2022/12/24 のログ
黛 薫 >  
「追い付かせるよ」「いずれ必ず」

抱負でも目標でもなく、単なる事実として語る。
ときどき見せる不安定さ、心の弱さとは裏腹に、
魔術について語るときだけはこうもはっきりと。

「あーしも華奈のお陰で方向性が定まって助かるよ。
 自分だけだと、何だろ。文字のひとつも溢さずに
 本を読んでるみたぃになんの。華奈との会話は
 一度読んだ人の口から要点聞ぃてる感じなのかな。

 あくまで比喩だけぉ、あーしはまだ要点まとめて
 話すのが下手なんだと思ぅ。要約じゃなくて一々
 読んだトコを全部繰り返してる感じ。

 だから本読むんじゃなくて、ヒトが話すの聞ぃて
 学ばなきゃいけねートコなの。そゆ意味で華奈は
 適任なんだろな」

くるくると指先で円を描きながら例えてみる。
打算を抜きにしても、出会いには感謝している。
お互い、少しばかり分かりにくい態度ながら
その点では共通していると言えよう。

それから、続けられた言葉にはにんまりと口元を
緩めた。次の魔術談義が楽しみというだけでなく、
気ままに話したいという本心まで見抜かれていると
察せるだろう。"視線" に付随する感情にまで敏感な
黛薫の異能は、こういうとき意地悪に働く。

「おっけ。つってもクリスマスから年末年始は
 あーしも色々あっからな。ひと段落付ぃたら
 今度は始業の時期だし……無難なのは授業が
 始まってからの休日になっかな? 次回議題も
 りょーかい。参考になりそうな資料漁っとく」

身も蓋もない言い方をすると、黛薫は魔術一辺倒な
陰キャ気質である。そんな彼女だが、予定を聞くに
クリぼっちではないらしい、意外にも。

鞘師華奈 > 「―――…そっか…君なら実現しちゃんだろうなぁ…。」

一瞬だけ、焔のような鮮血のような赤い双眸を瞬かせて友人を見つめる。
けれど、直ぐに納得したように微笑んで頷いてみせる。
出来るか/出来ないかではないのだ。いずれ必ず追い付かせると彼女がはっきり言い切ったならば。

(私とは違った意味で薫は不安定な所が見え隠れしてるけど…本当に、魔術に関してだけは『強い』なぁ)

そう、思わず心の中で呟いてしまうくらいには。
友人が示した言葉と態度の力強さに素直に感心してしまう。

「そうだね。私は自分の習得してる魔術の欠点や改善点、応用とか現在進行形で身に付けられて助かってるし。
…うーん、でも私のは本当に独学の部分も多いからなぁ。そうしないと生き残れなかったのもあるけど…。」

これは魔術に限った事ではないけれど。何だかんだ5年間、あの街で生き延びて腕を磨いて経験を積んできたのは伊達ではない。
薫の言葉を聞きながら、「でも私みたいに基礎に所々不安がある奴からすれば、地道な繰り返しはむしろ大事で有り難いと思うよ」と、口にする。
学園で学び直したとはいえ、矢張り基礎の土台は薫の方が圧倒的にしっかりして磐石なのは間違いない。

(…でも、魔術を扱う者としてのタイプは逆だけど、性格面とか変な所でお互い似てしまっているような気も…。)

口にすると、お互いにダメージになりそうだから止めておこうかと思う。
まぁ、内容の良し悪しはさて置き。友人と似通った部分があるというのはちょっと嬉しいのが本音。

「…そうなると、魔術談義とかの相手としてはお互い割と理想的なのかもね。
いや、まぁ談話中心だとどうしても私が聞き役に回る事が多いけどさ。知識量が全然違うし。」

実践方面なら、薫の手助けやアドバイスは出来るかもしれないが、知識の披露と応酬はほぼ彼女の独壇場だ。
お互いのタイプの違いもあるし、そこは個性であり一長一短なのだろう。

そして、ふと薫の表情がにんまりとしたものになっている事に不思議そうにしていたが…あ、と言った表情になる。

(そうだった!薫の異能を考えたら割と”筒抜け”に近いんだった…!!)

決して負の感情ではないから不快感を与えずには済んでいるかもしれないが…。
正直、まぁ、ちょっと…いや、かなり恥ずかしいんですが。
無意識にそれが仕草に出たのか、微妙に彼女から赤い双眸が逸らされていたり。

「ああ、そこは勿論。クリスマスに大晦日、そして新年だからね…。」

むしろ、予定が無い方が問題――あ、私って予定無かったような…自分にナイフを刺した形になっていないかこれ。
それはそれとして、視線を漸く友人へと戻しつつ。

「うん、でも正直ホッとした。…って言い方は失礼かもしれないけどさ。
薫も、ちゃんとそういう行事とか予定を一緒に楽しめる人が居るのが友達としては嬉しい。」

自分にも掛け替えの無い”相棒”が一人居るが、確か彼女は年末年始は帰省もするだろうし…。
帰る故郷が特に無い自分としては、さてこの年の瀬はどう過ごしたものやらと。

(あ、そうだ…どうせだし聞いておこう。リサーチしておきたいし。)

と、いうより確認か。なので、薫に「ところで」と、切り替えるように前置きをしてから。

「薫って集積媒体…あー情報書庫(アーカイブ)とか興味ある?持ち運び可能な小型サイズのとか。」

黛 薫 >  
「裏を返せば、華奈の知識は華奈が生き延びる為に
 優先して身に付ける必要があった物ってコトよな。
 それがそのまんまあーしに当て嵌まるとまでは
 言わねーけぉ。丸く手広くやってんのを尖らせる
 必要が出てきたときとか参考にさせて貰ってるよ」

単純に良し悪しで計れる話では無いが、知識にせよ
性格にせよ、似通っているからこその良さと真逆で
あるからこその良さがある。

知識が似通っていれば同じステージで話せるお陰で
共に積み重ねる議論に向き、真逆なら欠けた部分を
自覚し相補い合うのに向く。

性格が近ければ相手の思考も読みやすく、気付きを
共有しやすいという点で利があり、性格が反対なら
論駁や競争による高め合いのモチベーションになる。

「まぁなー、幸ぃにも友人には恵まれてんだわ。
 てか、そのお陰でこーして落第街から抜けて
 表の街まで出てこれたまであるな? あーしは
 1人でどーにか出来るほど強くなかったから」

華奈も恵まれた友人の1人、と直接口にはしない。
言わずとも伝わるだろうし、言葉にするのはやや
気恥ずかしい。こんなところでばかり似ている。

「情報集積はいずれ勉強しなきゃなって思ってる。
 情報の小型化が出来れば、ジェリーの物理由来の
 部分の最適化に繋がるから、性能上げられんの。
 華奈、そっち方面に明るかったりする?」

鞘師華奈 > 「そうだね…落第街に来た当事はまだ10歳くらい?だったから。
まぁ、幸い出会いに恵まれたから、生き延びる為に必要な技能は、最初は何でもがむしゃらにやったかな。
ある程度余裕が出来てから、取捨選択していって、自分に合ったものを伸ばしていった…って感じで。
私が攻撃や回復じゃなくて、補助型の魔術に適性が特化しているのも、その中で気付いた事だし。」

薫に助言を貰って現在、成長中の『隔離収納』の魔術を始め、女は直接的な攻撃魔術や回復魔術は持たない。
自分の適性を把握し、特化型なのを理解し、短所を補うのではなく長所を重点的に伸ばしていく選択をした。
そうして、実践を繰り返し、時々死に掛けながらも生き延びて経験を積んで…

勿論、それから色々ありはしたが、何だかんだで今に至る。
改めて思うのは、真逆だからこそ得るものが多い、という事と。
同時に、似通った部分も感じていて余計なお節介かもしれないが友人の事が心配になる。
…なまじ、親しい友人が皆無では無いがほぼ居ないせいか、どうしても気に掛けてしまう、というやつか。

(いや、まぁ薫の重荷になるような事はしないように気をつけているつもりではあるけどさ…。)

自分にとっては、素直に友人と言い切れて適度に交流があるのは薫くらいのもの。
執着、とかでは決して無いが、矢張り何だかんだ気になってしまうのは許して欲しい所だ。
…こういうのが重荷になりかねないのも分かってはいるので、それこそ口には出せないが。
だからこそ、口には出さないが薫が自分の事を友人にきちんとカウントしてくれているのが嬉しいのだ。
とはいえ、この女も不器用である。その感謝とかを上手く言葉に出来ないもどかしさも少々。

「んーと、付け焼刃程度だけど今、選択科目の一つにそっち方面の奴を選んでるからそこそこ。
講師の人が【電子魔術】…だったかな。情報数式を魔術式に置き換えた特殊な魔術の研究者だから面白いよ割と。」

と、そう語りつつもリサーチは出来た。少なくとも興味があるのは確定だ。
既に頭の中で、何やら思案を纏めつつもう一つだけ確認の意を込めて質問を投げ掛ける。

「…あ、ついでにもう一つ質問。薫は確か復学支援対象者、だったっけ?」

この質問は唐突だが何気ないもので、これの薫の返答如何で完全に女の中での思案が纏まる。

黛 薫 >  
「そーゆー "気付き" ってやっぱ転機なのなー。
 あーしは足りなぃ素質を補う形で伸ばしたら
『ジェリー』が汎用性に寄ったワケなんだけぉ、
 あーし自身は『使い魔の運用特化』で尖った
 とも言ぇるんだし。

 華奈が汎用性を目指すなら尖らせた "得意 " の
 先っぽが幅広く応用できる『何か』に届ぃたら
 イィのかな。あーしにとっての電脳魔術みたく」

思案する黛薫もまたお節介焼き、お人好しの部類。
ロビーで微睡んでいた貴女に声を掛けたときから
それは変わらない。

しかし復学支援が必要な程度に "傷" が残っている
彼女に他者を心配する余裕があるやら。それでも
なお周りを気に掛けてしまうからこそ逆に心配を
掛けがちなのかもしれない。

彼女の不器用さは距離感を掴みかねるより手前、
自分を二の次にしてしまう点にあると言えよう。

「あーー、その講師知ってっかも。その人の講義
 受けよーとしたけぉ、魔術以前の基礎教養……
 数学とかの単位取りきれてなくてまだなんだわ」

魔術の基礎は固まっていても、それ以外となると
話は別。旧世紀の義務教育範囲内、特に現代語で
あわや赤点だった黛薫は渋い顔。

「そ、復学支援対象学生。学生の身分に戻るって
 意味での復学は済んでっけぉ……『常世学園』
 ってほぼ学園 = 社会だからさ。外の世界で言ぅ
 社会復帰支援? の対象のまんまなのよな」

鞘師華奈 > 「…と、いうか冷静に考えて『ジェリー』は可能性の塊ぽいからなぁ。
薫の研鑽と知識の応用次第では、まだまだ成長の幅が広いだろうし。」

使い魔方面は正直疎いレベルの女ではあるが、そんな女でもジェリーに可能性を感じているらしい。
彼女の言葉に、少し考えるように宙を見上げて…ややあってから静かに頷く。

「うん、目指しているのは汎用性だけど、現状の私は方向性がちょーっとばかりズレて特化型から抜け出せてないからね。」

ただ、彼女の言うように『何か』に手が届く、あるいは指先でも掴めれば。
現状の特化型の魔術をアップデートして幅広い応用性を獲得出来るかもしれない、とは思っていて。

(…と、いうかこれも魔術談義だよなぁ、考えてみれば。今、実践とかしてみせてないだけで)

まぁ、楽しいし有意義な時間だから良しとする。広義ではこれも友人同士の『雑談』だ。
それでも、彼女の傷と危うさを無意識に・あるいは意識的に感じ取ってしまっている。
どうしても思い切り踏み込めない(安易に踏み込むべきではない)と、思ってしまうから。

「――そっか。じゃあ尚更”丁度いい”かもしれないな…んーー。」

思案を纏めるように唸りつつ。今、考えているモノは先に話した電子魔術も関係しているのだ。

「――うん、私はサプライズとか苦手だから敢えて今の内に言っておくよ。
友人記念も兼ねて、君にクリスマスプレゼントを考えてたんだけど…今の薫の返答と言葉で大体固まった。」

当日、つまり明日か明後日か。彼女の部屋宛に小包が届くことになると思う。
今はまだ、その”中身”についてはそれこそサプライズが苦手な女でも内緒にしておくが。

(薫が集積媒体やアーカイブに興味があって、復学支援対象なら…条件は整ってるし。)

お世辞にも色気のあるプレゼントとは言えないが、薫の魔術の今後のアップデートの一助にはなるかもしれない。

「あ。ちなみにプレゼントのお返しはいらないよ。強いて言うなら魔術談義で今後もアドバイス盛り沢山でよろしくね?」

と、裏表の無い親しみの篭った視線と笑顔で友人にそう笑い掛けるのだ。

黛 薫 >  
「え。……あー、あぁー……その手が、うゎ……」

ぽかんと口を開け、数度瞬きした後、こめかみに
指を当てた。一度魔術の話になると抜け出せない
彼女が "それ以外" に気を取られた貴重な瞬間。

「えー、そりゃ "プレゼント" にお返しは野暮だと
 思ぅけぉ。でもクリスマスだもんよ。その手が
 あったかって気付ぃたら、あーしもプレゼント
 用意しとけば良かったってなるじゃんさ」

クリスマスの予定の有無は別として、イベントの
楽しみ方を知っているという点では貴女の方に分が
あったらしい。しばし眉根に皺を寄せていたものの、
今からでは熟慮の時間が足りないと諦める。

「んん゛ー……分かった。プレゼントは魔術談義で
 返すとして。それと別に、何か、何か……日頃の、
 いぁそっか、友人記念。あーしもそれはどっかで
 用意させて貰ぅかんな」

クリスマスを抜きにしてもプレゼントする/される
というやり取り自体、学生らしくてワクワクする。
絶好の機を逃したことはもう認めるしかないとして、
貴女の言葉の中からどうにか理由付けを拾い上げる。

鞘師華奈 > (おや?珍しい反応というか…。)

いや、彼女と知り合って友人になって、初めて、かは曖昧だが貴重な瞬間を見た気がする。
女からすれば、実は前々から考えていたサプライズだ。まぁ、プレゼントのブツは直前まで実は悩んでいた。
それも、先の質問の返答で凡そこれでいい、と固まったのであるけども。

「あはは…いや、正直友達になってまだまだ短いから図々しいかな?っていう気持ちもあってさ。
ほら”善意の押し付け”っていうのもあるだろ?そんなつもりはないけど、マイナスに受け取られたら私も悲しいし。
だけど、友人になってくれて感謝の気持ちもあるし、魔術方面では掛け値なしに世話になってるからさ?」

お礼の一つでもしないと流石に女の気が済まない。
そして、出来れば形があるもので実用性がきちんとあるブツがいい。
と、そんな結論に達したわけだ。
…まぁ、アクセサリーとか小物類や服などのファッションは女が疎いので早々に断念したというのもある。

ただ、今度は逆に彼女の言葉に女がきょとん、と珍しく目を丸くしてまじまじと薫を眺めて。

「え?…あ、いや、うん…それは、まぁ、その。嬉しいけども…。」

魔術談義に付き合ってくれるだけで十分見返りなのだが、彼女の言葉にぎこちなく頷いて。
イベントの楽しみ方に幾ら分があっても、こういう反応が出る辺りは女もまだまだである。
ちなみに、ぎこちない仕草だが嫌なのではなく…単純に嬉しいけど、平静を装うつもりで失敗しただけであった。

誤魔化すように咳払いをしながら、取り繕うように伸びなんてしてから先にソファーから立ち上がり。

「んんっ…!じゃあ、私はプレゼントの手配もあるしそろそろ部屋に引き上げるよ。
薫も、パズルが一段落したんならちゃんと眠っておかないとね。」

と、何とか平静を取り戻せはしたのか、そう友人に言葉を掛けながら手をひらりと振って歩き出そうと。

――ただ、去り際に一度足を止めれば、彼女へと振り向いて。
彼女の異能を十分に理解した上で、静かに…だが真っ直ぐに薫と視線を合わせようとしながら。

一言だけ、最後に言葉を残して今度こそ手を緩く振って部屋へと戻ろう。

――その言葉は――…

鞘師華奈 > 「薫――私と友達になってくれてありがとう。感謝してる――それと、少し早いけどメリークリスマス。」
黛 薫 >  
目線を合わせて、掛けられた言葉に頷く。
「メリークリスマス」と、小さく返して見送って。
貴女の背中が見えなくなってからゆっくり息を吐く。

「……マイナスになんか、受け取れねーよ。
 あーしだって嬉しかったし、感謝してっし」

直接言えば良かった、しかしタイミングを逃した
言葉を噛み締めて部屋に戻るのだった。気分的には
今からでもプレゼントを考えたいくらいだったが、
そういう無理をして贈られても嬉しくないだろうと
気付けただけ上出来……だと思いたい。

ご案内:「堅磐寮 ロビー」から鞘師華奈さんが去りました。
ご案内:「堅磐寮 ロビー」から黛 薫さんが去りました。