2021/11/14 のログ
■フィール > 「…私だって怖いですよ。自分だって死ぬのは、怖い。
でも、それ以上に薫を失うのが怖い。
薫が傷つく道を進んで。タイトロープを傷つけているようで。
それがいつしか切れてしまうんじゃないか、って。」
ぎゅぅ、と抱きしめる力を強める。
離したくない。離れたくない。離したら、いつの間にか失ってしまいそうで。
「私が嫌われるのは耐えられる。薫に嫌われるのも耐えられる。でも………」
「知らない内に薫を失うのは、耐えられない。」
手が、震えていた。
「だから。一緒に。貴方が過去に背負った傷も。貴方がこれから背負う傷も。私は一緒に分かち合いたい。貴方だけに押し付けたくない。
苦しくていいから。痛くていいから。辛くていいから。
その辛さを、私にも、分けて。」
■黛 薫 >
受け入れて一緒に歩もうと言えたら楽だった?
それともやんわりと拒否して痛みを抱え込めたら
苦しまずに済んだのだろうか。
せめて、どちらかを選べたなら。
「あーしは、自分の所為でフィールが傷付くのが
怖ぃよ。だからって、痛いのも苦しいのも全部
抱え込める度胸もなぃ。どっちが怖ぃかなんて
分かんなぃし、きっとその時々で揺れ動くんだ。
寄りかかるのも抱え込むのも。そーゆーのって、
相手を都合良く見てるんじゃねーのかなって……
そーやって思ぅのも、怖ぃ」
「フィールをキライになるのだって怖ぃし、
フィールに嫌われるコトだって怖ぃのに。
真剣に考えてくれて言葉への返事だって
酷ぃコトばっか言ってる」
だから、あーしはクズなんだ。そう言いそうに
なって……それもまた貴女を傷付けるだけだと
考えて、言えなくて。
「……だから、あーしはこれからどうするとか、
どうしたぃとか、分かんなぃ。答えらんなぃ。
最悪だって、自分で思ぅけぉ……フィールに
言わずに抱えんのもキツかったから、言った。
それで、何をしてほしぃとかでもねーけぉ……」
「ごめん、やっぱ……分かんなぃコトばっかだ。
怖ぃコトばっかだ。自分の、コトなのに……」
■フィール > 「…私もさ。こういう事、考えるの、初めてで。わかんないこといっぱいあるよ。怖いことだって多い。嫌なことだって多い。でも…」
昔はそんな事なかった。怖いことなんてなくて、嫌なことなんてなくて。
「ずっと、後ろ向きなのは、駄目だよ。怖いから、って。嫌だから、って。ずっと後ろを向き続けたら、前に進めなくなっちゃう」
ずっと後ろを向いていた。自分はスライムなのだと。人とは違うのだと。
「きっと、今は。薫は怖くて怖くて、仕方ないだろうけど。後ろ向きのままでしかいられないだろうけど。」
でも、私は。
「でも、変われるから。私がそうだったみたいに。」
そう、薫と出会って、関わっていく内に。
「だから、変わろう。少しづつでいいから。自分のペースでいいから。そうして、前を向けるようになったら…私は、嬉しい。やっぱり、二人で、前を見て、歩きたいから」
ほんの少しでも、勇気を分けれたら、と思って。
薫の唇に、キスをしようとした。
■黛 薫 >
触れ合った唇は酷く乾いていた。
抱きしめた身体は未だ震えが収まっておらず、
自傷の痕が残る手の甲からは血の匂いがした。
「……フィールは、変わったもんな」
それは自分もそうなりたいという希望だろうか。
それとも未だ変われていないという自虐だろうか。
小さく呟いただけで、それ以上の言及は無かった。
「……あーしは、多分自分のペースが遅すぎんだ。
ホントに進めてるかすら、分かんなぃくらぃに。
引っ張ってとは言わねーよ。ペースを任せたら
擦り切れるだろーから。でも待ってて貰ぅには
動けなさすぎるから……」
歯噛みするように言葉を途切れさせる。
ひとつ言葉を紡ぐ度それに対する反論が浮かんで、
反論を口にした側からその逆張りを話している。
自分の心と同じで、言葉も前に進めない。
「……あーしは、迷ぃっぱなしなんだ。
進むの下手だし、どっちが前かも分かんなぃ。
それでも見ててくれんなら……ときどきなら、
頑張る……かも。正直なトコ、自信ねーけぉ」
「いつでも見限って、見捨ててイィから」
付け加えた言葉も、自分を守るためのもの。
見限られる日を恐れて、やっぱりそうだったと
自分を傷付けて安心するために。
心が弱いのか、傷付きすぎて弱くなったのか。
黛薫はぼろぼろと弱みを溢してから目を閉じた。
落第街では寝食も忘れて魔術の研究に没頭して
いた日すらあったというのに自分のこととなると
消耗が早い。
■フィール > 「見捨てない」
はっきりと、言った。
「見捨てない、絶対に。見限らない、絶対に。」
薫には、『味方』が、必要なんだ。
「ずっと、側にいてあげる。ずっと隣りにいてあげる」
ずっと一人だったから。誰にも気を許せなかったのだから。
「耐えられなくなったら、頼っていいから。」
心を許してくれたのなら、そうして欲しい。
「薫が拒絶するか…死が分かつまで、側にいるから。」
これは、決意だ。
■黛 薫 >
「……そっか」
知らないモノは怖い。分からないモノは怖い。
心を許せる相手を知らなかった黛薫にとって
慣れない平穏は容易く受け入れられるモノでは
なかった。だからいずれ失うモノだと、自分が
良く知る絶望を想定して安心しようとしている。
信じるには、きっと長い時間が要る。
拭い去るには、きっと長い時間が要る。
それまでは何度も己を傷付けようとするだろう。
それでも、見限られなければ──いつかは。
貴女に身体を預けたまま、続いていた嗚咽は
そのうち寝息にすり替わる。落第街にいた頃は
『眠る』より『意識が落ちる』に近い休み方を
していた彼女からすれば多少は前に進んでいる。
貴女だけが、その僅かな歩みを知っている。
眠りに落ちた黛薫の頬を涙が伝って落ちた。
■フィール > 「………おやすみ、薫」
寝息を立てるのをみて、口にする。
今日は、このまま寝てしまおう。色々、散らかってしまっているけれど。
ふと、薫の頬に伝う涙を、見つけて。拭おうと―――――する手を止めて。
その涙にキスをして、吸い取る。
塩辛い、切ない味。
涙が出ている間は、きっと、大丈夫。
それが痛いと。辛いとわかっているから。
それさえわからなくなってしまったら…きっと、道なんてわからなくなってしまうから。
そうして、フィールも目を瞑る。薫を抱きしめたまま。
薫がどんな辛い夢を見ても、絶望をしても。自分が側に居られるように。
ご案内:「堅磐寮 部屋」から黛 薫さんが去りました。
ご案内:「堅磐寮 部屋」からフィールさんが去りました。