良ければこれ、お土産にして下さい。」
期間限定で買った、チョコレートフレーバーの紅茶を紙袋ごと差し出す。
ティーバッグだから気軽に飲みやすいものだろう。
■イェリン >
「分かっ分かりま……分かったわ」
やっぱり急に変えられる物では無く。
スイッチの裏側のセレネを、その蒼に写した事はないけれど、
その冷酷さを垣間見た時にどうなるのかは、また別のお話。
「別にバレンタインなんて関係なくプレゼントしても良い訳だし」
いっそチョコレートじゃなくてクッキーみたいな軽いお菓子の方が問題になら無さそうだ。
「平和な場所にも修羅場ができる……怖い世の中ね」
自然と出た笑顔、それを作れと言われるやはり難しく。
ふと、家を出た時の自分を思い出し。
耳に煌めくピアス、首元を飾るペンダントの事を思えばそれだけで笑みは自然と零れた。
「……できたわ」
作れたと言っていいのかは分からないけれど。
「ん、ありがとう。
この前に貰ったのも飲み切っちゃったし、また暫く楽しませてもらうわ」
紙袋ごと受け取って、その重さにこんなに受け取っても良いのだろうかと少し不安になりながら。
「いつか、ちゃんと私も渡したいって思える相手ができるかしら」
――先輩みたいに。
なんて悪戯っぽく言って、席を立つ。外は雪こそ降っていないけれど、随分な寒風が吹いていた。
■セレネ > 彼女の言葉遣いにクスクスと小さく笑ってしまいながらも
彼女が今後どう成長していくかを楽しみに。
己の別の面を彼女に晒す日が、いつかは来るのかもしれない。
「そうですよー。感謝の気持ちを伝える事にイベントは関係ないですしね。」
キッカケにするくらいで、その時じゃないといけないだなんて事は無い筈だ。
「――可愛らしい笑顔ですこと。」
彼女には作った笑顔より、自然と零れた笑みの方が似合うようだ。
その笑顔を見て己も少し満足気。
「美味しく飲んで下さいな。」
店が開けそうなくらいの茶葉があるのだ。贈る分などそれに比べると微々たるもの。
己は全く気にしておらず。
「…出来れば良いですねぇ。その時は是非とも教えて下さいね?」
己みたいにだなんて言われると、少しばかり困った笑み。
彼女が部屋を去るなら、己は愛猫と一緒にその背を見送る事だろう。
ご案内:「常世寮/女子寮 一人部屋」からイェリンさんが去りました。
ご案内:「常世寮/女子寮 一人部屋」からセレネさんが去りました。