2022/02/17 のログ
■フィーナ > 「あー…あの魔術ですか。何分専門外な所が多いので解読に時間はかかっていますが……そうですね。少なくとも『悪意』が篭もっているのはよくわかりましたよ」
明言は避けつつ、概略だけを言う。
つまりは、この魔術は『良くないもの』だということ。
回復魔術は『使用』することで治癒を行うものだ。
これは、違う。条件さえ整えば強制的に行使される『呪い』だ。
「っと、ありがとうございます。帰ったら読ませてもらいます」
■黛 薫 >
「ん、そか」
机に頰を乗せたままにんまり。憂いなく魔術に
関する議論を交わせる相手が増えるならこれほど
嬉しい話はない。それが心を許した相手だったら
なおのこと。
「……あーしも頑張らなぃとだなぁ」
意欲はあれど、現実は簡単には付いてこない。
黛薫の復学訓練は長い時間が必要と判断されて
いるし、本人が焦って精神不安定に陥りやすい
おかげで余計に時間がかかっている。
だから『頑張らないといけない』という意気込み
そのものが障害のひとつとさえ言える状態。
「……悪意」
そっと目を伏せる。薄々は感じていたけれど、
自分より遥か上の高みにいるフィーナがそれを
断じたことで気のせいと言い訳出来なくなった。
「……フィーナ、その術式につぃてなんだけぉ。
正式に『依頼』って形で解析をお願ぃしても
構わなぃかな。成功条件はその術式に重ねて
行使可能な『魔術』の術式を組み上げること。
その術式を教ぇてくれた人、あーしの……友達?
って、勝手に名乗ってイィのかは分かんねーけぉ。
度々助けてくれた子なんだよ。だから、あーしも
力になってあげたぃなって。
他に必要な情報とかあったら、依頼主本人に
確認とかとってくれれば。あーしの紹介だって
言ぇば、話は聞ぃてくれるはずだから」
さらさらとメモに連絡先を書いて渡す。
短時間なら身体操作の精度も上がってきた。
メモには『祭祀局 藤白真夜』と依頼主の
名前が記入されている。
■フィーナ > 「…わかりました。確約は出来かねますが……出来る限りやってみましょう。
………やはり、祭祀局ですか」
納得したように、呟く。
そう、あのような呪術は『曰く付き』というのが相場だ。
そういう『曰く付き』を扱うのなら…祭祀局が妥当だろう。
「私も恐らく他の仕事が出来ると思うので片手間にはなりますが。暇があれば本人とも接触してみようと思います」
現状、職は無いが閉鎖区画の伝手で風紀委員としての抜擢があるかも知れない。
そうなればこの依頼と並行して風紀委員としての活動もしなければならなくなる。裏方に回れれば良いのだが、抜擢される理由が理由だ。無理だろう。
■フィール > 「しっかし学生証…遠いなぁ。風紀の兄さんが保証人になってはくれてるけど。やっぱり怪異だって言うのがネックなのかねぇ」
申請はしている。しかし自分が怪異であることは知られているし、過去についても調べられているだろう。
もし自分が害を成した場合の責任問題もある。入学時期に当たる4月に間に合うだろうか……?
■黛 薫 >
「ありがとう。フィーナにゃ遠く及ばねーけぉ、
あーしの方で見つけた関連資料とか知見とかも
共有しとくから、役立ててくれな」
追加で増える紙の束。しかし此方は論文ではなく
黛薫の手書き資料。動かない身体でよくここまでと
驚嘆に値するだけの量と密度の資料だ。
「4月の入学に間に合わなくても転入って方法は
あるっちゃある。常世学園は単位制だかんな、
休み明けとかにうまくタイミングを合わせりゃ
授業が遅れててつぃていけねーみたぃな問題は
起こりにくぃワケだし。
つっても入学式に合わせた方が新入生への説明会、
部活紹介とかに合わせられっから、そっちの方が
馴染みやすぃのは間違ぃねーか」
勉強明けで頭が疲れていること、フィーナへの
依頼が受理されて気が抜けたことが重なってか
黛薫はすっかり気が抜けている。
糖分補給に買ってきたチョコレートを2、3回
取り落としながら口に放り込んだ。
■フィーナ > 「これは………持ち帰るのに苦労しそうですね」
既にバックパック一杯に収まりきらなそうな紙の山だ。探求者であるフィーナにとっては嬉しい悲鳴ではある。
「あぁ、そういえば私も正式に入学出来ることになったんですよ。過程は過酷極まりませんでしたが」
■フィール > 「………それは、よかった」
このまま、3人で登校する、ということも、あり得るのだろうか。
出来るなら…あと、もうひとり。共に学びたい人が居るのだが。
「出来る限り他とは合わせたいですからね。途中からだと孤立しやすいですから」
■黛 薫 >
「あ、そうなの?ひとまず入学おめでとうだな。
んでも、そっかぁ。事前に教ぇてくれてたら
入学祝いのひとつでも用意しとぃたのに」
少し考えた後、アソートのチョコを1種類ずつ
取り出して紙に包み、資料の上に置いた。
入学祝いには少しばかり地味だが、気持ちだけ。
「フィールも申請はしてるって話だし、このまま
事が上手く運ぶとあーしの復学が1番遅くなる
可能性まであんな?3人揃って授業受けるとか、
そーゆーのも出来んのかな」
少しそわそわした様子の黛薫。耐え難い渇望に
苛まれていた在学時代は魔術の勉強一筋だった
お陰で友人らしい友人もいなかった。
落第街暮らしが長かったのもあり、学生らしい
ごく普通の日常には人一倍憧れがあるのだろう。
「フィールも4月に間に合ったらイィよなぁ。
折角の学生生活、孤立しなぃ方が楽しぃのは
間違ぃねーもん」
ただでさえ勉強ばかりで孤立しがちだったのに、
違反学生に身を落としてからなおさら孤独だった
黛薫の語気は少しだけ重い。
■フィール > 「でも、これからは一緒に学べますよ。薫と出来るだけ同じになるように掛け合いますし。理由も、ありますからね」
事実として薫は今現在誰かの補助がなければ登校も難しい状況だ。同居している自分であるならば色々融通は利かせられる。
そういう意味では、一緒に通うことに希望的観測を持っている。
■フィーナ > 「私も魔術ばかり学んできたので、他の事も学ばないとですしね…。ずっと一人でしたし。学友というのも悪くは…無いのかも知れませんね」
フィールは、ある時期からずっと一人だった。此処に来る前から、ずっと。
だから、こうやって未来を語る知り合いも…友と呼べる者もいなかった。
此処に来る前の世界でも、一人で。誰かと仲良くなれば、何時か必ず失うと知っていたから。隣人は失われる……そんな世界だったから。
でも。ここに来て。破滅の兆しは見えなくて。隣人が死ぬことは、あり得ることだ。でも…それは、限りなく低い。
ほろ、と涙が溢れる。
■黛 薫 >
「勉強ではフィールが追っかける側だけぉ。
正規の学生証を得る手続き的にはあーしの方が
追っかける側になるかもだかんな、期間的に」
「うん、だから……楽しみにしてる」
ずっと得られなかったモノを手に入れて。
光の当たる表の街へと連れ出されて。
ただ悪いことを重ねたくないから、ごく普通の
生活に戻りたかったからという曖昧な動機付けは
少しずつ補強されて、復学の意欲は以前よりも
ずっと高まって感じられる。
だからこそ余計に失敗が怖くて、ときどきそれが
原因で焦ったり躓いたりもする。それでも無意味に
逃げることはしなくなった……と、思う。
ふと、フィーナを見ると一筋の雫が流れていて。
じぃっとそれを見つめ、口を開いた。
「フィーナもさ、色々あったんだろ、きっと。
あーしが知ってるのは……その、フィールと
関わってからの話だから、なおさらヤなコト
ばっかだったのかもだけぉ。
んでも、あーしにとってフィーナは希望をくれた
恩人で、大切な人の母親で、魔術の師でもあって。
だから……泣ぃてたら涙を拭ぃてあげたぃなって。
そー思ぅくらぃには大事だと思ってるし」
手を伸ばして、指先で涙をすくい取る。
「それで、その。あーしからしたらフィーナだって
気にかけたぃ相手ですし?だから……フィーナも
友だち、って。扱っても……イィのかな、とか。
思ったり……いぁ、フィーナがヤじゃなかったら
ですよ?もちろん。でも、うん、そーゆーアレで」
微妙に逃げ道を残すヘタレっぷりではあるものの、
ようやく魔術以外に意識を向ける余裕が出来たから。
フィールだけでなく、フィーナにも向き合おうと。
■フィーナ > 「……いえ、すみません。涙は…枯れたと思っていたんですけどね。
えぇ。友だちになってくれると……嬉しいです。」
幼い頃に親を失くし。ずっと一人で生きてきた。
愛なんて要らなかった。
友情なんて要らなかった。
そう、思っていた。
「あ、でもアレの母親扱いはやめてください。死にたくなります」
■フィール > 「……………………」
言葉のナイフがグッサリと刺さり、黙り込むフィール。
■黛 薫 >
「……まぁな、流石にそれはー……許せとは
あーしの口からも言ぇねーですしぃ……」
特別な仲でも擁護出来ないことくらいある。
フィール、ごめん。
とはいえ、解放されたばかりの頃を思えば
フィールに向けた殺意も幾らか軟化している。
未だに当たりの強さが垣間見えるときはあれど、
同じ机を囲んで魔術について話し合ったりと
少なくとも今は暴力的な報復に及ぶ気配はなく。
フィールが『変わった』お陰で『許さない』という
意思表示が直接的な報復よりずっと『痛い』のだと
聡明なフィーナだから気付けているのかも。
なんて、深読みはさておき。
「んひ、んじゃフィーナも友だち。
そーやって名乗れるの、特別感あって嬉しぃ」
今は友だちでいられること、この穏やかな時間を
共有できることを素直に喜ぶとしよう。
■フィーナ > 「…………えぇ。これからも、よろしくおねがいします」
深々と、頭を下げて。
掛け替えのない存在に、感謝するように。
■フィール > 「………………さて!いい感じに話もまとまりましたし!
そろそろ、ご飯を作ろうと思います。フィーナも…食べていきます?」
恐る恐る、聞いてみる。
■フィーナ > 「……せっかくですし、ご馳走になりましょうかね。」
柔らかく、微笑む。
子とは認めてはいないものの…それでも、憎しみの対象では無くなったようだ。
■黛 薫 >
「あーしも手伝ぅよ。大したコト出来ねーのは
相変わらずだけぉ、フィールも料理はまだまだ
初心者だかんな」
2人の様子を見て頰を緩め、軽く伸びをする。
「あーしとフィール、普段は出来合いの惣菜を
買ってきて食べてんだけぉ。昼はフィールが
1品作ってくれたんだ。フィール、卵焼きを
自力で焼けるようになったのよな」
割って(混入した殻を除いて)混ぜて焼くだけの
簡単な料理だが、何故か黛薫の方が誇らしげ。
「惣菜に関しても日持ちするヤツが冷蔵庫ん中に
いくらか入ってっから、フィーナが好きなヤツ
あったら選んでもイィよ」
■フィーナ > 「へぇ、フィールがそんな事を……。私なんて果物とか齧ってるだけなのに」
フィーナはエルフ故に新鮮な野菜や果物を好む。とりわけ新鮮なものは魔力として取り込みやすいのが理由だ。
つまり料理など一度もしたことがない。
■フィール > 「ほんと今日始めたばかりだから…あんまり期待しないでくださいよ?」
まるで親に料理を提供するような面持ちで、台所へ向かう。
そうして、3人で食卓を囲み。
平和な時間が過ぎていくだろう。
ご案内:「堅磐寮 部屋」から黛 薫さんが去りました。
ご案内:「堅磐寮 部屋」からフィールさんが去りました。