2020/09/24 のログ
ご案内:「堅磐寮 レオの部屋」にレオさんが現れました。
ご案内:「堅磐寮 レオの部屋」に神樹椎苗さんが現れました。
■神樹椎苗 >
「────♪」
キッチンから微かに鼻歌が聞こえてくる。
いつも通りの黒いロリータ系ワンピースの上に、ピンクのフリル付きのエプロンで鍋を混ぜていた。
メニューはカレー。
毎朝通うのも苦ではないのだが、家主が妙に萎縮するために作り置ける物を選んだ。
とはいえ、夜は通うし、毎朝でなくとも頻繁に通うつもりではいるが。
骨と皮だけの右腕を、神木に変化させて無理やり動かす。
おたまを枝の様になった腕で掴んで、ルゥを少し掬うと、左手の小皿にとって味見した。
「──ん、まぁまぁですかね」
師が造ったものに比べると、まだまだ味も香りも負けてしまうが。
スパイスの香りも良く、辛さも程よい。
相手の好みはまだ掴めていないが、それなりの味にはなっただろう。
「ほら、できましたよ」
白米を片側に寄せて皿に盛り、隣にルゥをよそう。
甘めのにんじんポタージュとスティックサラダを一緒にお盆に載せて、テーブルに運ぶ。
クリームチーズのディップも添えられ、テーブルの上に夕食が並んだ。
配膳し終えれば、青年の視界から少し外れるようにして、右手に包帯を巻き直しはじめた。
枝の様に木肌を晒していた右腕は、骨と皮だけに戻っている。
この三日で何度か目にした姿だろう。
積極的に見せる事はなかったが、青年の前では特別、隠そうともしていなかった。
■レオ >
「あぁ、ごはんは僕がよそうのに…」
不自由そうに食事の準備をする少女に、青年が小さな声でそう言う。
右腕が動かないので、出来る限りは手伝いたいのだが…事料理にかけては青年はずぶの素人だった。
なら配膳や食材を切るくらい、と思っているのだが、手際がよくて手伝う隙を探るばかりになってしまっている。
せめてもとばかりに食器は自分が担当してるが…それだけだと忍びない。
「…まさか、沙羅先輩とも交流があるとは思いませんでした。
名前を聞いた時は心臓が飛び出るかと…」
夕方ごろに自分の先輩から話を聞いた時は、本当に驚いた。
まさか自分が気にかけている先輩が自分の世話を焼いてくれている少女と親しい仲だなんて思いもしなかったのだから。
とはいえ、知った今は少し納得もしているが……。
「―――その腕、ずっと気になっていたけどどうなってるんです?
あぁ、いや…少し気になっただけで。」
■神樹椎苗 >
青年が手伝おうとしても、キッチンからはしっかり蹴りだして。
キッチンは自分の領域だと言わんばかりに、我が物顔で占領していた。
別に手伝わせてもかまわなかったが、落ち着かずにそわそわとしている青年を見ているのも面白かったのだ。
「それはしいも同じです。
最初は娘に手を出したのかと思いましたが」
まあそんな度胸のある青年には見えないし、そう節操無しな人間ではないのはわかっていたが。
事情を聞けば、たんに同僚であるというだけの事。
体調のすぐれない娘を寝かしつけてから、青年と共に青年の部屋にやってきたのだ。
「ほら、ボケっとしてないで、食べやがれですよ。
ああもし苦手なものがあったら言うのですよ。
次からは避けてやりますから」
そんな事を言いながら右腕を包帯で包んでいくが。
たずねられれば、手を止めて少し青年の方を向く。
すぐに気弱におよび腰になる青年を、くすくすと面白そうに笑う。
「んー、大したことじゃねーんです。
ちょっと血と肉を供物にしちまってですね、残ってるのは骨と皮だけなのですよ。
あんまりそのままぶら下げておくには醜いもんですから、包帯を巻いてるのです」
と、まだ露出している腕を見れば、しわくちゃの土色になった皮膚が骨に張り付くように。
それこそ枯れ枝のような腕は、ほんの少し力を入れれば折れてしまいそうだ。
■レオ >
「手‥‥っ
だ、出しませんよ……逆に沙羅先輩にも神樹さんの事で何故か言われましたけど……
あ、嫌いな物とかは特に。毒でなければ大体食べられるので。
……成程、供物……」
食事に関しては、本人が言う通りに好き嫌いはない。
というか、基本的に何でも食べて来たクチだ。
毒かどうかも”死の気配”が勝手に察知してくれるせいか、生物的に食べれないものでなければ基本的に何でも摂取できるようになってしまった。
……まぁ、何でも食べれるのはそれだけが理由ではないのだが。
…供物。
前に話していた”神の使途”という言葉を思い出した。
死なないといっても、彼女の”不死”は再生とは違うらしい。
そんな事を想いながら「いただきます」と手を合わせてスプーンを手に取る。
食べながら、彼女の話を聞こう。
折角作ってくれたのだから。
カレーとライスを半々ほどにスプーンですくい、口へと持っていく。
―――温かい。
香辛料の辛さとほんのりとした甘さ。
彼女の作る料理は、数日間食べてみたがどれも美味しかった。
その理由は、味だけではないのかもしれないが。
「―――美味しいです。」
目の前の少女に、微笑んだ。
■神樹椎苗 >
「ん、しいに手を出したら正真正銘のロリコンですよ。
ああでも、ロリコンなら手を出すのが普通ですかね?
目の前にこんな超絶可愛い美少女ロリが居るわけですし」
なんて言いながら、食べる様子を見守る。
美味しい、という声を聞けば嬉しそうに微笑んだ。
「――食事中にする話でもねーですが。
しいの身の回りは少しばかり、面倒なもんでしてね。
いつもなら、気になるなら勝手に調べろって言うのですが」
包帯を巻く手をまた動かしながら、静かに話す。
食事の邪魔にならないよう、間を見計らいながら。
「しいは今、一柱の神の『道具』であり、別の一柱の神の『信徒』なのです。
お前が察してる通り、しいは死にません。
いえ、正しくは、『死んでも再生産』されるのです」
右手の包帯を巻き終えると、一息吐いて。
身体を引きずる様に、青年の隣に近づく。
「しいを道具として、『端末』として利用している神の力です。
『端末』として保存されているしいの情報から、完全な複製を作り出すのですよ。
記憶も人格も完全に復元されます。
だから、しいは『死なない』だけで、厳密には不死ではありません」
これがただの不死身なだけであったら、まだ『生きて』居られたかもしれないが。
手足の代わりにされ、目や耳にされ、壊れても直され、完全な自由意志すら持っていない。
それはもう、ただの『道具』でしかない。
「だから、お前に殺されるような事も、ありません。
殺されてやりたくても、死ねないのです」
言いながら、青年に触れるように寄り添い、その肩にそっと頭を預ける。
小さく、見た目以上に軽い重さが青年に寄りかかるだろう。
■レオ >
「出しませんので…」
少し顔を赤くして否定する。
本当にからかわれている。いつもそうだ。
それが嫌だとは、別に思っていないが……
そうしていると、前とは違い…今度は彼女の方から、自分の事を語り始めた。
話してはくれないと思った。
何故話してくれたのだろうか。
それは、分からないが……
それでも、知りたかった事だった。
…”端末”か。
沙羅先輩は、自分も僕も道具じゃない、といったけど…
だったら、目の前のこの女の子は、どうなのだろう。
喋って、からかってきて、笑って、料理をしても。
死ぬ自由がない。必要だからと、生かされる。
それは、生きているのだろうか。
あの時『死にたい』と言った彼女は、生きているんだろうか。
「……」
そっと頭を撫でた。
傷も治されず、痛みだけが残って。
腕が動かなくなって、変わる事も出来ない。
そんなのって、ないじゃないか。
「……『死を想え』って言葉は……どっちの神様が?」
■神樹椎苗 >
「出さないんですか?」
寄りかかったまま、静かに見上げる。
それまでと違い揶揄う調子ではなく、静かに疑問をたずねるように。
頭に触れられれば、そのまま目を閉じる。
姉と慕った彼女と違い、安心感があるわけでもない。
娘と触れ合っている時とも違うあたたかさ。
やけに懐いてくる少女とじゃれ合ってる時とも違い、楽しさを感じるでもない。
ただ、不思議と心地よさを感じた。
「――それは、しいに命の在り方を教えてくれた、『黒き神』の言葉です。
かつて、『神として祀られていた』しいを殺して、端末に作り替えられたしいに寄り添ってくれた。
死を司る、孤独な、優しい神様です」
青年に体を預ける。
頼もしいとも、心強いとも言えないが。
身を預けていても、不安を感じないのが奇妙な気分だ。
■レオ >
「‥‥そうですか、死の……
……優しい神様なんですね。」
死の神様が、優しい…というのも、少し普通の感性からしたら変なのかもしれないけれど。
でも、互いに死に触れてきて、それを……望む身として。
その神様に、そんな感情を向けてしまう。
でも、その神様も、彼女を殺せなかった。
死を司るような、自分よりも高位の存在でも。
その事実は、強く刺さって。
気持ちは少し、強くなって。
頭を、ゆっくりと撫でた。
慈しむように、悲しむように。
彼女の存在に、触れた。
「‥‥‥‥出されたいんですか?」
少しだけ少女の方を、ちらっと見る。
からかっている口調…でもない気がする。
これで笑われたら、それこそ目も当てられないけど。