2022/02/15 のログ
ご案内:「浜辺」に風間 奈緒さんが現れました。
風間 奈緒 >  
「なんとなく…来てみたけれど」

この季節にしては穏やかな波の音。
遊びに来たわけではなく、単に風景と音を感じに来ただけ。

そのつもりだったけど、気分になんか合う気はする。


「……ふーっ…」

溜息が出る。
本当に"なんか良いなぁ"ってくらいの感情だけど、落ち着く。
時々目を閉じて波の音に聞き入る。

「流石に海はあんまり変わらない。ちょっと安心するかも」

じーっと浜辺に立っているだけ。
それでいい。心に何か通り抜けて、悩みごとが薄まっていく時間。

取り残されたような感覚がちょっと辛かっただけで。

"ばれんたいん"という…知らない行事。

「似てはいるけど、やっぱり違うんだな…ここ」

風間 奈緒 >  
波を見つめる。

すう、と息を吸う。冷たい風が身体に満ちる。

やっぱり寒いのでマフラーに口元をうずめておく。


私はどうにも、立ち止まって時間を過ごすのが好きらしい。
街中の一角で。こうして海辺で。林に数歩入った場所で。

そして目で見て、音を聞き、色彩と変わる風景を眺める。
時々目を閉じて、空想の世界を脳裏に浮かべる。

楽しいというのとは違う、何かを確認して安心するような。


「…ん」

そうして少しすると、首の後ろで木の鎖が浮き上がるのを感じた。
興が乗って空想の輪郭が出来ると、私はようやく遊ぶ。

何か食べたり、使ってみたり。今なら…

「海の上に居ると、なんだか幻想的じゃないかな?」


既にちょっと起動していた自分の異能に意識を向ける。
空想に意識をもう少し傾けて、目を閉じる。
目を開ければ、風景は少し違って見える。

「綺麗。…少し遊ぼう?」

元素魔術を一つ使う。最近練習中のアレだ。
やんちゃするわけじゃないからきっと大丈夫。
"輪"を作る。

海のイメージが働いたのか、少し青い元素の輪が出来た。
頭の上に浮かべ、より異能に集中すれば…

『"空想連結"』



海辺の少し上、波が掛からないくらいの高さ。
そこに向かって彼女は、ふわりと浮いて滑るように動く。
光の粒が回り形を成した天輪と仄かに光る身体。
"天使"のイメージを形勢して、そうなったかのように浮かぶ。

ただ海の上をふわふわと浮いて散歩しているだけ、ではある。
これは遊びで、イタズラだ。
"空想の光景"になるのは、なんだか楽しいし…解き放たれたように感じる。
見かけた人にちょっと驚いて貰えればまぁ、それもアリ?

ご案内:「浜辺」に矢那瀬陽介さんが現れました。
矢那瀬陽介 > 吹き抜ける風は冷たく湿り気を帯びて頬を苛ます。この季節柄とくに人気なき海辺では一層肌粟立つ心地にコートの襟元を締めた。
鬱蒼とした気持ちを晴らさんと表に出た散歩の歩みは少々遠くにまで伸びすぎた。
海風晒され錆びつくガードレール沿いにさざめく海を眺めていた少年はそろそろ帰路につこうと踵を返して――
その最中に視界の端にちらつく何か――海蒼と違うそれ――に凝視した。

「ウッソ……」

遠目では海の上滑るのもわからない。
心中かと勘違いし防波堤を滑りおりながら砂浜をかけてゆく。

「ちょっと、君。海に入るにはまだ寒い季節だよ。考え直そう!」

少しずつ迫る銀の長髪の人へ声を張り上げた。

風間 奈緒 >  
「…ん?」

遠くから声が聞こえて、ゆっくりと身体を向ける。
コートの男の人…が何やら叫んでいる。

「…あー、何か心配させたみたい?一度戻らないとだ」

さっき少し驚かせて、と考えてたけどこれはダメだ。
心労を掛けないためにも、男の人の方へ海から引き返して近づく。


「ええと…散歩中だったんだ。驚かせてゴメンね?」

浜辺から1mほど上にふわふわと浮いたまま、黒いコートの人に声をかけた。

矢那瀬陽介 > 「ん?」

その体は入水しておらず滑るように……否、空を歩んでゆく姿を捉えた黒瞳はきょとり、と瞬いて固まった。
ついで謝罪する声音には、と視線を足元から戻して首を振る。

「ううん。俺、てっきり君が自殺してるんじゃないかって勘違いしてさ。
 邪魔しちゃったね……ええ、と」

再度緩やかに足に視線を投げては不可思議な想念で瞬く眸をずっと向けて。

「これも、あれかな?異能の類?」

砂地にコートの裾がつかぬように足を折り曲げ。その爪先をおっかなびっくり指先で突こうとした。

風間 奈緒 >  
「ん。異能と私が学んでる魔術の合わせ技なんだ」

足先に触れられると、浮いた身体がゆらりと揺れる。
そしてふよふよと漂うかと思えば、ちゃんと居たい場所に留まれるようだ。

「…えっと、このままはいけないや。一旦降りるね」


数歩分だけ離れて、ふわりと下に。
はためくセーラー服を整えて、男の人に近づき直した。

「んしょっと…上から見下ろすとお話しにくいしね」

「なんとなく風景を眺めたりしてたくて、その一環で海の上に居たんだ。
 天使の輪っかみたいなのを作って、それで飛べるようにしたの」

左手でちょいちょい、と頭の上を指す。
身体の光は落ち着いたものの、仄かに光る青い光輪はそのままだ。

「…ちゃんと天使みたいに見えたかな?」


感想をちょっと期待しているようだ。

矢那瀬陽介 > 「へぇ……良いね。っと悪い!面白そうなものはつい触っちゃう性質なんだ」

数度揺れる爪先を突いてから決まり悪そうに眉尻下げた面で仰いで立ち上がった。
やがて降りゆく相手に居住まい正して黒瞳を向ける。

「風景を……ふぅん。
 それよりも、足元ばかり見て気が付かなかったよ。
 天使の輪っか。それがあれば飛べるんだね」

指先指し示す幻視の如き光の輪を見眺め、腕組み頷いていく。

「うんうん。天使みたいだったよ。
 アイススケートならぬシースケートを楽しむ天使だ」

湿り気に重みある砂上を滑って相手の周りを巡る戯れをして微笑む。

風間 奈緒 >  
「…えへへ、良かった!」

感想を聞いて、にこにこ笑顔。
謙遜をする暇も無いくらいに喜んでいた。


「あ、本当はコレがあれば飛べるってわけじゃないんだ。
 これが魔術の産物で、それに異能を合わせて…なの。
 貴方にこの輪を付けても見た目だけになっちゃう」

そう言うと、光の粒…元素を集めてもう一つの輪を作ってみせる。
輪の形状で回転する光の粒子は、彼女が指でつつくと霧散していった。


「…ところで、えっと。私の周りをくるくる周るのは…どうして?」

"滑って"自分の周囲を周り出した男の人に困惑した声をかけた。

矢那瀬陽介 > 己を見る目に困惑の光が見えるのに気まずそうに舌を出して滑るのを止めて。
残るのは彼女の周りに狂いなく結ばれた円環の痕。

「えぇ……それじゃ、俺も飛べるわけじゃないんだね。残念。
 こんな風に海の上を滑れたら楽しいなって思ってたんだ」

散り散りに消える光の輪を物悲しげに見送ってから酷くゆっくりと腰を折り曲げる。
足元にある小さな貝殻を摘み上げては指先に乗せて。

「君の周りを回ったのはなんとなくさ。
 俺は『回転』するのが好きでね。
 異能を見せてくれたお礼に俺の異能もご紹介、と」

長い人差し指に乗せた貝殻はゆるりと、一人でにに廻りだす。
独楽の如く廻りゆくそれはやがて不均衡な楕円を描いてゆく。

風間 奈緒 >  
「わ…回ってる回ってる回ってる」

じーっとクルクル回る貝殻が乗る指先を見つめる。
よく見ると普通の回転ではなく、楕円状の軌道が見えた。

「……すごい、普通の回転じゃない…不思議な異能だね」


「あ、えっと…浮いてないとダメだよねコレ。波が…
 凍らせ…てもダメだコレ、私の技量じゃそんな芸当は…」

残念そうにしている男の人に、慌てて頭の中に案が浮かぶ。
…難しそうだった。

海面に立つとか移動するのは波が多少なりあるだけで難関。
凍らせるのは…全力でも範囲は広くないだろう。
自分が元素魔術のひよっこを卒業しているとは言い難いし。


…そういえば、またすっかり忘れていた。

「えっと、自己紹介しておこうかな。今更だけど…」

私は出会った人に名前を告げないまま、なんてのがよくある。
どうにも人付き合いの意識が薄いというかなんというか。
なので…今回は忘れずに。

「私は風間 奈緒。1年生扱いの元素魔術使いなんだ」
「貴方のお名前も聞いていい?」