2021/04/01 のログ
ご案内:「浜辺」に雨見風菜さんが現れました。
雨見風菜 > 浜辺に二人の少女の姿。
ふたりとも、スイムスーツにS-Wingを装着している。

「いい日差しですねぇ。そう思いませんか、──ちゃん?」

音自体は不明瞭ながら、同行する少女への呼びかけだというのは分かる。
声の主、風菜は白地のシンプルなスイムスーツ。
足にはフライングスターⅨを薄ピンクとパールホワイトに塗り替えたS-Wingを履いている。

女生徒 > 同行する少女は、風菜の友人。
名称は不明……どういう単語どころか文字すら明白にできない。
だが、彼女を指し示すことはできるのが奇妙なところ。
これは、彼女自信の異能の影響なのだそう。

「全くよね。
 しかしあんたもエアースイムやるとは思ってなかったわ、『糸』で飛べるんでしょ?」

友人の少女のスイムスーツは黒に黄色の稲妻模様。
装着するS-WingはこちらもフライングスターⅨ。
配色は弄っていない。

雨見風菜 > 「飛べることは飛べるんですけど、直線飛行ですからね。
 エアースイムで『泳ぐ』のとは訳が違います」

ふわり、と浮いて。

「『触手』に乗ってだとゆっくり過ぎますし。
 ちょうど中間くらいでいい感じに気持ち良いんですよ」

優雅に華麗に、空を泳いでみせる。
初心者が習得に手間取るテクニックも難なくこなし、まるで熟練者の動きのようだ。
常世島大会の体験会が初めてで、今回が二回めだと言われても、にわかには信じられないだろう。

女生徒 > 「割と融通効いてないのね。
 まあ、確かに糸でエアースイムみたいにスイスイ飛ぶなんてできないだろうけど」

こちらもふわりと浮く。
だがその動きは初心者相応、ぎこちない。

「はー、あんたマジで本当に二回目?
 あたし四回目だけどこのぎこちなさよ。
 こういうのが普通なのよこういうのが」

前後左右に動いてみせるものの、動きはぎこちなく。
スケートでなんとか立って、動くことはできるような感じと言ってもいいだろう。

雨見風菜 > 「本来用途は傷の治療ですからね。
 私の想像力の限界かもしれませんが」

自身の想像力でできることが増えているのだ。
しかしながら、『糸』二本でエアースイムのような小回りの効く飛行をすることは未だ想像の埒外。
先にも言ったが、『触手』は動きとして小回りは効くものの遅すぎる。
出すときも出てくるのを待つより引っ張り出すほうが早いレベルだ。

「そんなものなんですか……。
 なんというか、魔力の海を、自分に張った魔力の膜でかき分けて泳ぐような感じですよ」

飛行に四苦八苦する友人に、自分なりの『泳ぎ方』をアドバイスする。
だが、風菜の動きはそれだけではなく。
以前から泳ぎが得意であることに加え、『糸』での飛行の感覚や、空間魔術の才能が加わってのものだ。
このアドバイスだって、その土台があったからこそ無意識にできているようなものなのだ。

女生徒 > 「あー、なるほど?」

S-Wingによって自身に張られている魔力の膜を意識する。
腕で空を掻けば、先程よりも動きがよく感じられる。

「マジだ……ぜんぜん違うわ。
 いや、でもそれでもあんた体を微動だにせずスイスイ飛べてんのおかしいでしょ」

風菜の恵まれた土台に対して、彼女は。
水泳は人並み、空を飛ぶ異能も魔術も持たず、その才能もない。
凡百の初心者と同じスタート位置である以上、致し方ない所だ。

雨見風菜 > 「魔力の海の流れを膜の魔力で誘発させるようなものです。
 一から全部自前でやるよりは、S-Wingが全部サポートしてくれるようなものですし楽ですよ」

自分で言いながら、気付く。
S-Wingなしでも……速度低下したりセーフティがなくなるだろうが、空中遊泳できるのではないだろうかと。
とはいえそれはまた別の機会に試せば良いことだ。

「いやぁ、飛べると楽しいですねエアースイム。
 今まで興味なかったのが勿体ないと思えるくらいに」

優雅にして、美麗な『泳ぎ』。
ピンクがかったパールホワイトのコントレールと相まって、エアースイムに疎い人間ならば魅了されること間違いなしだろう。

女生徒 > 「マジでぇ?
 まあ、魔術の才能のないあたしでも飛べてるから間違いない気はするけど」

そうやって、風菜のアドバイスを試してみようとする。

だが。

「どわぁっ!?」

制御を間違えたか、姿勢を崩して海面スレスレに吹っ飛んでいってしまった。
経験者ならば、初歩すらおぼつかないのに無茶をするものだと評するだろう。
それほどまでに風菜のアドバイスは、その間の積み重ねをすっ飛ばしてしまっていた。

雨見風菜 > 「ああっ、──ちゃんっ!?」

無論驚く。
そりゃあ自分のアドバイスを実行しようとした友人が制御失って吹っ飛んだのだ。
慌てて彼女の後を追いかける。

少しして、彼女が海の中から上ってきたのを発見。

「大丈夫ですか?」

女生徒 > 「ぺっぺっ……何とか。
 てか今の絶対初心者がやれる制御じゃないでしょあんなの」

海水でびしょ濡れになりながらも、何とか海上に復帰。

「ちょっと浜に戻るわ……疲れた」

言葉通り疲れたような素振りで、浜辺に向かう。

雨見風菜 > 浜辺に戻った二人。
風菜は持参していたコーヒーを彼女に勧める。

「どうぞ、──ちゃん。
 ごめんね、私が難しいアドバイスをしたばかりに」

風菜にとっては、あのアドバイスはさほど難しい内容ではなかったつもりだった。
だが、制御を失って吹っ飛んでいくのは、初心者のミスによくある話であることは認識している。

女生徒 > 無言のまま、コーヒーを受け取り啜る。

「美味いコーヒーに免じて許す。
 まあ、あんただって善意でしたアドバイスでしょ?
 あんたが規格外で、あたしが人並みだっての忘れてた事故みたいなもんでしょ」

風菜から受け取ったコーヒーを堪能しつつ。
無論、体についた海水はここに来るまでに風菜が回収している。

「それにしても、このコーヒー本格的よね。
 缶とは違うでしょ絶対」

そう風菜に問いかける彼女の顔には笑顔。

雨見風菜 > 「はい、そうですね……」

カラッと許してくれた友人に感謝しつつ、それでも自分の失態は自分の失態だ。
体験会で多少の練習だけでここまで泳げるようになって、彼女からおかしいレベルと指摘されていたにも関わらずだ。
まあ、失敗は仕方ないことだ。
彼女も、死んだわけでもなければこうやって許してくれている。

「ええ、これも最近できた趣味ですね。
 色々あって、自分で淹れるようになったんですよ」

女生徒 > 「へー。
 あんたも、色々交友関係広げてんだねえ」

そうして飲みきって。

「さ、そんじゃあ再開しようか。
 あんたに追いつくのは無理でも、ちょっとでも上達したいし」

雨見風菜 > 「ええ、この島に来て一年間、色々ありましたしね」

S-Wingを履いた友人に続くように、自分も装着して。

「頑張ってください、──ちゃん。
 うまく飛べるようになれば、きっと楽しいはずです」

そうして。
二人は満足行くまで空を泳ぐのだった。

ご案内:「浜辺」から雨見風菜さんが去りました。