2022/10/08 のログ
ご案内:「常世寮/女子寮 一人部屋」にセレネさんが現れました。
ご案内:「常世寮/女子寮 一人部屋」に神樹椎苗さんが現れました。
■神樹椎苗 >
――トントントン。
秋の朝に、軽やかな音が響く。
包丁を握る右手は、枯れ枝のように細い。
リハビリを続けて、骨と皮に、やっと少し肉が付いた右腕は、しっかりと包丁を保持しているくらいに筋力が戻ってきている。。
それでもおばあさんの腕のように、余った皮でしわくちゃだ。
カツオと昆布でしっかりと出汁を煮出した鍋に、サイコロ状に切った豆腐を入れる。
豆腐の水気が鍋に出てから、赤味噌をゆっくり溶かし込む。
味噌汁の具は、一つか二つよく、多いと味がぼやけるなどとも言われる事がある。
だからというわけではないが、今回の具材は二つ。
豆腐と合うものと言えば、例えばわかめ、例えばネギ、なめこ――様々にあるが。
今回は、鮮やかな色の花芽のようなもの――そう、茗荷である!
アジア圏でも食材として使われるのは日本だけとも言われる、世界的に見れば非常に珍しい食材である。
しかし、この茗荷の香りと味は、他にはない個性であり、好みこそ強く出るが、ハマるとたまらないのだ。
細かく輪切りにした茗荷を、パッパと鍋に入れてふたをする。
味と香りを馴染ませるのだ。
そして、たまご。
生卵を割って、白身と黄身をよく混ぜる。
別に用意した特製の出汁を混ぜ込んで味付け。
熱したフライパンの上に薄く広げ、素早く、丁寧に折りたたむ。
これで、外はふんわり、外はしっとりのだし巻き玉子の完成だ。
そんな間に、焼きあがった鮭の切り身。
皮がカリっとした切り身から、そっと骨を取り除く。
この魚の骨というものは、慣れていないとなかなか厄介なモノらしい。
食べやすいように大きな骨を取り除くと、横に長い皿へと、出汁巻き玉子と一緒に並べる。
さてさて、次は小皿を一つ。
冷蔵庫から取り出したるは、キュウリの一夜漬け!
キュウリと、細かく刻んだ茗荷と生姜、それを揉みこんで一晩漬けたものだ。
一口サイズにカットして、小皿に盛る。
それから一先ず、それらにラップを載せて、キッチンから離れた。
ベッドの上には、天使とも表現できるような、美しい女性。
陽光が苦手な彼女に先んじて、カーテンを調整してから、枕元へと近づいて。
『朝ですよ、愛しい天使様』
そんな冗談交じりの英文を、耳元に吐息交じりに囁いた。
■セレネ > ローズの香りが満ちる部屋に、小気味良い音と美味しそうな料理の匂いが混じる。
嗅ぎ慣れない香りに飼われている白猫は訝し気にキッチンを見て、緩く尻尾を振っている。
部屋主である月色は、もそりと蠢いて小さく唸った。
『ぅー…天使じゃないわ…。』
布団を頭から被り、己を起こそうとしてくれる少女に対し
まだ起きたくないと示す。
口調は非常に眠そうながらも英語だ。
頭が働かない朝は己が使い慣れた言語じゃないと伝わらない。
嫌だ、と子どものように駄々を捏ねる様は、凡そいつも見せている姿とは真逆だろう。
■神樹椎苗 >
『ほら、起きてください、女神様』
頭から布団を被ってしまう様子に、くすくすと笑ってしまう。
いつもはしっかりお姉さんらしく、時には母のような姿を見せる彼女だが。
朝はすっかり、愛らしい女の子になってしまう。
『そろそろ起きないと、講義に遅れてしまいますよ。
今日は昼前からあるんでしょう』
もちろん、時間はそれなりにあるのだが。
この愛らしい少女が、普段の様子に戻るまでには時間が掛かるのだ。
『さ、早く起きないと――イタズラしちゃいますよ?』
ベッドの上に腰掛けて、布団の上から彼女の頭を撫でる。
今日はいつまで粘るかな、と思いつつ。
どんなふうに起こそうかと、イタズラを考えていた。
■セレネ > んぅー、と言葉にならない声で唸る。
いつもは起こしてくれるのは己の愛猫だが、
最近は時折泊まりに来てくれる黄緑髪の彼や、今居る世話焼きの少女から起こされる事も増えてきた。
『あと五分……。』
布団に籠ったまま、紡ぐ声。
講義…あぁ、学校があるんだっけ…。
でも、まだ大丈夫だよね…。
微睡む思考と、落ちかける意識。
それでも完全に寝ようとしないのは、
真面目な性根故だろうか。
悪戯するぞ、なんて脅されると、猶更布団を被る力が強まった。
ベッドの上に真ん丸な繭が一つ出来上がる。
■神樹椎苗 >
『前は、そう言って一時間粘りましたね?』
ぽん、ぽん、ぽん。
言葉とは裏腹に真剣に起こそうという様子はなく、あやすような手つきは掛布団越しに。
『ふふ、丸くなってるとお餅みたいですよ』
ふっくらと焼けて膨らんだお餅だ。
つついて、ぷすんと破裂させたくなってしまう。
『仕方ありませんねー。
――アルミナ、GOですよ』
丸くなった布団を少しだけ捲って、布団の中に飛び込めるよう、主人想いの白猫に合図を出した。
相変わらず構われてはくれないが、最近は少し親しく――単純に慣れてもらえただけかもしれない。
■セレネ > あれ、前って一時間も寝てたっけ…?
ゆるゆると思考を巡らせるも、それはすぐに霧散してしまう。
だって身体も上手く動かないし、眠いのだもの。
小さな手がポンポンと己の頭をあやすように軽く叩く。
真っ白で柔らかな球体は、確かに餅のようだろう。
色々な意味で美味しそうに見えるかもしれない。
尤も、中身は絶賛微睡み中であるが。
みぅ、と小さく鳴いた白猫は、ぴょんとベッドに軽々と飛び乗り
捲られた中にするりと入り込む。
そうして、主人を起こすように柔らかな肉球でたしたしと身体を叩いたり
頭を擦りつけたりして何とか起こそうとするのが少女にも見えるかもしれない。
『…なぁに…?遊ぶなら、あとで~…。』
眠そうな蒼が開かれ、白猫を布団の外に出そうとするだろう。
その際月色の頭も築かれた白繭から渋々出た。
■神樹椎苗 >
『アルミナ、いい仕事です』
珍しく名前を呼ぶ相手――猫なので――に親指を立てて。
出て来た頭に手を伸ばす。
『ほーらー、起きないと、えっちなイタズラしちゃいますよー?』
そう言いながら、艶のある頬を指でやんわりと摘まみ。
そこから耳を撫で、首筋から胸元までなぞるように撫でおろす。
■セレネ > 良い仕事、と褒められた言葉に、アルミナは当然じゃないと自慢気に尻尾を揺らし
しなやかにベッドから下りて元の場所に戻っていった。
『…ん~、ぅ、やだぁ…やめて…。』
”そういうの”を許すのは、此処では黄緑髪の彼だけである。
ふにと頬を摘ままれ弱い所をなぞられると嫌がるようにゆっくりと首を振り、
白い手が少女の手を離そうと力なく押す事と。
むー、と不貞腐れるように頬を小さく膨らませては、
殆ど開いてない蒼を擦ってやっとこさ半身を起こした。
――漸くの起床である。
■神樹椎苗 >
『ほらほら、起きないともっとしちゃいますよ』
なんて言っていれば、やっとうっすらと蒼い色が覗く。
カーテンをしっかり閉めたやや薄暗い部屋でも、その瞳は美しく光を湛えているような気がする。
『やっと起きましたね。
朝ごはん用意できてますから、まずはベッドからでましょうね』
子供のような反応をする美しい女神に、微笑ましくなってしまう。
こんな姿を見れるのは、彼女の想い人と、今のところは自分だけだと思うと。
なんだかんだで、悪い気はしないのだ。
『ごはん持ってきますから、ちゃんと布団から出るんですよ?』
そう言ってキッチンに戻り、おかずからラップを外し、お椀に味噌汁をよそう。
ご飯を軽めに持って、トレーに載せると。
フォークとスプーン、ナイフと並べてリビングのテーブルへ運んでいった。
■セレネ > 遮光カーテンで遮られた少し薄暗い室内。
月色と蒼は、若干ながら淡い光を伴っているかもしれない。
それはひとえに、己が人では無く月の女神である事の証左。
『……んー……。』
まだまだ唸る。寝ていたい、と言いたそうな雰囲気がマシマシだろう。
己のこんな情けない姿を見せるのは、黄緑髪の彼だけで充分だったのに。
のそり、のそり。
半ばずり落ちるようにベッドから下りてはローテーブルまで身体を引き摺って…。
途中で、力尽きた。ぺしょり。
■神樹椎苗 >
『あー――ダメですねこれ』
ローテーブルに朝食を配膳して、それから彼女の隣に寄り添う。
こんな調子なので、時間を早めに取らないと講義に間に合わないのである。
『――はい、とりあえずこれ飲んでください』
一度キッチンに戻ってから、ティーカップを持ってくる。
ひっくり返してしまいそうなので、ストローも付けて。
何とかかんとか体を起こすのを手伝って、カップを口元へ運ぶ。
なお、中身は。
香りだけはとても良いのだが、味はとんでもなく苦いいつもの漢方茶であり。
なお、とんでもなく苦いのは、寝起きの彼女のためにとっても濃く作ったからである。
■セレネ > 崩れ落ちる身体、広がる月色。
すよすよと寝落ちる息は、ただ静かに。
身体は柔らかいので、溶けているように見えなくもない。
尚、豊かな胸元も潰れて形を変えている。
これを飲めと身体を起こされストロー付きのティーカップを出されて。
ゆらりゆらり、首が傾ぎながら差し出されたストローを吸う。
『――んぃー…!』
ほんの少し口に入れただけで、顔が歪んだ。
苦いのは嫌だ。吐き出さなかっただけ、ほんの僅かに意識はあったらしい。
すぐさま口からストローを離せば、イヤイヤと首を横に振った。
ぐりんぐりん。
■神樹椎苗 >
――どうしたものか。
この様子を写真に――いや、動画でずっと納めていたい。
でもそれがバレたら出入り禁止にされそうなので我慢はする。
我慢できる幼女である。
『ほらほら、口の中が苦いでしょう。
口の中がさっぱりする、朝ごはんが用意できてますよ。
いい匂いするでしょう』
ぐったりと潰れている彼女をなんとか持ち上げて。
カップを遠ざければ、お茶の匂いの代わりに、さっぱりとしたお味噌の匂いがほのかに香るだろう。
■セレネ > 己のこの醜態を画像はおろか動画で残されようものなら
出入り禁止どころか口を利かないまである。
だって滅茶苦茶恥ずかしいのだもの。
殆ど記憶は残っていないけれど。
だから、今彼女に甘えているのも世話を焼かれているのも、
黄緑髪の彼に甘えまくっているのも、己の記憶には残っていない。
残るのは世話を焼いてくれている二人だけだ。
『んぅぅ…にがぁい…。』
苦いのは嫌い。
少し涙目な蒼。遠ざけられたカップに安堵すれば、
次に鼻を擽るのはあまり己には馴染みのない香り。
潤んだ蒼を向け、ずるりずるりとロ―テーブルへ身体を引き摺って行く。
パンやサラダの類ではない、純和風といった朝食。
滅多な事では食べない食事だ。