2021/11/23 のログ
園刃華霧 >  
「はー、ナるほドなあ……
 言いタいこトは、わかラんでモないカ。
 けード、やッパ硬いッテ。ま、ソこが良いトこか?
 チェルちゃんは真面目ニ、アタシは不真面目ニってナ。」

けたけたと笑う。
まったく、よく出来てるというもんだ。

「ア? アタシ?
 手伝ってモいいケど、ネーミングセンスなンて無イぞ?」

人どころか、動物にすら名前をつけたこともない。
そもそもボキャブラリーがかなり偏っている。
ネーミングセンスなんてものは、まあ……予想できるようなものだ。

「アタシはともカく、チェルちゃんはナんとナく将来のイメージ湧くンじゃナいの?
 そっカー。ソんなモンかー……」

色々あったのは聞いたけれど、師匠も得て、なんとなく方向性とかは出来て。
まあ常世にきちまったのは想定外だろうけれど、なにするかってイメージは持ってるもんだと思ってた。
案外わかんないもんだなぁ……

「わかンないかラ、面白い、カ。
 ン―……まァ、そーっちゃアそーカ。」

日々、面白く過ごそうとしているのだし。
先がどうなるかわからないっていう楽しさもまあ分かる。
ただ、やりたいことってなると……どーなんだろうなあ?


「……あノさー。や。アタシの誤解とカなら、イいんダけど、サ?
 わザわざ、ソの話シたってコたァ……ナんか、あンじゃナいの?」

外。五代からの誘い。
行く気がない、とそういう話で済ませばいいものを、あえて誘いがあったことまで言っているんだ。
そこに、なんか悩みとか、葛藤っていうのか、そんなもんがあるんじゃないのか、と思う。

……なんなら。
自分が負担になっているなら、それは――

「ヤだぞ、アタシ。
 チェルちゃんの足引っ張ッテんナら。」

なんとなく、竿が引っ張られてるような感覚を感じながら。
あえて相手はみずに。抑揚も、ただ普通に……そういった。

レイチェル >  
「ま、そうかもな。オレとお前、凸凹っつーか。そんな感じだよな」

ん~、こういう考え方がいけねぇのかな。
まぁ、そうだとしても。自分の柱っつーのはなかなか簡単に変わらないもので。
こうして話している内に変わっていくもんかな、とか。
そんな風に思ったりした。

華霧の『気楽さ』が何処から来てるのか知ってるから。
そのことを直接華霧から聞いてしまっているから。
だからこそ、この手の話には簡単に言葉を返せなくなってしまっている。

ネーミングセンスの話を聞いて、確かにそうかもなー、なんてちょっと
意地悪く笑って返しつつ。

続く話に、思わず華霧の方を見やった。
華霧は、こちらを向いていない。
何となく、オレはオレで海面を見やる。
釣り糸がピンと、張ったのを感じながら。


思わず吐露してしまったことに、後悔の念を覚える。

「……足、引っ張ってるなんてことは絶対にない。
 華霧には寧ろ、助けて貰ってばっかりだ。
 お前が居なきゃ今のオレはいねーよ。そこは、まず伝えとく。
 
 華霧、こんな話をしたのはさ。
 優しいお前が多分気づいている通り、迷ってたことがあったからだ。
 お前は、お前がオレを縛り付けてるって言ってたけど……。
 オレはオレで、お前のこと縛り付けてるよな、それで良いのか……って。
 お前と同じように、迷っちまったんだ。ほんのちょっとだけな」

淡々と、そう口にする。少しだけ、歯を食いしばる。

「オレは、お前を置いていく気はない。絶対にだ。
 
 でも、それでもこの話を出したのは……
 多分……本音のところを言うと、
 お前に聞いてみたいと思っちまったからだと思う――」

レイチェル >  
 ――これ聞くの、多分最後な。本当にこれで、最後だ。
 こういうの言うの柄じゃねぇし。

 ……オレ、こうしてお前の横に居て良いのかな?
 足引っ張ってるようなら言ってくれな。
 オレは、お前に幸せになって欲しいんだから。
 悪ぃ、英治に改めてお前が好きだって聞いちまってさ。
 ちょっとだけ、迷っちまったんだ」

笑顔が見たい。
楽しそうにしてる姿が見たい。
でも、自分の牙の呪いが、自分の想いが。
存在が、その笑顔を曇らせてしまうのなら。


思いを巡らせながら、手元の釣り竿を引っ張った。

園刃華霧 >  
「そーソー……」

いかんなー、ちょっと昔を引きずってるかな。
ふと、そんな事を思って少し口をつぐむ。

肝心なのは、この先の――


レイチェルの言葉を聞く。
ああ、違う。違うんだ。それは違う。


「助けル、ッテあたりニついちゃ……まァ、お互い様ッテとこミたいダな。
 ま、ソコはいーヤ。」

どうせ、深く掘っても結局結論は変わらず。お互い、助かってるありがとう、以上にはならないだろうし。
けど、その後だ。

「アタシは……別に、優しカないヨ。
 たダ、ビビリなだケ。」

こわい
こわい
こわい
こわい
てにいれた あたたかいものが こわれてしまうかもしれない
それが こわい

「別に……?
 居ちゃダメってコとは、ナいさ。
 ってカ、そッか。アイツ、戻ってキてんダな。
 ったク、顔くラい見せロってノ。」

それなら いっそ……

『―――――』

ふと、誰かの声が脳裏に響く。
あぁ……なんか、少しだけ、分かった気がする……
でも多分。気がするだけ、だな


「で、だ」

言葉を区切る

「……同じ、ダよ。
 レイチェルが、アタシのセいで、しタいこト……デきなイ、なら。
 そリゃ、オかしナ話だ。
 レイチェルが、幸せにナれナいんナら……」

言いかけて……口をつぐむ。
その先の、言葉はダメだ。
それは、封じ込めた。

レイチェル >  
――暖かな陽の下、静かな波音だけが二人の間に流れていた。

ご案内:「浜辺」からレイチェルさんが去りました。
ご案内:「浜辺」から園刃華霧さんが去りました。