2020/06/07 のログ
ご案内:「浜辺」に水無月 斬鬼丸さんが現れました。
水無月 斬鬼丸 > そろそろ日差しが強くなり、暑くなる季節。
海水浴もそろそろいい感じのシーズン。
女子の水着もウェイ系の学生によるナンパも
あやしげな商売も色々増える季節。
正直ウェイ系とかこわいし、友達いないんで夏本番ともなれば
逆に海に来ることもないのだが。
ただ、今の季節であれば人もまばらで、いい風も吹き込んできて涼しい
遊んだ帰りに寄るには最適だ。

ご案内:「浜辺」にシュシュクルさんが現れました。
シュシュクル > 次第に暑くなってきた中で、海に来ている人間は確かにまばらである。
そんな中。

遊んだ帰りにちらりと海を見てみれば、海面に、ばしゃばしゃと水しぶきが立っているのが見える。

あれは、何なのだろうか……。

水無月 斬鬼丸 > 「えぇ…」

なんか、水しぶきが不自然に立っている。
なんだあれ、こわっ。
よくよく目を凝らし、どうなっているのかしばらく眺めている。
誰か呼んだほうがいいのだろうか?
いや、これってもしかして…

「…サメ…?サメ映画…?」

いや、まさか。

シュシュクル > こわっ。
その感想は至極まっとうなものだ。
何故なら、近くに居た数人の人々も、まさに同じような反応をして距離を取っていたところだった。

さて、海面を見やった青年がサメを思い浮かべている中、
すぅ、と。海面に浮かび、すいすいと青年の近くへ近づいてくるものがあった。

そう。あろうことか、それは本物のサメの背ビレであった。

水無月 斬鬼丸 > 「さ、サメだーーーーー!?」

当然そうなる。
サメ映画を数本見た男子学生にとって
突如海に現れたサメの背びれ。
思わず距離を取ろうとする。当然だ。
だが思い出せ、奴らは陸まで乗り出して食らいついてくる。
どのサメもそうだった。

「だっ!だれか!!」

申し訳ありませんが、当海岸にサメハンターの方はおられませんか!

シュシュクル > 叫ぶ青年。
そして、海面から大きな水しぶきをこれでもかと撒き散らしながら飛び上がったのは、サメ。紛れもない、サメ……であったが。

飛び出したのは、それだけではなかった。

「ざばーーーーーんっ!!!」

それは、人だった。獣の耳としっぽが生えてはいるが、人だった。
人が、サメを担いで、飛び上がってきたのだ!

「とったぞーーーー!!!」
獣人は、担いだサメを、陸まで放り投げる。
ホホジロザメ。ネズミザメ目ネズミザメ科ホホジロザメ属に分類されるそれは、「白い死神」とも呼ばれる恐ろしいサメである。
そのサメが、今や白いお腹をぐでー、と見せて力なく砂浜の上でのびていた。

ややあって、獣人も海から上がってきた。
そこで、目を見開く獣人の少女。目の前には、青年。


目があう二人。青年と少女。

ひと夏の、ボーイミーツガール。

甘い予感が――



「おお、はらへってるか!? おまえ、くうか? サメ、くうか!? まるやきか!?」

――甘くはなかった。
笑いながら、ぎゅっと握りしめた拳を天へと突き上げ、喜びのポーズをとっている獣人は、そう口にするのだった。

水無月 斬鬼丸 > 「………ぇぇぇ……」

逃げ腰だったが…飛び上がってきたサメ…と、少女。
とったぞーーーーと叫ぶその姿。
ぐったりしているホホジロサメ。
いや、近海にこんなもんいるのかよ。
普通にやべえよ。

「………だ、だれかーーー!!」

突如現れたケモミミ少女。
くうかじゃねぇよ、くわねぇよ。せめてはんぺんとかかまぼこに加工して食うわ。
というか、どういうことだよ。
ひとまず落ち着いて……たすけて!!異常事態に強い人!!!

シュシュクル > 「どうした? げんきないか? やっぱりはら、へってるな!?」

人差し指を口で軽く咥えながら、ととと、と軽い足取りで斬鬼丸の方へ歩み寄る獣人娘。

「ひと、よぶか? ひとりでたべきれないか? みなでうたげか? それもたのしそーだが、だいじょうぶ! シュシュクルはいっぱいたべるから、おまえはたべられるだけたべればいいぞ! だから、げんきだせ!」

なんとまぁ乱暴な話もあったものである。
だが、その目はキラキラと輝いており、青年に対しての敵意は微塵もない。一応食事をすすめたり、尻尾を振っていたりしているあたり、友好的に見える。

水無月 斬鬼丸 > 「え、あ、はい」

やべえ、近づいてきた。
っていうか、そのサメ生きてる?生きてるよね?
起きて暴れだしたりしない?
歩み寄る少女に対して逃げはしないがやや引き気味。

「そうじゃなくて…へ?シュシュルク?あー…っていうか…
え、くうの?」

サメ肉ってくえんの?
むしろ捌くの?
無垢な子供のような視線。尻尾のようなものはぶんがぶんがしてる。
水から上がってそれはやめなさい。ほら、こっちの顔面まで飛沫が飛んでくるだろ。

シュシュクル > 「やっぱりな! げんきないは、はらへってるから! シュシュクル、しってるぞ!」

青年の不安を煽るかのように、サメはびたんびたんと痙攣しながらまだ少し動いている。

「シュシュルクちがう! シューシュークールー!」
さっきまで振っていた尻尾をピンと立てて、両の拳を握って抗議の姿勢をとるシュシュクル。

「おまえ、なんていう? なまえ」

と、機嫌を損ねたかと思いきや、そうではないらしい。再び太陽のような笑みを浮かべながら、両腰に手をやり青年を見上げ、シュシュクルは問いかけた。

水無月 斬鬼丸 > 「ひぇ…」

めっちゃびたんびたんしよる。サメには悪いがさっさと酸欠で死んで…
この状況から少しでも不安要素はなくなっていただきたい。
サメを食えっていわれてるのも相当困惑要素なのだが。

「あ、はぁ…シュシュ…クル…?」

わかった、あれだ。この人異世界人ってやつだな?
正直呼びづらい名前だ。
外人さんの名前はたまにこういうとこある。

「水無月…斬鬼丸…えっと、サメって…どうやってくうの?」

怒ってはいないようだ。
眩しい笑顔の美少女…のようには見えるが、異常な状況は待ったく変わってない。
だれか!だれかこういう状況に詳しい専門家の方はいらっしゃらないのか!

シュシュクル > 「んー、シュシュでもいいぞ!」

呼びづらさを察したのか、シュシュクルは小さく何度か頷きながら、そう口にした。


「ざんきまる……ざんきまる! ざんきまる!」

嬉しそうに青年の名を連呼する少女。
さて周りの人々はといえば、そそくさと帰り始めている。
つまりこの状況、海で二人きりである。

……死にかけのサメも居るが。

「どうやってくうか? かんたん! さめにかじりつけ!」

そう言って、シュシュクルはにっと笑ってみせた。白い歯がきらりと光る。とても頑丈そうである。そして鋭い。狼の牙を思わせる歯である。

水無月 斬鬼丸 > 「シュシュ…さん、はい…」

やや猫背のままにコクリと頷き返す。
相手はこっちの名前を間違えることもなく
新しい言葉を覚えた幼児のようにこちらの名前を連呼する。
正直恥ずかしいのでやめて欲しい。
というか、まばらでも一応人通りがあった浜辺…
いつの間にか人がいない。やばい。

そしてそのヤバさに拍車をかけるシュシュの言葉。

無理無理無理!!サメの皮とかわさびすりおろせるって聞いたし!
折れる、歯とか!

といいたいところだが、言って不興を買えば、サメ殺しの少女がどのような手段を取るかわかったものじゃない。
サメを取ってきた少女、どう見ても素手だ。
殴られたらそこのサメと同じく浜辺に死にかけの状態でビタンビタンすることになるだろう。

「………まじか…」

死にかけのサメを見下ろす。そう、死にかけ。まだ生きてるぞこれ。

シュシュクル > 「どうしたー? かおがわるいぞ、ざんきまるー! かおわるいー!」

顔色が悪いと言いたかったと思われるが、野生の化身は心底心配そうに斬鬼丸の顔を覗き込んでいる。

さてサメはといえば、既に動かなくなりつつはある。
しかし、何か刺激を加えれば激しく動き出すかもしれない。それくらいの余力は感じさせる動きだ。

「どしたー? かぷっと! かぷっとかじりつけ、ざんきまるー!」

いけいけー、と嬉しそうに小さくジャンプするシュシュクル。

水無月 斬鬼丸 > なんで突然顔のことをディスられているのか。
生まれてこの方、彼女とかできたこと無いんでー!!
そんなこと知ってますがー?知ってますが、もうちょっとオブラートに包んでくれませんかねぇ!?
といったところで、この少女がオブラートを理解できるとは思えない。

むしろ、こんな状況になったら、アイドルだって俳優だって味のあるフェイスになるというものだ。
見下ろせば、ギラギラと目を光らせるサメの姿。
死にそうなのはわかる。だが、窮鼠猫を噛むとも言う。
この場合かまれたら致命傷なんだが。

「………」

サメ、噛んだら跳ねそう。
跳ねたらふっとばされそう。いや、死にそう。主に俺が。
だが、かじりつかないわけにもいかない。ええい、ままよ。

ぞりっ

かじろうと手をついた。それだけでもわかる。無理だ、これ。

シュシュクル > 「うまいぞー、きっとうまいぞー」

シュシュクルの目は、星のようにきらきらと輝いている。
何故輝くのか。
どうやら斬鬼丸の「うまい」という一言を待っているらしい。
肩をきゅっと縮めて、小さな胸の前で両の拳をぎゅっと握り、はらはらと斬鬼丸を見つめるシュシュクル。
その頭の『じしょ』の人間の項目に、『サメにかじりつけない』という記述はないようである。

サメに手を置いてストップする斬鬼丸。
対し、シュシュクルは何かに気づいたようにはっと目を開くと、次第にその顔はだんだんと曇ってきた。

「どしたー? ざんきまる、さめ、きらいか……? たべられないか……?」

シュシュクルは尻尾と耳をだらんと垂らして、悲しそうに肩を落とし始めている。

水無月 斬鬼丸 > 「え…」

なんで俺が悪いみたいになってんの?
めちゃくちゃ悲しそうなんだけど。
正直泣きたいのはこっちなのだが、流石にできませんと言ったら
曇った顔が雨模様になってしまいそうだ。
畜生、なんなんだ。今日は厄日か。
いや、いつも特別いい日とか無いんですけど!!

「ちくしょーーーー!!」

ざり。
斬《チェイン・リッパー》
己の異能。
硬さも柔軟さも有形も無形も関係なく断ち切る異能。
食いつくと同時にそのチカラを使う。
歯の触れた部分を切断、そのまま口の中でサメの皮ごと肉を細切れにして一気に飲み込む。

「……け、結構なお手前で…」

のど越し最悪。

シュシュクル > 己の異能を使い、道を切り拓く。この青年は、この男は、やってみせたのだ。
少女に涙を流させぬために、己の異能を使ったのだ。

そんなこととはつゆ知らず。

「おお! ざんきまる! さめたべたか! だいじょーぶだったか! きらいかおもった! ちがった! シュシュクル、うれしい!!」

シュシュクルの曇っていた顔が、ぱああっと一気に明るくなり、ぶんぶんぶんがと尻尾が振られる。

「サメ、ともだちの、あかし! ざんきまる、たべたいだけやるぞ? のこったぶん、シュシュクルもらう!」

もう笑顔が最高に輝いている。すでに『ともだち』と思い、懐き始めているようである。
この笑顔を守ったのは、他の誰でもない水無月 斬鬼丸、その人だ。
……口の中が地獄になっている、その人だ。

水無月 斬鬼丸 > 正直、味とかの問題もあるが、細切れとは言えおろし金にも使われるもんを飲み込んだのだ。
腹の中とか口の中とか喉の中とかイガイガする。
というか、有り体に言って吐きそう。
そもそも、普通の魚であったとしてもそのまま食いつけば鱗でひどいことになるってのに。

「あ、はい…大丈夫っす。うす」

何故か後輩語。
だが、サメ食わされれば誰だってこうなる。俺だってこうなる。なった。
美少女が嬉しそうなのはとてもいいことだ。
これでこちらの罪にはなるまい。色んな意味で。
保身のためとはいえ、輝く笑顔は子供のよう。
そうか、今日は児童難の相でもでてたのか。朝の占いちゃんと見よう。明日から。
更に勧めてくる少女…もとい、シュシュ。

「自分、少食なんで…」

とはいえ、あと3口4口くらいは行くだろう。
最初に比べてさらに細かく切り刻んで飲み込むが。
とはいえ、イガイガした生臭いペーストを胃にぶち込まれているのだから
今まさに反吐ぶちまけないあたり自分の根性も捨てたものじゃない。

「ご、ごちそうさま…」

シュシュクル > 「よかった! よかった! ざんきまる、ともだち! ともだちよろこぶの、シュシュクルはうれしい! おっきくうれしい!」

随分と喜んでいる。ごちそうさま、と斬鬼丸が口にした所で、シュシュクルは大きく飛び上がる。何度も飛び上がる。どうやら最上級の喜びの表現らしい。

「ざんきまる、またサメたべたかったら、いえ! シュシュクル、いくらでもとってきてやる! あしたでも! あしたのつぎでも! だいじょーぶ!」

きゃっきゃと笑いながら、そんな残酷なことをさらりと言い放つシュシュクル。全く悪気はない。寧ろ、100%善意ではあるのだが……。


「じゃ、これ! のこりはシュシュクルの!」

むんずとサメの尻尾を掴んで、ずるずると引きずっていくシュシュクル。
と、立ち止まり。サメを放して何かに気がついたようにぽんと手を叩く。

「これ、ふえ。シュシュクルひつようなとき、よべ! ざんきまる! シュシュクル、とんでいく! すぐ!」

そう言って、身につけている服の中から、石に穴を開けただけに見える原始的な笛を掌の上に乗せて差し出した。

水無月 斬鬼丸 > 「は、はぁ」

なんかめっちゃ喜んでる。
それはそれでいいのだが、流石に今まさにリバースしそうな状況を必死に堪えているというのに
明日もあさっても同じようなことが続いたら、栄養失調かそれ以外の何かで死にそうだ。

善意が人を殺す。良い教訓になった。

「うぃす…あざした…」

サメを持っていってくれる。
それだけでも礼に値する。
置いていかれたらどうしようとおもっていたところだ。
さろうとする少女の背中を見送りほっと一息つこうとしたところ、なんか戻ってきて、渡された。
笛?え?なんで?これで呼ぶの?スマホとかじゃなく?聞こえるの?どこでやっても?

「お、おう…ありがと、う?」

善意に対しての普通のお礼。だが、混乱がその言葉を少し濁す。
でも石の笛は受け取って

シュシュクル > 「おう! おれい、いらないぞ! ともだちだから! な! ともだち、こまったときたすけあう、これあたりまえ!」

元気いっぱいそう答えるシュシュクルであった。


「だいじょーぶ! これふく、どこでもきこえる! かぜに、ふえのおと、まじる! シュシュクル、かけつける! いつでも、どこでも!」

ない胸を張って、得意そうに語るシュシュクル。どうやら、どこで吹いても問題はないらしい。不思議なことではあるが、呪術的な仕掛けでも施されているのかもしれない。

「じゃーなー、ざんきまる!」

再びサメの尻尾をむんずと掴むと、シュシュクルはサメを引きずってどこかへと去っていくのであった……。
その尻尾は、とても元気いっぱいに振られていたようであった。

水無月 斬鬼丸 > 「……」

終わった…
地獄のような、嵐のような…
砂浜での出来事。

鮫砂嵐。

美少女と鮫、そのふたつの間に生じる混迷状態の圧倒的破壊空間はまさに歯車的小宇宙!!

破壊空間を生き延び、少女の笑顔を守り、友情を結んだ男、水無月斬鬼丸。
その混迷の主、新たな友、シュシュクルの背中を見送ったあと、少年は……吐いた。

ご案内:「浜辺」からシュシュクルさんが去りました。
ご案内:「浜辺」から水無月 斬鬼丸さんが去りました。