2020/10/30 のログ
ご案内:「常世神社」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
ご案内:「常世神社」に園刃 華霧さんが現れました。
■紫陽花 剱菊 >
寒露なりて、淡く輝く朧月。
今宵の夜空は快晴なれど、宵闇に陰る薄霧の群れ。
此処常世神社にて、紅黄彩る鮮やかさも、霧が掛かれば僅かな気味の悪さを醸し出す。
其の様な神社に一人佇む、男が一人。
紫陽花 剱菊。公安が刃の一つ。紅葉芽吹く木陰の下。
幹に背を預け、静かに潺に耽る刻。
霧も相まって、今宵はいとどに冷え込む也。
「…………」
嗚呼、然れど静寂が心地よきかな。
■園刃 華霧 >
「……」
最近はちょっといろいろなことがありすぎた
まるで、あの時のように目まぐるしく……
思わず、古巣に戻ることも考えたが。
流石にそれは少し憚られたので、どうしたものかと首をひねる。
とりあえず、静かそうなところでも行こうか、と思いついたのが神社であった。
我ながら単純な発想だ、と思うがまあ他に何も知らないので仕方がない。
「……ン―……」
人影もなさそうだし、ちょうどいいな……と思ったのだが霧の向こうになにかが見えた。
「あちゃ」
小さくつぶやいた。
まあ、誰かいてダメってこともないんだが
■紫陽花 剱菊 >
「……夜霧は黄泉へと生者を誘う事も在ると言う。
迷信だ。然れど、闇夜に紛れる者には打って付けの利と言えよう。」
夜霧に紛れる、見知った気配に語り掛ける。
暗がりが全てを包み隠し、音は夜風に運ばれる。
其処には何も残らず、故に黄泉路と、人は言う。
尤も、己の世界であった乱世も、此の幽世の地も
強ち、是を"迷信"一つで片付けられはすまい。
時として、誘い手となるのは、他ならぬ公安(おのれ)で在るからだ。
静かに開かれる、黒の双眸。刻を偶然とし、夜霧が徐々に引いていく。
「久しいな、華霧。あの時以来か。
……此処は何時も静かで、物思いを耽るには良き場所だ。」
静寂が心を落ち着かせ、夜風と宵闇が優しく独りを包み込む。
元より、此の風情を好むと言うのも在るが、神聖な地とは此処まで落ち着くものなのか。
夜霧に紛れ、互いの輪郭が表れに成れば、名を呼んだ。
相も変わらず、男の声は静凛としている。
「……随分と、喧騒に疲れたと見える。顔に出ているぞ?
杞憂で在るならば、其れで良い。此処は、安らぎを求める者を何時でも受け入れるだろう。」
神聖なる神社とは、そういうものだ。
境内に吹き抜ける、冷たい夜風。
脚が棒になりそうならば、腰を下ろすと良い。
そう言わんばかりに、境内に備えられた木製の長椅子を顎で指した。
■園刃 華霧 >
人の気配を察することはできても、流石に誰かと読み解くほどには卓越はせず……
そこに聞こえてきたのは、見知った声
「……うへ、ヨり二よってアジコンか……」
盛大なため息をつく。
静かな夜、静謐な空気……なんてほどのものを求めていたわけでもないが、それにしても"これ"はない。
「チェンジ」
思わず口にしていた。
まあ、言ったところで無駄なのはわかっているがそれでも言わなければならないことも在るのだ。
「……ァ―……顔? アタシは平常運転ダよ。」
変わらないといえば、変わらない。
悩んでるといえば、悩んでいる。
ただ、考えてどうこう、というものでもないし……
いや、確かになにか疲れているんだろうか、と一瞬納得しかける。
けれど、それが事実だろうと、こいつに指摘されるのは腹立たしい。
「……ンで、アジコンは? そうイうから二は、物思い二でもふケってタん?」
示された長椅子には死んでも座るものか、と心に決めて立ったまま言葉を紡ぐ。
■紫陽花 剱菊 >
「如何にも。……ちぇん……?如何様な意味かは知らんが
其方の顔を見れば、良い意味では無さそうだな。此処は一つ
先客としての顔を立てて頂こう。詮無き事で、境内を荒らす事は罷り成らん。」
言葉はわからずとも、感情で意図は読み取れる。
随分と悔恨根深きとみるが、はて、何をしたか。
ともすれば、剱菊に自覚は無い。少なくとも
あの騒動で如何様な結果で在れ、"納得"の中で付いたもの。
其処に議論の余地は持たない。だとすれば、別の事か。
「左様か。悩むのが若人の性分とは言うが……
答えを分からずして、闇雲に霧中に飛び込むのは無謀だ。
故に、此の静寂は何時でも其方を受け入れる。其方にも、色々あったようだな。」
時として、顧みる為の場所だと説く。
是心も不動。静かに唯、感じるままの感情を受け入れる。
故に……。
「……此処ならば、如何様に思案も巡り、心も落ち着く。
閑雅故に、気に入っている。……して、其方は随分と私が気に入らぬようだな。
何故だ?あかねの……彼女達の起こした騒動の内に、か?私に落ち度があれば、謝ろう。」
故に、素直に問いかける。
人の心底こそ、霧中と変わらぬ。
一歩先も見えぬ。だが、わからぬ故に、問う。
あの時とは違う、随分と己も落ち着いたからこそ、問うたのだ。
■園刃 華霧 >
相変わらず何言ってるんだかわからないやつだ。
まあ大体の雰囲気とか様子とか、そんなこんなでアタリはつくが。
「……別に、アタシだっテ喧嘩スるつもリはなイよ。めんどくサい。」
本当に大儀そうに口にする。
……しかし、考えてみれば大分変わったものだ。
昔はそれこそ喧嘩だらけだったものだが
「若人って……アジコンだって、別にジジイでもナいダろーに。」
いや、これで爺だったりしたら怒り倍増しになりそうなもんだが。
まあそれは自分の勝手な事情じゃある。
「ァ―? あー。
そレ、聞いちゃウ? 聞イちゃうンだナー。」
まあ、アタシにしちゃ珍しく人当たりが悪いしな。
聞かれるのも無理ないっちゃあ無理のない話。
けど、それまじで聞いちゃうかね。
「なンもカんもが気に入ラない……っテーと、言い過ぎカもシらんが。
謝ラれてモなー。」
あかねちんが起こした騒動、それが関係する、といえば関係するのかも知れない
けれど、これはそれよりももっとこじんまりとした……
「あかねちんの騒動……も、関係在るっちゃ関係在るけどな。
ぶっちゃけ、それよりももっと個人的な話だ。
あかねちんの相手が、オマエってのが気に食わない。そんだけ」
■紫陽花 剱菊 >
「成れば良し。如何様に在らせられるかは知らないが……
此度は神の膝元。荒ぶる気持ちは抑えられよ。私の忠言は、其方には要らぬ世話とみるがな。」
神の住む場、故に神社と。
今此の場において、我等は此の地を借りているに過ぎない。
剱菊は宗教においては無関心では在るが、土足で踏み入る程の蛮族ではない。
無関心なりに敬意を表するのだ。
「其方よりは、年月を歩んだ。然れど、戦場で生き抜いた身。
人としての先人で在れば、其方の方が上やも知れないがな。」
此の身、刃として生きて流れ着いた。
そして、多くを得て、人と成り得た。
細流に流れ着いた丸石の如し、とは言わない。
未だ、すべからく未熟也。
吹き抜ける寒風が、互いの黒糸をまばらに揺らす。
静かに、唯、静かに彼女の言葉に耳を傾ける。
「……成る程な。」
合点が行った。
そう言えば彼女は、あかねの友。
だとすれば此れは、親心に近しいものか。
己には今一つ理解しがたいものである。
己にとっての親は、既に近木の上に非ず、浄土へと往った。
授けられたのは、人を殺す術のみだ。
ふむ、と頷けば思案を巡らす。
自らの顎を指先で撫で、見下ろす双眸は瞬きをせず。
「然れど、其方には悪いが其れは譲れぬ。
私の気持ちは、未だ変わらず。秋風が立とうと、藹々と待人の一人であり続けねばならん。」
其の一心が合ったが故に、あの結果に収めたとも言える。
自分には過ぎた舞台では在ったのかもしれない。
だが、"知るか、そんな事は"。己の選んだ道に、今更後悔はない。
だから、幾刻の経とうが、此の幽世に居る覚悟だ。
揺らがぬ視線は、じ、と華霧を見下ろしている。
「何故気に入らぬかは、敢えて聞かぬ。人と見れば、不足も不足。
だが、何れ其方にも、多少なりとも認められるようにはしてみせよう。
……何、あかねにも及第点だ。私が至らぬので在れば、其方でも、如何様にでもすれば良い。」
そう言える位の余裕と度量は、身についたつもりだ。
ふ、と軽く鼻で笑い飛ばす程度には、だ。
紅葉が夜風に靡き、擦り切れ音が辺りに響く。
「……して、其れだけでは在るまい。
随分と辟易した様子だったが……何が在った?」
己の事は次いでの程度の思い出しであろう。
故に、また問いかける。
■園刃 華霧 >
「神……神、ねえ。
あいにく、アタシは神なんて奴はろくなもんじゃないって思ってるんでな。
膝元だろうがなんだろうが、関係ないよ。
ただ……別に、喧嘩する気はないってだけ。」
神なんぞ居るなら……いや、居ることも知っちゃいる。
アタシの知ってる神はろくでなしだったし、そいつ以外も……どうせろくなもんじゃないと思う。
まあ、なんにしても信じたり崇めたりする理由が自分にはない。
それだけは間違いのない事実だ。
「"人"として、ね……さて、どうだかな」
"人"か、と問われれば。正直、自分でも自信はない。
あの件からこっち、自分の人間性、とやらに確固たる確信はない。
それこそ、この静けさの漂う闇の奥底のように……
何もかも、視えないのだ。
「……ま、好きにしな」
この件に関しては、おそらく一生評価が変わることはない。
なにしろ、"過ぎたこと"なのだ。
それは、どうしたってもはや取り返しのつかないことだ。
「辟易? ……別に。
ただ、ちょっとな。自分の、今までを……少し、考え直さないといけないかもなって思うことがあったってくらいだ。」
こいつに言ってもな、と思わないでもないが……
しかし、井戸の底、くらいのつもりで口にしてみた
■紫陽花 剱菊 >
「私も同じだ。神道も仏教にも組み入りはしない。
然れど、"敬意"を忘れては成らぬ。即ち、"礼節"だ。
強要する気は毛頭無い。礼節の話に過ぎない。」
争う気は此方とて毛頭無い。
如何様な思いが在れど、一緒くたにするのは視野が狭き事。
気に入らぬからこそ、吠えるのではなく、礼節を弁えなければ、下に見下されても致しかたない。
然れど、だ。ふ、と僅かに口元が緩めば小さく頷いた。
「……よく知っている。碌な神に出会わなかった。
目に見えたものは、全て斬って捨ててしまったからな。」
其ればかりは、同意せざるを得まい。
良き神というのは存外、都合の良い偶像程度なのかも知れない。
「…………」
唯、静かに彼女を見下ろしていた。
其の漆の双眸、水底のように仄暗く
但し、僅かな光明を宿す暗い瞳。
宵闇のように包み隠す一方で、その目は確かに、何かを"視ている"。
「其れ等を合わせて、悩み、か。……薪を焼べる訳では無いが
随分と見ない内に、変わったな。今の私だから、敢えて宣う。
"化けの皮が剥がれた"。と、言うべきか。所感では在るがな。」
さながら人を食った小鬼が、随分と達者な事を言う。
其れこそ、当時は己さえ人の事を言えた義理では無かっただろう。
何気なく、見上げる夜空は煌々と輝く月の淡い光が、互いを照らす。
「故に、此処は"外れ"だ。如何様に口にしようと、夜風と影法師に吸われるのみ。
……無理にとは言わぬ。だが、申してみよ。抱えるだけでは、煮詰まるだけだ。」
井戸の底と思うのであれば、思いの丈を口にしたとて木霊も口無し。
唯、影法師の如く、風情に紛れる影に過ぎぬ、と己を表す。
そう言えるほどに、剱菊は落ち着きを取り戻していた。
■園刃 華霧 >
「礼節、ね。そいつも、持ち合わせがなくてね。
敬意、とやらを見せる気にもならないさ。
結局、実際には居やしない神のほうが、逆に本物っぽいってもんかもな。」
真似事ならいくらでもできるが、やる気がない。
それが自分の人生経験と持論で変に補強されるからろくなことにならない。
まあ、それはもうしょうがない。
「"化けの皮"……? 妙なこと、いうな?」
何かをだまくらかした覚えはない。
アタシはアタシ。
そういうものととして生きてきているつもりだ。
だから逆に気にもなる。
「……話すにしたって、なあ……
アタシだってろくに整理ついてないから、考えてるんで、なあ」
いざ、口にするとなると逆に悩むことになった。