2020/09/19 のログ
ご案内:「常世神社」にアーテルさんが現れました。
■アーテル > 猫が参道の前で一匹、お座りしながら佇んでいる。
夏祭り期間のあの喧騒はどこへやら、すっかり静けさを取り戻した…と言ってよいのだろうか。
尤もこの猫は煩いころしか知らなかった。
そのため、あまり近づくことはなかったのだが…
「こう、静かだと雰囲気が違ってまたいいもんだなあ。」
参道をぼんやり見上げる、一匹の猫。
興味の程度を示すように、尻尾がゆらりと空を描いていた。
■アーテル > ひた、ひたと猫が往く。
参道を上がり、辺りを見渡し、それでいて堂々と。
こんな雰囲気の常世神社に来るのは初めてだもんで、わくわくした気持ちが抑えきれないようにさえ見えるだろうか。
「……あぁ、いいもんだなあ。
こう、あっちの神社と違って……新鮮な想いを感じるっつーか……」
その獣の在り方として、想いの篭るものには敏感になる。
とりわけ神社と言えば神頼み、その信仰を一身に浴びる場所なれば。
果たして夏祭りの間にどれだけの人がやってきて、ついでに参拝していったことだろうか。
その想いの残り香ともいうべきシロモノを大量に感じたか、つい舌なめずりなんかして。
「んっふっふ~っ。
やっぱ猫の姿は身軽でいい…人の姿より目立ちゃしねぇ。」
石段をぴょんぴょんと、一段飛ばし、二段飛ばし。
軽やかに駆けていく割には、息さえ切れる様子がない。
■アーテル > 「さてっ、と。」
すたん、と最後の石段に登ってしまえば、そこはもう鳥居の前。
神聖な気配さえするが、生憎邪なる者のつもりはない。
…素知らぬ顔をしながら、とことことそこを潜って境内を進み、開けたところへと向かっていく。
境内は広い。
そして夜も更けた頃合い故、誰もいなさそうだ。
伸びをするには、丁度いい。
「ふー………」
辺りを二度、三度、改めて見渡した。
確認は重要なことだった。特に、これからしようとすることについては。
「……変身――――」
その言葉を皮切りに、その躰全体からどろりと靄が溢れる。
夜闇に差す陰のように底が知れないその色に、全身をどぷんと沈めると…
■アーテル > 靄が晴れる。
そこに残ったのは、大きな大きな狐。
陰と同じ黒の色を肢体に纏って、巨狐はその場で伸びをした。
「……ん、んんん~~っ………」
ぐぐぐぐ…っと、上半身だけで大きく屈むように。
そのまま上半身を沈められるところまで沈ませると、その体勢をキープして。
まるで凝りが解消されていくかのように、その表情もどことなく心地よさそうにさえ見える。
「…っはぁー……、ふー……っ…」
身体を起こす。
四肢でしっかりと踏みしめる様に立ってから、今度は後ろ足を伸ばすようにして、
下半身をしっかり解していく。
そして、ぶるぶるぶるぶるっと大きく身体を振って、目をぱちくり。
すーはー、すーはー。その場で何度か深く呼吸し…
「……んはー。
思った通り……ここならたっぷりと、深呼吸できらぁな。」
■アーテル > 邪なものなら、きっとここには立ち入れまい。
ここは、そんな気に溢れた場所だ。
だからといって、入れている自分がさてまともなものかと問われれば、そうとも言えない事情もある。
「……さぁて。
ともあれ俺が心地いい場所なのはありがたいことだがー……」
高くなった視線で、辺りを再び見回す。
鼻をすんすん、まるで何かを探してさえいそうな様子で。
「……こんだけの想いを、さてどこに溜め込んでいるのやら。
信仰の大本がどっかにあるはずだなぁ……?
気になるもんはついつい、調べたくなっちまうもんだぁ……」
すん、すん、すん。
四方を嗅ぎ分け、匂いを辿るように、ゆっくりとその巨躯が本殿に向かって歩き始めた。
■アーテル > 「…………んんー……」
本殿の前までやってくるなり、立ち止まって顔をしかめた。
「本丸はこの中だなぁ。」
確信を持って、言い放つ。
その中に、想いの溜まったものがあると。
だが…
「…………いや、いいか。
流石にこの恰好で忍び込んで、後々騒ぎになんのは望むところじゃあねぇ。」
この巨体で本殿に押し入ればどこか壊してしまいそうな、そんな気がしたので。
まずはここまで突き止めたことで満足したようだ。
そうと決まれば、踵を返してのしのしと本殿から遠ざかっていく。
■アーテル > 「……よし、気になってたことは分かった。
誰か来る前にさっさとずらかりたいところだ、がっ……」
ぼわぁ、と滲み出た靄を全身に纏う。
それがぎゅっと小さくなって、小さな四つ足の獣の形を為していき……
■アーテル > そこにいたのは、小さな黒猫
青い眼だけは、先も今も変わらない。
「戻るときは、来た時の姿で…ってぇな。
帳尻は合わせておくもんだ。」
黒猫が一匹、境内をてこてこと歩いている。