2022/09/09 のログ
■セレネ > 「――あら。流石に口を滑らせすぎましたね。」
己の蒼にはしっかりと視えていた。
彼にも恥ずかしいと思う事はあるのだなと、意外に思ってしまったが。
「そうでしょうね。
…そもそも、あまり信用出来ない組織と言いますか…
いえ、あまり言うのも宜しくはないですね。」
己とのやり取りも、筒抜けになっているかもしれないし。
抱き締めた彼女の頬がぷっくりと膨れた。
「他者を甘やかしてしまうのは癖のようなものなので…。
――さて、何のことでしょう?」
細い右手の指先が己の胸元へと。
この傷は、そうそう人に見せられる物ではない。
見せているのは、今の所黄緑髪の彼だけだ。
惚けるように首を傾げてみせた。
■神樹椎苗 >
「むう、昔の女に負けてるみてーで、妙に癪です」
何とも言えない表情。
黒い神の方も、表情筋があればとても微妙な顔をしていたことだろう。
「しいとしては、信用できる連中がいる、って事が分かっただけありがてーですけどね。
とくに、今のしいの管理者どもは、本当にお人よしで、善人の集団ですよ。
まあ、少しばかりマッドサイエンティストの気が濃いですが」
特に最近やってきた、頭がお花畑の女がヤバイ。
室長も主任も振り回して大騒ぎだ。
そのお陰で、色々助かってもいるとは言えるのだが。
「さて、何のことでしょうね」
誰にでも傷はある。
それはなにも特別な事ではない。
そして傷を見せなければ支え合えない――そんな事もない。
「ん、まあ。
お前がこうしていて、少しでも気が休まるなら好きにすればいーです。
しいも、ん、嫌いじゃねーですし、ね」
そのまま、腕の中で甘えるように縋り付く。
誰かの体温がこれほど安心できると知ったのは、まだ最近の事。
素直に自分から甘えに行けるまでには、まだしばらく時間が掛かりそうだ。
■セレネ > 「気持ちは分からない訳ではないですが、言い方が…。」
彼氏の元カノに嫉妬しているような言い方に聞こえて
思わず苦笑してしまう。
己がそうなのだから、きっと彼も難しい顔を…いや、顔があればだが
感情を抱えているに違いない。
「…そう。悪いだけの話ではないのなら、良かったですね。」
マッドサイエンティストの気については
己も研究者気質の部分はあるので否定はできない。
好奇心や探求心だけで危険な場に行った結果が、この間の瀕死なのだ。
「嫌いじゃないって言われるより、
好きって言われる方が嬉しかったりするのですよ?」
甘えるように縋りついてくる小さな体。
よしよしと他者を甘やかしてしまうが、
自身が甘えるのはすこぶる苦手なのだ。
■神樹椎苗 >
「む――なら、お前は素直に好きって言うんですか?
そう言うって事は、自分はちゃんと好きって言ってるんですよね?」
じと、っと半眼で家主を見上げる。
■セレネ > 「……えぇ勿論?
好きなものは好き、嫌いなものは嫌いってきちんと言えと
父から教えられたので。」
そういう恥じらいは特にない。
…が、何に対してかによっては、あまり言えていないのだろう。
言う機会がないから言えてないと言うと、
何を言われるか分からないから、とりあえずそう言っておいた。
■神樹椎苗 >
「ほほーう。
それはそれは、結構な事ですね。
それじゃあ夏祭りでも一歩引いてるように見えたのは、しいの気のせいですか。
そうですか、あれは見間違いでしたか」
そうですか、そうですか。
などと繰り返しながら頷く。
のぞき見していたのがバレるが、そもそも祭りなのだ。
偶然、椎苗が紛れていたって文句はいわれまい。
■セレネ > 「………。」
速攻で噓がバレた。
いやだってね?彼が人間の身体なら
もう少し攻めていけたのだけどそうじゃなかったし。
覗き見をしていたとは思っておらず、咄嗟の言葉が出てこなかった。
「…あ、あれはあれで楽しかったですし…。」
そう言う蒼は、別の所を見ていた。
■神樹椎苗 >
「――まったく」
はぁ、とため息を吐いて、きめ細かい艶のある頬を枯れた指先で突いた。
「体の距離はとっくに詰めてるんですから。
今度はもっと心の距離を詰めていくしかねーでしょう。
ほれほれ、お前はあのロリコンやろーとどうなりてーんですか?
願望も欲望もあるでしょう」
うりうり、とほっぺをつんつん。
ヒトの恋路に首を突っ込むのが大好き、世話焼き植物。
馬に蹴られてしまえ。
■セレネ > 「……ん、待って椎苗ちゃん?今なんと…。」
ふにとつつかれた頬。
これはもしや”あの”やり取りも彼女に出歯亀されているということか?
これは己が彼女の頬をむにむにし返すかもしれないぞ?
「――どうなりたいか、を口にした所で
それが叶えられるかは分からないではないですか。」
彼女の言う通り、願いも欲もある。
が、彼が特殊な体質なのだから難しい事もあるだろう。
ツンツンされる己の表情は、
少しばかり寂しいものにも見えるかもしれない。
■神樹椎苗 >
「おや、『あたり』ましたか。
これは『ロリコンやろー』の呼び名を『鈍感やろー』に改めねーといけませんね」
さすがに出歯亀したわけではないらしい。
もちろん、そのつもりになればできなくはないだろうが。
そこまで外道な事をするには、椎苗の人格は歪んでいなさすぎる。
「願いは、口にしなければ、叶うもんも叶わねーですよ。
特に、愛し合おうと他人同士。
欲求も願望も、言葉にしなくちゃ伝わりません。
ああもちろん、嫌な事や文句もですね。
声にしろ文字にしろ、言葉にしなかったらなにも伝わらない――ああ、お前が胸に秘めているだけでいいなら、しいはもう何もいいませんけどね」
寂しそうな表情を見ても、言葉は優しくない。
けれど、枯れた右手を家主の頬に添えて、目を細めて微笑んだ。
■セレネ > 「…謀りましたね…?
せめて名前で呼んであげて下さいな…。」
何だかちょっと悔しくて、彼女の頬を両手でむにむにしてやった。
彼の鈍感具合というか、気の利かなさについては
その通りと言えなくもないが。
「……今は、まだ。
そういう時ではないとは思っています。」
それこそ、もう少し心の距離が縮まるまでは。
少しずつでも彼が変わってきているのは分かるのだ。
だから、己の言葉は今はまだ仕舞っておくべきなのだと。
微笑む彼女に、どこか苦しそうに。
■神樹椎苗 >
「ふふん、謀られる方が悪いのです。
それと、しいが誰かを名前で呼ぶことはありません。
かつてとは言え、それなりの神でしたから――神が名を呼べば、それにすら意味が出来てしまいますからね」
信仰と従属。
かつて神で在り、今も神と繋がっているのだ。
なにがどう作用するかわからない今の世界で、不要なリスクを犯すつもりはなかった。
「しかしまぁ――ほんとに、お前ってやつは」
ムニムニされながら、家主の後頭部に手を伸ばし、優しく撫でる。
とても手触りが良く、綺麗な髪だ。
「お前はもう少し、我儘になれるといいですね。
――応援、いえ、見守ってますよ。
お前の想いが叶う事」
■セレネ > 「そうですか…。
名前を呼んでもらえないのは、少し悲しいですね。」
己の名は、偽名ではあるが。
『セレネ』として定められてしまえば、
本質が消えてしまう可能性がある。
今の所、真名はこの世界の神族と親友に告げてはいるものの
リスクは避けて然るべき、か。
「我儘はもう充分彼に叶えてもらっていますから。
困らせて、嫌われるのは嫌ですからね。」
小さな手が、己の頭に伸びた。
サラリとした艶やかな月色は、絹のように滑らかだろう。
我儘については、過去に己が師にも言われた事がある。
…これでも我儘を言うようになったつもりだが、それでもまだまだなようだ。
■神樹椎苗 >
「そのための親しみやすいあだ名ですよ、『ピンボケ女神』」
力の弱い枯れた腕で、家主の事を弱弱しく抱く。
優しく、儚すぎる娘だと思う。
繊細で――すぐにでも壊れてしまいそうな。
「そうでしょうかねえ――まあ、そこはしいが口出しする事でもねえですか。
馬に蹴られたら、即死できねえと悲惨ですし」
経験済みである。
あの時は上手く死ねずにずいぶん苦しむ事になってしまった。
「さて、今日ももう遅いですし、そろそろ休みましょう。
今日もちゃんと寝かしつけてやりますからね」
まあ寝かしつけられるのは椎苗の方だったが。
朝が弱い家主の寝顔と、寝ぼけた様子を見ながら世話を焼くのは、なかなかに楽しい時間なのだった。
■セレネ > 「…渾名ももう少し、
マイルドにして頂ければ嬉しいのですけれどね…。」
己は兎も角、黄緑髪の彼の渾名が
ただの悪口になってしまっている気がするので。
彼女から弱々しく抱き締められれば
引き剥がす事もせず大人しく。
「馬に…?それは何というか、どうしてそんな…。」
まるで経験したかのような言い草に
ちょっと信じられないような蒼を向けた。
「ん、そうですね…もうこんな時間。
先にベッドに入っていて下さいな。
私は諸々を済ませてから寝ますから。」
お口、きちんと濯いでねと子に言う母の様に告げながら。
使った茶器を洗い、今日あった事を日記に認めては
少女と一緒に眠りに就くとしよう。
■神樹椎苗 >
「そういう趣味があったんですよ。
まあ、もう昔の話です」
すっかり自殺癖はなりを潜め。
いつからか、随分と大人しくなったものだ。
「はいはい、ちゃんと磨きますよ。
ふふん、しいがしっかり布団を温めておいてやります」
まるで子に言い聞かせるような言葉に、素直に答えて、布団に入る。
二人で眠りに就いた後は――ささやかな楽しみの朝の時間がやってくる――
ご案内:「常世寮/女子寮 一人部屋」から神樹椎苗さんが去りました。
ご案内:「常世寮/女子寮 一人部屋」からセレネさんが去りました。