2020/06/26 のログ
ご案内:「常世神社」に緋嗣紅映さんが現れました。
緋嗣紅映 > 「はー、神社って落ち着くネ。まあ紅映、神社棲みじゃなかったけド。」

本殿の後ろに厳かに鎮座する巨大な岩の上に、無遠慮に腰を下ろしている狐娘。
既に月が高く空に昇り夜闇を照らして、耳を立てれば木々の葉が擦れ合い、波が打ち合う音がする。
木と土と海の匂いがする贅沢な神社を見渡しながら、投げ出した足をブラブラと揺らす。

「紅映もこんな立派な神社に棲んでたラ、取り壊されずに済んだんだけどナー。」

口を尖らせてぶうたれながら、不機嫌そうに尻尾を激しく揺らす。

ご案内:「常世神社」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
紫陽花 剱菊 > ふらりと神社へとやってきた男が一人。
時刻は既に月明り。男の足取りは、夜の静寂に見合った静かなものだ。
異邦人である男にとって、此の辺りの雰囲気は馴染みが深かった。
出家した事も無いが、精神修行にはもってこいの神聖な土地。
鳥居をくぐり、本殿を一瞥すれば目の前の小さな人影を確認する。

「…………。」

男は静かに近づいて、少女の姿を目視する。
狐の思わせる体の部位、そして神社とくれば……。
男は少女へと、一礼した。

「……失礼。此方に祀られる稲荷大明神様と見受けられる。
 某は、夜の静寂に身を落ち着けに来たもの。
 どうか、此の場で一刻程暇を下さらないだろうか?」

土地の主である者に対しては当然の問いかけであった。
……まぁ、主であればなのだ。
男は大きな勘違いをしている……!

緋嗣紅映 > 自然の音だけが耳に届いていたが、ふとそれとはまったく別の音が耳に届いて片耳を震わせる。
頭頂部にある為とても目立つ耳ははっきりと男の足音を聞き取り、やがてその姿が目に入った。
やがてその男の唇から零れた静かな言葉に、色違いの双眸を細めてニタリと狐は笑った。

「あはハ!残念だけど紅映は違うヨ?てか此処稲荷じゃないと思うシ?ヤ、知らんけド。」

足を揺らしながら笑い声交じりに告げた後、岩の上で立ち上がってから、次の瞬間男の目の前に一瞬で移動した。
空中から現れたように体がふわりと落ちると、ピンクブロンドの髪をふわふわと揺らす。

「紅映だヨ。緋嗣の紅映。別の世界では神様やってたけド、今は野良だしそもそも別世界だシ?敬うくらいならなんかちょーだイ!」

言うや否やだぼだぼに余りまくった袖で隠れた両手を持ち上げて差し出した。

紫陽花 剱菊 > 男の表情は不愛想な仏頂面だ。
表情金が固いのか、それとも衰えているのか。
表情の差異は無いが、少女の言葉を聞けば少しばかり申し訳なさそうに眉を顰めた。

「……左様で在ったか……。逸れの狐……私と同じ、と、申すのは些か度が過ぎる、か……。」

同じ異邦の身とは言え、刃と神では余りに差がある。
非常に真面目な男らしく、申し訳なさからすぐに頭を下げた。

一瞬で移動した様に別段驚く様子は無く、揺れる髪を右へ、左。黒い双眸が追いかける。

「……どうも。私は、紫陽花 剱菊(あじばな こんぎく)。
 如くも無き男で在り、今は護島の剣として、此の身を納めている。」

「はて……。」

物乞いされれば此方も吝かでは無かった。
何かないものか、と縊れたコートを弄ってみる。
そして、コートの裏から取り出したのは、包みに入った小さな饅頭。

「童子の様にと言わない。然れど、甘味を好まれるの在れば此れでどうか……。」

静かな一礼と共に、少女の両手にそっと備える。
相手がそう言う存在で在れば、自身の最大限の礼儀をもって応えるのみ。
因みに饅頭はこしあんが入った薄皮タイプだ!

緋嗣紅映 > 「わははハ!苦しゅうないゾ!もっと紅映を敬ってもいいヨ!」

申し訳なさそうに頭を下げる男に、両手を腰に当てて仁王立ちしてふんぞり返った。
遠慮と言う言葉とは程遠く、最早狐の辞書には遠慮と言う文字も無さそうだ。

「ンー、よく分からんけド……名前はコンギクネ!よろしくしてあげるネ!コンギク!」

にっかりと笑ったまま首を傾げたが、名前以外はよく分かっていなかった。
それよりも、差し出された饅頭の方に気が逸れる。

「ンー……。まぁしょうがないカ。いきなりだったシ。次はもっとマシなものを捧げてネ?ア、油揚げと味の濃いものはヤダかラ。」

眉を寄せて鼻を鳴らし、心底しょうがないなぁみたいな煽るような顔をしながら饅頭の包みを開けると、その場でぱくっと一口で食べきってしまった。

「あまイ。マー、そこそこじゃネ?うんうんそこそこって感ジ。」

舌で唇を舐めて、言葉とは裏腹に満足げに笑った後、じっと男を見上げる。

「じゃあ捧げものをしたかラ、コンギクのお願いをちょっとだけなら聞いてあげル。なんだっケ?暇をくレ?暇ってなニ?」

袖の垂れさがった両腕を左右に広げて上下に小さく揺らしながら首を大きく傾げた。

紫陽花 剱菊 > 「……御意のままに。」

人差し指と中指。
二本指立てて静かに礼をする。
男のいた世界である御礼である。
果たして無邪気なものだが、ある意味真面目な男と噛み合っているのかもしれない。
男も男で、本当に敬う気満々だぞ!

「……紅映様が仰るので在れば、お次は望むままのものを御捧げ致します。」

流石に間に合わせの饅頭は受けなかったようだ。
だが、多少なりとも満足したのであれば、男は少しばかり胸を撫でおろした。
こうしてみると、本当に無邪気な子どもそのものだ。
そんな無邪気な姿を見れば、自然と一文字の口元は緩く笑んだ。

「……うむ。然すれば……。」

少女の姿をまじまじと見た後、静かな長椅子を一瞥する。

「……では、今宵の話し相手になってはくださらないか?
 静寂に任せるのも良いが、折角の御神の手前
 退屈させるのは、罷り成らぬ。」

「余り話術に自身が在る訳では無いが……其方の暇を潰せれば、と。」

要するに話し相手になってくれ、という事らしい。
野ざらしの長椅子を顎で指し、共に座ってはくださらないか?
と、促してみる。

緋嗣紅映 > 男の言葉とその態度に、狐はますます機嫌を良くしてニマァと笑みを深める。
元の世界では神様と言っても、人と違うものをひとくくりに神と呼んでいただけに過ぎない為、その扱いは千差万別。
此処まで丁寧に扱われた事は無いし、なんなら此処まで敬われた事自体記憶に無いかもしれなかった。

「んふ、ふふふふフ。悪くないネ、こレ。」

一人で頷きながらにやつく唇を隠すでもなく呟いた。

「いいけド、そんなんでいいノ?まぁ饅頭程度で大層なお願いされても困るけド。」

そもそも大層な願いを叶えられる力量も無い、とは言わないが、流石に慎まし過ぎて思わず目を丸めて首を反対側へ倒した。

「マー、こんな可愛い神様と喋れるんだから役得だよネ!」

両手を腰に添えてふんぞり返った後、長椅子まで小走りで駆けていくとドカッと乱暴に腰を下ろした。

「コンギクはなんの逸れなノ?その背負ってるのはなニ?てかこんな時間に何してたノ?」

問いかけながら左右に上体が揺れて、長い髪がふわふわと揺れる。
長い筈なのに、不思議と地面にはぶつからずに揺蕩っている。

紫陽花 剱菊 > 少女の意図を深く読んでいるわけではない。
だが、本人がご満悦のようだ。
其れならば良し。他人が満足なら、男にとってそれが何よりの喜びだ。

「……空蝉の夜。私如きに時間を使って下さるなら、其れだけで十分だ。」

彼女の時間は彼女のもの。
それをわざわざ自分の為に割いてくれるのであれば
それ以上に望むなの余りにも恐れ多い。
自己評価は低い、どころか地面に埋まっているような男だ。
少女の尊大な態度も、男にとってはありのままに受け入れている。

「相違無し。さぞや、人に愛される御柱であったとお見受けする。」

男は頷いて、少女とは対照的な静かな足取りで長椅子へと近づき
ゆったりと腰を下ろした。

「……ん、此れか……。」

下げていた竹刀袋を、自身のひざ元へと下ろす。
紫色の布袋。紫陽花のワンポイントが特徴的だ。

「……一言で言えば、"雷様"だ。私は、私の世界で、最も高名な剣士として、天の力を承った……。」

「特に何かをしていた訳でも無く……眠れぬ夜は、こうして静かに夜風に当たる事を好んでいた……。」

緋嗣紅映 > 「…………まーネ!!」

そもそも人に愛されていたならば祠が取り壊されて追い出される事なんて無かっただろう。
然しそれを知らない男の言葉を否定するのは、空気が悪くなりそうだしなにより狐のプライドがそれを許さなかった。
結果、暫しの間を置いて最終的に嘯いた。

「可愛イ!雷さマ?ふーン……?じゃあコンギクは強いんだネ!眠れないノ?なんか悩ミ?それとも、悶々としちゃうとカ!?」

だぼだぼの両袖を口元に添えて、目を細めてニタニタと笑いながら揶揄う。
武勇に優れた者は好色になりがちだなんていうのは、多分偏見。

紫陽花 剱菊 > 「…………。」

確かに男は、不愛想な男だ。
人の心の機敏には疎い。
しかし、少女の僅かな間を見過ごすはずもない。
其の間は、少女が此処に流れ着いた場所の起因するのか。
だが、敢えて何も言わなかった。
少女の気遣いを無碍にすること事、男には出来なかったのだ。

「……私の世界では、最も強きもの、そして、最も命を断ったもの。
 民草の為と舌巻いても、血濡れの姿は、根の国の黄泉軍成れば
 人々にただ、恐れられた。人に抱く恐れで無くば、即ち其れは天の裁き。
 ……此の剣は、私を人に非ずと定めた代物だ。」

人は天災を怖れ、敬い、鎮める為に如何なる策も講じた。
其れ等を一蹴するのが災いなれば、其れを宿した
即ち、雷を宿した剣は男の世界では災いそのもの。
男は人として、人を、妖を、命を斬り続けた。
其の行く末に授けられた剣は、称号は
"災い"ともなれば、これ程皮肉な話は無いだろう。
語る男は、静かに微笑む。憂いの色を帯びながら。

「……ふ。」

ちょっと鼻で笑われたぞ!

「紅映様には些かお早いお話だ。寝れぬと言うのは、ただの性分だ。
 ……夜襲を警戒してる癖が体に染みついてな、深い眠りにつく事が出来ないだけだ。」

……あからさまに子ども扱いしている気もする。

緋嗣紅映 > 男の言葉を聞いている間は意外に静かで、ちゃんと聞いていた。
だが聞いている事と、理解出来る事は、また別だ。

「うーン、よく分かんないけド、コンギクは強くテ、そんで認められタ。別によくなイ?人で居たかったなら別だけド、人じゃないから悪いってワケじゃないシ?命を断つ理由にもよるけド、コンギク、そんなサイコなワケ?」

民草の為と言うならば彼なりの正義はあったのではないか、彼なりの道理はあったのではないか。
彼の語る言葉に耳を傾けた結果狐がただそう思っただけであり、現実は知らないし、その民草がどう思ったかも知る由は無い。
それでもそれを聞いて「やべーやつじゃん」などと思う事は無かったし、憂う男の顔に向けてニヤリと得意げに笑った。
知らぬからこそ笑えるのだろうが。

「……今鼻で笑ったナ?笑ったナ?」

鼻で笑われてちょっと真顔になった。

「ほウ?紅映にはまだ早いカ、その体で試してみてもいいんだヨ?コンギクみたいなヘタレ剣士にそんな度胸があればの話ですけド?」

ブンブンと激しく苛立ったように尻尾を振り眉を寄せながらも、犬歯を覗かせるように笑みを深めて首を傾げた。

「夜に襲うのが悪いモノだけとは限らなくなイ?」

長椅子の上で膝立ちになれば身を寄せて、ふすりふすりと鼻を鳴らして男の匂いを嗅ぐ。