2019/03/03 のログ
ルギウス > 重いエンジンの駆動音。
それが徐々に緩やかになる音と共に、近くに金属の塊が止まる。
ハーレーにはあまりに似合わない司祭服の男が降り立ち、ふむと袖を探れば。
手から出てきたのは一本の缶コーヒー。

「お久しぶりですねぇ。海月さん。
 御健勝のようで何よりです」

尋輪海月 > 「……んぇ?」

――さて、ここからどう過ごそうか。自販機でもあればそこで飲み物でも、と考えていた時に聞こえてくる音。

等間隔燃焼の音ではなく、大排気量の低回転でトルクを発生させるような音。
そしてこの重々しいロードノイズはハーレーのバイク。
自分の中の知識に照らし合わせて近づく音の主、車種を考えながら振り返り、


「……ぇええええええぇぇぇッ!!?」

現れた見覚えのある男の姿に絶叫した。
一方こちらはいかにもバイカーですという感じの中々の重装備、
ちょっとだけ上着の下だとか下半身だとかはアーマー入りのちょっとボディスーツっぽくもあるが。
そんな色気など、絶叫の前に消し飛び、

「似合ってなさすぎる!ルギウスさんならカタナとかでしょう!!……あっ」

いや違う。そうじゃない。
脳裏でグラサンかけた別のどなたかが囁く。
ぺこりと頭を下げる。

……あ、コーヒー持参か。自分もそうすればよかったな、と見つめている。

ルギウス > 「いえ、カタナもよいのですが司祭服ってけっこうダボつきましてねぇ。
 巻き込みとか危ないんですよ。」

ハーレーだって十分に危ない。
良い子は真似しちゃダメです。

「と、飲みますか?
 本格的な珈琲が良いのなら、淹れますよ」

きっと遠慮するだろうなと思うので答えを聞かずに缶珈琲を放り投げる。
袖から出したのにキンキンに冷えている。

「普段はテレポートや馬を使うのですが、バイクもよいですねぇ。
 また違った趣です」

尋輪海月 > 「あー、確かに……ネイキッドとかだと機関部近いですしね」

私も昔ジャケットの裾をキャブに……とか言いかけて。
いや待て、そうじゃない。

「……あ、えっと、いえいえ、その、あー……い、いただきま」
飛来。ちょっと待って♡と可愛い顔する間もなく。

「ぶべあッッ」


見事に取り損ね、更には受け止めようとした手の甲が真上に弾き上げる。
スローモーションでめり込む、コンビニじゃ絶対見かける銘柄のちべたーい缶。
鼻を下から、唇も巻き込んでゆっくりとめり込み――そして時は動き出す。
そのまま受け止め損ねた缶コーヒーを真上に弾き上げながら仰向けにぶっ倒れ、落ちてきた缶がやっと手の中に。

「……あ、ありばとうごじゃいばふ」
バグった言語でお礼を述べ、内容に耳を傾――テレポート。馬。


「――近未来保安官……?

ルギウス > 「魔法も異能もある島ですよ?」

くつくつと笑いを堪える声で囁く。
声は海月の耳元から。
ただしルギウス本人は先ほどの位置からは動いていない。

「このように声だけ飛ばしたり……」

海月の視界一杯にパラソルが広がる。

「ものを取り寄せたりも魔法で出来るのですから。
 瞬間移動もできる人だってもちろんいますとも」

立てますか、と手を差し伸べる。

周囲を見渡せば、座るのに都合よさそうな白いチェアが置いてある。
テーブルはまだない。

尋輪海月 > 「うひぁッ?!」

耳元で聞こえた。真横を見た。ぐきいっ。首から嫌な音がした。
白目を剥いて一瞬ホワイトアウトする思考。

わー、すごいびせい。アニメ声優かこの人。



そして意識が帰還して真っ先に起き上がる。
目の前にパラソル。まだ帰ってきてんかったと一瞬思ったが、

「……いや、その、ほんっと何でもありですか、るぎうすさん……」

手を貸されて立ち上がり、白いチェアも見つけた。

「……あの、砂浜側に動かしません?」

On the 路上。

ルギウス > ちなみに、声質は低くて涼やかであった。

「おや、知りませんでしたか?
 私は物語でいうところの魔法使いなんですよ。
 だから何でもアリです」

くつくつと笑って、指を鳴らす。
用意した一式がまとめて砂浜の上に移動した。

「これ以上驚いたら次は心臓が止まるかもしれませんからねぇ。
 移動はご自身でお願いします。」

尋輪海月 > 「……た、確かに魔法使いっぽくは、ありますけれど……」

それにしてもちょっと胡散臭いが過ぎる、なんて言ってしまいそうだが。
流石にそこまで言ってしまったらあれがこれだ。
口をチャック。

「……心臓」

止まるな。自分なら。
バイクを一撫でしてから移動していく。
思えば浜辺にチェアとテーブルなんて、これで昼間なら映えたものだが、夜だし、寒い。
ちょっと間抜けっぽいかなぁ、などと不安になった。

ルギウス > 「突然現れた救いの主なんて、胡散臭く映るものです。
 だって、あまりにも都合が良すぎるじゃありませんか」

さっさと移動して、悠々と椅子に座り。
気がつけば細葉巻を咥えて火をつけて。
さもここがプライベートビーチであるようにくつろぎ始めた。

「夜の海は暗くて、どこまでも飲み込んで行きそうだと思いませんか?
 人間の一人くらい、引きずりこんで……その暗い水の底へと。
 街が明るいほどにその暗さが引き立つと私は思うんですよねぇ」

尋輪海月 > 「……」

――救いの主。あぁ、そういわれるとそうだなぁ。
都合がいい。

あの夜のときは、特にそう思ったが。
何気ないだろうそんな言葉に、急に真剣な顔をして目を細めた。

「……そう、ですね。明るいと、暗いところも広くなりますから」

――周りが明るい程、自分の周りの影は濃くなるなぁ。と、考える。
手の中の缶コーヒーを、きゅ、と握りしめながら。

「……けど、暗いほうが、私にとってはいいですよ。明るすぎると、焼き焦がされてしまいそうで」

ルギウス > 「明るすぎる太陽の側は、実に疲れるものですからねぇ。
 暗ければ、側に誰がいるのかわからない。
 他者にわからないのだから、何をするにも“自由”です。
 だってわからないものの責任なんて取りようがない。」

そうでしょう? と 話を向けて。

「理解者を得られるまでに、何人に傷つけられるのか。
 傷つけられるくらいなら孤高を貫くほうが遥かに楽です。
 ただ……孤高であるが故に傷つけにくる人も居る。」

ままなりませんねぇ と 紫煙を吐いた。

「心を硬く持つか、先にヤるか。
 手段は多様です……貴方の好きに選ぶといいでしょう」

尋輪海月 > 「……分からないで居られれば、気楽ですしね」

にこり、と小さく笑顔を作る。
――もう、とっくに、光のある世界への区切りを付けたような、やや、やつれた笑顔だった。

「……いっくら頑張っても、ダメなんです。硬く、硬く耐えてきたつもりだったけど、やっぱり、ダメみたいで」

――いっそ、海へ沈んでしまえばいいのか。
ちょうど名前だって、海の月だ。冷たい海の中をゆらゆらと、ただ漂うのも、きっといいのかもしれない。




――――トリップしかけた思考は、ふと。

「……あ」
何かを思い出したような動作と、取り出したスマホの画面を見たことで戻ってくる。

何かまずいものを見たように、あわ、と、口が半分開き、
――がしょ!!と缶コーヒーの蓋を開けて一気飲み。
一気に空にして咳き込みながら。

「ごめんなさいッ!!明日朝から配達のバイトあるの忘れてましたァ!!」

かえって寝ます!!とバイクのほうへ一目散。
そのまま、何か引き留められることなどもなければ、
けたたましくスタンドを蹴り上げ、フルスロットルで帰ろうとする。

ルギウス > 「そう、何事も気楽が一番です。
 どうですか、機会があればどこかに泳ぎにでも行きませんか?
 ただただ、のんびりとするのもいいでしょう?」

と笑いかけて。

「お帰りの際には安全運転をお願いしますよ。
 死者蘇生はいろいろと手間なんですから」

またいずれ と手を振って見送る。

尋輪海月 > ――出立の前に、ヘルメットのバイザーを弾き上げた。

「はい、今度一緒に、ぜひ!!」

あと、安全運転苦手なんです!!と叫んでから。

爆音を響かせながら、彼女の乗ったバイクは、夜闇の中を疾走していった。

ご案内:「浜辺」から尋輪海月さんが去りました。
ルギウス > 優雅に椅子に腰掛けたまま、顔に浮かべていた笑いの質が変わる。

「心なんて、硬くなるわけがない。
 どれだけ硬くしたところで、傷はつくんですからねぇ。
 無機物じゃあるまいし、傷がつけば膿んで腐る。そういうものです」

くつくつと笑って。

「溜め込んだものは吐き出せばスッとする。
 苦しいのだから、当然ですとも。
 ……さて、鬱憤を吐き出す快感を教え込まないといけませんねぇ。
 まだまだやる事が多いようです」

ルギウス > 「我慢をするから、苦しくなる。
 最初から我慢をしていなければ―――さて、どうなっていたのでしょうねぇ?
 神様なら知っていたのでしょうか?」

考えるだけ無駄ですが。なんて続けて再び紫煙を楽しむ。

「まぁ、結局のところ……為したいようにしか動かないのが人間ですとも。
 制御薬という出鱈目を信じているケースとしてまだまだ観察対象でしょうねぇ」

ルギウス > 指を鳴らせば、スポットライトが落ちて。

後に残るのは、朽ちた椅子と波の音。

ご案内:「浜辺」からルギウスさんが去りました。