2020/08/13 のログ
ご案内:「常世神社【夏祭り期間】」にヨキさんが現れました。
ヨキ > 夕刻の神社。夏祭りの人通りが増えだす頃合い。
浴衣姿で参道を独り歩くヨキの姿がある。

「やあ、今年も賑やかなことであるのう」

笑って、スマートフォンのカメラで往来を映す。
華やかな飾り付けを。活気ある屋台を。買い求めたお好み焼きを。
こちらのカメラに気付いて、ピースサインを向ける子どもたちを。

それはこの場に居ない人間にこの祭りの活気を伝えるための写真。

ヨキの表情は、普段生徒たちに向けるものとは違った柔らかさがある。
まるでスマートフォンを介して、その“誰か”と繋がっているかのように。

ヨキ > 境内のベンチに座って、お好み焼きを食べる。
大きな口で、汚れ一つなく頬張るヨキの食べ方だ。

「んまい……。屋台の食べ物は格別に美味い」

もぐもぐもぐ。

食べ歩きはヨキの大きな趣味のひとつだ。
綿あめ、たこ焼き、りんご飴、じゃがバター、チョコバナナ、ベビーカステラ。
屋台という屋台にヨダレが溢れて止まらない。

いったいどれだけ食べるつもりなのだろう。

出来立てほかほか、具だくさんのお好み焼きを味わい、ふんわりと蕩けた顔。

ヨキ > 「そうだ。写真、今のうちに送っておこう」

お好み焼きを半分まで食べ進めたところで、先程まで撮っていた写真を送信する。
送り先は、いつも決まった相手。

「今度……、お前……も……一緒に、行こう……、と」

写真にキャプションを付けて、送信完了。

ついでに、ピースサイン付きの自撮りも一枚添えておく。

返事があろうとなかろうと構わない。
それがヨキたちの“いつも通り”なのだ。

ヨキ > それにしたって、写真を送るヨキの顔と来たら。
嬉しげで、楽しげで、優しくて、きらびやかで。
人生そのものに大輪の花が咲き誇っているかのよう。

単なる友情と呼ぶには重たくて、恋愛と呼ぶにはいろいろなものが足りなすぎる。

それが今のヨキをヨキたらしめる、強靭な心の支え。

「……んむ。ご馳走様でした」

残り半分のお好み焼きも食べ終えて、一息。
ゴミはきちんと分別して、清掃に携わる生徒にお礼を告げて、差し入れの飲み物を振舞ったりして。

さて、と境内へ足を向ける。
時折擦れ違う顔見知りと挨拶を交わしつつ、のらりくらりと。

ヨキ > ――参拝に辿り着くまでに、かき氷を食べ、射的で大外れし、かたぬきで苦汁を嘗め、綿あめを買った。
とてつもないエンジョイ勢だ。

大きな、ふわふわでもこもこの綿あめを手に、これまたほくほくとした顔。
指先で抓んで食べ、目尻を下げて笑い、むしゃりとかぶり付く。

さすがに神聖な境内へ綿あめ片手に入る訳にはいかない。
鳥居の前で、はむはむと綿あめを味わう長身の男。

「彼奴は、綿あめなぞ食べたことなかろうなあ……」

食む。

ヨキ > 綿あめを食べ終えて、満足そうな顔。
屋台で散々遠回りしつつも、お参りはしていかねばならない。

かつて祈られる側であったヨキは、祈りの作法を大事にしている。
元来神仏に祈り乞うことがなく、誓うことを重んじているとしても、そこにある心を踏み躙ることはしない。

手水をとって清めてから、いざ神前へ。

この日のために取っておいた、ぴかぴかの五円玉。
そっと投げ入れて、マナー通りに手を合わせる。

「………………………………、」

長い。
とても長い。

ヨキが神仏に祈り乞うことがないのは本当だ。
でも、ご報告と誓いの言葉がめちゃくちゃ多い。

ヨキ > 「……よしッ」

とてもすっきりした顔で、礼をして神前から離れる。
いったい何を誓ったやら、それは当人のみが知るところ。

足取り軽く、元の道を引き返す。

おみくじを引いて、屋台で買い物をして、そこに在る人々と語らって。
花火が打ち上がる時間まで、夏祭りを堪能する。

スマートフォンの画像フォルダには、まだまだ夏休みの思い出が増えていく。

ご案内:「常世神社【夏祭り期間】」からヨキさんが去りました。