2020/08/06 のログ
ご案内:「常世神社【夏祭り期間】」に日月 輝さんが現れました。
ご案内:「常世神社【夏祭り期間】」にマルレーネさんが現れました。
日月 輝 > 夕闇にあって鮮やかに境内を照らす提灯群。
ずらりと並んだ様々の屋台に、何処からか響く祭囃子の音運び。
一言惹句にするならば、誰もが浮かれる"夏祭り"が此処にある。

その内にある人達。
浴衣姿の少年少女。
幼子を連れた老夫婦。
欠伸をする風紀制服の誰かは見回りで、
興味深そうに彼方此方に視線を巡らせているのは、異邦人の方達かもしれない。

「…………」

あたし?あたしは境内の入口たる鳥居に背凭れて人待ちの恰好をしていたわ。
いつもの感じとは違って、大人しめではあるけれど、相手は気付いてくれるかしら。

マルレーネ > 浴衣そのものは輝さんに選んでもらいました。

この服装にはカジュアルな草履が合うと言われて手に入れました。
髪は上にまとめた方がいい、と言われてセットをして。
着る方法やマナーその他諸々を知人に伺いまして。

「お待たせしましたっ。」

ふー、ふー、っと走ってやってくるシスター。
シスターと言いつつも、金色の髪を上でまとめて、紺色から黒へのグラデーションも艶やかな浴衣。
すっかり和の服装に染まった状態だから、シスターらしさはいつも通り皆無。

これ、まだ慣れないですね、なんて笑いながら草履で隣に並んで。

日月 輝 > 携帯端末を持たない相手との待ち合わせは中々どうしてじれったい。
ハンドバッグから端末を開き、画面を見るとそろそろと御約束の刻限で、口元だけが不満そうに尖る。
遅刻を案じている?いいえ、デパートの時のように全力疾走してくるんじゃあないかを案じているの。
和装で走るのは御行儀が悪いものだから。

「…………」

悪いものだから、息を切らせてやってくるマリーを見て心象風景に宇宙が広がる。
いえ、恰好その物は良いのだけど。

「マリー……浴衣で走るのはお勧めしないわ。やっぱり携帯端末、今度買いに行きましょうか」
「常世渋谷とかなら最新モデルとか──ああ、でも簡単操作のがいいかしら……」

菊は縁起の良いものとして扱われている。
邪と遠ざけるとされて、昔々から親しまれている浴衣柄。
ビギナーのマリーには丁度良いもので、金髪碧眼には地味目に抑えた色合いも良く映える。
心象風景の宇宙は忽ちに消えた。

「ま、今はお祭りを楽しみましょっと。此処の神社のお祭りは日本という国の方式でね」
「神社、神様を祀る場所のうんたらかんたらと、まあ大本は宗教色が強いんでしょうけど」
「今時だとご覧の有様って感じ。こういうの、こっちの世界では花より団子って言ったりもするわ」

並んで鳥居を潜って境内へ。
右を見れば屋台があり、左をみれば屋台がある。

「マリーはどれが気になるとかある?」

マルレーネ > 「……あ、そうなんですか?
 携帯端末……あれですね、わかります。 欲しいなーとは思うんですよね、皆さん使われていて。
 オンライン懺悔とかやりたいなと思ってるんです。」

オンライン懺悔という新たな可能性を模索する異邦人。慣れすぎである。

「…………え、ええーーっと。」

まずは入る前に、じーっと輝を見て。

「……なんでしょう、フリルも可愛いですけど、黒い引き締まった色だと逆にいつもと印象が違うというか。
 大人っぽく見えますね?」

お祭りよりも優先して、相手の恰好をまじまじと見つめる。
にへ、と緩い笑顔で歩きだして。

「まあ、実際私、ずーっと旅をしていただけなんで、あんまり気にならないんですよね、こういうの。
 むしろ、その場その場で溶け込もうとするんで、参加は積極的な方ですし。」

明るく華やかに輝いて、更に人も多い通りに、わあ、と声を漏らす。

「お面、お面が見てみたいです。 実際そういうのをつけるものって聞きました。」

いきなりトンデモなところを攻めていくシスター。

日月 輝 > オンライン懺悔。
つまりはリモート懺悔。
携帯端末よりもPCが必要で、配信環境を整える必要性がある。
あたしの言葉通りに常世渋谷になら全てが揃うのは間違いなく、けれども重大な問題が一つ。
あたし、パソコンそこまで詳しくない。

「へ、へえ~割と思い切るわねあんた……ま、まあ?それなら?今度あたしがそーゆーのも見繕ってあげるけど↑?」

唇が引き攣りそうになる。
頑張れあたし。友人の期待に応えるのよ。
何だか眩い視線で見られている気がするし──等々、電子機器の扱いをどうしたものかと考える思考が消える。

「……そりゃああたしですもの。これくらいはね?着付けだって自分で出来るもの」

服装を褒められて抑揚が薄い。誤魔化すように、マリーの緩んだ頬を抓んでやろうと思ったから、そうする。

「それにしてもずっと旅かあ。時々聞いているけれど、何だか夢物語みたいよねーってお面から!?」

廃城に住まう翼竜。
船を割る巨大イカ。
列を成す勇壮な騎兵達。
どれもこれもが夢物語のようで、けれども面前ではしゃぐ彼女の現実だ。
あたしが軽く抓った頬はきっと痛くないけれど、夢じゃない。

「中々攻めるわね……いいわよ。何のお面が欲しいの?」

先んじた彼女の後について屋台の前へ。
店主はこの世界の人のように見える長躯の男性。
でもヒョットコの面を着けているからお顔は判然としない。

『ゆっくり見てってくれな』

声は、青年のように聞こえた。

マルレーネ > 「あはは、大丈夫です。 今はまだ考えてるだけですし。 何よりそれこそその、携帯とやらを使いこなせなければいけませんからね。
 それくらいはできないと、と友人にも言われてしまいまして。」

あはは……っと、少しだけ笑う。
焦ってはいない。焦らないまま、それでも毎日前進する女。

「………ふぇぁう。」

頬をつままれたまま、鳥居をくぐって、周囲を見回し。

「これを頭につけたり、顔につけたりして誰か分からないようにするのがいいんだ、って教えてもらったんですけど。」

言いながら、じゃあこれくださーい、とウサギのお面を購入する。
ぱふん、と顔につければ、可愛らしいウサギの顔ではある。

「……輝さんは、どこか見たいことないんです?」

ウサギが首を傾げて、じーっと見つめてくる。

日月 輝 > 並んだお面は様々な物があった。
昨今隆盛と思しき特撮ヒーローのもの、何某かのアニメのヒロインと思しきもの。
犬や猫に始まる動物系統から、マリーはきっと知らないだろう日本伝統のオカメやヒョットコ、ハンニャの類。
海外系統ならピエロを模しただろう道化師やらホッケーマスクやらワシ鼻の魔女と節操無く並んでいる。

「それだけの意欲があるなら大丈夫よ。結構結構……って貴方の友人は何を教えてるのよ何を」

並ぶお面を眺めていると横合いから変装指南めいた言葉が飛んで来て唇を尖らせる。
眉は顰めても相手には見えないから、いつの間にか不満を示す時の癖になりつつある。

「あたし?あたしは……そうね。まあとりあえずは甘いものでも食べながらかな」

あたしが買ったのは緑色の肌をしたワシ鼻の魔女の奴。それをシニヨンまとめを抑えるように後ろ向きに被る。

「あれなんかどうかしら。マリーのお気に召すかは判らないけど……ふふふ、ちょっと見てくるといいわ」

兎さんに指し示す先には三件の屋台が並んでいる。

大判焼き、回転焼き、今川焼き。

あたしは意地の悪い魔女のように唇を歪めた。

マルレーネ > 「え、なんかこう、すごいいい感じになる技って。」

男子とね。ギャル系の友人だった。
はーなるほどなー、とその友人の話を素直に聞き入れて、ウサギのお面。
鼻歌交じりで道を歩きながら、………輝の指し示す先の屋台。
ふむ? と首を傾げながら、一人でのんびりと近づいて、3つの屋台を交互に眺めて、眺めて………。

「………フフフー、輝さん、このくらいでは私は迷いませんよー?」

ふふーん、と自慢げに袋を三つ持って帰ってくる女。
つぶあん、こしあん、カスタードの3種類だ。

「ずっと旅をしてきたって言ったじゃないですか。
 同じものなのに名前が違う、なんて、驚きはしませんよ。

 いやまあ、なんで三つ並んでるの、とは思いましたけど。」

自信満々に満点解答。盛大にドヤっておきながら、自分はまずこしあんをぱくり。
ちょっと熱かったのか、あちち、と小さくつぶやきながら。

日月 輝 > 屋台の定番である丸い焼き菓子。
中身は餡子が一般的だけれど、その実様々な具が用いられている。
最大の特徴は名称が不安定なこと。
大変容以前には確かな区分があったとされているけれど、今や判然としない。
あたしだって何が正しいのか判らないし、解らない。
いやなんで三件並んでるのよ客層被るでしょ。
そんな事も思う。

「……確かにいい感じに買って来るじゃないの……あ、そっか」

国によって、地域によって同じものでも名称が違う。
彼女からするとそれは日常で、言葉を聞くと成程なと得心する。

「成程ねえ、その視点はあたしには無かったわ……あ、やっぱり3つ並んでるのは気になる?」

1個頂戴、と袋を一つ取り上げる。マリーが食べているのは漉し餡だ。
旅慣れているとはいえ、まさか残り二つに冒険心に溢れた具を選びはすまいと、軽い気持ちで口にする。

「多分まあ……茶目っ気じゃないかしら。ほら、あっちだとイカ焼きとタコ焼きの屋台が並んでいるし」

熱々の粒あんに語調を跳ねさせながらに指差す先には二件の屋台。
イカ焼き屋台の店主はタコのような異邦人で腕を巧みに使い。
タコ焼き屋台の店主はイカのような異邦人で腕を巧みに使っている。

「…………」

鬼気迫る様子で屋台を切り盛りする二件。近づかない方が良さそうな気がする。

マルレーネ > 「いろんな場所でお祭りにも参加しましたからね。
 ……本当は、うちの宗教と別のものには参加するな、と言われてはいましたけど。

 その場所でいろいろなこともありましたしね。
 命の危険を感じることとかもいろいろ。」

あははー、っと遠い目になりながら、あんこ入りのそれを食べて。

「……茶目っ気というか、ライバル心を煽ってるだけに見えますけどねー。」

苦笑する。時折火花が散っているように見えるのはきっと気のせい。

「これだと、人が多すぎて目がちかちかしますね。
 他に何か、オススメ、ってのあります?」

彼女の特性としては、パワーとタフネスが売りである。
射的にしろ型抜きにしろ、間違いなく向いてない。

日月 輝 > 白熱するのはきっと売り上げでも競っているのでしょう。
或いはそう見せかけるショービジネス。所謂プロレスという奴だ。
……でも違ったら困るし、そっとしておきましょう。
イカ焼きとタコ焼きの屋台を通り過ぎながら、粒あん入りの大判……回転……今川?まあ、齧る。

「マリーの世界の宗教って厳しいのね……ね、どんなお祭りがあったのか教えてよ」
「命の危機……はちょっと宜しく無いけれど、なに?『俺様に買ったら云々』系の荒っぽいお祭りとか?」

遠い目になるマリーの腕を引いてお祭り談義に引き戻し。

「夜でも賑やかしくてあたしは好きだけど、マリーは静かなお祭りのがお好み?」
「そうねえ、それなら……あ、アレやりましょうアレ!」

それから、頬に指をあてた判り易い思案所作をし、一件の屋台を指差す。

「あれで大物取ったら教えてあげるわ?」

射的の屋台。
そこに目掛けてマリーを引いていざ向かう。
店主は髭モジャ短躯のおじさんで、喧噪に負けじと声が凄くうるさかった。

「おひとり様おねがいしまーす。ほら、マリーやってみてやってみて。銃の使い方判る?」

彼にお金を支払って、あとは無責任に応援するばかり!

マルレーネ > 「お祭りですか……? ああほら、木を斧で早く切り倒した方を勝ちとするお祭りとか。 お酒をたくさん飲んでから遠くの一本杉まで全力疾走するお祭りとか。 後は………お祭り自体は凄く穏やかなんですけど、全員寝ないお祭りとか。
 神事ですから、なんでしょう、ちょっと辛いものが多い気はしますね。

 一応全部参加したんで、また詳しくお話しましょうか。
 いやー、辛かった思い出ばかりがこう、瞼の裏を流れるように……。」

木を斧で早く切り倒した方を勝ちとするお祭り(女性の部優勝、総合3位)
お酒をたくさん飲んでから遠くの一本杉まで全力疾走するお祭り(女性の部優勝、総合4位)
全員寝ないお祭り(総合2位)

全てにおいて力こそ正義、体力こそ正義を貫き通すシスターだった。


「む、お任せください。
 大物をとればいいんですね?
 ……えーっと、大物っていうと、……当てればいいんです? あ、ダメなんですね。」

むむむ、と銃の使い方はバッチリ、意気揚々と台に身体を預けて構えて、じーーー、っと狙いを定め。

ぽこん、っと見当はずれの方向に飛んでいくコルク弾。

日月 輝 > 「……………それ、お祭り?」

心象風景に再び宇宙が広がる。
世界が違えば言葉の意味も変わる。多分、そういう事なのかもしれない。
内容の悉くがパワー系なのも気になるところ。砂浜大暴れ事案の如くマリーったらやんちゃだったのかしら?

「滅茶苦茶気になるわねその話……ええ、今度教えて貰いましょう」
「ただ、そういうのに参加してたなら、こういう的当てなんかも得意なんじゃない?」

ルールを店主に確認し、おもちゃの銃を構えるその姿を見る。
詳しい訳でもないけれど、そう不自然な構えには見えない。
けれども放たれたコルク弾は見当違いに飛んでって──

『俺ぁ景品じゃねえんだけどなあ!』

店主のおじさんの額にこつんと当たって彼が笑う。

「あははマリーったら何処狙ってるのよ。ほら、後1発頑張って!」

釣られてあたしも笑って和やかな雰囲気。

マルレーネ > 「ええ、お祭りですね。
 その地域の豊作や、災害が無いことを祈っての神事ばかり。

 ………いやー、ああいうお祭りに参加して勝つと、結構信用されたりするんですよね。
 旅を続けていく間に、そういうのが慣れてしまって。」

あはは、と苦笑をしながら。

それでも、一発目がおじさんに当たれば、むむ、っと顔をしかめる。
負けず嫌いが燃え上がり、ぐ、っと集中して。

ぱすんっ!

跳ね返った弾が、ぺちん、と輝さんに当たるわけで。

「………じゃあ、こちら貰っていきますね?」

なんて、輝さんをがっちり背後から抱きしめて、てへ、と笑う。
射撃のセンスは全くないことを照れ隠ししながら、ずるずる、っと引きずるように。

日月 輝 > 「なんか……あれよね。『この街で信用して欲しかったら祭に参加してもらわねえとなあ!』みたいな……?」

郷に入る為の儀式。呪い除けの法にそういった記述があったような気がする。
マリーの世界はそういったものが色濃く残っていたのかもしれない。
それらは多分に大変で、今過ごしているものとは性質が異なろうことが解る。

「あんた苦労してるのねえ──へ?」

そうした世界に比べたら此方は随分と、良いんじゃあないかしら?
そう思って頷いて、声が跳ねる。
だって後ろから羽交い絞めにされたんですもの。

「ちょっとマリー?あたしは景品じゃないんだけど……いやまあ大物かっていうなら、まあそうだけど?」

大笑いするヒゲの店主を他所に引き摺られる。
慌てて異能を用いて軽くして、運び易くはなってあげるけれど抗弁もまた軽く飛ぶ。

「まったくもう……それじゃあ御約束のオススメ。屋台じゃあなくて夏にピッタリの奴──常世島には青垣山と云う山があってね」

得意気に笑み崩れて勿体ぶった空咳をしてから切り出す。掴まれてるから不格好だけど。
曰くの山に寂れた神社が在る。
荒れ果てること甚だしく人跡途絶えて久しい所。
然し、今時分になると如何な不思議か境内に明りが点り、賑やかしくも厳かな祭囃子が妙に流れると云う。
迂闊に迷い込むだけなら良し、けれどもその祭で振る舞われる物を口にしたら──

「──戻って来れなくなる。という……はい、まあ怪談よね。どう?怖かった?」

ウケたなら下ろして頂戴と掴むマリーの手を数度叩く。
異能を用いたあたしの体重は風船のように軽く。容易く運べるに違いない。

マルレーネ > 「むしろ言わないんですよね。お店に入っても商品はないって言われたり。
 でも、お祭りで優勝した後だと、やけに親しくなってくれたりとか。

 まあ、当然と言えば当然ですけどね。参加するだけでも効果はありますし。」

大変だったなぁー、なんて語る姿は変わらずとっても遠い目。
神の試練のバリエーションが豊か過ぎて辛い。

「……ふふー、では景品貰っていきますねー。」

軽くなった輝さんを後ろから抱きながら、のんびりと歩く。
軽くなった輝さんは、ぬいぐるみくらいの重さしかないから、とってもらくちん。

「………あー、なんでしょう。 ごめんなさい輝さん。
 その話を聞いて、「ああ、調査に行けってことですね、はいわかりました。」って思っちゃいました………。」

遠い目Ver2.0。思ったより怖がらなかった。むしろいつものことっぽかった。
肝の据わり方もしっかりしたものではあったけれど。

「……んぅうー……さっきから、内腿がかゆいというか痛いというか。
 虫にでも刺されたんでしょうか。」

むぅう、と、少し困った顔で抱っこのまま。

日月 輝 > 「うわあ陰湿……田舎の因習みたいなのって別世界でもあるのね……」

引き摺られながらに遠すぎる世界の近すぎる世情に言葉が落ちる。
傍目には気軽に抱えられて運ばれているので大変シュールで人目を引くのだけど、それはそれ。
今は友人の四方山事情が気にかかる。

「なんで今の流れで調査になるの!?ああ、でも肝試しがてらに行ってみるのも面白そうかも」
「噂の神社まではそれなりに道、整備されているらしいし……あら、大丈夫?」

それは怪談=調査に行かされる彼女の世界の聖職者事情であるとか、
背後より聴こえる困った声であるとか。

「咎めたら大変だわ。あたし虫刺されの薬持ってきているから……ええと、ちょっと離して頂戴な」

あたしは"体重をかけて"解放させ、それからとマリーの手を引く。
薬を使うにしてもここでは一目が多すぎるもの。場所が場所、だから境内から外れた木々の内へと案内するわ。

「ほらこっち。マリーったらうっかりしているのね。虫除けスプレーとかしなかったの?」

往来で内腿を晒すなんて以ての外。
裾を捲らば下着が当然露わとなってしまうのだから、虫刺されの薬を塗るなら当然人通りから外れる必要がある。
進むに連れて光も声も遠くなる。鎮守の森は進み過ぎれば闇深く。適度な所で立ち止まった。
だから、呆れたように唇を尖らせるあたしの顔だって良く見える筈。

マルレーネ > 「あはは、でも、当然と言えば当然なんですよ。 他から来る人に警戒するのは、仕方のないことですしね。」

苦笑をする。 生まれ故郷を離れてずっと旅人。 そのまま、この世界にまで流れ着いてしまったわけで。
仕方のないことだ。

「そういう不思議だったり、ちょっと困っていたり、あんまり近づきたくないところのお鉢は大体こっちに回ってくるんですー。
 分かってますー。 行きますー。 行かせてもらいますー。」

死んだ目になった。どうやらこういう経験は豊富なのだろう。

「………えー、っと。
 ああ、………日焼け止めクリーム塗ってましたね。」

あまりにも無意味な行動だった。てへ、と舌を出して笑いながら。
人のいない森へと足を進めていく。

「………あ、でも、これくらいの場所も静かでいいものですよね。」

のんびり。

日月 輝 > 「うっわ苦労人……マリー、あんた間違っても風紀委員会とか所属したらダメよ」

治安担当であったり雑用であったり、とかく忙し過ぎたり、等々の風評を耳にするから、
友人を案ずるような声だって出る。日焼け止めを塗って来たと言うなら尚のこと。

「静かな森が好き?元の世界だと……って今はいいか。はい、裾上げて。どの辺?」

ハンドバッグから虫刺されの薬を取り出す。
備えあれば憂いなし。あたしの準備良さったら晴天に坐す太陽のよう。
そんな風に得意気に鼻を鳴らし、マリーの前にしゃがみ込んで所作を促す。

マルレーネ > 「ふふ、大丈夫ですよ。 ここの島の人と真っ当にやりあうなんて、命がいくつあっても足りません。
 必要に迫られない限りは、特には考えていませんよ。」

穏やかに相手の言葉を返して、目を細めて……。」

「あ、いえいえ、自分でなんとかなると思うので、大丈夫大丈夫。
 ええ、…………あー、ええーっと。……こ、この……?」

もぞもぞ、もじもじ、歯切れが悪いまま少しだけ裾を持ち上げて、太ももを見せるように。

日月 輝 > 「女同士で気にしない気にしない。そも下着なら水着選ぶ時に更衣室で見たでしょうに」
「抵抗は無駄よ。この島の人と真っ当にやりあうなんて、命が幾つあっても足りないんでしょ?」

言葉を濁すマリーの言葉尻を引っ掴まえて笑い声。

そも自分で何とかなるなら声にもしない。
虫刺されと侮るなかれ、処置の如何でお肌に痕だって残りかねないものなのだから、
あたしは歯切れの悪いマリーの手を取って裾を豪快に捲り上げんとする。そーれ。

マルレーネ > 「ひゃぁあっ!?」

悲鳴をあげる。いやだってその。ね?
詳しくは語らない。

ほわんほわんぎゃるぎゃるー > 一方その頃。

「浴衣に下着とかつけないー、って言えば、男って一発だよネー。」
「そうそう、すげー見るもんねー。おめーダチにめっちゃ言ってたもんねー。ウルテクだって。」
「でも実際に履かない奴いると思う―?」
「いるわけないじゃん、冗談で教えただけだし。」
「だよねー!!」

彼女の友人はとても明るいのだった。

日月 輝 > 「……」

捲った。
ええ、捲ったわ。
だって内腿って言うし、そりゃ上の方まで捲らなきゃ解らないじゃない?

「…………」

無かった。
虫刺され"も"無かった。至近距離だから見間違えとかは無いわ。ええ、無いの。

「………………」

だからそっと裾を戻して、乱れもきちんと直してあげる。
そういえば来るときマリーったら走って来てたけど、まったくヤンチャね困っちゃうわ♡

──そんなことを思う。

「……マリー。浴衣はね、下着、着けるのよ」

立ち上がり、肩に手を置く。俗に言う肩ポンという奴ね。
アイマスクであたしの眼差しは彼女に解らないでしょうけど、声色から物哀し気だと解るかもしれないわ。

マルレーネ > 「………つけないって聞きましたけど!?」

思わずこっちも肩に手を当てて、素っ頓狂な声をあげる。

「あ、あれー、あれー。 上だけの話だったんですかね……?」

頬をみるみるうちに真っ赤にしながら、あ、あれー、あれー、あれー、と壊れたラジオのように言葉を繰り返す。
恥ずかしくて死ぬ。一人だったらその場で身もだえしていた。


「……………黙っててくださいね。
 黙っててくださいね?」

こっちからも肩ポンしながら、マスク越しに見つめる。
圧をありったけかけましょう。 ええ、物理的ではないけど明らかな重力が彼女ら二人の周囲にかかる。


「………」

そのまま、手で顔を覆ってその場にしゃがみ込んだ。 うぅーー。

日月 輝 > 「着けるわよ!?いや、そういう俗説は知ってるけど、まさか貴方の友人がそう教えるとか思わないじゃない?」
「羽交い絞めにされた時によもや、とも思ったけど……」

肌襦袢で体型を矯正して着るのが大体の浴衣である。
マリーは一見そうしているように見えて、その実そうではない見事な着方と言えて、
一体どういう着こなしを?と気になるけれど、此処で脱がす訳にも行かないので一先ずとする。

……いやそも興味本位で友人を脱がしたら駄目よあたし。好奇心にも限度があるわ。

「上も着けるから……あたしだって着けてるから……ええ黙ってる黙ってる」
「そんな事言い降らしたりは、いやちょっとマリー顔近い近い近い!」

重圧。異能に頼らない恐るべき重圧。熟練の旅人が放つプレッシャーとでもいうの!?
このあたしが圧されている!と慄くも束の間、マリーは顔を覆ってしゃがみ込んでしまった。

「だ、大丈夫だって~ほら、立ち上がって……うん、まあ、あたしが女子で良かったわね……」

マリーの手を引いて立ち上がらせる。幼子をあやすように金色の髪を撫でて上げて──
ちょっとだけ揶揄うように耳元に口を近づけ、囁く。

日月 輝 > それが済んだら、意地の悪い魔女みたいに口を歪めて、笑ってあげる。
誰にも言わないのは本当だけど。

マルレーネ > 「う、うう、それはそれで恥ずかしいですけど、そういうものなのかなぁ、って思ってしまって。」

圧をかけて黙っている、と約束をしてもらえれば、はー、っと溜息をつきながらずるずると崩れ落ちる。
ぅ、ぅう、ぅうう。 唸りながらも、耳元に僅かなささやき。

「………も、もう! 輝さんったら!」

耳まで赤くしながら怒って、つんつんつん、っとその額を何度もつついてやって。

「………そ、そういうことなら、早めに帰りますか……?」

今更、この状況であの人ごみに戻れない。
頬をぽりぽりと掻いて、言いにくそうにしながらも提案一つ。

日月 輝 > 「んっふっふ。迂闊な貴方が悪いんだもの。諦めて頂戴な?」

アイマスク越しに額をつつかれる度に身体が揺れて言葉も揺れる。
口元は依然意地悪く歪んだまま。でも、帰参を促す言葉には、伸びる手を取り身体を寄せる。

「な~に言ってるのよ。この世界のお祭りはまだまだこれからなんだから」
「貴方の好きそうなのだとワタアメとかもまだ食べてないし人混みだって平気平気。それに」

薄暗がりに体温を交わすように密着し、マリーのお尻を浴衣の上から撫で回す。

「こんな事をする奴がいたら、あたしがとっちめて差し上げるわ?」
「だから安心しなさいって」

それから彼女の腕を組むように取って猫を撫でるような声。

「ね?折角のお祭りですもの。もっと楽しみましょうよ」
「それとも、マリーはあたしと一緒じゃあ面白くない?」

マルレーネ > 「……ぅ、うう、迂闊と言われるともう反論できない。」

一瞬でしゅん、となる。
いやそりゃなりますよ。渋い顔。
まだまだお祭りはこれから、と言われれば、それはそんな気もするんだけれど。


「……ん、ひゃぁんっ!?」

お尻をむにり、と撫でまわされれば、変な声だってあがるというもの。

「そ、それは、わかりましたけど………その、くすぐったいっていうか。
 くすぐったいのは最近すごく苦手になったっていうか。」

もじもじ、顔を真っ赤にして困った顔。

「…そ、そんなことはないですよ? 輝さんと一緒だから楽しいのは、うん、本当ですから。」

当然です、と強く頷きつつも、あ、これ素直に返してもらえない奴だ、と気が付いてしまうカンの鋭いシスター。

日月 輝 > 「歴戦の旅人さんだって言うのにねえ。……でもまあ、この島。概ね平和だしさ」
「平和ボケしたって言うなら、それはそれで良いんじゃない?」

渋い顔をする頬をつついて差し上げて、迂闊になったことを言祝いでだってあげましょう。
夜闇の木々に可愛らしい悲鳴が上がるのなら、尚の事。

「そりゃくすぐったくしたつもりだもの。くすぐったいでしょうね」

暗がりでも明らかに赤面するマリーにしてやったりと笑って見せて腕を引く。
眩い喧噪に満ちた境内へと立ち返り、改めてと隣を見る。
あたしより年上で、あたしより背が高くて、あたしより大人っぽい。
なのにあたしよりずっとずうっと子供っぽい所があるのが面白くって可愛らしいわ。

「あたしもマリーと居ると楽しいわ。だから……そうねえ、海は別にしてプールとか?」
「色々行ったりしましょうよ。あたし得意の水上歩行を見せてあげるんだから」

だからはしゃいで歓声挙げて、異世界からの来訪者を現地人らしくエスコート。
祭が終われば仲良くなるならそれはきっと、此処でも同じ筈。

ご案内:「常世神社【夏祭り期間】」からマルレーネさんが去りました。
ご案内:「常世神社【夏祭り期間】」から日月 輝さんが去りました。