2022/01/02 のログ
■黛 薫 >
「そーーなんすよ、軽ぃキモチで外出たら寒くて。
店の中なら暖房も効ぃてんだろって甘い考ぇは
ダメっしたね。年末年始でドコも開ぃてなくて、
寒空の下歩き回るハメに。や、歩ぃてはねーか」
苦笑混じりの安堵、その傍で観察に慣れた『視線』。
無意識の観察に気付いた上で程々に此方の様子も
伺っている。聡明なのか、それともそういう癖が
付くような委員会に所属しているのか。
深読みしそうになって思考を中断する。
後ろめたさこそあれど今は疾しい立場でないし、
何より相手の内心を勝手に推察するのは失礼だ。
「っ、えぁ、きっ、なんっ、あぅ、あ、ありがと、
ございま、す……?う、でも、あーしからすっと、
あーただって、その。キレイな髪だと思ぃま、す。
黒髪に赤のポイントって、カッコイィ系の色で、
服装や目の色まで合わせて統一感あっから……
キリッとしてる、みたぃな?」
……と、余計なことを考えていたのが運の尽き。
貴女の笑み、発言をノーガードで受けてしまった。
大抵の人が休みを謳歌する年末年始に仕事疲れ、
所謂キャリアウーマン系のお硬い人かと思えば
浮かべた笑顔に裏表はなく、口をついた言葉は
純粋な賛辞。
童顔気味ながらクールな物言い、そこに素直な
一面が加わって。コレがギャップ萌えという感覚
なのだろうか、とややズレた感想が思い浮かぶ。
「ん、ん……ちょっと待ってくださぃね。
何か買おぅとは思ぃましたけぉ、何買ぅかは
決めてなくて、つーか自販機のラインナップ
今まで気にしたコトもなくて……」
隠しきれない動揺を見せつつ、自販機の前へ。
季節によって多少の品揃えが変わる飲料類は
冬に合わせてか半分以上が赤地に白い文字の
『あったか〜い』になっていた。
■鞘師華奈 > 「あー…正月、というか三が日は特に店を閉めている所が多いからね…。
特に、商店街とか個人経営の店はまず休みだろうし、大手も元旦は大抵は休みだろうね…。」
ほぼ年中無休の店でも、元旦だけは休みだったり、または閉店時間が早い事も多い。
視線については、観察はするが探る事はしない。
失礼が無いように、土足で少女の内側に踏み込んでしまわないように。
あくまで、観察されたからこちらも最低限のものを返すだけに留めて。
それでも、慣れた様子はもしかしたら感じ取られるかもしれないけれど。
結果的に、互いが互いへの気遣いによって深読みの応酬は避けられた事になる。
「…そうかい?ちょっと訳ありでここだけ一部赤くなってるから私の趣味ではないんだけどね。
…でも、ありがとう。褒めてもらえるのはやっぱり素直に嬉しいものだからね。
…あー、服装は仕事の関係と、…私が女の子らしい服装が大の苦手、というのもあってさ。
私服も一応ちゃんとあるんだけど、どれもズボンとか男性的なものが多いかも。」
露骨に動揺している少女に、やや目を丸くして不思議そうな面持ちを。
何か失礼な事を言ってしまった…だろうか?いや、でも彼女のシアンブルーは実際綺麗だし。
まさかギャップ萌えのような感想を抱かれているとは、当然夢にも思わない。
そもそも、今は多少マシではあるけどこの女は…割と自身の容姿や格好は無頓着だ。
似合っているかどうかより、着慣れていたり着易そうなものを好む。
お洒落よりも実用性や機能性。スーツ姿にあまり違和感が無いのも着慣れているから。
「…ん、ゆっくり選んでくれていいよ。急かすつもりは全然無いからね。」
自販機の前からもうちょっと横にズレて彼女のスペースを空けておきつつ。
矢張り動揺しているように見えるのだが、彼女自身は理由が勿論サッパリ分かっていない。
自分の飲み物も彼女への奢りのついでに買うつもりなのか、二人分の飲み物の小銭を取り出しつつ。
言葉通り、特に急かす事も無くゆったりとした態度で佇んで待つ事にする。
■黛 薫 >
「ふぅん、染めてもなぃのに一部だけ髪の色が
違ぅって珍し……ぃ、って言ぃ切れねーのが
この島この学園だよなぁ」
異人異種族魑魅魍魎どころか人智を超えた神や
悪魔が跋扈する常世島。髪の色くらいは個性で
済ませてしまえる気がする。
最近動揺を見せると弄られがちで、つい身構えて
しまったが……どうも彼女は此方の動揺の理由も
分かっていない様子。ほっとした反面、普段から
この調子だと身近な人はやきもきさせられるかも、
なんて要らぬ心配をしてしまったり。
「フォーマルな服装のお仕事なぁ。勝手な偏見で
そーゆーのって堅苦しぃとか取っ付きにくぃ?
みたぃに思ってた時期もしょーじきあったけぉ、
あーたを見てるとそーでもねーな?って感じ。
女の子っぽい服装は……苦手な人もいるよな。
あーしもどっちかってーと得意ではねーし。
女の子らしぃ服ってーか目立つ服が苦手かも」
自販機の品揃えは4段構成。1番上の段が冷たい
ペットボトル飲料、2段目は冷たい飲料と温かい
飲料が半々、1番下の段はやや割高な缶飲料類。
車椅子の少女は迷った末におずおずとぎこちない
動きで2段目のはちみつラテを指差した。座った
姿勢だと、3段目までは不自由なく手が届くものの
2段目は少々高すぎる。貴女が奢りを申し出た結果、
幸運にも手が届かずに買えないという事態を免れた。
■鞘師華奈 > 「元々は完全に黒髪だね。…まぁ、この島だからね…。
何でもアリ、とは大袈裟かもしれないけど…まぁ珍しくはないかもしれない。」
髪の色や目の色どころか、身体的に差異も普通にある。
――そもそも、自身が育った場所でもある異邦人街という異世界の住人達が暮らす街もあるくらいだ。
あくまで個性でしかなく、自分や彼女のように髪の一部が違う色彩など些細なものなのだろう。
彼女の動揺の理由に矢張り気付けては居ない――公安委員としてはマイナス点かもしれない。
もっとも、仮に気付いたとしても初対面の少女を弄る、という事をこの女はしないだろう。
だから、少女がわざわざ心配してくれている事にもおそらく気付かぬままで。
「――いや、実際にフォーマルな服装だと職種はまぁ別れるけど固いイメージはあるだろうさ。
…まぁ、でも私は服装は兎も角、堅苦しいのは苦手でね。それに加えて今はプライベートの時間だし。
…あぁ、成程。厳密には違うけど基本的にそこは少し君と私は似たもの同士かもしれないね。」
正確には彼女は目立つ服装が苦手で、こちらは女らしい服装が苦手、という差異はあれど。
少なくとも、煌びやかだったり華やかだったり、そういうのはお互い苦手なのは間違い無さそうだ。
「ん、決まったかい?…えーと、はちみつラテだね了解。
私はどうするかな――缶コーヒー…って、カフェインはマズいか。…んー…。」
彼女が遠慮がちに示した先を見れば頷きつつ、少女に断りを入れてからそちらへとまた歩み寄り。
小銭を投入してから、最初に少女がご所望のはちみつラテのボタンを押してそれを購入。
取り出し口に手を伸ばし、そのまま緩やかに彼女へとどうぞ、と差し出して。
彼女が受け取ってくれれば、少し迷った末に女はホットのカフェラテの小さなペットボトルサイズを購入する。
■黛 薫 >
「一部分だけってパターンは初聞きだったけぉ、
後天的に髪とか目の色変わったから異能の発現
疑ってこの学園に送られたって話も聞くし」
ありがと、と小さく感謝の言葉を呟いてボトルに
入ったはちみつラテを受け取る。不器用な手指の
動きは、彼女の身体の不自由が歩行のみならず
全身に及んでいると伺わせた。
「堅苦しぃの苦手なのにプライベートでスーツって
逆に疲れねぇ?いぁ、仕事で着慣れてると却って
楽だったりすんのかな。ま、あーしが口出すのも
野暮か。あーたが気に入ってんならそれでいっか。
似合ってっし」
悴んだ手の上でボトルを転がして温かさに慣らし、
力の入らない手で苦労しつつキャップを開けて一口。
飲んだ後で『よく振ってお飲みください』の表示に
気付き、一旦蓋を閉めて振り直す。
「そーゆー似たよーなトコあっから、女子寮じゃ
なくてお互い堅磐寮に住んでんのかも?なんて。
あ、今更っすけぉ、あーしは1階の▇▇号室に
住んでる『黛 薫(まゆずみ かおる)』っす。
寮住まいのよしみっつーコトで、宜しくです」
再度蓋を開けてはちみつラテを口に運ぶ。
正直なところ振る前と味の差が分からない。
「夜のカフェインってちょっと気ぃ使ぃますよね。
コーヒー事態には安眠効果あるみたぃっすけぉ。
カフェイン摂りすぎで眠れなぃ、って話は時々
聞くし、人によって適量も違ぃますし?
あーしも少し飲んでみたコトありますけぉ、
眠くなるよかトイレが近くなっちまって。
それから夜は飲んでねーんですよね」
■鞘師華奈 > 「どういたしまして。…あぁ、私は送られたというか二級学生上がりだからね。
もう3年前になるけど…こっち側に来る前は普通にこの赤い部分も真っ黒だったよ。」
特に気負いも躊躇いも無く、極々自然体で二級学生上がりであると告げて。
少なくとも、外から来た人間ではないという事は伝わるだろうか。
そして、車椅子の時点で少なくとも足は不自由なのだろうとは思っていたけれど。
ざっと眺めた感じでは手指の動きもぎこちない事から、全身に不自由が及んでいるのだろう、と思いつつ。
「いや、プライベートは最近は私服で過ごす事も多いよ。
単に仕事続きで休みがあまり取れないから、スーツがメインになってるだけさ。
とはいえ、君の言う通りスーツは着慣れてるから楽っていうのはあるかも。」
そう答えつつも、似合っているという言葉にはまた静かな笑みで「ありがとう」、と素直に感謝を。
蓋を開けるにも一苦労な様子に、手伝おうか?と尋ね…ようとして止めた。
気遣いもする、手助けもする、かといって、お節介過ぎてもいけないだろう。
だから、彼女が自身の手でキャップを開けて中身を一口…いや、何か一度蓋を閉めてボトルを振っていたが。
「どうだろうね…あぁ、でも何となくだけど親近感はあるかもしれない。
ちょっと感性とかが似ている…ように私が感じただけなんだけどね。
…あぁ、私は2階の■■号室…角部屋って言った方が分かり易いかな。
3年の鞘師華奈(さやし かな)。華奈でいいよ…私もそっちが良ければ薫って呼ばせて貰えたら嬉しい。」
基本的に、苗字より名前で呼ぶタイプだ。勿論、相手の許可があればの話だが。
こちらも名前で呼ばれる方が気楽だし、極端な話、敬語とかも別にいらないと思っている。
先輩ぶるつもりもなければ、先程口にしたように堅苦しい…つまり敬語の応酬も苦手だ。
「あぁ、そんな話は聞いた事あるかも。私はついつい摂り過ぎてそうだな…。
トイレ…は、確かカフェインが血管を拡張させて血液量を増大、させるんだったかな?
それで、確か尿の生成量が増えて利尿作用が働くとか何とか。」
何処かで見聞きした事をぼんやり思い出しつつ、こちらも蓋を開けてカフェラテを一口。
「…でも、薫に会えたのは良かったかな。私は部屋を空ける事が多いから、寮内も知人友人がほぼ居なくてね。」
寮に限らなければ知人友人は居るが、それでも多少居るくらいでしかない。
人付き合いが悪い、というより数ヶ月前まで怠惰に過ぎた日々の生活が原因だが。
■黛 薫 >
二級学生上がりという言葉に目を瞬かせる。
数秒の思案の後、やや重く口を開いた。
「そーゆーの、初対面の相手に言ってイィんすかね。
いぁ、あーしは人のコト言ぇねー立場、っつーか
もっと悪ぃか。……教ぇてもらったから言ぅけぉ、
あーし、違反学生。復学支援対象だから、いちお
寮は使わせてもらってっけぉ」
さっぱりと気負わず告げた貴女とは対照的に
黛薫は後ろめたいような、バツが悪いような、
居心地の悪そうな声。
「ズボンとかの私服はあるって言ってたもんな。
じゃ今日がたまたま例外か。そー思ぅと偶々
あーしが通りがかったのは良かったのかな?
休みが取れなかったお陰でその服装ってコトは、
それ仕事用のスーツなんだろ。うたた寝なんか
しちまってたらシワになってたろーよ」
初対面の相手の服装を気遣う性格は違反学生という
肩書きにはややそぐわないかもしれない。もっとも
善良に見えて裏で違反を重ねる生徒が存在するのは
公安委員所属なら身に染みて知っているか。
「鞘師華奈。ん、それじゃあーしも華奈って呼ぶ。
あーしの呼び方も自由でイィよ、改めて宜しく」
「詳しぃ原理は知らなかったけぉ、ソレ聞くと
尚更夜は飲みにく……ってカフェオレも珈琲
だよな?割と時間遅ぃけお、華奈は大丈夫?」
溢さないように慎重になっているお陰か、
黛薫のはちみつラテはなかなか減らない。
時々手を休めるようにソファ近くの机に
ボトルを置いている。
「あーしも寮に住み始めたのは最近だったから……
ちゃんとした同寮の知り合ぃは華奈が初めてかも」
■鞘師華奈 > 「気にしてない…と、いうより3年も前だからね。
誇る事でもないけど隠す事でもない…と、私が勝手にそう思ってるだけ。
復学支援対象…か、成程。車椅子だったりするのもその辺りの事情に関係してそうだけど――…」
と、そこまで口にしてからひょいっと肩を竦めてからカフェラテをまた一口飲んで。
彼女の何処かバツの悪そうな、居心地悪げな声と調子に気付いたからか、気負いの無い声で。
「――ま、初対面の私が根掘り葉掘りとあれこれ尋ねるのは無粋に過ぎるからね。
それに、人様の事情なんてそれぞれだし、言えない・言い難い事も多いだろうし。
だから、言っておくよ。違反学生とか復学支援対象とか、私はそんな”色眼鏡”で君を見ない。」
赤い瞳が緩やかに彼女を見る。嘘も欺瞞も探りも無く、ただ静かな眼差しを。
ややあってから、「…ちょっと格好付けすぎたかも」と、小さく笑って。
「…むしろ、この寮に戻ってくるのも1週間ぶりくらいになるかなぁ。
…あ、補足しておくと着替えとか入浴はちゃんとしてるよ。」
流石に不潔ではない、とそこは一応は女子だからちゃんと言っておかなければ。
同時に、ここには無いがスーツの替えなどもきちんとある事は告げておく。
彼女の気遣いは…裏はおそらく無いだろう。それは公安委員でなくても己の感覚で何となく分かる。
とはいえ、違反学生で復学支援対象者という事であるなら。
少なくとも、その気遣いは持ちながらも違反学生に値することを重ねてきたという事でもあるが。
(――まぁ、今こうして彼女と接している私は公安委員の私じゃなくて学生としての私だし)
今は仕事を一時切り上げてプライベートの時間として戻ってきているのだ。
気掛かりが無い、と言えば嘘になるけれど先の言葉の通り――そういう色眼鏡では見ない。
「ん、ありがとう。じゃあ改めてよろしくね、薫。
あー…まぁ、コーヒー系は普段からよく飲むから、どうしても飲み物を選ぶ時そっち寄りになりがちでね。」
カフェラテを選んだのもそれが理由だ。まだブラックや微糖よりはマシ…かもしれない。
自然と彼女のゆっくりとしたペースに合わせてこちらもボトルを口に運んでおり。
「…おっと、それはまた光栄だね。まぁ、最初の寮内の知人が私でいいのかは何とも言えないけど。」
■黛 薫 >
「……ありがたぃけど、慣れねーなぁ……」
肩書きも前科も関係ない『個人』としての扱い。
受けられるように、得られるようになったのは
ここ1年以内のこと。ありがたいし嬉しいけれど
むず痒さは未だ抜けない。
「流石に乙女が着替えや入浴まで捨ててるとは
思わねーですよ、特にスーツが必要な職業で
衛生管理ガン無視はクビ案件だろーし」
環境が変われば、思いの外優しい人は多い。
むしろ血も涙もない人なんてそうそういなくて、
自分が優しさに報いられるか不安になるくらい。
「あーしは、初めてが華奈でよかったと思ってる。
あんまし大きぃ声で言ぅ話じゃねーかもだけぉ、
あーし、落第街上がりだから。嫌な人、怖ぃ人、
そーゆーのとばっか接してきた。
だから、華奈みたぃに誠実に向き合って話して
くれる相手で良かったよ。あーしの方が初めて
話す相手のコト、色眼鏡で見ちまぅ側だから」
半分ほど減ったはちみつラテを膝の上に置く。
溶けた雪で濡れていたタイツとハーフパンツは
暖房のお陰で概ね乾いていた。
「……あーしはそろそろ部屋に戻ろっかな。
お話してくれてありがと。考え無しに外出して
無駄に歩き回って、ちょっと落ち込んでたから
イィ感じに気ぃ紛れたかも」
あまり長居すると貴女が部屋に戻りにくいかもと
心配しているのもある。ぎこちなく手を振って
別れの挨拶に代えると、その場を辞すとしよう。
少しずつ、表の街の知り合いが増えていく。
『普通の学生』に向けて前進出来ているような
気持ちになれるのが嬉しく、不安でもあった。
ご案内:「堅磐寮 ロビー」から黛 薫さんが去りました。
■鞘師華奈 > 「……まぁ、その気持ちは私も若干は分かるかもしれないけれど。」
3年前より以前――そして最後の記憶。深い深い黄泉の穴、その奈落に落ちていく己。
気が付けばこちら側に居て、『個人』としてきちんと扱われたのは久々だったから。
(――でも、3年間も私は怠惰に逃げていたから…。)
後悔も嘆きも今更で。失った無為の時間はどうにもならないけれど。
だから、少しずつでもそれを前向きにしようと決めたのだ。
私は――私の『物語』を歩む為に。
「まぁ、そうなんだけど一応ね…そこは私なりにきちんとしているつもり。」
とはいえ、矢張り少し前に比べると忙しくてどうしても油断すると疎かになりがちだ。
少なくとも、自炊に関してはかなり疎かになりつつあると自覚している。
「―――そうだね。それは……分かる、と安易に共感してはいけないんだろうけど。」
5年間、あちら側に居て――最初の2年くらいは特に地獄だったから。
元よりあちら側の住人からすれば地獄どころか日常茶飯事だとしても、当時の自分には地獄だった。
だから、――
「…別に私は色眼鏡で見られようがあまり気にしないよ。
そういう風に見られるのも昔は普通にあったからね。
哀しいけど慣れなのかな、これも。まぁ…。」
――誠実に見てくれる、か。私はそこまで真っ直ぐな人間では決して無いけれども。
…でも、まぁ…そう評価してくれているのならば、多少なりそれに応えたい気持ちはある。
「――ん、私もそろそろ部屋に戻って休むよ。
こちらこそありがとう薫。良い気分転換になったよ。」
本当に。単独行動の任務だから一人が常だったし、寮にも中々帰れなかった。
ここ最近は新たな知人友人も増えて居ないから、こうして知り合えたのは僥倖で。
ぎこちなくも手を振ってくれる彼女に、片手にペットボトルを持ったままこちらも右手を緩く振り返し。
「……やっぱり、公安委員なんて言えないね。」
流石にそう易々と公言して良いものでもないのは前提としても。
それぞれに事情がある――だが、誤魔化したりぼかす事は必要ではあっても一抹の申し訳なさはある。
――それが、己の青臭さであり甘さでありまだ大人になりきれていない未熟さだろうか。
「――さて、と。私も部屋に戻って寝よう。」
残りを飲み干してゴミ箱にペットボトルを捨てつつ、欠伸を噛み殺す…眠気が戻ってきたようだ。
そのまま、彼女が去った方を一瞥してから「おやすみ」と、呟いて2階の自室へと女も戻る事だろう。
ご案内:「堅磐寮 ロビー」から鞘師華奈さんが去りました。