2020/06/18 のログ
ご案内:「常世神社」に月神 詠さんが現れました。
月神 詠 > とある休日の昼下がり───

「ふんふんふ~ん……♪」

巫女装束の女性が、やや調子の外れた鼻唄を口ずさみながら境内を箒で掃いている。
名を月神 詠(つきがみ ありあ)。祭祀局に所属する生徒で、委員会活動の一環として定期的に常世神社の手伝いをしている。

「…………はぁ」

柔らかな物腰と丁寧な対応に定評のある彼女だが、今日は浮かない表情で溜息などを吐いていた。

ご案内:「常世神社」に彩紀 心湊さんが現れました。
彩紀 心湊 > 休日。それは特にやるものがない人間にとって、あてもなく彷徨う日である。
などと、勝手に思っているのがこの彩紀という人間である。

「ぉ………。」

珍しい、と境内の掃除をする女性を一瞥。
巫女さんが掃除をしているところなんて初めて見たな、などと思いながら軽く頭を下げる。

月神 詠 > ふと人の気配を感じて、顔を上げれば女の子が一人。
確か……同じ学年の子だ。前に校内で見かけたことがある、気がする。

「あら……こんにちは。参拝客の方でしょうか?」

どんな状態であれ、他人への礼儀を忘れてはいけないと家の教えにもある。
箒をいったん脇に置いて、こちらを見ている少女に会釈をした。

彩紀 心湊 > 「…ん、あ……どうも。」

わざわざそこまで丁寧に礼をされるとは思わなかったと、思わず目を瞬かせる。
そして、その顔…確か、学校で…?と同じく覚えがあるようで。

「貴方…学校の? 確か…月神さん、だったかな?
アルバイトとか…?」

しかし、この時期に臨時のアルバイトというのもおかしいなと言った後に思ったようで首を傾げた。

月神 詠 > 「はい、三年の月神 詠(つきがみ ありあ)と申します。
 あなた様も確か、同学年でいらっしゃいましたよね?」

相手の名前が出てこず申し訳なさそうにしつつ、神社の手伝いについて問われれば。

「"あるばいと"ではございませんよ。
 私(わたくし)は常世学園祭祀局に所属しておりますので、時折こうして御勤めをさせていただいているのです」

祭祀局というのは生活委員会から独立した組織で、党内の霊的守護と調和を司る機関のことである。
神社とも縁深く、情報提供を始めとして様々な連携を取っているのだ。

彩紀 心湊 > 「ええ…。彩紀 心湊(さいき みなと)よ。
こういう場所で、まさか同学年の人と会うとは思わなかったかも…。」

学校では静かではあるし、気にはしてはないと言わんばかりに軽く首を振る。

「ああ……そういう。
すごいのね…私、そういうところ全然所属してないから。
…割と身近にそんな凄い人が居たとはね…。確か、祭祀局って霊とか神性的な解決を主とするところ…だったわよね?」

そういった関係組織が存在すると本で読んだ覚えがある。
しかし、風紀や生活といった身近な委員ではないゆえに本当に実在したんだな…といった様子である。

月神 詠 > 「心湊様ですね。よろしくお願いいたします」

名前を聞けば、にこやかに微笑む。
垂れ目ぎみの瞼からは黄金色の瞳が覗いていた。

「ええ、よくご存知で。
 大抵の方は祭祀局と言っても、ぴんと来ない顔をされるものなのですよ」

他の委員会と違って表立った活動をしていないので無理もない。
あなたには知られていたことが嬉しかったのか、聞いてもいないことを苦笑いで語る。

「この常世島には様々な世界から、様々な神性が訪れますから。
 そうした方々との調和を図り、不和を齎すならば調伏する……といった具合でございます」

あまり凄そうな感じがしないのは彼女の穏やかな雰囲気のせいだろうか。

彩紀 心湊 > 「そうよね…実際、働く場所もそういう力に頼らないといけないような案件だったり、転移荒野あたりだった…気がするし。
私も実際に働いてるっていう人に会ったのは初めて…。」

キレイな人だ、と思う。
こうして面と向かって人と話す必要もあまりないのもあって、久々にそんな感情を抱いた気がする。

「…本当に、想像のつかない話…。
実際に、普通の何も所属していない学生からすればそういった案件に関わる前に貴方達のような人たちに処理されるのもあるのだろうけど…。
……実際、大変じゃないの?」

和やかの雰囲気に、ほんの少し心配だと思ったのかそんな事を尋ねる。

月神 詠 > 「ふふっ、心配してくださるのですね。ありがとうございます」

あなたの言葉に気遣わしげなニュアンスを感じ取り、目を伏せた。

「詳細な活動内容は機密に関わりますゆえ、お話しすることはできませんが……
 確かに大変なところもあります。
 異界の神性ともなれば、私達とは考え方の根本から異なる場合も少なくはありませんから」

なるべく穏便に済ませようとはしているが、時には衝突を避けられないこともある。
傷を負い、前線を退いた局員も全くいないわけではない。

「……ですが、同時にやり甲斐も感じております。
 かの『大変容』から様相を変えつつあるこの常世に調和を齎す一助となれるというのは」

伏せていた双眸が開かれれば、そこには確かに芯の通った使命感のようなものを感じるだろう。

それに───と続けて。

「辛く険しいのも心地が良いというか……
 あっ、壁は高いほど越える意気が湧いてくる、というような意味ですよ?」

やや頬を染めながら言ったりしていなければ格好いい台詞だったのかもしれない。

彩紀 心湊 > 「…ん?…あ、ああ…そうね。
…心配、してたかも。」

それは無意識の感情だったのか、そう言われてみればとやや気恥ずかしそうに目をそらす。

「…そうね、何十年の前の影響が未だに続いてるし…貴方達のような人たちがいつまでも重要視されるのは納得できることだもの…。
本当に神様なんてものがいるのだとしたら、それこそ人の身じゃ命がけっていうのは…なんとなく想像がつくものだし。」

自分は、本当にただの超能力者である。
ごくありふれた、サイコキネシスの異能者。
それでは及ばぬ場所に立つ人間に、素直に敬意を覚える。

「……あ、貴方…変わってるわね…。
心地よいとか中々言えることじゃないというか…いや、良い間違えならごめんなさい?」

ん?という疑問と、苦笑いと冷や汗がまじりの表情。
流石に初めて話す人に対してそういう系の感情は懐きたくはないとばかりにその思考を振り払った。

月神 詠 > 「んんっ……こほん。私の事はよいのです」

誤魔化すように咳払いをひとつ。
それから、今度はあなたに視線を向けた。

「心湊様は何か、部活などには所属されているのですか?」

自分語りもほどほどに、今度はあなたのことを聞きたいらしい。

彩紀 心湊 > 「……ふふ。」

そんな様子に、小さく笑う。
きっと、そういう事なのかもしれないがこういう反応をされるのは少しばかり楽しく思う。

「いいえ…私はそういうのは全然。
やってることといえば…図書館に大体は入り浸ってるくらいかしら…。
今日こうしてここに来たのも、ただやることがなくてなんとなく散歩してただけなの…。」

つまらないでしょう?と苦笑して。

月神 詠 > 自嘲気味に笑うあなたに対し、詠は小さく首を横に振る。

「いいえ、それも素敵なことだと思います。やることがない、と言うと後ろ向きに聞こえてしまいますが、
 それはあなた様を縛るものがないということでもありますから」

慰め、世辞、そのどちらでもなく、どこか羨むような口ぶりだった。
遠くの空を見上げながら言葉を続ける。

「私の妹も同じで、誰にも縛られない自由な子です。
 少し放任主義が過ぎると、先日怒られてしまいましたが」

彩紀 心湊 > 「…そんな風に言われたのは初めてね。
けれどまあ…だからこそ、何かに縛られたい…というと変だけれど、何かに夢中になるものを探してしまうのかも。」

この人は、きっと、多分自分の真逆のような人なのだなと思う。
厳しく育てられたのだろう。
羨むような口ぶりに、思うことがあるかのように。

「妹もいるのね…?
…ふふ、放任しすぎるとそれはそれで良からぬものに引っかかるかもだし…時々過保護くらいな一面は見せて良いと思うわ…。」

そう、自分ならされたいかもしれないと、やや願望も籠もった言葉。

月神 詠 > 「縛られたい……!? 心湊様もですかっ!?」

違う、食いつくべきところはそこじゃない。
しかも連鎖的に墓穴を掘っているというおまけ付き。

「はっ……し、失礼いたしました。
 あなた様の仰る通りではございますが、なにぶん妹には嫌われてしまっていて」

色んな意味で苦笑しつつ、言葉の裏に込められた意味には気付いたようで───

「心湊様は、何か……指標となるものを探しておいでなのですね」

それは定められた使命であったり、律してくれる人であったり。
覚束ない足取りを支えてくれるものが欲しいのだと受け取った。

彩紀 心湊 > 「も……?!」

その反応は一体?!と思わず目を丸くする。
やはりそういう性癖なのか?!

「…ああ…。中々…そういうのはままならないものなのね…。
喧嘩…っていう感じでもなさそう…。」

姉妹なりに、色々あるのだろう。
姉妹もいない自分からすれば、どうにも掛ける言葉が見当たらなかったが。

「…そうかも…。
一人では、どうしても限界はあるもの…。
なんとなく、生きるのは問題ないけれど…。」

その通りだと、小さくうなずく。
けれどまあ、そんな隣人を作るのもまた楽でもないだろうとやや諦観気味で。

月神 詠 > 「あぁーっ! 違います違います! 言葉のあや……そう、言葉のあやです!」

どう言い繕ってもそうはならない気がする。苦しい言い訳だ!

「まぁ、その……なにぶん堅苦しい家柄でして。
 妹にかかる負担を少しでも減らそうと努力はしたのですが、しすぎたらしく……
 あの子にとって私は、目の上のたんこぶなのですよ」

ままなりませんね、と苦笑する。
おおかた、努力家な姉ばかり評価されてしまい……といった具合なのだろう。

「……そうだ!
 ここでお会いしたのも何かの縁ですし、よろしければお友達になりませんか?
 私が心湊様の指標に、などと驕るつもりはございませんが、お手伝いはできるかもしれませんし」

やや湿っぽくなった空気を払拭するように、そう提案した。

彩紀 心湊 > 「…な、なにの……?」

何のあやなのだ?と疑念の眼差し。
これは逃れられない…!

「ぁ……ぁぁ…それは…。
なるほど…過ぎた子供扱いは、とは本でもよく見るものだけど…実際にあるものなのね。
周りからすれば、また印象も違うでしょうし…。」

余計なお世話だったといえばそれまでだが、こうも好意が行き違うのはなんとも悲しいものがある。

「…私と…?
それは、私にとっては…別に構わないことだけれど…。
貴方ばかりにそうさせるのは私も少々気がひける…。」

友達になるのは一向に構わないのだが、些か、彼女からは貰いすぎる気がしてそういうふうに返した。

月神 詠 > 「いいえ。なにも心湊様だけに益がある提案というわけではございません。
 こうして身の上を打ち明けられる間柄というのは、私にとっても貴重なものですから」

典型的な優等生タイプというか、高嶺の花すぎて近寄りがたいタイプとでもいうべきか。
あなたに対しては既に恥の上塗りを重ねてしまった後なので、ちょっと吹っ切れたようだ。

「私も……対等な関係というのに、若干の憧れを抱いているのです」

彩紀 心湊 > 「…そういうことなら。
貴方も大変そうだし…どうせ暇だし、ね…。
困ったことがあったら話くらいは…。」

確かに、話の流れでこういう事を話したが、中々話せるものではないなと今更ながらに思う。
ソレに納得したように、頷いて。

「じゃあ…様付けから外してくれる…?
対等、でしょう…?」

と、小さく笑いかけた。

月神 詠 > 「ええ、ええ。仰る通りでございます。
 改めて、よろしくお願いいたしますね。心湊さ……心湊さんっ」

嬉しそうに、まだ少し慣れないさん付けであなたを呼び、笑顔を咲かせた。

「私は普段この神社か、校内であれば教室、弓道場などにおりますので。
 心湊さんも何かあれば……困った時はお互い様ですよ」

連絡先なども、あなたが断らなければ一通り交換するだろう。

彩紀 心湊 > 「…ええ、改めてよろしく。詠さん。」

微笑ましく思う感情と、その笑顔に応えるようにこちらも笑顔で応じる。

「弓道…なるほど。
気が向いたら…見に行く。教室はー…ええ、退屈なら昼ごはんでもお誘いするわ。」

そんな他愛もない事を話しながら、連絡先も特に断ることなく交換して。

「…ん、良い意味で暇つぶしになった。
ありがとう、また暇になったら遊びに来る…。」

来たときよりもどこか軽い足取りで出口へと足を向ければ、軽く振り返って手を振った。

月神 詠 > 「まあ、お昼を……! 楽しみにしておりますね!」

退屈ならという前提が聞こえていたのかいないのか、期待に胸を膨らませつつ。
出会った時より親しみの篭もった笑顔で、去りゆくあなたを見送るのだった───

ご案内:「常世神社」から彩紀 心湊さんが去りました。
ご案内:「常世神社」から月神 詠さんが去りました。