2020/07/31 のログ
■鞘師華奈 > 「――ん?じっと見てどうしかした?私の顔に何かついて…ああ、もしかしてこれ?」
と、自分の前髪の一部――赤いメッシュみたいなそれを摘んでみせる。
彼女の推測通り、これは染めたものではない。とある理由でこうなってしまった。
「昔、私は”死に掛けた”事があってね――気が付いたらこうなってたよ。実は目の色も私、元々は青色なんだよね」
と、苦笑気味に己の赤い瞳をちょいちょいと指差してみせる。つまり、この女の赤い色彩の部分は後天性、という事になる訳で。
「そっか――睡蓮が私の物語を見届けてくれるなら、私も君の物語を見届けたいものだよ。
…まぁ、何だかんだ公安にそのまま居着いてそうな気もするけど…どれどれ?……ん、これは確かに」
焼ネギをこちらも試して見つつ頬張る――ネギの香味が強くて良い感じだ。
あと、「こらこら睡蓮、喋る時は口の中の物を飲み込んでからね?」と、やんわり諭しつつ。
「――私は大丈夫だよ。”待つ”と決めたからね。
…ん?別に通うのは構わないけど…睡蓮のリクエストとかあれば可能な範囲で受け付けるよ。
あと、苦手な食べ物とかは特にないなー。ゲテモノとかイロモノ食材以外なら大抵は平気だね」
そう答えつつも、睡蓮の部屋と同居人の説明にへぇ、と感心したように。
「その先生は睡蓮と同居とか羨ましいものだねー―と」
野菜の並べ方は几帳面、ではないがそれなりにきっちりしている。怠惰な態度はあくまで表向き。
こういう所では自分の本性が出やすくなってる気がする。
■群千鳥 睡蓮 > 「そういえばそんなこといってたっけ……。
死にかけてメラニンの塩梅が変色するとしても赤くなるってのは……ふしぎ、だね」
あえて話題に出した、ということは。
今も彼女の根っこに、"気がついたら"の種を明かしたい気持ちがあるのでは。
見上げる瞳はまっすぐに。気遣わしく。話したかったら、という風情。
「んぐ。 ――高いネギって甘いんだ……」
お行儀が悪かった。ちょっと口を抑えて赤くなる。
礼儀は叩き込まれたけども、それでも根っこは闊達だ。そして食べざかり。
「物語を見届けるって、お互い卒業しても続いてくでしょーよ。どーすんの。
……うん、そう在りたいもんだねー……きっと、この島のこと、楽しい思い出になる」
ヤバそうな島だけどね、なんて笑いながら。
覗き込む先、並べられた野菜。
色とりどりだ。野菜は好きだ。肉とかも同等に好きなだけだ。
「そぉ?案外同居したら華奈さんのほうが音あげるんじゃなーい?
……ほら、早く。なんかみてたらおなかすいてきちゃったわ」
お鍋も割り下とお肉を待ってますよ。しいたけとか豆腐も頭が寒いって言ってるでしょうが!
■鞘師華奈 > 「――まぁ、この島は不思議な事がそれこそ日常茶飯事だからね…そういう事もあるさ」
心当たりはあるが、それを語るのはきっと今ではない…筈だ。
正直、のんびりとすき焼きを突きながらする話でもないので今は敢えてその心当たりに関しては黙っておこう。
「ああ、正確には火を通すとだね…ん、美味しい」
お行儀が悪い睡蓮を見てにやにやとわざとらしく笑いつつ。彼女の事を知っていけるのは素直に嬉しいものだ。
こちらは至ってマイペースに野菜を突きながら。
「んーー…私が睡蓮に付いて行く、という可能性もあるかもしれないしねぇ。
島の”外”に興味が無い訳じゃないしさ。……こういうのも、きっと後から振り返れば思い出になるさ」
今はまだ、己の物語を見出すので手一杯で、その先――未来を見据える余裕は正直あまり無い。
それでも、こういう緩い空気でそういう話をするのは悪くはないと思えて。
「まぁ、ヤバそうな島というか普通にヤバイ所もあるし――おっと」
彼女に指摘されたので、お肉と割り下も投入していく――肉は奮発したみたいだから味が楽しみだ。
割り下も睡蓮の好みは聞いていないからこちらの基準で作ったが、口に合うといいな、と思いつつ。
「そうだね――ーいずれ同居でもしてみるかい?…なんてね」
苦笑気味に。そもそも睡蓮は同居人の先生も居るのだし。ただ、機会が巡ってくるならそういうのもいいかもしれないなぁ、と漠然と思いながら。
■群千鳥 睡蓮 > 「不思議なことばっかりなのに、ふっつーに毎日は過ぎていくんだよねー」
こちらも今は深追いはしなかった。相手がいつか話してくれるのを待つ。
じゅうじゅうと音を立てて黒い鍋の上で湧いた割り下。
いいものだ。エビフライとかハンバーグにも心が踊っちゃう舌だ。
すき焼きでわくわくしないはずもなかった。……得意げに笑われると少し拗ねたように視線を反らす。
姉がいる。少しこんな感じだ――懐かしい。
「生まれ変わりたい、と思わないくらいの」
きっとそう思ってしまうほど、辛く苦しい人生を歩む者たちが間違いなく"いる"から。
「楽しい人生にしていけるよう、努力していきたいね」
そうしていくうちに誰かの為になれたらいい。
誰かを救うとは言わない。良い風を吹かせられればいい。目のまえのひとにも。
――また会えた時、辛気臭い顔なんてしてられないしな。肩越しに写真立てを一瞥する。
「外に戻ったらそーするのもありかなー?そーなったら華奈さんの料理食べ放題じゃん。
その頃にはお酒とかたばこの良さも、わかるようになってるかな。
そういえば野菜から焼くんだね華奈さんのとこ。うちはお肉からだった気がする……いただきまーす」
火が通った肉を――牛。 牛……っぽい何か。そういうものが出回っているのだ。
高かったし、評判も良かったから美味しい筈である。牛肉より高かったのだ。
美味し――い。 一口食べて、思わずぎゅっと目をつむって噛み締めてしまう。
久々にあっつあつのお料理を食べた気がする。緩んだ表情で咀嚼しちゃうよね。
■鞘師華奈 > 「そうそう、それもまた日常ってやつだね」
そう答えながら小さく笑って。何時かそこも彼女に話せるようになる時がくるかもしれない。
家族――懐かしい思い出はある。それも今は随分と色あせてしまったけれど。
「――楽しい人生。か。成る程――確かにね」
たった一度きりしかない、今だけの人生を楽しく生きていけるように。
私は、誰かに”炎”のような熱を届けられるような人間になれるだろうか?
例えば、目の前の友達へと。何時か私の熱が届く時がくればいいな、と思うのは悪いことではないと思いたくて。
ああ、基本的に肉とかは後回しだね――深入り理由がある訳じゃないけどさ。
――と、じゃあ私も頂きます」
こちらもそのお肉を頂く――おお、美味しい!何の肉かは敢えて聞いていないけど美味しい。
自然と顔が綻びつつ、割り下もいい具合にマッチしてこれは良い組み合わせになった。
「今度は…んぐ…私が睡蓮の部屋に遊びに行くのも…もぐ…ありかもしれないねぇ」
■群千鳥 睡蓮 > 「だから色々やりたいんだよー。後期から忙しくなるからなおさら!夏休み!
常渋行ってみたいんだよね。靴も新しいコートも買いたい。華奈さん行ったことある?」
しいたけやしらたきに行きたいが我慢。まずはネギ――春菊も我慢。
薄手の黒いやつがいい。なんて笑いながら。
まずはなんてことないことからだ。それがないと成り立たない。
降って湧いてくる劇的なことに立ち向かうためには色々と積み立てなきゃいけない。
心を豊かにするために。そのうち吹いてくる冬風に火を消されないためにも。
「それがねー、二人部屋になって広くなったのはいいんだけど。
やっぱ本棚おけなくて、本が結構積み上がっちゃってるかも。
こんなさっぱりしてる部屋じゃないけど、それでもよければ?
なんか小さい女の子…?のお世話もしてるらしくて、家あけてること多いしね。
……ほら華ぁー奈さん、食べながら喋らなーいの……」
意趣返しもしてやった。にやにや笑いながら。
緩やかに過ごしているだけなのに、じりじりと焦げるような感覚は夏のせいか。
灰から起き上がったその存在の熱は――確かに。
「食べてちょっとしたらさ、徹夜なんでしょ?
なんかしてても寝ちゃって大丈夫。そしたらテーブル借りるね。勉強するから」
少し気が抜け過ぎかもしれないが。
一日合いているようだから、一日頂いてしまおう。
そんななんでもないような言葉を重ねた、夏休みのいち日。
――きっと良い思い出になるはずだ。
うん、しいたけ食べちゃおう。
■鞘師華奈 > 「常世渋谷かい?あーこの前も一人で行ったけど…とはいえ中央街くらいだけどさ?
じゃあ、今度睡蓮の買い物に付き添う感じで二人で行ってみるのはどうだろう?」
と、ちゃっかり提案をしてみつつ。一人で気儘に店を眺めて回るのも嫌いではない。
…が、ああいう場所は矢張り誰かと一緒に巡る方がいいと私は思っている。
薄手の黒――成る程、そうなると通気性が良さげなのがいいだろう。暑いだけでなく湿度のあれこれも考えれば。
自分が友達にしてやれることは何だ?――いや、違う。私は彼女に何をしてやりたいのだ?
漠然とした自問自答をしつつも、彼女がよければ常世渋谷デートなどしてみたいもの。
「本当に読書家だねぇ、君は。私は別に構わないけど――むぐ、失敬」
意趣返しをされれば、にやにや笑う睡蓮をジト目で見つつも大人しく口の中のお肉などを咀嚼して飲み込む。
空腹が満たされてくると、徹夜明けなのもあって確かに眠気もじわじわ沸いて来るもので。
「…私としては睡蓮と雑談している方がいいんだけどね――あぁ、でも…」
お言葉に甘えようかな、と小さく笑う。正直寝顔はあまり人に見られたくない。
何故なら”死人のように”静かすぎる寝顔だからだ。それでも睡蓮ならいいかな、と思える。
出会いが出会いだったけど、もっと彼女との積み重ねをしていけたら…それは素敵な事だろう。
――ともあれ、すき焼きの後はそのまま仮眠に入り――彼女が勉強を一段落させる頃に目を覚ます事になるだろう。
そうしてとある一日は和やかに過ぎていく。
■群千鳥 睡蓮 > 「いや……一人で行くのナンパ待ちになるところでしょあそこ。
華奈さんってわりとそういうのも……いやむしろするほうか……?
いやだから――どうって」
目をぱちりと瞬かせて。
「そのものずばり"いっしょにいこう"ってこと。断られたらどうしようかと思った」
話題フッておいて一緒に行かないはナイよ、って笑う。
良い卵は本当にまろやかだ。美味しい。ほっぺが落ちそうだ。
「あはは。お邪魔しちゃったからね。起きたときにまたゆっくりできるし。
後片付けはやっとくからさ。ありがとね、ごちそーさまっ。今度もまたよろしくお願いしますっ」
煮くたれた春菊はあたしのものだ。そんな風に声を弾ませた。
どこにでもある一日が、どれ程の価値を持つのか、ほんの僅かだけ、思い知った出来事でもあったのだ。
硝子の棺に押し込められた姫君のような寝顔を盗み見て、それを邪魔することはしなかったけれども。
――本当に起きてくるのか心配で仕方がなかった、というのは秘密にしておいたほうが良さそうだ。
ご案内:「堅磐寮 華奈の部屋」から群千鳥 睡蓮さんが去りました。
ご案内:「堅磐寮 華奈の部屋」から鞘師華奈さんが去りました。