2022/07/18 のログ
茶髪の男 >  
歌うような言葉。耳に残るのとは違う、染み入るような音。

「考え事、ね。確かにここは向いてるのかもな。
 っと、そうなると邪魔しちまったかね」

街の喧騒とは遠く、潮騒だけが響く静寂の中。
揺蕩う姿は美しかったが、それでいてどこか寂し気に見えた。

「怪我……は大げさに包帯なんか巻いちゃあいるけど大したこたねぇんだ。
 まぁ、海水浴楽しみに来たってよりは海風でも浴びれば気でも晴れるかと思ってな」

問い掛けを受ければ大した事は無いと小さく笑い、右手の中指で包帯に包まれた腕を叩いて見せる。
そうすれば樹木を叩いたような、乾いた軽い音がコツコツと砂浜に響くだろう。

「アンタは? 学生さんだろう、今の時期なら夏休みって所か」

シャンティ > 女の声が染み入るような音色であるならば、男の声はどこか陰鬱な、それでいて静かに響く音色。

「ふふ……いい、の、よぉ……どう、せ……暇、つぶし、の……一環、くらい、の、もの、だった……の、です、も、のぉ……」

くすくすと女は笑う。
さくり さくり と小さな音を立てて男の方へ近寄る


「気、が……? そ、う……怪我、で……陰鬱、と、か……? それ、と、もぉ……ふふ。原因、の……なに、かを……して、しまった、こと、が……気鬱、と、かぁ……?」

面白そうに問いかける。せっかくの観察対象なのだ。よく『読ま』なければ。


「……ふふ。そう、ねぇ……多分、夏、休み……よ。ふふ。」

くすくす、とはぐらかすように笑う

茶髪の男 >  
「なるほどね。ま、俺の方も暇つぶしみたいなもんだ」

暫くの寝たきりの期間に体力も落ち切って、ろくに仕事をできる状態でも無い。
暇を持て余してあの薄暗がりから這い出てきた次第だ。

笑う姿は妖艶で、自分の物よりもいくらか軽い音を立てて近づいてくる。

「っと、名乗っても無かったな。俺は――」

ノア、そう名乗りかけて思案する。
その名前は歓楽街の探偵、あるいは落第街の破落戸としての物。

「――アキオミ。まぁ観光客みたいなもんさ。
 陰鬱? まぁ、目的を無くしてふらふらしてるからかね。
 嫌いな奴の事を目の敵にして生きてたら、
 そいつがいなくなった途端に生きる糧が無くなった、みたいな話」

妹の仇を追ってきたこの島で、人を殺して文字通りの人で無しになった。
そんな、どこにでもあるお話だった。さすがに表の街でそんな話を大っぴらにはしないが。

「夏休みにビーチってんなら、一人ってのは寂しいな?
 相手くらいいそうなもんだが……最近の学生ってのは奥手なのかね」

シャンティ > 「そ、う……ふふ。お互、い……暇人、と、いう、こと、ね…… 暇、は……平和、とい、う……こと…… それ、は……いいこと、か……悪い、こと、か。どう……思う?」

くすくすと面白そうに笑いながら、顔を覗き込むようにして問いかける。
けだるげな声、けだるげな顔が、目に飛び込んでくるだろうか

「アキオミ、さん、ね……ふぅ、ん……私、は……ひ、み、つ……」

くすり、といたずらっぽく笑い

「……なん、て……いい、わ。シャンティ……よ?」

少し間をおいて、言葉を継ぐ


「あ、ら……これ、でも……相手、くら、い……いる、けれ、ど……それ、は、それ、とし、て……一人、で……考え、ごと……したい、ときも……ある、もの、よぉ……?」


とはいえ、そういえば付き合う、とそんな話になった彼と此処最近は少し会話がないかもしれない。さて、少しはつついたほうがいいのだろうか……と、少し思考がずれる。


「それ、に……して、もぉ……目的、を……ね? そう、ね、ぇ……人、は……欲求、で……生き、て……いるって、いう、し、ぃ……それ、は……鬱に、なる、かも、ねぇ……それ、にして、もぉ……」


人差し指を唇にあて、小首をかしげる。しばし、男の言葉を考える。
例え話か、事実を脚色したか……いずれでも、興味は深い話だ。

しばしの間

「目の、敵……いなく、なった……ね、ぇ……ふふ。それ、は……どう、して……かし、ら、ねぇ……あ、は。死ん、で……しま、った……? それ、と、もぉ……」

くすくす くすくす


「消し、て……しま、った……? 」


くすくす くすくす 小さな笑いが響く

茶髪の男 > 「そうさな。自由な時間があるってのは良い事だとは思うが、暇ってのは人を弱らせていくと思うね」

自由と暇。与えられた時間を退屈に過ごすかどうかは当人次第ではあるが、考えさせられる所はある。
平和は良い事ではあるのだろうが、刺激の無い日々は退屈だろう。
案外、目的も無く海辺を訪れた自分も目の前の彼女がいなければ退屈を享受していたのだろうか。

「シャンティ、ね。随分お茶目なお嬢さんだこって。っと、相手がいたか」

そいつは失礼、演技がかった言い方で告げながらくつくつと喉を慣らして笑う。

むくれるような様子も無く語るシャンティを見やる。見た目から感じる年頃以上に感じる不可思議な雰囲気。
そんな彼女を口説いた、あるいは口説かせた快男子は今どこで何をしているのだろうか――
ともあれそれは己の知らぬ事であるが。

「――怖い事を言うね。
 俺が人を殺すようなナリに見えるかい?」

嘘を吐いた。
誰にでもバレるような軽薄な嘘。
そもそも彼女には俺のナリなど見えていないのだけれど。

「すっきりはしてるのさ、やりたい事やって目的も叶ったしな。
 ただ目的を叶えると次のもんが見えてくると思ってたんだが、
 ぷっつり途切れちまったみたいでね」

自分探しの途中みたいなもんかね、と自虐的に笑う。
探し物を得手とするはずの己が、途方に暮れるくらいにはみつからない。

シャンティ > 「人、を……よわら、せる……ふふ。なる、ほどぉ……それ、は……確か、に……ね。」

くすくすと笑う。
暇。退屈、とでも言い換えればいいだろうか。それは「何もない」ことにほかならない。それは、人を腐らせるにも十分な毒ともなりうる。小人閑居して不善をなす――そういうものだ。だからこそ、その毒のもたらすものは面白い


「別、に……私、自身……すこ、し……不思議、に……思って、は……いること、だ、もの」


今のところ、相手をどう思っているかは……さておき。少なくとも、相手の思いを受け止めてみる、と。そこまで足を踏み出したのは自分にとっては変化だ。それは意外といえば意外な……


「ふふ――そう、ね、ぇ……そう、は……『見えない』……か、も? で、も……人、は……見かけ、に……よら、ない、とか……そん、な、こと……する、人、じゃ、ない――そう、思って、た……なん、て……そんな、事件……いっぱい、ある、わ、よ……?」

くすくす くすくす と 女は笑う
からかうように おもしろがるように たのしむように

「ま、あ……どち、ら……で、も。ふふ――別に、いい、の、だけ、れ、どぉ……どう、せ……事実、は……変わ、らない、も、の……ね?」

くすくすと くすくすと 笑い声が小さく響く


「そう、ねぇ……普通、は……見つかった、り……もし、くは……いくつ、か……目的、が……ある、もの、よぉ? もし、ない、と……言う、なら。ふふ――それ、は……他、を……捨てた、とか……そう、いう……こと、か、しら……?」

人差し指を唇に当てて、考えつつ答える。それは探るようで、覗き込むようで。奇妙な問いかけ。


「も、し……そう、なら……途切れ、た……の、では、なく……ただ、『無くした』、だけ、よぉ……? なん、て……ね?」

いたずらっぽく、笑う


「見つ、ける……もの、じゃ、なく、てぇ……拾い、戻す……とか、掘り、返す……とか……そう、いう……もの、かも……ね?」

顔を近づけ、覗き込むかのように……面白がるように、そう言葉をかける

茶髪の男 >  
「人間ってのは"何もない"事には耐えられないようになってるらしいからな。
刺激ってのはそれ自体の善悪はともあれ、必要な物なんだろうさ」

光と音を遮断された被験者は数十分で幻覚を見る、だったか。
己を苛む災禍も、見方を変えれば今の自分を構成する要素と捉えられるのかもしれない。

「まぁ、感情だとか距離感だなんてのは不思議なもんだろう?
 理解しようとするだけ無茶な話なんだ。
 楽しかっただとか、嬉しかっただとか、そんなぼんやりした感想から始まるもんじゃねぇかね」

知ったように語る。
実際の所は何も知らないのだが。
産まれてこの方、妹以外に愛とやらを向けたことも無い俺に何が分かろうか。
あるいは向けようともしなかったからこその、一種の憧れがそう嘯かせたのかもしれない。

「あんたは、笑うんだな。人殺しかも知れないぞって奴を前にしても」

お道化るような声のトーンは失せて。
愉快そうに笑うシャンティの声が不思議でそう呟く。

「どうなんだろうな、最優先の事柄があっても他が溶けて消える訳じゃない」

他にも、あった。
学生時代のなにがしか。それこそ愛だとか、恋だとかがあったかも知れない。
それから眼を背けて、家族に、妹に、そして仇に執着したのは、他ならぬ俺だったのだけど。

「――近ぇよ、お嬢さん。女挟んで学生と喧嘩する趣味は無いんだ」

突き放すでも無く、誤魔化すようにそう呟く。
鼻腔を擽るその髪の香りに、年甲斐も無く照れたような自分を笑って口元が緩む。
薄い光を灯す金色の眼で、その美貌を映す。
本当に不思議な子だ。問い掛けられたとて、こんな話などするつもりは毛頭なかったというのに。

「なぁ、シャンティ。
 例え話のような物なんだが……死んだ人ってのは生き返ったりできると思うか?
 できたとして、それって求めた通りの人なのかね」

シャンティ > 「承認、欲求……人生、に……何、か……の、意味を、求め、る……それが、人の、性。ふふ――けれ、ど……」

演劇のように、大げさに手を振り、歌うようにまるで踊るようにして……言葉を口にする。気怠いが、やや熱っぽい声が空に空虚に響く。


「人、に……人生、に……本当、に……生きる、意味……なん、て……ある、の、か……それ、は……なかなか、に……難し、い……謎、ね?」


最後にくるり、と顔を男に向ける。


「ええ……だか、ら……笑う、わ? 人生、に……意味、が……なか、った、と、して、もぉ……人が、人を……殺す……そこ、には……意味、が、ある……それ、が……私、に、は……愛お、しい、こと……だ、ものぉ……そ、れ、に」

じっと……男の顔を見つめるかのように顔を向ける。虚ろな目は光をもたず、空虚ではある、が。


「どう、せ……今、人、殺し……じゃ、ない……人、が……今後、も……人殺、しに……なら、ない、なんて……誰、も……保証、できない、ものぉ……そこ、に……差は、ない、わぁ……?」


くすくす くすくす と。異様な思考を物語る。それは狂人の世迷い言か。聖人の悟りの境地か。

「ふふ……面白、い……問い、かけ、ねぇ…… あなた、は……どう、思う、の、かし、らぁ……?」

薄く、薄く笑う


「……スワンプマン」


静かに、口にする


「私、も……たとえ、話、で……返す、わ、ね? 仮、に……あなた、が……愛す、る……人が、いると、して。その、そっくり、さん……なにも、かも、が……まった、く……同じ、存在、が……もう、一人……でて、きた、ら……どう、思う、か。そし、て……仮に、二人、が……混ざって、区別が、つかなく、なった、瞬間……どちら、か、一人、が……死んで……残った、一人、を……どう、思う、か……ふふ」

昔からある、思考実験。『本物』とは。『それをそれたらしめるもの』とは。
言い出した本人の結論は……此処で語ることでもない。


「私? 私、は……ねぇ……あ、は。 『自分がどう思うか』、『自分が受け入れられるか』だ、と……思って、る、わぁ……? その、上で……答え、る、なら……『違うけれど同じもの』よぉ?」

茶髪の男 >  
「生きる意味、ね。難しいってか気にして生きるようなもんじゃあ無いと思うが。
 くたばる時に振り返れるくらいが調度良いんじゃねぇかな」

演劇のように、踊り歌い、演じるように。振り返るその姿にそう返す。
くたばれる時ならいくらでもあったのに、未練がましく生き残った俺が言う。
幕を閉じるのには早いという事も無いだろうに、それでも生きてきた旅路に何かを加えたいと願ってしまう。

「愛おしい、ね。
 殺人願望だとまでは言わないが、誰にでもそういうタイミングってのはあるんだろうさ。
 だから引き金が引けるかどうか。それが大きな隔たりだとも、俺は思う。
 物理的なもんじゃなくて、一線を踏み越えるどうしようもない安穏との決別みたいなもんが」

それすら愛おしいと、シャンティは笑うかも知れない。
美談では無くとも、見苦しい命のやり取りでも。彼女にとっては煌めきなのだろうか。

「スワンプマン?」

聴き慣れない単語に首を傾げる。
聴き及んだことこそ無いが、内容を聞く限りはただの思考実験。
違うけれど、同じ物。同じ、者。本物たらしめるのは何か。
それは恐らく、客観という物なのだろう。

「あぁ、まぁまるっとそのまま生き返ったら当の本人は、望まれたその人ではあるよな」

同じなのだから。本質的にも、実在的にも。
だけれど、決定的に違ってしまう。
その人を見る俺は、既にその人の死を知ってしまっている。

「だったら……ダメだな。それは、ダメだ。
 "俺が"受け入れられない。誰も、幸せにはなれない」

例え話だなどと言った事など記憶から消し飛んだように言う。
心の中に残り続けるトゲを、引き抜く事すらできずに彷徨うのであれば、
あるいは生き返る手段があればなどと迷う事はあったが、言われて気が付いた。
そんな暴挙は、冒涜は、他ならぬ自分が許せなかった。

妹の蘇生を望む己と、その尊厳を捻じ曲げる事を拒む己と。
そんな物を同居させるから、心が捩じれる。

「なるほどね、スワンプマン。初めて知ったな。やっぱり人に聞いて見るもんだな。
 グチャグチャしたもんが、ちょっとだけ晴れた気がする」

そう言って、疲れたように笑う姿は少しだけ陰鬱さが薄れていたかも知れない。

シャンティ > 「ふふ……人が、紡ぐ……人、の……物語……人生に、悩み……人生に、狂い……思い……苦しみ……あ、は……それは、それは……とて、も、とて、も……素敵、な、こと……」


くすくすと女は笑う。もっと悩んで もっと苦しんで もっともっと想いを捧げて……まるでそう語るような、うつろな目が写しだすものは、一体何者だろうか。

そして女はその熱っぽさを一時、ひそめる。まるで風が凪ぐように。そこに響くのは、男の思考実験。本物とまったく同じ、別のナニカ、を受け入れられるか、否か。


「あ、は……そう……『それ』、が……あなた、の……答え、ね……? ふふ。じゃ、あ……此処、に……あなた、の、いう……『死んだ人ってのは生き返る』――そんな、手段、が……あった、とし、てぇ……それ、を……手に、取る、ことは……なぁ、い……?」

くすくすと笑う、女の手にはいつの間にか、新しい本が抱えられていた


「ふふ……都合、の……いい、夢…… 幸せ、な……幻…… そし、て……理不尽、を……超え、た……素敵、な……現実……いい、の……?」


甘い声 天使の囁き そのような声で 語りかける

茶髪の男 > 「人が紡ぐ物語、ね。
 背表紙で綴じて語れる程度に中身のあるもんにできりゃあ良いんだが」

悩み、苦しみ、足掻く者の強い想いを。そんな物語を彼女は求める。
それを食らうのだろうか、綴るのだろうか。
それは俺には分からない。不思議を不思議のままに受け入れる。

「あぁ、どんだけその先に甘ったるい夢物語があってもな」

悪魔というのがいるのなら、
それはきっと甘美な言葉で囁くのだろう。誘うのだろう。
さながら天使のように。
都合の良い夢、幸せな夢。
だけれど、それは俺の許容できる現実では、無い。

「あぁ、良い。それで良い」

言い切る。言い聞かせる。
シャンティに向けてか、あるいは己に向けてなのか。
手の内に新たな本を抱えたシャンティに、微笑む。

「夢を見る事も、夢に見る事もあるけどな。
 それくらいで調度良い。強いて言うならそうだな――」

――夢の中でくらい、妹を安心させてやれるくらいには真っ当に生きてみるかな。

言葉を飲み込む。
口だけを動かして発音しない。年甲斐も無い意地悪をした。
音にして吐き出せば、泡のように消えてしまいそうな気がして。
ただ天使のように、悪魔のような囁きを施す彼女には伝わるかも知れない。

シャンティ > 「ふふ……だれ、だって……物語、を……もって、いる、の、よ? だから……誰、だろう、と……語れ、る……本に、なる、もの、よぉ……?」

くすくすと女は楽しそうに、熱を持って笑う。
そしてまるで、値踏みをするように……男の言葉を聞く。

時折、薄い笑いを浮かべ……男の一挙手一投足を伺う。
その微笑みまでも――


「……あ、ら……ざぁん、ねぇん…… あまぁ、い……夢、は……いらな、かった、の、ねぇ……ふふ。いい、わぁ……いい……あ、は」

差し出された甘く魅惑的な提案を男は断った。それを楽しそうに、愉快そうに……笑う。


「それ……それ、が……あなた、の……ふふ。物語、よぉ……それ、が……決意、だろう、と……やせ、我慢、だろう、と……ただ、の……意地、だろう、と……」

再び、熱っぽく語りくるりと踊るように回り、先程の誘惑をしたときとは違う、不思議な笑顔を見せる。


「えぇ、えぇ……あな、たの……思う、よう、に……する、と……いい、わぁ……あなた、の……想い、を……守る、た、め……に、ね。ア、キ、オ、ミ、さん?」

くすくすとくすくすと楽しそうに笑って

茶髪の男 >  
「良いな、それ。
 受刑されでもしたらペン握ってエッセイでも書くか」

呵々と笑う。
己を罪人だと知りながらも笑う彼女につられるように。

「ははっ、九割がたはやせ我慢だろうさ。
 俺の物語なら、格好付かないくらいが似合いだしな」

格好付けるのは性では無い。似合わないなら等身大で生きる他ない。

「あぁ、ありがとなシャンティ。
 あんたの望む物語が話せたかどうかは些か不安だがな」

苦笑して、砂浜に降ろしていた腰を上げる。
やせ我慢だろうと、決意したのなら立ち上がるべきだろう。

「今度会う事でもあったら、アンタの物語を聞かせてくれよ。
 不思議と気になるお相手さんの話でもな」

惚気話でも聞かされるくらいの方が、拗らせた性根には良い薬になるかも知れない。
心の中の澱みはいくらか晴れた。
天使か悪魔か。どちらともとれる蠱惑的な笑みを浮かべるシャンティに、改めて礼を言う。
引き止めるでも無ければ、その姿は歓楽街に向けて歩み消えて行くだろう。

シャンティ > 「私、は……十分……美味、しく……物語、を……いただ、いた、わぁ……?」

まるで、極上の食事をしたかのように満足げな表情を女は浮かべた。


「あ、は……だか、ら……ね。余分、な……言葉。すべ、て……あなた、次第……よ。 もち、ろん……ふふ。悪い、道、を……進む、の……だって、あなた、次第……好き、に……する、と……いい、わぁ……?」

くすくすと女は笑い続ける


「悪、に……する、悪は……許さ、れる……餓死、を……する、から、仕方、なく……する、悪、は……許、され、る……ふふ。そんな、理屈、で……悪、に……進む、人……だって、いる……の、だも、の……」


手を前に差し出し……まるで手土産を渡すように言葉を投げかける。
その答えは……聞くつもりも特にない。答えはきっと見えている。見えていても、そう口にする。余分な言葉だったとしても。それが性分だから。


「私? ふふ。私は……盤、外……だか、ら……面白み、は……ない、かも……しれ、ない、けれ、どぉ……ね。機会、が……あれ、ば……ね?」


聞こえているかどうか……それも気にはしない。わずかなりと、心が晴れた顔をした男が去るのをただ、女は見送るのみだった

ご案内:「浜辺」から茶髪の男さんが去りました。
ご案内:「浜辺」からシャンティさんが去りました。