2021/11/20 のログ
ご案内:「浜辺」に狭間在処さんが現れました。
■狭間在処 > 親切な少女に道案内をされ、無事に青垣山を下山して別れてから数日――…
なるべく学生区などを避けるように進んでいたら、浜辺らしき場所へと迷い出てしまった。
それはまぁ、いい……いいのだが。
(…どうしてこうなった…?)
男の手には釣竿とクーラーボックス。
迷い込んだ自分を、何を勘違いしたのか親切な釣り人が道具を貸してくれたのだ。
…断ろうと思ったのだが、相手が老人だった為かやり取りが上手く行かず…誤解され今に至る。
(…そもそも、海を見るのすら俺は初めてなんだが…。)
釣りのルールとかセオリーとか何も知らないんだけれど。
一応、親切な老人がついで、とばかりに初心者丸出しの自分に簡単なレクチャーはしてくれた。
(…いや、暢気に釣りをしている場合ではないんだが)
なるべく表側の人々と関わらないように、ひっそりと落第街に戻る道筋もあっけなく頓挫しているこの状況。
流石にこのまま突っ立っている訳にもいかないので、渋々人気があまり無いポイントを探して歩く。
休日なのか、人の姿もそれなりに――…勿論、視線を合わせたり声を掛ける事はしない。
そもそも、表側の人達がこんなに居るのがそれだけで落ち着かない気分になる。
…こういうのを陰キャと言うんだろうか?よく分からんが。
■狭間在処 > しかし、何だか島巡りみたいな状況になっているな――と、思いつつ海を眺める。
…広い、大きい、青い、――あと磯臭い、というか独特の香りがする。
まぁ、これはこれで得難い経験だとは思う。とはいえ、何処か気が急いているのも事実。
(……まぁ、一度くらいなら良い経験、か。…と、この辺りでいいか)
人気があまり無い岩場が多い一角をポイントと決めたのか足を止めて。
クーラーボックスを下ろして釣竿もセット。餌も分けて貰ったのでそれを針に括り――…
「……ッ!」
投げ方は他の釣り人の見様見真似だ。何せこれが人生初フィッシング。
と、いう訳で――いざ、参る…!! [3d6→3+4+5=12]
■狭間在処 > ③任意の魚 [1d10→7=7]
■狭間在処 > 暫くして当たりらしき引きが来た。中々に力強い…と、思いながら初心者なりに考察する。
…引きのタイミング、足腰の踏ん張り、その他諸々を考えつつ後は勘で引き上げる!!
…釣れたのは、中くらいの大きさをした、鱗が何故かヌメヌメした――カジキマグロである。
(…釣れた…!が、何だこれは…鱗?がヌメヌメしているような…)
男はそもそも魚の種類などは知らない訳で。鼻先が尖ったシルエットの魚に、感嘆とも疑問とも付かぬ声を内心で漏らす。
が、空中で暴れていたかと思えば――その鋭い鼻先がこちらへと向いた…嫌な予感がしたと同時、そのまま突進してきた!!
「……!?」
反射的に釣竿を片手持ちへと切り替えつつ、右手で鼻先を寸前で掴み取るが――鼻先もご丁寧にヌメヌメだ。
なので、素手で掴み取ったはいいが、そのまま滑ってその鋭い鼻先が男の目玉へと突き刺さるコースで進み――…
(……くっ…!?)
咄嗟に顔を逸らして鼻先を交わしつつ、そのまま口元をガッ!と掴んで岩場に叩き付ける。
…すまん、わざとじゃないんだ。条件反射でつい…。と、心の中で合掌をしつつ、釣り針を外す。
今の一撃でクリティカルヒットしたのか、カジキマグロは動かなくなった。一先ずクーラーボックスへ…
(……入らないんだが。)
それでも無理矢理入れた。結果的に鼻先が飛び出してしまったが、まぁ良しとしよう。これ以上どうしようもない。
■狭間在処 > (しかし、危なかった…これが釣りなのか。釣り人というのは命懸けなんだな…)
とてつもない勘違いをしつつ…その辺りの知識が殆どゼロなのでしょうがないのだが。
ちなみに、遠くの家族連れやカップルは小振りで危険性も少ない魚を和気藹々と釣っている。
…が、周囲に目線を向けないようにしているので男が気付く事は無かった。
(…矢張り釣り初心者の俺には荷が重かったか?…むしろ、あの老人が凄いのだろうか?)
どう見ても普通の好々爺にしか見えないご老人だったが。
人は見かけによらないのは確かだが、実は凄い技術の持ち主なのかもしれない。
(……もう一度やってみるか。釣果というならばこれで十分そうでもあるが…。)
ちらり、とクーラーボックスに詰め込まれて鼻先だけが自己主張の如く飛び出したカジキマグロを一瞥する。
…鼻先もだが、矢張り鱗のヌメヌメが気になる。アレのお陰で先ほどは危なかった訳で。
(…油断したらこっちが食われるくらいの気持ちがいいんだろうか。)
もはや何かのバトルになりつつあるが、青年は至極大真面目である。傍から見たら天然かもしれない。
ご案内:「浜辺」に狭間在処さんが現れました。
■狭間在処 > まぁ、気を取り直して針の様子を確かめてから曲がっていない事を確認して再び餌を付ける。
再び、そこらの釣り人の見様見真似の投擲――後はひたすら待つだけだ。
「……。」
釣りはのんびり楽しむものだ、と先ほどの釣具を貸してくれた老人は言っていた。
…のんびりしていたら先ほどは目玉を貫かれていたのだけれども。
なので、緊張感は微妙に漂わせたまま、無言で(そもそも喋れないが)じっと海面と浮きを見詰めて。
(――…来た…!!
再び手ごたえあり。さて、今度はどんな魚が釣れるのだろう? [3d6→1+2+3=6]
■狭間在処 > ③任意の魚 [1d10→6=6]
■狭間在処 > 今度は手応えが心持ち軽い――釣り上げたのは、マグロ…小振りで何故か凄いキラキラしているけど。
(……これは…何だったか…あぁ、そうだマグロだ)
それくらいは知識にはあったらしい。ただ、こんな小振りの種類がいるのだろうか?
いや、それより凄い輝いているのだけど大丈夫なのだろうか?
取り敢えず、今度は抵抗も無く釣り上げれば、口元の針を外してクーラーボックスへ…
…先客のカジキマグロが占有していたのだった。それでも構わずキラキラマグロ(小)を放り込む。
(…今度は危険は無かったが…何で輝いているのだろうか。普通に目立ったら他の魚に食われないか?)
と、素朴な疑問を抱きつつ。太陽の光でキラキラ具合が矢鱈と激しい気がする。
■狭間在処 > (…まぁ、これはこれでやり甲斐があるのだろうな。)
楽しい、と言えるかどうかはよく分からないのが本音で。
それでも、これはこれで中々奥が深いのだな、と思えるくらいにやり甲斐はある。
…きっと、落第街に居たままの自分では一生縁が無かったかもしれない。
落第街の外に飛ばされたのはアクシデントによるものだが、結果的には良かった――のだろうか?
(まぁ、矢張り早く戻りたい気持ちは変わらないんだが…。)
表の人々が周囲に居るのが落ち着かない。自分が場違いの異物のようで。
こうして釣りはしているが、心の何処かでずっと警戒心が抜け切らない。
まぁ、今は釣りに集中しよう。これはこれで見方を変えれば良い訓練になるかもしれない。
そのまま、餌を付け替えて3投目…少しコツを掴んできたのか、今度はやや遠くに投擲した。 [3d6→1+2+4=7]
■狭間在処 > ③任意の魚 [1d10→9=9]
■狭間在処 > 暫くして手応えあり――が、今度も軽い。気のせいか先ほどのマグロよりも。
ともあれ、一応は慎重に…最後は一気に引き上げてみれば。
(…小さい…透明の…キラキラ輝く……んん?)
そう、クラゲである。ただしクラゲを見るのは勿論初めてで、しかも知識に無い。
矢鱈とこれも光り輝いているな、という気持ちで釣り上げたクラゲを針から外そうとするが――…
「――…!!」
その小さな触手が男の手首辺りに巻き付いたかと思えば、急に痛みと共に痺れが全身を襲う。
そう、クラゲはクラゲでも――シビレクラゲである。
(…油断…した…!!)
初見の海の生き物には最大限の警戒をすべきだというのに。
心の中で悔しげに呟くも、シビレが思ったより強力だったようで。
そのまま、バランスを崩して海へと真っ逆さまに落ちて――…
バシャーン!!
と、派手に水音が一つ。ただし周囲にあまり人が居ない岩場ポイントだったので、おそらく誰も気付いていない。
(…不味いな、思ったよりこの痺れ…毒の類か?強力だな…。)
海中に沈みながら変に冷静なまま考え込む。人造怪異でもクラゲの毒には耐性が無いのだろうか?
いや、己は失敗作だからあまり耐性が無いのかもしれないな、とそんな事を考える間に沈んでいる訳だが。
■狭間在処 > すぐそこの海に転落した為か、水深は思ったほど深くは無い…それでも5メートルくらいはあるだろうか?
どちらにしろ、痺れて体が動かないまま仰向けに横たわるように水底に到達して。
(……成程、これが海中の景色というものか。今日は色々と体験してばかりだな…。)
幾ら失敗作でも怪異の端くれ、そこらの人間より水中で長く息は止めていられる。
だが、それでも数分程度先が長いだけだ――このままだと窒息して溺死するしかない。
助けは――期待しない方がいい。自力で何とかするなら…魔術はまだ使えないし、異能しかないか?
(ここで『四凶』を使うのはそれはそれでリスクが高いな…。)
異能は別に珍しく無いとはいえ、極力周囲の目に晒すような事は避けたい。
仮に異能の制御が外れたら周囲に被害も及ぶ。それは避けたいものだ。
とはいえ、四の五の言っていられない状況でもあるのだが。
(怪異の擬い物が溺死…か。お似合いの末路ではあるが…。)
■狭間在処 > とはいえ、死に逃避するにはまだ早い。
仕方なく異能を使おうと思った所で、痺れが少し抜けているのに気付いた。
(……痺れが軽くなった?…成程、中途半端に怪異の身の上だとこうなるのか)
肉体が毒を克服したのか、あるいは毒を緩和したのか。
どちらにしろ、そろそろ息を止めるのも限界が近かったので有り難い。
一つ、気合を入れて一気に水中で身を起こし――両足で思い切り海底を蹴り付ける様に。
水中の抵抗も物ともせず、勢いよくその身は浮上し――やがて、海面を突き破るように姿を現す。
「…ッ、…ハァ…ハァ……ハァ…。」
そのまま岩場に着地すれば、流石に苦しいのか呼吸を荒げていて。
暫くはそのまま、全身濡れ鼠なのは置いておいて呼吸を整える事に専念する。
哀れ溺死、という間抜けな出来損ないの末路は何とか避けられはしたようだ。
■狭間在処 > (…衣服の換えは無いんだけどな…それに――)
コートのポケットを探って。取り出したのはずぶ濡れで使い物にならないメモ帳とペン。
意思疎通が手話か筆談しかない青年にとって、その片割れがこうして失われたのは痛手だった。
(…服もペンもメモ帳も何処かで調達しないといけないんだが…。)
そんな宛ては残念ながら無い。まさか街中までのこのこと出向く訳にもいかない。
むしろ、それを避けて遠回りのコースをわざわざ選んでいるのだから。
(まだ日が高いから衣服は乾かせるだろうけど……さて。)
都合良く手話を習得してる者が居る訳も無い。
あまり表の人間と接触する気は無いとはいえ、矢張り困るものは困る。
一先ず、コートは脱いで軽く絞るようにして水気を取りながら、広げて岩場の一角に置いておく。
クラゲは――まだ居た。今度は触らないように気をつけてリリース…正直もう見たくない。