2020/10/11 のログ
火光雷鳥 > 「な、成程…うーーん…。」

少女の言葉に考え込むように唸る。フォローをしたいが、本当にこういう時に気の利いた言葉が浮かばない。
とはいえ、落ち込んだままの相手を眺めているだけ、というのもこう…何だ、気分がよろしくない。

彼女の溜息と弱音を横で聞きながら、海を眺めつつ…ふと、毀れるように言葉が勝手に漏れる。

「…でも、つまりそれは負けた事に未練があって、まだ諦めきれてないって事ですよね?
諦め切っていたらもうとっくに見切りを付けて別のことに打ち込んだり日常に戻ってると思うんすよ。」

そう、つまり――だ。彼女はぐったり項垂れてすっかり凹んでしまっているけれど。
それを承知で言わせて貰おう。ああ、正直チキンハートで泣きそうだけど今は我慢だ。

「…だったら、貴女はまだ『死んでない』でしょう。大事なのは気分転換、そして貴女自身で立ち上がる事じゃないすかね。
勿論、今すぐに、なんて無理なのは分かります。それに――」

まけいぬ、かぁ。少女には申し訳ないが少しだけ笑ってみせながら。

「まけいぬ上等じゃないすか。敗北の味も挫折も知らないで勝利したって、それの―ー何が面白いんです?達成感も喜びもありゃしない。
それに、…貴女に『負けて』同じ思いをしている誰かも多分居るんじゃないすかね。
――落ち込んでるのは、虚無感みたいなのに包まれてるのはアンタだけじゃない」

うわぁ、俺すんげぇ失礼で偉そうな事を言ってるよ!ビンタかグーパンチ食らっても文句は言えない。

「――何もやる気が起きないのも、無駄に時間を過ごすのも俺は良いと思います。
でも、そのまま沈むのはこう、なんか――勿体無いと思いません?」

焔誼迦具楽 >  
「――――」

 彼の言い分に、一瞬頭に血が上りかける、が。
 言ってる事は多少なり、理解できたし、理もあった。

「ふうん、貴方、なかなか言ってくれるじゃない」

 かと言って、不機嫌さが表情に出るのは仕方ない。
 眉をしかめて細めた目が、じっとりとした視線を向ける。

 しかし、諦めきれていないのはその通りだろう。
 すっかり諦められるなら、自分の中でとっくに折り合いがついてるはずだ。

「わかったような事言っちゃってさ。
 私だってこれまでも、結構負けて来たんだけど。
 それでも、今回は特別だったの」

 実力差を見せつけられて負けた事も、経験の少なさから追いつけなかった事も、この三年で何度もあった。
 しかし、ここまで落ち込んだことはなかったのだ。
 これまではずっと悔しさをバネにして来たが、今回は自分でも思った以上に打ちのめされていた。

「勿体ないって、そうかもしれないけどさ。
 だからってどうしろって言うわけ?」

 ふん、と自嘲するように鼻で笑う。
 落ち込んで拗ねている、そんなふうに見えるだろう。
 

火光雷鳥 > (あ、これ俺ってば地雷を踏んだかもしれない…やったね!!じゃ、ねーーよ!!どうすんのこれ!?)

思わずぽろっと何か無責任な言葉を垂れ流しにしてしまったかもしれない。
そもそも、小心者で凡人の自分が、何を分かった風な口を利いているんだろうか。やっぱ泣きたい。

「あー…いや、そのーー…すんません、ずけずけ勝手に言い過ぎましたハイ…。」

不機嫌さありありの表情と細めた視線に内心で「ひぃっ!?」と唸る。実際に悲鳴を漏らさなかっただけ、俺としては頑張ったと思う!

けれど、多少は自分の言葉が彼女には聞き届けられたらしい…それだけはちょっと良かった。

「別になーんも分かってませんって。俺はまだ17年しか生きてない小僧なんで。
だから、貴方がどれだけ負けて、その『勝負』にどれだけの想いを注ぎ込んで来たのかも知りません」

で、俺は何でまた勝手に口にしてるんだろうねこれ!?そろそろマジで殴られかねないんだけど!!
だが、一度開いた口は止まらない。あぁ、もうこういう柄にもない事はするもんじゃない。

「――例えば、ここで俺が「ちょっと羽根を伸ばして休息期間でも取ってみては?」と、言ったとしてすんなり頷けます?
…先に言わせて貰います。すげぇ失礼な言葉かもなので、殴って貰っても構いません――」

いや、よくねぇよ!?良くないんだけど、あぁ、もう!

「今のアンタは落ち込んでるだけじゃなくて拗ねてるようにも見える。…それは別にいい。
アンタが打ち込んで夢として追いかけてきたものだ。何も知らない俺がどうこう言うモノじゃない。

――だけど。そうやって拗ねてて何かが変わるのか?アンタに『勝った』誰かはその間も先に進んでるんじゃないのか?

――アンタがそれでも別にいいなら幾らでも拗ねていい…それが嫌なら、悔しいなら、追いつき・追い越したいとちょっとでも想うなら…。

――ずーっと、そんな調子でいちゃ駄目だろ。それでもなーんにもやる気が起きないってんなら。

…アンタの『夢』はその程度のあっさりしたもんだったって事になる。数年間の積み重ねも思い出もドブに捨てるようなもんだ。」

背景、クソ親父に母さん。俺、もしかしたら今日ぶっ殺されるかもしれません。
と、心の中で十字を切る――いや、別に何も信仰してないけど。

あぁ、もうこれ絶対に心象最悪だろどーすんだ!!だが出した言葉は消えない。
それに、自分なりに言いたい事でもあった。それは紛れもない事だ。

(俺はこの人の夢も今までの苦労も努力も積み重ねも何もしらねーけど)

ああ、もう最低クソ野郎でもしょうがない。言いたい事は言うべきなんだ。

焔誼迦具楽 >  
 拗ねていると言われて、カッと血が上った。
 反射的に手を振り上げて――危うく振り下ろすところで手を止める事が出来た。
 ここは落第街じゃないのだから、カっとして殺しちゃいました、は通用しない。

「――あ゛ーっ!
 なんなのよ、もうっ!」

 苛立ちが隠せず、頭を掻きむしる。
 そして、この抑えきれない憤りこそ、図星を突かれ、理屈を説かれてる証拠に他ならない。
 それが分かってしまうだけ、幸運だったのか不運だったのか。
 少なくとも彼にとっては、うっかり引っ叩かれて即死級の打撃を受けなかっただけ幸運だったに違いない。

「わかってるわよ!
 私が煮え切らない間にも、あいつはもっと強くなってるし、他の選手だってそう!
 でも仕方ないじゃない、どうしたらいいか、わかんないんだからっ」

 嫌だし、悔しいし、追いつきたいとも追い越したいとも思っている。
 自分の夢だって目標だって、生まれて初めて、自分で定めたモノなのだ。
 それをその程度だなんて言わせたくない。

「やれることはやった、全力も尽くした。
 その上で――歯が立たなかった。
 言葉通り、あいつは格が違ったの!」

 少しは追いつけている、そう思っていた。
 けれど実際は、背中を追いかけるだけで精一杯。
 その背中すら、あっという間に見えなくなってしまう。

「他の選手だって、私よりずっと沢山経験を重ねて、私よりずっと積み重ねを続けてる。
 今回は勝てたけど、きっと次は通用しない。
 私には地力でぶつかり合えるだけの、実力ってやつがないの!」

 髪を掻き乱し、鬱憤を吐き散らすように言った。
 

火光雷鳥 > (――あ、死んだなこれ…。)

ただの一撃。普通ならそうだろう――だが、凡人の自分でも分かる。多分この一撃は食らったら普通に即死する。
うん、最後に両親にお祈りをしておいて良かった――いや、親父には勝手に仰々しい能力名を登録された恨みがあるが。

――が、その即死級の一撃は彼女がその手を振り下ろす直前で止められた。
…何で振り下ろされなかった?勿論、或る意味で今まさに死の淵に居る少年に理解する余裕なんて無い。

(あ――やべぇ、今更だけどチビりそう…。)

助かった?生きてる?いや、あの手がいきなりまた振り下ろされる可能性は大いにある。
けれど、その手が振り下ろされる事は無く――代わりに、そのまま頭を掻き毟る少女をぽかーん、と放心状態で眺めていたのだけど。

「どうしたらいいかわかんないなら考えればいいだろ!それで分からんなら誰かに相談する!!アンタも友達や知り合いの一人くらい居るだろ!?
一人で抱え込んで煮えきらず落ち込んでるくらいなら、誰かにぶちまけて頼ればいいだろーが!!」

うん、小心者の俺は何処に行ったんだろう?迷子かな?寝込んでるのかな?
折角命拾いをしたかもしれないのに――だが、同時になんとなーく悟る。
そう、俺は凡人で…逆にこの少女はきっとすげー人だ。その苦悩も挫折も苛立ちも俺なんかよりずっと凄い。
『だからこそ』、そんな少女がうじうじ立ち止まっているのが…何か、こう、我慢ならないんだ。

「格が違うから何だってんだ!?最初から負けるつもりで挑んだ訳でもねーだろ!!
ああ、そりゃアンタの勝負相手はきっと強かったんだろうさ!どう足掻いても勝てない勝負だったかもしれない!何をやっても届かなかったかもしれない」

けど、じゃあ―――

「その気持ちも敗北の経験も無駄にするのか?ああ、そうさ他の連中だって努力してる。勝負事はそういう世界だろうさ!アンタはもうとっくに『出遅れてる』。で、いじけて落ち込んでそれで何が変わるんだよ!?
それなら潔くきっぱり諦めた方が万倍マシだろーが!!」

うん、ここまで感情的に捲し立てたのはこの島に来て初めてだ。
最初はちょっと落ち込んだ理由とか聞いて無難に話を聞いて慰められたらいいな、くらいだったのだが。
もう、地雷を踏んだとかそういうのは開き直った。言いたい事は言おう。凡人にもそのくらいは出来るのだ。

「実力がねーなら今から身に付ければいいだろーが!人手が足りないなら誰かを頼れよ!!
勝負の世界は自分だけのモンかもしれねーが、アンタも!その勝負相手も!自分一人で全部戦ってる訳じゃねーんだぞ!!」

これ、我に返ったら凄い落ち込むだろうな……俺が。無理矢理相手に発破を掛けているようなものだ。

「ああ、ちょうどいい。俺はアンタと縁もゆかりもねーただの通りすがりだ。
どうせ他に誰も見てねーんだし、今ここで洗いざらい全部ぶちまけてみろよ!!
そうすりゃ少しはすっきりして頭も切り替わるだろーよ!!…それとも、そんな簡単な事もできねーとか言わねーよな!?」

よし、後で彼女に土下座しよう。死ななければだけど。だが、そうでなくても通りすがりの赤の他人だ。
――開き直った凡人は結構面倒臭いヤツだって見せてやる。

焔誼迦具楽 >  
 急に強気に捲し立てだした彼に、面食らう。
 けれど、その言い様にふつふつと怒りがこみあげてきた。
 衝動的にぶんなぐってしまいたくなる。

「――っ、なによ、簡単に言ってくれちゃって!
 誰かに頼れるなら頼ってる!
 一人で出来る事に限界があるのなんて、ずっと一人でやってきた私が一番知ってるわよっ!」

 そして、苛立ち任せに拳を振り下ろす。
 常世島謹製のよほど頑丈なはずの堤防が、大きくへこみ、砕け、真下に向かって大きな亀裂を走らせる。
 衝撃だけで堤防の下の砂が吹き散らされ、砂浜にも大きなクレーターが生まれた。

「つ゛ぁ゛ーっ!
 やっちゃった――」

 まき散らした破壊の余波に、血の気が引いた。
 衝撃によって体が大きくあおられるだろうが、彼にとって幸いだったのは、座ったのと反対側だという事か。
 もし彼の側で破壊が起きていたら、巻き込まれていただろう。

「ああもうっ、これどーすんの!
 貴方のせいでうっかりやっちゃったじゃない!」

 責任転嫁!
 自分が盛大に砕いた堤防を指して、頭を抱えた。
 

火光雷鳥 > 「ああ、そりゃ俺はアンタの『夢』も苦労も経験も勝負相手も…何の勝負かすら知らねーからな!!
それに俺はただの通りすがりだ。だから好きに言わせて貰うさ。そもそもさっき俺は失礼な事を言うかも、って前置きしたしな!!」

開き直り全開というか、何でこんなヒートアップしてるんだろうなぁ、俺。

「で?ずっと一人でやってきたから一番知ってる?頼れるなら頼ってる?そんなのアンタ以外に幾らでも居るだろ、言い訳にもなんねーよ!!」

と、そこまで捲し立てた所で――彼女が今度こそ拳を振り下ろした。――堤防へと。
瞬間、凄まじい衝撃と共に堤防が大きく凹み砕け、真下へと向けて巨大な亀裂が走る!
更に、その衝撃波だけで砂浜に大きなクレーターが……え?なぁにコレぇ?

(やっちゃった所じゃねーよ!?何!?何なのこの馬鹿力!?もしかしなくてもとんでもねー女の子!?)

凡人、流石にちょっと我に返る。そりゃこれだけの衝撃を見せられたらそうなるだろう。
ついでに言えば、こちら側に振り下ろされなかったのが幸いだ。もしそうなら巻き込まれて下手したら死んでた。
だが、思い切り余波で体が煽られて派手にすっ転んでしまう――ほ、本気で死ぬかと思った!

「いや、待て待て待てーー!!確かにアンタに失礼な事を言いまくったのは俺が悪い!それは土下座でも何でもする!!
――が、今堤防を砕いた?のはアンタの拳であって俺じゃねーから!!」

大丈夫?これ風紀とか出てきたりしない?むしろ堤防やばくね?と、思いつつ堤防破壊は自分じゃない!と、責任転嫁をきっちりたたき返す。

焔誼迦具楽 >  
「開き直るなバーカ!
 貴方が私を挑発するからでしょ!
 散々言いたい放題してくれたのも、私がこれやっちゃたのも、全部貴方のせいだからね!」

 子供の用にぎゃあぎゃあと、すっ転んだ彼を心配するでもなくわめく。
 ただ、その子供じみた様子が、さっきまでよりもよほど自然体に見えるだろう。

「あーもう、ほんとバカみたい。
 なにしてんのかしら、私ってば」

 そうして、また額を押さえてため息を吐く。
 少なくとも、先ほどまでの憤りは消えないまでも勢いを失ったようだ。

「はーぁ。
 ほんとにもう、どうしてくれるのよ。
 貴方のせいで――このままでいられなくなったじゃない」

 苦々しく表情を歪めて、反吐を吐くように言う。
 迦具楽は感情的になりやすいが、頭の回転は悪くない。
 一度落ち着けば、感情でなく理屈で判断してしまう、そういう性質をしていた。
 

火光雷鳥 > 「最後の堤防破壊だけは納得いかん!それは絶対にアンタの責任だからな!それ以外なら俺が謝る!!」

と、堤防破壊という一番マズいそれだけは彼女にきっちり責任を叩き返そうとしつつ、それ以外は素直に俺が悪いという事で構わない。
スッ転んだ状態から身を起こしつつも、何処か子供じみた様子はさっきの落ち込みよりずっと『らしく』見えた。

「そりゃこっちの台詞だ。堤防破壊は兎も角、俺だって初対面の相手にあんな失礼な発言をずけずけ言う度胸はねーよ」

まったく、お互いらしくないといった所か。しかし、俺ってこんな熱血だったんだなぁ、と一息。
――しかし、この堤防の惨状はマジでどうしたらいいのやら。凡人の彼にはどうしたらいいかさっぱりだ。

「ああ、じゃあ土下座でも何でもするさ。どのみち、このままで居られない、って今アンタが口にした時点で俺からすれば万々歳だ」

少なくとも落ち込み燻り無気力になるよりは数万倍マシだろう、と苦笑を浮かべて。
ともあれ、堤防破壊はどうしようもない。だからまず頭を深々と下げる。

「と、いう訳で。―――ほんっと!初対面なのに色々好き勝手失礼発言すいませんでした!!!」

と、まずはきっちりさっきまでの言葉を謝罪しよう。撤回はしない。言いたい事を言っただけだから。
だが、失礼なのは当然承知なのでそこはきっちり謝らないと恥知らずも良い所だ。

焔誼迦具楽 >  
「ふん、その割にはノリノリだったじゃない。
 あーもう、腹立つ。
 イライラしすぎて、暴れたいくらい」

 しかし、それでも彼のおかげで、何もしないわけにはいかなくなった。
 整理も折り合いもつかなくとも、とりあえず、何かするしかないのだ。

「ぜーったい許さない。
 場所が場所なら、泣いて喚くまで痛めつけてやるのに。
 ここが表の場所でよかったわね!」

 べ、っと舌を出して憎々しげに言う。
 忌々しそうに鼻を鳴らして、再び息を吐きながら破壊の跡を見る。

「これは、まあ。
 後で生活委員に連絡するわよ。
 そうしたらそのうち直してくれるでしょ」

 自分がやらかした跡を放置するのも気が引ける。
 匿名で連絡するくらいの義務はあるだろうと。
 

火光雷鳥 > 「うん、アンタが暴れたら俺が死ぬだけじゃ済まないのは馬鹿でも分かるから、勘弁な?」

少なくとも、ちょっとは彼女の気持ちを前向きには出来ただろうか?
勢い任せで論理立てた説得でも誠実な意見でもない。感情任せの言葉を叩き付けただけ。
そもそも、まだ17歳の――今まで落ち着いた日常で暮らしてきた少年に、そこまでの知恵は回らない。

(いや、まぁそりゃ許しちゃくれねぇよなぁ…ハァ…)

そして遅れてやってくる後悔。下げていた頭をゆっくりと上げる。
彼女の言葉に、それでも本気の罵詈雑言だけでないだけ上等だろう。
少なくとも、殺意レベルの視線や悪意、敵意を叩き付けられている訳ではない。

「いや、俺って凡人なんで普通に最初の一撃で死ぬと思うんだけど。あと、表も裏もねーよ!そもそも裏なんて俺みたいな凡人はいかねーの!」

落第街、とやらの事だろうか?そんな危険地帯に凡人が行く理由なんてまず無い。
ともあれ、彼女の言葉に正直ホッとした。やらかしたのは彼女だが――炊き付けたのは自分なのだし。

「そっか…それを聞いてホッとした。…あ、そうだ。一つだけ」

思い出したように顔を上げる。基本中の基本で、とても大事なことを忘れていたのだ。

「俺は常世学園の1年の火光雷鳥。アンタが俺を許さないのは構わんから、せめて名前くらいは教えてくれねーか?」

焔誼迦具楽 >  
「殺さないように痛めつける方法くらい、いくらでもあるわよ。
 それこそ、生きているのを後悔するようなやつとかね」

 殺意や敵意こそないが、苛立ちや憎さは、睨むような視線に感じられるだろう。
 それでも攻撃的な言動が出ないのは、彼の言葉に納得させられてしまったからに他ならない。

「――かぐら。
、エアースイムのプロスイマーをやってる。
 情けない負け犬だけどね」

 不愉快そうに答えながら、腰を上げると、その長髪をフードの下に収めながら彼を見下ろす。

「ライチョウ、変な名前。
 でもまあ、どーも。
 おかげさまで、少しはマシになったわ」

 唾でも吐きそうな調子で言うと、彼に背を向けて歩き出そうとするだろう。
 

ご案内:「浜辺」に火光雷鳥さんが現れました。
火光雷鳥 > (あーこれ、会う度にちくちく嫌味とか憎悪を向けられそうな気がしてきたぞぉ?)

まぁ、自業自得だからしょうがない。それも覚悟して発破を掛けたのだ。
荒療治どころか杜撰に過ぎるが、それでも彼女が停滞するのを止めただけ儲け者、だ。

「こえーよ!?こっちはただの一般生徒なんだからお手柔らかにな!!」

と、そこは普通に戦きながら言葉を返す。どうやら何時もの俺に戻ってきたらしい。

「カグラ?また雅というか…って、エアースイム?」

初めて聞いた、とばかりに目を瞬かせて。多分、それが彼女が『夢』を賭けた勝負の舞台なのだろう。
流石に、多少は調べておいたほうがいいかもしれない。もしかしたらまた会う事があるかもしれないし。

「だーかーら、事実だとしても、そういうのは自虐でもそうでもなくても言うもんじゃねーの!!」

と、また思わず言い返してしまうが、直ぐに一息。あと、変な名前なのはほっとけ!

「あーーうん、俺が出来るのはこのくらいだしな。――わりーなホント。気が利かない馬鹿でさ」

苦笑を浮かべつつ、こちらも帰ろうと立ち上がって。軽くズボンについた砂を両手で叩き落としつつ、先に背を向けて立ち去るカグラを見送り。

「『またな』カグラ!!」

彼女から不愉快に思われても構わない。会う時は会うのだろうし。
だから、またな、とそう告げて彼女と反対方向へと歩き出そうと。

ご案内:「浜辺」に火光雷鳥さんが現れました。
ご案内:「浜辺」から焔誼迦具楽さんが去りました。
ご案内:「浜辺」から火光雷鳥さんが去りました。