2020/09/15 のログ
■アーテル > 「ほー。
なんだい、見た目はニンゲンなくせして。在り方はくらげってぇかい?」
自分が聞いたくせに。
更に不思議そうに聞き直したりして。
その上自分は何者か、と問われると…
「んー、俺かい?
俺はなー………そうだなあ。
お前さんからすりゃあ、何に見える?
でかい狐か、バケモンの類かい?
お前さんの見たい俺は、何だぁ?」
傍に降り立つ彼女を視線で追いながら、より難しい質問を投げかけた。
■綿津見くらげ > 「掴みどころの無い、みずみずしい何か。
そういうモノに、私はなりたい。」
こじつけた様な言葉が口から出るが、
不思議とそれはそれで、彼女の精神をよく反映したものであった、
「狐、のバケモノ。
デカい。」
見たまんま、黒くて大きな狐である。
「見たい、お前……?」
風変わりな問いに、首を傾げ……
「例えば、何を見せてくれる?」
その質問に、質問で返す。
■アーテル > 「…ははーん。なるほど、そりゃあ確かに"在り方"だ。
いいじゃん? どこか虚ろでいて、溶け込むようでいて。」
言われてみれば、それは確かにくらげのようなものと納得する。
今のニンゲンの姿で、そう為りえるのかは別としても。
この獣は、そういう区別をしていなかった。寧ろ、そういうものを応援したいくらいの気持ちなのだろうか。
そういう心地がありありと見えるような程に、興味津々に言葉を返してみせた。
「んー……そうだなあ………
それは例えば、赤髪の男…
それは例えば、ニンゲンに愛される黒い子猫……
それは例えば、空を自由に羽搏く烏…」
何を見せられるのかと問われると、思いついた選択肢をぽろぽろとこぼす。
きっと、それ以外にもあるのだろうが。
■綿津見くらげ > 虚ろで、溶け込む。
そういう言葉に、心地よさを覚える。
普遍に存在する、水の様な。
海月の身体を構成する99%は水だと言う。
すると自分は、水の様なモノに憧れているのか。
「興味深い。
私の内面を、今垣間見た気がする。」
偶然出会った物の怪との会話で、
自己の知らぬ一面を知った気がした。
「ほう。
化けるのが得意なのだな、お前は。」
狐が口にするものは、まるで共通点の無い生き物。
どんな姿にも化けてみせると言うのだろう。
「ならば、まず。
鳥に化けて、みるがいい。」
■アーテル > 「俺は自分の中にある、"くらげ"の在り方を考えたに過ぎねぇ。
……まぁなんだ、それがお前さんの欠けた部分だっつーなら。そりゃ嬉しいがよ。」
一目見た相手の、そんなに内側を覗いたつもりはあまりない。
…それでも、肯定されれば気持ちはよくなる。
まるで、ニンゲンのように。
「ま、そーだな。
化けるのだけは取り柄ってーか……
まあ待ってな、それなら……」
眼を瞑る。蒼の瞳は黒に沈んで消える様に。
細く息を吐くように集中すると…
その身体の内側から、黒い靄が溢れ出る。
巨なる躯体を覆いつくすと、それが脈打つようにどんどん小さく縮んで、萎んで。
…あっという間にそれは、彼女よりも小さな鳥の形を為した。
■アーテル > 「よお。
……どうだい、こんなもんだ。」
ざあ、と、靄が晴れる。そこには紛れもない、烏が一羽。
今度はこちらが彼女を見上げて、変わらぬ声色で声をかけた。
■綿津見くらげ > 「………!」
黒い煙に覆われて、
物の怪がみるみるうちに姿を変える。
あの巨大な図体がどこへ行ったのやら、
それは一羽の烏になってしまった。
「凄い。
面白し。」
感嘆の表情……と言うには、あまり表情を変えないが、
彼女なりの精一杯の驚きを手短に言葉にした。
「では次は。
デカいタコかイカに、なってみてくれ。」
心なしか、奇抜なリクエストを伝える少女の仄暗い瞳が、
ほんの少し輝いている様にも見えた。
■アーテル > 「あれ?俺ってばもしかして見世物扱いになっちゃあいねえか?」
鳥は訝しんだ。
烏だけど脳みそはさっきの狐と変わらなさそうだ。
「…………。
んまー、なんだ。変身は一日3度まで!
そのリクエストにこたえるのは今日のこの場じゃあないっつーことで。
生憎残りの1回を何にするかってのは既に決めてんだ。」
彼女のリクエストについては、サラッと後回しにしようと考えた。
デカいタコかイカに本当になれるかどうかについては、言及を避けた。
■綿津見くらげ > 「………!」
ショック。
彼女の願いは叶えられなかった。
「………!
…………!!」
考えてみれば当然の事だ。
見ず知らずのくらげから、
鳥になれだのイカになれだの頼まれて、
はいそうですか、と耳を傾けてくれる者はいない。
物の怪にも尊厳がある、好きで見世物になってくれる訳では無いのだ。
項垂れる少女……
…………そんなに残念か?
「まぁ、いいや。
また今度頼む。」
しかし少女は切り替えも早かった。
それは流れる水の如し。
「それで、何になる?
最後の一回は。」
■アーテル > 「おお、気持ちの切り替えが早い。
…ま、そうだな。次があったら答えてやろうじゃあないか。」
多少なりともショックだろうか、とは思ってはいた。
感情表現が乏しいなりに、それでも眼はキラキラと輝かせていたような気がしていたから。
とはいえそんな沈んだ気分もさらりと流して次に迎える気の切り替えようは、関心を示したようだった。
「……んー?
それはなー………」
言葉を繋ぐ最中に、再び身体を黒靄が覆う。
烏で居た時間は僅か数分だった。
■アーテル > …今度は大きくも小さくもならず、同じ程度の動物の形を為した。
ざあ、と晴れたころには……黒い猫が一匹、そこにいた。
蒼い眼が特徴的な、艶のある黒い毛並みの猫の姿。
「こんな姿だ。
どーだい、ニンゲンにゃ好かれやすいフォルムだろー?
俺のお気に入りの一つさ。」
■綿津見くらげ > 再び黒煙に包まれる物の怪。
果たして飛び出るのは蛇か鬼か。
あるいは不意をついてやっぱりタコか。
馴染みの可愛らしいしなやかなフォルム。
それは愛玩動物の頂点、猫。
「………ねこ。
………かわゆ。」
奇人である少女でさえ、思わずかがんで手を差し伸べる。
■アーテル > 「………ん。」
手を伸ばされても、逃げない。
眼を細めて、受け止める姿勢。
猫はあなたを拒まない。
尻尾を揺らしてその手を待った。
■綿津見くらげ > 「へへ………。」
あまり動物に好かれないタイプの少女。
ここまで接近し、あまつさえ手に触れる事など夢の様。
頭を恐る恐る撫で……
顎下に手を伸ばし……
そして背中を撫で下げて、
さらにもう一度顎を。
あまり触り慣れて無いわりに、
結構大胆に撫でて堪能しまくるのであった。
■アーテル > 「ん、ん………」
逃げない。避けない。かわすこともない。
彼女の、まるで震えるようにさえ思える掌に、頭を、顎の下を、背中を撫でられて。
ほんの少し気持ちよさそうに目を瞑って、堪能する。
「……なんだー、撫でるだけでいいのかー?」
大胆だろうとなんだろうと、抱かれようとなんだろうと、
きっと受け入れるつもりで構えているのだろう。
■綿津見くらげ > 「………!!」
『撫でるだけでいいのか』だと。
つまり、その先も許容すると言うのだ、この猫は。
「そ、そんな。
それは……。」
震える手を猫に伸ばそうとして、はたと止まる。
そして、急に後ろへ飛びのき猫と距離を取ると……
「ダメだ。
早すぎる。
私には、まだ。」
などと口走る少女。
……猫一匹抱くくらいで、何をそんなに。
そのまま宙に浮かんで、何処かへと漂い去って行ってしまった。
ご案内:「【イベント】海水浴場 浜辺」から綿津見くらげさんが去りました。
■アーテル > その言葉に彼女は狼狽える。
撫でることのその先へ進むことを、まるで逡巡するように。
多少の躊躇いが見えた後に、慌てて飛びのいたかと思うと…
まだその時ではない。
そんなニュアンスの言葉を残して、彼女はふわふわと去っていく。
「くく。
まだまだ若いなあ、くらげの。」
視線で彼女を見送りながら、瞳を細めて猫は笑う。
まるで身の程を知ったかのように、委縮した彼女を笑う。
だがそこに嘲りやからかいの感情はなく、ただ青さ故の戸惑いに向けた微笑ましいものだった。
「………よし、俺も帰るかね……」
学生街の方へと振り向くと、さく、さく。
来た時と同じ、小さく砂を蹴る音が再び海岸に響き始めたことだろう―――
ご案内:「【イベント】海水浴場 浜辺」からアーテルさんが去りました。