2023/07/16 のログ
ご案内:「浜辺」にシャンティさんが現れました。
■シャンティ > 「……夏、ね」
じりじりと じりじりと
強くなってきた日差しが女の肌を刺す。
その熱量を意にも介さないような顔で受け止めながら、女は浜辺に立つ。
「とき、は……巡り……季節、も……巡り……また……ここ、も……騒がし、く……なる、の……かし、ら……ね、え?」
日差しを溜め込み、焼け始めた砂の上に女は腰を下ろした。
「静か、だった……場所、に……人、が……ま、た……戻る……前、も……そう。今年、は……どう、かし、ら……ね」
虚ろな目を虚空に彷徨わせる
■シャンティ > 「……変わ、る、季節……変、わる……場所……変わる……人……」
つぶやくように、謳うように言葉が女の口から漏れ出る。
「……あぁ。人、は……変、わる……の、よ……ねぇ。まだ、楽し、めるの……か、しら……」
虚空を見る虚無の目は何も写さない。
「なん、て……」
小さく吐息のような息をつく
「……どう、した……の、かし、ら……ね、ぇ……私、も……」
■シャンティ > 「……」
ゆっくりと立ち上がり、どことなくぼんやりした様子で波打ち際まで歩みを進める。
「……つめ、たい……わ、ねぇ……」
ヒヤリとした海の水が女の足元を濡らしていく
「……どう、した……もの、かし、ら……ね」
ご案内:「浜辺」に杉本久遠さんが現れました。
■杉本久遠 >
「どうしたものかって思うのは――」
頭上から滑らかに垂直降下し、波打ち際の彼女の前に降りて来よう。
水面ギリギリまで空から降りた足元には、小さな波紋が広がった。
「君もなにか、変わろうとしてるからかもしれないな!」
空を泳いでいたら、遠くに見えた姿。
そして、異能の力で聞こえた小さな呟き。
真っすぐに彼女の元へ駆けつる理由には十分だった。
勿論。
理由がなくとも、まっ直ぐに泳いできたことだろうが。
「――うん、今年も君に似合う季節が来たなあ」
日差しを眩しそうに見上げ、彼女に向き直り、太陽にも負けない様な満面の笑顔を、白い歯を出して浮かべるだろう。
■シャンティ > 「……」
それは女のある種の油断だったのかもしれない。少なくとも、女の『読める』範囲にはあったはずである。それでも、直前まで男の存在に気づいてはいなかった。わずか、女の心が揺れる。
「あら……久遠……? 泳い、で……いた、の……ね。」
それでも気づいてから読み取れたこと、状況から女は大体のことを察する。いわば「行間を読む」行為である。
「それ、に……して、もぉ……女の、つぶ、やきを……盗み、聞き、だ……なん、て――いつ、から……そん、な……いや、らし、く……なった、の……かし、ら……ね、ぇ?」
くすくすと、女は笑って見せる。まるで何事もなかったかのように。そして、なんでもなかったかのように。
「私、に……ね?」
自分にあう季節、と言われ女は少し首を傾げる。この肌のことだろうか。それは正しいといえば正しいのだろうか。
「私、と……して、は……そう、ね。競技、的、には……そう、でも……ない、の、でしょう、けれ、ど……空、を……泳ぐ、季節、の……よう、に……思って、いる、わ?」
■杉本久遠 >
「うむ、たまたま時間が出来てな――んぉ」
盗み聞き、と言われてしまえばそれまで。
実際、本来は聞こえない距離で言葉を聞いたのだから、百点満点の盗み聞きだ。
「それは、その、すまん。
君の事になると、どうにも気になり過ぎてしまって――今後は気を付けるな」
頭をぽりぽりと掻いて、申し訳なさそうに背中を丸めて頭を下げた。
「はは、それは嬉しい言葉だなあ。
オレにとっても、この季節は空を想ってしまう季節だからな。
だが、まあ――」
話しながら浮力を落として、着水し、ブーツを濡らしながら砂浜の上にどすん、と腰を落とした。
「君に出会ってからは、君を想う季節にもなった。
いや、まあ――年中想ってると言えばそうなんだが、たはは」
そう、少しの照れを感じながら言葉に出来るようになった辺り、彼女をしっかりと『女性』として『恋人』として意識するようになってきたのかもしれない。
朴念仁にしては、少しは進歩したという事だろうか。
■シャンティ > 「ま、ぁ……いい、わ。Peeping Tom、に……気を、まわ、さな、かった……のは、私……だ、し? 聞か、れて……困る、ほどの……こと、でも……なか、った、し……」
実際、女が多少気を抜いていたのは事実である。そのうえで――聞かれても当たり障りのない内容であったのもまた事実である。余計なことを口に出さなかったのは僥倖と言えよう。
「それ、に……久遠、が……意外、と……やら、し……かった、の、は……新鮮、だ、もの。つぎ、は……なにを、きかれ、ちゃう、の……かし、らぁ……?」
女はくすくすといつものような笑いを浮かべて見せる。
「あら、あら……言う、よう、に……な、った……わ、ねぇ……久遠?」
傍から聞けば、歯の浮くようなセリフか。はたまた惚気かと羨まれるセリフか。どちらかといえば朴念仁に分類される男から漏れ出たそれは、いささか珍しいといえば珍しいものであった。
「……あなた、も……変わ、った、の……かし、ら……ね、ぇ」
ぽつり、と小さく小さく……吐息のような言葉が漏れ出た