2022/08/05 のログ
ご案内:「堅磐寮 部屋」に黛 薫さんが現れました。
ご案内:「堅磐寮 部屋」にメロウさんが現れました。
メロウ > ところ、ここは常盤寮。きっかけは些細な一言から

『薫様、そろそろ香水切れるんじゃないかな?』

タブレットにて、時期の挨拶のように送られてきたショートメッセージは今日という様相へと至る
尋ね来る約束を、尋ね行く約束に変えて、大きなバスケットを携えてやってきた彼女は、部屋の中にて決められた道具を机の上に並べていく

勿論、その数はお店に置いてあるものよりも圧倒的に少ないのだが
厳選して、『今日必要な物』だけを用意しましたとも


「やっぱりね、覚えておきたいの。ここの香りは私にとっても大事になんだから」

身に着けてみました、パーカー。正座の形でも、パンツスタイルは見えるかどうかのぶかっとした具合ですけど
袖を腕の中頃までまくって、邪魔にならないようにしていました

黛 薫 >  
毎日纏う香りは日に日に水面を下げていく。
1日2日では分からない青い雫の減りは、次に調香を
頼む日までを刻む砂時計。今日が普段と異なるのは
此方が足を運ぶのではなく、彼女が香りを伴って
やってきたこと。

「今の季節だと、部屋の香り……つかニオイ? は
 覚ぇてもらぅの、気ぃ引けるくらぃだけどな」

調香の邪魔にならないよう、テーブルの端に氷水の
入ったピッチャーを置きながら相槌を打つ部屋の主。

季節は真夏の盛り、部屋に篭りがちな汗の匂いは
年頃の少女としてはどうしても気になってしまう。
黛薫の場合、怪異を惹きつける特異体質の助長にも
繋がるから尚のこと。

だから気にしているのは自然ではあるのだが、
それにしたってこの部屋は『香り』が薄い。
以前訪れた日も徹底的な清掃を察せるほどに
香りの薄い部屋だったが、今日はそれ以上。

メロウ > 「そう言われても、嫌って私言わないんだよね
 言えないのかもね?ここまで香りに潔癖になる事情って、想定されてないもん」

きしし。またそんな笑う声が聞こえてくる
彼女は目で見るように、嗅覚で知る。感覚で密接に、止めようとしても止められない
薄いこそ、通い詰めたい。しかしお店も疎かに出来ない
定休日、設けてみようかな。そんな心の悩みも浮かび来る
でもそうしたならば、今日のように徹底的に部屋の隅まで磨き上げられてしまいそうではあるのだが

と、そのような思考の濁り程度で手つきが鈍らないのも既に完成された習慣
時々動きの妨げになるものとすれば、空中に浮かべるディスプレイ
自分の行った動作を逐一、文章として入力してみる彼女の姿は初めて見せたものだろう

その表情、特別に不満げ。入力したと思ったら、一気に消去
やがてはディスプレイそのものを消し去って調香に意識を定めた様子

「ものを書くって、難しいね」

独り言と捉えてもよかろう

黛 薫 >  
いつも調香を行うのは彼女のお店、はじめから
準備が整えられている調香のための空間の中。
だから正真正銘ゼロからの準備は新鮮に映る。

正座して調香の準備を整えるメロウ、テーブルを
挟んだ反対側で黛薫はその手付きをじっと見ている。
脇にはソファもあるけれど作業しながら座るには
やや高く、黛薫もメロウに目線を合わせる姿勢で
胡座をかいていた。

サイズの大きい半袖の白Tシャツは太ももまでを
覆い隠すワンピース代わり。普段の服装のお陰で
暑さに弱いのだろう。前髪をピンで留め、タイツも
パーカーも身に付けていない姿は別人のよう。

見た目が違えど惹かれるようにメロウの所作を
飽きもせず眺めているのは普段通りと言えるか。

「書ぃてみたぃの? 記録っぽく見ぇたけぉ」

耳聡く独り言に反応する。書いては消しての推敲は
形にならないまま。半透明のモニターの裏側から、
準備工程を文にしようとしているのは断片的ながら
読み取れていた。

メロウ > 「そうなんだよね。そうなんだよ
 慣らして欲しいって言われてたっけ
 私が慣れてみたいと思ったのもそう

 だから、書き込んでみていたの。レポート、って言うんだっけ
 もしも文章が完成したら、どこかに寄稿も出来るかもだし
 ...そう、思ってたんだけどぉ」

進捗の如何は、既に今の態度で察されよう
記録から逃げる為の調香で、寧ろその手は捗っている
やけに人間臭いような、そうでもないような

すいっと、目を滑らせる。今日は普段より、目線の風通しは良いようで

「書いた量より、消した量の方が多くなるの
 そしたらずっと完成しないね。私、書くってことが苦手みたい
 ううん、そうじゃないかもね。日記だったら毎日書いてる
 だけど客観を備えてみると、その文章は『あなたの為』じゃないし

 分からなくなっちゃった」

隙だらけだなぁ。いつも、部屋の中ではそうなのかな?と
軽く、撫でる程度の視線を巡らせ、改めて瞳へと戻る

黛 薫 >  
「寄稿、寄稿ね。誰かに読ませる前提の文章は、
 まー日記よか『誰かのため』ではあんのかな」

単なる経験の積み重ね以上に逃避から捗りを見せる
手付きに苦笑を浮かべる。捗らないタスクから目を
逸らしている間に限って他のことは捗るもの。

「んでも、何だろな。レポートにせよ論文にせよ、
 読ませるための文章でも、誰かのためってより
 自分のための比重が大きぃ気がすんのよな。

 公の場に出すのって読んでもらぃたぃから……
 身も蓋もなぃ言ぃ方すっと評価されるためだし。
 寄稿も多分そーだろ。読みやすさ伝わりやすさが
 内容の良否と同等以上に評価されんだもん。

 そこに興味ねーと、それ前提の文章の書き方が
 しっくり来なくて苦労したりする」

やりたいからやった、出来そうだから試してみた、
面白そうだから実現してみた。黛薫はそんな正直な
動機で書き出せなくて悩んだ経験がある。

メロウ > 「興味、それを本音で言うと、無いんだもの
 私は私の事を知ってくれる人を贔屓して、お返しして...
 これじゃダメダメと言えばそうなんだよ
 ぴったりこない。タブレットを使ってみるだけなのに
 これじゃ全くの言う通り。薫様、詳しいね?」

意見を求めた訳でもなく、返答は想定以上の内部を含む
彼女も何か、書くのだろうか。首が傾く
このタブレットも研究成果?それは意味なのだろうか

彼女は忘れている。貴方がそもそも学生身分であった事
後ろ暗さを前提に付き合い続けた結果、表側の世界をふと置き去りがち

黛 薫 >  
「まーな。学生ってそーゆーの書く機会、結構ある。
 宿題のレポートくらぃなら、読む側……つまり
 先生が意図を汲んでくれたりすっけぉ、寄稿とか
 論文だと読みづらいってだけで切られたりもする。

 だから書き方を調べると読みやすいテンプレ?
 みたぃなのをお出しされて、それが合わねーと
 もー最初っから上手くいかなかったりするしさ」

ふぅ、と一息。もしかしたらため息だったのかも。

「だから、無理に意図に沿わなぃ書き方、使ぃ方は
 気が向かなぃならしなくたってイィと思ぅんだわ。

 タブレットにしてもそー。使ぃたぃからって態々
 興味持てなぃ記録にまで手ぇ出さなくたって良ぃ。
 フツーに使って、気になるトコがあれば報告して
 もらぇるだけで十分。メロウが使ってるのを見て
 気付けるコトだってあるんだし」

立ち昇る香りを追うように天井に視線を上げて、
改めてメロウの方を見遣った。

「例えば今メロウが使ってるのを見て、裏側から
 透けて見ぇんのは良くねーかなって気付いたし。
 プライバシー? とかあるかんな」

メロウ > 「それじゃあ、薫様に手伝ってもらって...
 ん。それはそれで、本末転倒?」

『使いたいから』を『書きたいから』に留めてしまう
目の前の少女の曰く、拘らなくてもいいとの事らしい
あと一滴。それで彼女の記録と合致した、その完成の瞬間
目の前の少女に曰く、ただこの瞬間を確かな感覚で共有したいだけ

「どーなんだろ...」

諦めるのも悔しい。でもその難易度は推して知るべし

「私が薫様に伝える言葉を文字にしたとして
 それはそれで、伝わるかといわれると実はどうなのだろう
 マスターは、私の事を見て、知ろうとしてくれるし、
 実際知ってくれてる。そこに疑いようはないけれど

 伝えきるのは難しい。その難しさを伝えるのが難しいように
 だから、悩んでいるという態度の『ふり』を見せて、
 もどかしさを強調してみるのは、ずる賢い事だと思う?」

ディスプレイを目の前に浮かべても、お互いの顔はよく見えているらしい。要調整?とまた首が傾く

黛 薫 >  
「あーしは別に構わねーよ。あーしがメロウに
 タブレットを使ってもらって、見返り? とは
 違ぅかもだけぉ、学生なりの文章の整え方を
 教ぇる。そんくらぃなら、持ちつ持たれつの
 範疇じゃねーの」

黛薫は調香に関して門外漢。しかし既に何度香水を
買い足し、その度にメロウの調香作業を見てきたか。
器具の中にあるオイルの蒼が、漂う香りが良く知る
香水に近付いているのを感じ取って。

最後の一滴を加える間際、メロウと視線が交錯した。

その瞬間を感じ取れたのは本人としてもやや意外で、
それ以上に嬉しかった。一度沈黙を作り、竜の瞳に
墨を点ずる瞬間を共に。

次に彼女が口を開いたのは、調香が終わってから。

「メロウが伝ぇんの難しぃって態度に出してたら、
 あーしはそれを知ろぅとする、分かろぅとする。
 そーするだろなって、メロウも分かってっから
 悩んでるのを態度に出してる?

 ズルっちゃズルかもだけぉ、あーしだって
 それを承知で本末転倒かもしんなぃ手伝ぃを
 イィよって言ってんだもん。ズルはお互い様」

ふひ、とちょっぴり下手な笑いを作ってみせる。

メロウ > 目線が交わった、その瞬間の余韻にぱちくりと
瞬きをした後に見せた彼女の笑みは、僅かに上手

「お待たせ、したかな?今日もまた、あなたの為の仕事ができた
 といってもこれ以上、私の事を知ろうって考え、
 私の方は次に何を差し出せばいいのか迷っちゃうな

 使ってもらった見返り、でもこれは使わせて貰った事でもあるし
 私は『お願い』を残してて、あなたも『お願い』を残してる
 だから相殺、なんて事にはならないよ。だから今日はここに来たんだしさ」

調香の品は、蓋をすれば横にずらして
仕事を終えれば、主従よりも対等に近しい『何か』を望んだ2人
簡単な動作でずり落ちた袖は、あざとい位に手元を隠し、
普段のように、ちょこっと覗いた指先が少女の口の前で重なった


「これから、どうしよっか?」

黛 薫 >  
「……手ぇキレイだとそんだけで様になんのな」

袖の先から覗く白い指にふと感想を漏らす。

どう考えても今の会話を切ってまで言う話では
なかった自覚はあるらしく、直前までメロウが
何を話していたか思い出そうとしている。

「んん……お互ぃに残してる『お願ぃ』だって
 対等を埋めるどころかひっくり返せるモノか。

 いぁ、それを言ぃ出すとあーしがそのまんまの
 メロウを欲しがった時点で持ちつ持たれつなんざ
 無縁なのかもか? 気にしたら負けかなぁ」

思考の入り口に立つとうだうだ悩みがちな黛薫。
しかし今後の予定を問われると、珍しく早々に
思索を切り上げて次の話に移る姿勢を見せた。

「そー、メロウの方から部屋に来てくれるって
 聞ぃてから、イィ機会かもって思ってたんだわ。
 覚ぇてる? ゆくゆくはタブレットの機能改善も
 兼ねて、魔術契約を本格的にしたぃって話。

 メロウ自身が魔術の触媒になれる可能性があって、
 確かめられたら予算も契約強度も現実的な範疇に
 収まる。調査に必要な道具を全部メロウのお店に
 持ってくのは骨が折れっけぉ、あーしの部屋なら
 そーゆー手間いらねーからさ」