2021/11/25 のログ
ご案内:「浜辺」にレイチェルさんが現れました。
ご案内:「浜辺」に園刃華霧さんが現れました。
■レイチェル >
口では凸凹だ、なんて返しながら。
それでも、内心は華霧の言葉を反芻する。
確かに、硬すぎるのかもしれねぇな。
壁を作ってんのは、どっちだって話だ。
本当に、本当に拾い直そうと思うんだったら……。
『レイチェルが、幸せにナれナいんナら……』
華霧の言葉を聞く。
こいつが言おうとしてることは、想像がついた。
だから彼女の沈黙に付け足すように、一言だけ口にした。
「それは、ちげーよ」
全てを聞いてから、口を開く。
シンユウとして――否。
違う、そうじゃない。ぎこちない関係から出す言葉なんか要らない。
ただ、親友として……伝えたい。
「親友……として。いや、親友になりたい奴の一人として、お前に言っとくぜ」
優しかない、ビビってるだけ。
その言葉に、態度に、違和感を覚えたから。
順を追って、話したいと思った。聞いてみたいと思った。
「ビビるのは悪いことじゃない。
失うことなんて、誰だって怖い。
でも、ビビってる奴だからこそ、
怖さを知ってるお前だからこそ、
優しくできんだよ。
自分の為に優しくするのが気に食わねぇか?
上出来じゃねぇか、てめぇの幸せの為に、誰かを幸せにできりゃな」
胸の内に、確かに熱はこもっていた。
それでも、口から出たのは今まで華霧に向けていたものとはまた違う――
自分でも懐かしい、胸の内に清々しさを覚えるものだった、ように思う。
オレの中で、何か引っかかりがとれた、のだろうか。
一旦そこで口を閉じて、華霧の様子を伺った。
■園刃華霧 >
「……」
『それは、ちげーよ』
それは、静かに。しかし、確かに耳朶を打つ言葉。
……どうだろう、やはり違うのだろうか。
それなら、また間違ったのだろうか
考えながら、続く言葉を聞く。
『親友……として。いや、親友になりたい奴の一人として』
ああ、そうか。
レイチェルは、そう考えて言ってるのか。
まったく、ありがたいことだ。
自分には上等すぎる。
『――――――』
ああ、わかってるよ。わかってる。
「……わカんね。
アタシは、今マで一人で、好き勝手生キてた……ツもり、ダった。
ドーも、そノ辺が違ったラしいッテわかっテから。
アタシ自身、ホントのトコなんテなよくワかンなくナった。」
小さく、肩をすくめた。
「面白イかラやっテたコと。
冗談デやってミたこト。
面白クしタいカらしタこと。
つマんなイかラやッタこト。」
頭の中では今までの行為を、一つ一つ、思い浮かべる。
色々したようにも思うし、何もしていないようにも思う。
好き勝手、適当に、大したこともないことを、しょうもなく。
そうしてきたように、思えていた。
「ソれが、優シくシてンのかッテ言ったラ。
アタシには、ヤっぱリわかンね。
ただ――レイチェルが、ソういウなら、まァ」
ただただ、無意味に
ただただ、無味に
ただただ、刹那的に
そうして過ごしてきたはずだったけれど
「少なクとモ……無駄じゃナかったンだろーネ?」
■レイチェル >
否定の言葉を投げた後、己の内で自嘲する。
お互いに、お互いのことが大切……な筈なのに。
離れたくない……ってきっと思ってるのに。
それでも、相手を傷つけてしまうんじゃないかって。
そう思い込んで、互いに離れようとしてたんだから。
そのことに気づいちまったから、否定の言葉の後には、自然と自嘲の苦笑が漏れた。
オレと華霧。
互いに馬鹿だ馬鹿だって、何度も言い合ったか。今更だな。
「無駄じゃねぇさ。覚えといてくれよ」
力強く、肯定の言葉を渡した。
「お前がここまで適当適当ってやって来たこと、成し遂げてきたこと。
きっと色々あんだろ。
それから風紀委員に入ってさ。お前がやって来たこと……それも沢山あんじゃん。
ま、味方張り飛ばしたり、捕獲対象逃したりサボったり何だり、そんなこともあったけどさ。
それでも、オレが保証する」
以前に、こいつがトゥルーバイツに向かおうとした時。
語っていた言葉を思い出した。思い出したからこそ、続けて語る。
「……そうだ。伝えたいことを伝えるためにも、まずお前に一つ聞いておきたいんだ。
華霧、お前は何で風紀やってんだ? 何の理由があって続けてんだ?
改めて教えてほしくてな」
一本一本の毛糸を解くように、話を進めていく。
穏やかな風を感じながら、釣り竿を引っ張った後、華霧の方を見やった。
■園刃華霧 >
「……ソっか」
無駄じゃなかった
それならまあ、少しは上等な生き方を出来ていたのかも知れない。
さんざっぱらやらかしてきてはいるけれど。
「なラ、マ―よかッタ。」
漏らす言葉はそれだけ。
それだけで、十分だ。
けれど、その後に続いた言葉は――
「何で、ダって?」
思わず、きょとん、とする。
続いて、ずきり、と何処かが痛む。
『風紀辞めたら?』
『向いてないわ、アナタ』
ああ――そんなことも、あったな。
本当、まったく……その通り、なのかもしれないなあ
「……さて、ね」
改めて、考えてみる。
浮かぶのは……
「欲しかった、から……」
はじめたのは、それだけの理由。
なら、いまだの続けているのは……
「…………」
言葉に、つまった
■レイチェル >
よかった、と聞けば満足気に笑みを返す。
それで十分だと感じたから。
「ああ。欲しかったから、だよな。
で、続けてる理由はわかんねぇか」
そう。その答えは何となく、分かってた。
園刃 華霧は『欲しかった』。
それはあの日、少しだけオレにも語ってくれたことだ。
そこは分かっていたからこそ、問いかけた。
ま、ちょっと意地悪だったかもしれねぇ。
「前にオレもさ、五代先輩に聞かれたんだ。
何で風紀やってんのかって。
罪もねぇ誰かを踏み躙ってる……そういう、気にくわねぇ奴をぶん殴るためだって。
そう答えたよ。そしたら先輩、めちゃくちゃ怒ってさ。
それじゃ、『お前が殴ってる連中と何も変わらない』って。
そうか、そうかもな……って思った――」
それが、オレがかつて風紀委員の――システムに埋もれることになった一つの理由。
それも一つ理にかなってるし、別に何とも思っちゃねーがな。
「――でも、今はそう思ってねぇ。
てめぇの為の拳で、誰かを救えんなら、それで良いじゃねぇか。そう考えてんだ」
昔の懐かしい話。でも、オレの視線はずっと華霧に向けられていた。
あの日を振り返ることはしねぇ。ただ、今華霧に伝えたいことを伝えるために、
昔を語ってるだけだから。
『レイチェルちゃんが無茶ニ突っ込んデって、アホをシメて……
んデ、アタシは"ドブさらい"、ト。』
ドブさらい。
あの日。華霧がトゥルーバイツへ向かおうとしていたあの時。
オレに告げたあの言葉を、忘れることはできない。
「じゃあ、もう一つ。
ずっと二級学生への対応、続けてたよな。あれ、何でだ?」
続けて、問いかける。これがおそらく最後の問いかけだろうか。
■園刃華霧 >
「そーだね、わかんない。
いや、最初は生きるため、だった……はず、なんだけど」
どうせ物は持たない主義で買い物もろくにしない。
使うのは食事くらい。
それなら、生きるのにもそこまで苦労はしない、はず……では、ある。
「はぁん……レイチェルも、聞かれたのねえ……」
話を聞きながら、感心ともなんともつかない声を上げる。
「『気にくわねぇ奴をぶん殴るためだ』、か。
らシいねぇ……はハ、怒らレて噛みツいたリしナかったン?」
けたけたと少しだけ調子を戻して笑う。
そして、次の質問は――
「アー……なーンでだッケなァ……」
そもそも、なんでそんな業務をはじめたのだったか――
「最初は、確か――アー、昔なンかでッカく集めテ対応しタときニさ。
事情通っテーか、まァ……"やり方"が分カってルやつッテことデね。
警備ッテか、見守リってカ。ソんな理由で狩り出サれタんダよね。」
つらつらと、思い出してみる。
それこそ、主催は五代とか辺りの誰か偉いさんだったと思うのだが。
その辺、記憶が曖昧な辺り、興味なかったんだろうな、と思わず心のなかで笑う。
「デ。そンで、そンな仕事、あンだなーッテ思って。
後は、アレだ。」
「 "二級の連中ヲ少しデも多く、コっちニ引っ張ッテやリゃ、少しハ此処も面白クなルかナ?"
そう思って、続けてた。」
ただ、それだけのこと。
それは、間違いない。
「マ、そンなテーどの話。
いツものヤつだヨ」
崇高な理想とか
奉仕の心とか
同情とか
そんな大層なものは、ない
手元の竿はもはや握られているだけ。
糸が引かれようと、引かれまいとおかまいなし。
■レイチェル >
「面白くなるからねぇ、ほんと華霧らしいぜ。
オレは、その理由……良いと思う」
そう、こいつって面白くなるかならねーか、ってところで動くもんな。
だからこそ、風紀に向いてないとか言う奴も居るんだろうけど。
オレはそう思わねぇ。
「てめぇ自身の為に風紀してるって訳だろ。
それは、さっき言った通りオレも同じ。オレ自身の為だ。
きっと多分、他の風紀の連中にもそういう奴らが沢山居るだろうさ。
勿論、すげー理想とか、奉仕したい一心で頑張ってる奴らも居るだろうけどさ。
風紀委員っつっても、組織な訳で、当然色々な考えのやつが居るかんな」
ここ最近落第街絡みで、そのことは顕著になっているように思う。
……またあいつと話にいかねぇとな、なんて思いつつ。
今は、華霧と話す時間だ。
「でまぁ、オレとか華霧みたいなタイプでもさ。
それでも救って来たもんが間違いなくあるわけだ。
つけ加えりゃ、
荒事ばっかやってたオレなんかより、お前はずっと色々救ってきてると思うわけ。
何が言いたいかってーと……
お前は、お前が思っている以上に、周りを幸せにしてんだよ」
本当に、伝えたいことを口にしていく。
「風紀委員会での活動だけじゃない。
お前が何となくしてる行動が、何気なく発してる言葉が、
周りの奴らを知らねぇ内に幸せにしてることがあるだろうぜ。
オレは……その一人だった。
落第街を駆け回ってた頃もさ。お前みたいなのが居たからこそ……
オレは戦えてたんだと思う。
ビーチバレーやった時もそうだし、他にも仕事中色々さ。忘れられねぇぜ。
戦いの中でも、日常の幸せを噛みしめることができた。
……今この瞬間も、そうなんだ。
こうして横に並んで、お前と話してるだけでオレは幸せなんだよ。だから――」
■レイチェル >
「――だから、お前が居るからオレが幸せになれない、なんてことは絶対にない。
お前が隣に居るだけで、オレは幸せなんだ。それは、オレから確実に否定できる。
お前を置いて、何処かへ戦いに行くなんざ絶対ねぇさ」
そこまで口にすれば、水面を見やる。
魚、釣れるかな……。