2021/11/22 のログ
ご案内:「浜辺」にレイチェルさんが現れました。
ご案内:「浜辺」に園刃華霧さんが現れました。
■レイチェル >
昼下がり。
少しずつ冬が近付いてきてはいるが、今日は随分と暖かい方だ。
潮の香りが鼻をくすぐる中で、大きく伸びをする。
近場の店でレンタルしてきた黒のライフジャケットを着込めば、
ちょっと暖かすぎるくらいだけど。
そうそう無いとは思うが……海に落ちたりしたら洒落にならないわけで。
端末に手をやり、送信したメッセージを見返す。
――――――――――
なんかイベントやってるみたいだし、
釣りでも行かねぇか? 何か美味い魚釣れるかもだし。
話もしたいからさ。
道具とか借りとくから、そのまま来てくれれば良いぜ!
――――――――――
華霧に送ったメッセージだった。
今までに送ったメッセージの中でも、かなりシンプルなものとなった。
話したいことは、直接会って話せば良いと思ったし、
何より気軽に……色々あったけれど……気軽に、接したいと思ったからだ。
「さて……」
華霧と魚、というと。
前に二人で水族館に行った時に、華霧が魚をすごい目で見ていたのを思いだす。
締まらないデートだったけど、悪くなかった。
「今日はまぁ、見るだけじゃねぇし……いっか」
今日は浜焼きセットもある訳だし、
華霧が満足してくれれば嬉しい。お腹膨れるほど釣れるかは分からないけど。
随分と世話になってるし、なるべくなら良い魚を釣り上げて渡したいな……
などと思ったり、最初の一言どうしようかな、と思ったり。
頭の中で色々と考えを巡らせながら、穏やかな時の中で待ち人を待つ。
■園刃華霧 >
釣り
釣りである。
無論、そんな心得などというものはない。
しかしまあ、やろうって言われたしなあ、と。のんびり考えて結局普通にやってきた。
……が
用意ってなにすりゃいいんだ?
釣り竿、は流石に知ってる。
あとはよくわからん。
まあよくわからんので、とりあえず適当に借り出した釣り竿を担いで行くことにした。
「さッテ……えート、どこダっけ……コの辺り、ダったヨーな……?」
ぶらぶらと雑に歩きながらあたりを見回す。
ん、なんかそれらしきの発見……
なんだ、あの服?
首を傾げた。
■レイチェル >
「よう、華霧」
見れば、やって来たやって来た。
よ~く、見知った顔。ぶらぶらっと、適当な様子で歩いてくるその姿。
見ていて、思わず笑みがこぼれた。
「お、釣り竿は借りてきたんだな。
お前の分も餌とかライフジャケットとか借りてきてあるし、
早速やろうぜ」
と、声をかけて彼女の様子を見やる。
見やれば。
めちゃくちゃ首を傾げている。
傾げまくってる……!
「……あー。ひょっとして。釣り、初めてか?」
視線の先にある自分のジャケットと華霧を交互に見れば、
ほい、と。華霧にもライフジャケットを渡す。
結構暖かそうな、黒のライフジャケットだ。
オレが着ているものに比べると、ちょっと小さい。
「とりあえず、これどーぞ。
落ちたら大変だからさ。
これ着とけば、落ちても浮き輪みてーに浮かんで、安全だからさ」
■園刃華霧 >
「オー、チェルちゃん」
向こうから声をかけてきた。
あー、やっぱりチェルだ。ほいほい、今きたぞー、と手をふる。
「ん? あー、まァ……釣りは、初メて、だなァ……」
そもそも、水辺なんて限られた場所で生まれ育ったし、
仮に行ったとしてもろくなものがいなかっただろうし。
そんな高級なことをした覚えはない。
「ん、コれ着ルの? あっタかソ―ね。
ハぁ……浮き輪、ネぇ……?」
しげしげとライフジャケットを見つめる。
こんなんがねえ……ま、いっか。
とりあえず、着方自体はややこしそうでもないし、さくっと着る。
「ンで、えーット。
どースんの、こレ?」
ちょっと曲げれば折れそうな気がしてならない、釣り竿とかいう棒をブンブン振って聞く。
■レイチェル >
その声を聞くだけで、心が晴れて元気になった。
華霧の声は、日常の象徴だ。
「やっぱりかー。ってまぁ、オレもそんな慣れてはねーんだけどな」
頭を掻きつつ、笑う。
『遊んでる暇あったら銃をまともに扱えるようになれ』だとか
言われてきたし、こっちに来てからは、仕事が主だったし。
とはいえ、この日に向けてばっちり復習はしてきた。
「そうそう、落ちたら危ねーからな」
華霧がさくっとライフジャケットを着ている間に、
彼女が投げる分の釣り竿に、餌と重りをつけておく。
「餌とか……仕掛けはつけておいたから、
後は海に向かって投げればいいぜ。
あんまり遠くまで飛ばさなくてもいいから、ちょっとやってみな」
いわゆる、ちょい投げ釣りってやつ。
そう口にして、先にやって見せる。
「一旦仕掛けが底についたら、後はちょいちょいっと重りを持ち上げるように
動かしたりして待ってれば良いからさ。こう、海の底を探る感じで……」
そう口にして、動きを見せてみる。
■園刃華霧 >
「なーンだ、チェルちゃんも慣レてなイのか」
けたけたと笑う。
地味にちょっと心配して損した。
まー、そんな趣味がある、なんて聞いたこともなかったしなー。
そもそもやってる暇あったん?って感じだし。
「ハー……マジで投ゲんノかー……
で。待ツの?」
レイチェルがやっているのを見ながら、妙に感心した声をあげる。
んー……簡単そう……か……?
ま、やってみるしかないよな
「ホイっと」
そんなわけで、まあえいやっとぶん投げる。
いや、軽くでいいって言うし加減はしてるけど。
で、ぽちゃん、と軽い音を立てて針が沈む。
ふーん……?
「待ツ、かァ……」
待てっかなー、とちょっと思いながら。
ぷらぷらと小さく竿を揺らしながら、一応待つ姿勢はしてみる。
■レイチェル >
「そーいうこと。ま、慣れてないもん同士だし。
いい具合に魚が釣れるか分かんねーけど、まぁ楽しめれば良いかって」
と、まぁ口にはしつつ。
互いにけたけた、あははと笑い合う。
内心は魚を沢山釣って食べさせてやりたいという気持ちが強い訳なんだけど。
まぁ、そんなこと口にして釣れなかったら申し訳ないしな。
「おう。後はまあ、時折動かしたりしつつ、待ってりゃいいさ」
華霧が投げる様子を見れば、笑顔を見せて。
穏やかな風が潮の香りを運んで、二人の横から吹いて来る。
太陽がばっちり出ていて良かった、と。
天気に感謝だ。
こうして華霧と穏やかな時を過ごせる。
「……こういうの、趣味にするのも良いかもなーって。
今まであんま、趣味とか無かったからさ。
華霧は……どうなんだ? 今更だけど、さ。
今は何か趣味とかあんのか?」
何を話せばいいか……いざとなると、どうしたものかと悩んじまうものだ。
だから少ししてから、口を開いた。
きっと二人が出会った頃には交わしていただろう会話。
それを改めて。改めて、投げかける。
ずっと遠い記憶の彼方――海の底を探るように。
ちょっとぎこちないけれど、それでも言葉を投げかけた。
■園刃華霧 >
「楽シむ。楽しム、かー……」
正直にぶちまければ、今の所、楽しみがわからない。
いや、正確には楽しいかわからないってとこだけど。
いきなりそんなこと言ってもアレだし、まあやってみようの気持ち。
「待つ、ネぇ……」
どうするかなーって思ったときに、ふと思い出す。
魚じゃなくて、ロクデナシを釣った経験はあるなあ。
なるほど、あんな感じか。
「ンー……」
息を吸い……止めて、完全に動きを止める。
空気に溶け込むようなつもりで……
こんなだっけ?
「ァ? 趣味?」
擬態があっさり溶ける。
まあ別にマジにやんなくてもいいだろうし、いっか。
「ン―……別ニ……
飯食っテ、寝ルくらイ、ダしなァ?
面白ソーなモン、探シたりハすッケど……趣味カって言わレるとナ―……」
んー……と、ちょっと考えてみるも、何も浮かばなかった。
息抜きの間に人生やってるみたいなもんだし、まあそんなもんかなーって思ったりもする。
「ン。チェルちゃんっテば、ネコマニャン集め、とカしテんじゃン。
アーいうノも趣味ってモンじゃネーの?
しらんケど。」
若干ズレてるかもなー、とは思ったけれど。とりあえず言うだけ言ってみる。
でも確かに、仕事人間!って感じだったし他に趣味らしきものっていうの、あんまなさそうかもなあ。
■レイチェル >
「せっかくのイベントって話だしな、チャレンジチャレンジ。
もしかしたらやってる内に楽しいって思えるかもしれねーし」
楽しめなかったら申し訳ない。
なるべく、いい感じに魚が釣れてくれればな。
奥深い世界を味わえば、もっと色んな楽しさもわかるんだろうけど。
そこんとこはオレとしても、まだ知らない世界だし。
一生懸命……多分、こう気配を消そうとしているのだろう。
そんな風にしている華霧を見れば、思わず笑みをこぼしつつ。
「そのへんは変わらず、かぁ。
ま、オレもあんま趣味らしい趣味はねーし、一緒に色々探していけたら
楽しいことあるかもなー」
華霧は多分、今のままで満足って言うんだろうけど。
もっと色々知ってほしいところはある。
いやまぁ、知った方が良いのはオレもなんだけどさ。
「あー、ネコマニャン集め。あれも確かに趣味かもしれねぇな!」
言われてふと、気がつく。確かに、好んで集めているのだからそれも趣味だ。
ネコマニャン集めは、日々の心の癒やしだ。
「昔っから猫が好きでさー。
小さい頃はペットショップの店員か、魔法学校の先生になりたい!
な~んて言ってた時期もあったくらいだ。
でまぁ、ネコマニャンは……こうお世辞にも純粋に可愛い感じじゃねーんだ
けど、どうも憎めない感じが好きになっちまってな」
ちょいちょい、と重りを動かしつつ。
待つ、というのも大変なものだ。
元々オレも、じっとしているのは苦手なタイプだし。
とはいえ釣れた時の喜びは大きいし、何より華霧と喋れるからこの瞬間は、
満足してる。
そんなことを思いつつ、華霧の方を見やる。
「そういや、華霧は何か将来やりたいこととか、あるのか?」
ペットショップの話を口にして、思い出した。
そんな話、そういやしたことなかったな。
■園刃華霧 >
「マ―、そーネ。
なンか釣レりゃ、マた変わルかも知れンしナ」
まあ、よくわからない以上、やってみないことには始まらない。
意外に面白ければみっけもんだな、くらいの気持ちでやればいいだろう。
適当にそんなことを気楽に考えて、釣り竿をたまに動かす
「どーセ、アタシは普段かラ息抜キばッカしてルよーナもんだシなー……
人生が趣味ミたいナもんカもなー?」
真面目に考えれば考えるほど、どうにも虚無い。
なので、ちょっと思考を打ち切って雑に結論づける。
まあ、楽しけりゃ何だっていいんだけどさ
「へー、猫、ねェ……
飼ってタこと、トかナいの?」
なんとはなしに聞いてみる。
自分は?といわれれば、もちろんない、と断言できる。
そんな余裕なんてなかったし。
なんてことを考えながら……さて、もう一度気配を消し直し、と。
あの頃の……研ぎ澄まされたような感覚を……
「……将来?」
感覚を探り探りしつつ、言葉に答える。
うん、今度は気配がだいぶ消えたままだ。
「ンー……考えタことモねーナぁ……
コのママ、じゃネ?」
未来を考えたことはない。
考えることもない。
ただ、今のまま生きていくんだろうな、という気持ちしかない。
「そウいうチェルちゃんハ。なンか考えテんノ?
……………やっぱ、外?」
ちょっと考えて、聞くだけ、聞く。
■レイチェル >
「そーそー、そういうこと」
色々考えてもしょうがないと思って、
こちらもまた、気楽な感じで返す。
「人生が趣味、ね。
じゃ、まぁこうして一緒に趣味《じんせい》、楽しんでるわけだ。
一緒に趣味楽しんでくれて、ありがとな。感謝してもしきれねーよ」
いい言葉を言うなー、と感心した。
華霧はそう思ってないかもしれないけど、それって結構素敵なことかも。
そんな思いを込めて、そう言葉を返した。
入院した時に心配してくれたあの日のこととか、
血を分けてくれた日のこととか。
ずっと思ってることも添えて。
「飼ってた……って言っていいのかな。
ちょっとの間、な。捨て猫を拾ってきたことがあってさ。
親には猫なんか飼うなー、って言われてたから、
餌をやりながらこっそり面倒見てたんだ。
いつの間にか居なくなっちゃって、すげー寂しかったな……」
憎めない顔をしていた猫のことを思い出す。
あの後、元気で暮らしていただろうか。
「このまま、か。そうだな。華霧ならそういうと思ってた。
オレだって、このままが良いよ」
そう口にしながら、次に出てきた『外』という言葉に思わず、
息を呑む。予想外の言葉だった。
少しだけ考えてから、告げる。
「……島の外から、連絡は来てる。何年か前からな。
五代先輩、居ただろ。
あの時、あの人経由で島外の治安維持組織に誘われてな。
結局、行かなかったんだけど……ここ最近また、組織から連絡があってな」
風が、金の髪を靡かせる。その表情は、知れない。
■園刃華霧 >
「別に、ソんな感謝サれるホどのコっちゃネ―ぞ?
おオげサなんダって、チェルちゃんはサー。
モしくハ、硬すギ」
けたけたと笑う。
もっと気楽に、力を抜けばいいのになー
……それが、アタシを形作っている結論なんだし。
「捨て猫、カー。
なーンんか、チェルちゃんラしーナ。
お節介ッテ―か、ン―……なんダ、世話焼きってホーか?
せっかくダ。今度は、ちゃンと飼っテみんノもイいんじゃナイ?」
さらにけたけたと笑う。
まあ、ありそうな話だ。
思い出したついでに、取り戻すのも悪くはない
「まー、考えテなイってダけなんダけどサ―。
こー、ピン、とコないッテっかサ?」
首をかしげる。
今の生活自体、なかなか想定の範囲外なのだ。
それより先のことなんて、もっと想像もつかない。
「アー、五代パイセンな。
アタシは、アんま関ワんナかッタけど……アー……
デも、ちっトだけアったか。ま、ソりゃドーでもイいな。」
言われて、懐かし顔を思い出す。
旧世代は今よりもさらに一曲も二癖もあるツワモノが多かったようにも思う。
その中でも五代は……まあ、割とまっとうにヤバいタイプだった気がする。
「ハは、結構チェルちゃんのメンドーみてタもんナーあの人。
誘いモ、アってオかしクないナ。確かニ、確カに。」
ははは、と笑う。
「……迷ってンの?」
笑いを切って、聞いてみる。
■レイチェル >
「ははっ、悪い悪い。
こんな日々が送れるなんて、思ってもなかったしな。
友達だとか……それ以上に、また誰かを……いや。と、とにかく!
そういうもんって、この島に来るまでちゃんと作ったことなかったからさ。
こうやって気軽に誘って、そしたら当たり前に来てくれるのって、
すげー嬉しいんだよ」
気楽に、そう。『ゆるく』。華霧自身が言ってたもんな。
確かに、華霧からしたら硬すぎるのかも。
でも不器用だから、
こんな風にとにかく感じたままの言葉でしか伝えられねーんだ。
「確かにね。猫、ちゃんと飼ってみるのもいいな。
そん時は名前考えるの手伝ってほしいぜ」
ネーミングセンスっつーのは本当に無いもんだから。
その時は、華霧にでも聞くことになりそうだ。
「オレにとっても、華霧にとっても。
今の生活って、昔からは考えられねーことだろうしな。
じゃあ将来は……つっても、なかなか分かんねーわな、正直。
でもま、分かんねーからこそ楽しいってのは間違いなくあるよな」
五代先輩の話を聞きつつ、頷く。
自分でも、懐かしい名前を出したもんだと思う。
そして。
笑いが途切れた後に、投げかけられた問い。
ほんの少しだけ、沈黙した。
英治に気持ちを告げられたあの日の夜。
ほんの一瞬とはいえ、オレが居なければ華霧はもっと幸せに。
英治や他の奴らと幸せにやっていけるんじゃないかって思っちまったのは
確かだから。
それでも。
オレは、華霧へ穏やかな笑みを見せる。
精一杯の笑みを見せる。
悩みなんかしねぇ。
考えは、最初から決まってるからな。
「話は断ってるよ。
オレはここで、大切な学園のみんなと沢山の時間を一緒に過ごしたい。
キッドや理央、真琴に貴家、英治。他にも放っておけねー奴らが居るし。
それに。
華霧とは、約束しただろ。『一緒に』気持ちを探したいって。
だから、オレは行かねぇよ」
約束なー、と。釣り竿を片手で持ちつつ華霧の方へ小指を差し出す。