2020/11/22 のログ
ご案内:「常世神社」にジーン・L・Jさんが現れました。
ご案内:「常世神社」に日下 葵さんが現れました。
ジーン・L・J > 赤く色づいた葉を纏った木々が並ぶ神社の前で二人乗りのバイクが止まる。吹く風は冬の気配を感じさせる冷たいものだが、陽射しの中にはまだ秋が残した過ごしやすい暖かさがこもっていた。

運転手はライダースーツではなく喪服のような漆黒のスーツ、同じく漆黒のフルフェイスヘルメットを外すと、その肌は純白で、目元は同じ色の包帯で覆われている。
「ふぅ、予報通りに晴れてくれて良かった。」

一人先に降りてサイドスタンドを立ててから、後部座席の人物へ酷く芝居がかった仕草で恭しく手を差し伸べる。
「さぁお降りください、マイ・ハニー、キミの美しさに恥じた木々がその装いを止めてしまう前に。」
今は境内に2人きり、ちゃんと約束を守っている、"人前では"恥ずかしい呼び方をしない、と。血のように赤い唇が薄ら笑いを浮かべる。

日下 葵 > 「ふぅ、初めてバイクに乗りましたけど、存外悪くないですね」

少し慣れない手つきでフルフェイスのヘルメットを外すと、
軽く首を振って髪の毛を整える。
フォーマルな格好をした運転手とは対極的にルーズな服装に髪色。
そんな二人を包むように鮮やかな落ち葉や木々が歓迎してくれた。

「相変わらずというか、何と言うか。
 相当根に持ちますからね?」

先にバイクから降りた彼女がわざとらしく手を差し伸べてくる。
別にお姫様を名乗ったつもりはないのだけれど、
こうなってしまっては過去の自分の失言を恨むしかないだろう。

「でもまぁ……悪い気はしませんし、甘えておきましょうか。
 今日はよろしくお願いしますね?ジーン」

彼女の笑みにつられるようにこちらも笑みが浮かぶ。
そして差し出された手を取ってバイクから降りると、
足元に散らされた落ち葉がカサカサと心地よく鳴った>

ジーン・L・J > 「私が魅せられているのものを理解してくれて嬉しいよ。そしてちゃんと私に身を預けてくれてもっと嬉しい。」
バイクの二人乗りは体重移動の際、同乗者が運転手を信頼して同じ方向に体を傾けなければならない、倒れるのを恐れて戻そうとすれば逆に危険だ。
大した道のりではなかったが、ここまで無事に来れたということはそういうことだ。

「反撃してくれるのなら喜んでお受けするよ、それにちゃんと約束を守っているのに怒られる筋合いはないと思うけど?」
言葉尻を捉えて自分に有利に解釈しているのだが、まるで自分に正当性があるかのように笑みを深める。
その笑顔のまま一度スタンドを倒して駐輪場までバイクを押していく。タイヤが枯れ葉を潰してカサカサとその道程を鳴らす。

「こちらこそ、ではもう一度手をお取りください。既にご存知の場所とは思いますが、案内させていただきましょう。」
戻ってくると、降りるための手がかりとしてではなく、握るために手を差し出す。
「まずは作法通り手水舎からね。」

日下 葵 > 「バイクが好きなのは転移荒野に行った時から察してましたけど、
 本当に好きなんですねえ?
 何を今さら。お互い殺しあった仲ですよ?
 バイクで転ぶのが怖くて任せられないなんてことありませんよ」

何となく、彼女がバイク好きなのは知っていた。
多分乗るのもいじるのも好きなんだろう。
そして初めて乗った二人乗りでここまでこれたのは、
私が彼女を信用しているからというのがある。
といっても、お互いを殺しあって信用しあうような仲は、
片手で数えても指が余るくらいだが。

「格闘で私を殺した次は、恥ずかしさで私を殺すつもりなんですか?」

まるで私は間違っていないと言わんばかりの言葉に、
半ばあきらめた様にため息をついて笑う。
こりゃあしばらく勝てそうにない。
バイクを停めるために駐車場に愛車を運んでいく彼女を待てば、
再び差し出された手を少し躊躇い気味に握った。

「警邏で回ったことがある、
 なんて無粋なことを言ってしまいそうになりました。
 どうやら今日は一日、私はお姫様として振舞う必要がありそうですね」

お互い人をからかうのが好きな性格をしている。
しかしどうにも、私はジーンといるときに限っては、
揶揄われる側として覚悟しないといけないようだ。

まるで従者に導かれるように、
彼女に手を引かれながら手水舎へと向かおう>

ジーン・L・J > 「車輪は人類の偉大な発明だよ、それを2つ並べたんだ、2倍偉大さ。車は多すぎるからダメ。」
バイク乗り特有の理論を振り回して、踊るように軽くステップを踏みながら、しかし決して引っ張るようなことはなく、歩くペースを完全に合わせている。

「そうだったね、キミとは手を握る前に手足を切り飛ばし合って、キミとデートする前に殺し合った仲だ、ふふふ、本当に奇妙だ。偏屈な魔術師とたくさん付き合ってきたけど、こんな関係は初めてだよ。
とても楽しい、私は今ご覧の通りはしゃいでるんだ。今日はまだ始まったばかり、キミの顔をこの木々の衣に負けないぐらい赤くしてあげたいよ。」
ステップで鳴るヒールを伴奏に鼻歌すら歌い踊りながら導く様は従者というより道化のようで。
「では職務を忘れ、警戒ではなく感動を以って景色をご覧くださいませ、お姫様。手を清めさせていただきます。その前に。」

手水舎に着くと、清めたあとでは出来ないからね。と手の甲へ口づけをしてから一度手を離す。

柄杓に取った冬の冷気を宿した湧き水、それを軽い魔術で人肌程度に温めてから。葵の手にかけて清めていく。
「最後にお口をお清めください。」
わざわざ手ですくった水を口元へ差し出して。純白の歯を見せて笑う。

日下 葵 > 「4つでは多すぎるんですか。なんだか独特な考え方ですね?」

なんだか自分の知らない世界の話をされたようで、不思議な顔をして見せる。

「ほんと、普通の人からしたらとんでもない関係ですよ。
 初対面で四肢を切り飛ばして、告白の時に心臓を停められるなんて。
 ――おや、その”付き合ってきた”っていうのは、どういう意味です?」

ジーンの言葉にちょっと突っかかってみる。
よくよく考えれば、彼女は私よりもだいぶ昔からこの世界にいるのだ。
私と出会う前、彼女がどんな生き方をしてきたのかは少し気になる。

「ふふふ、いつもなら血で真っ赤になるところですけど、
 今日は平和にお願いしますね?

 ――そうですねえ。
 今日は仕事のことは忘れて、楽しませてもらいましょうか」

ジーンがこちらの手の甲に軽く口付けをしてきた。
なんだってこう、いちいち恥ずかしいことをしてくれるのだろう。
せっかく恐怖という感情を思い出したというのに、
この調子では恥ずかしさにかき消されて忘れてしまいそうだ。

内心そんな困ったことを考えていると、
ジーンが柄杓で水を汲んでくれた。
軽く手を差し出して水をかけてもらうと、気温のわりに水は暖かい。
そして口を漱ごうとしたとき、ジーンが手で水をすくって差し出してきた。

「えっと、それは流石に恥ずかしいというか……。
 いや、別に嫌というわけではないんですが……」

ジーンがその白い歯を見せて笑っている。
ああ、これはわざとやっているんだな?
それに気付くと、なんだか反抗心が湧いてくる。

片膝をつくようにして、少し身体を低くすれば、
髪の毛が邪魔にならないように耳に掛けて彼女の手に顔を近づけ、
水を口に含んでいこうか>

ジーン・L・J > 「2輪が安定して走る最低限、それ以上は多すぎる。まぁこれは信条みたいなものだよ。あるいは、車以上に便利な乗り物がいくらでもあるこの時代にわざわざ乗っている人種の意地かな。」
安定性も安全性も、走破性も劣るバイク、勝っているのは矜持ぐらいのもの。それに拘るのは、そしてこの時代でもまだバイクが作られているのは、バイクに魅せられた人間たちの意地が残っているからだろう。

「ふふ、お互い普通じゃないから良いんじゃないかな、キミと普通に出会ってたら恋人になんか…おおっと、嫉妬してくれるのかい?
でも安心して、前にも言ったように誰かの恋人になったのも演劇の役としてだったし、兄弟姉妹相手にも人間相手にもキミほど深入りした相手は居ないよ。」
ちょっとした言葉の綾に突っかかってこられれば、喜色満面といった風にタップダンスめいて足を鳴らしながら笑う。
「ついでに言うならファーストキスもキミに捧げた。」
そしてさらっと爆弾を投げ返す。

「ふふ、お姫様の手を煩わすわけには、いかないよ。さぁさ、私めにおまかせを。」
困惑する様を楽しそうに眺めて、そろそろ意地悪をやめ柄杓を手渡そうと思った頃にぐいっと顔が手に近づけば。
「……っ、と、ノッてくれるとはね。」
楽しそうな声は相変わらずだが、何度も聞いてきた葵ならそれが僅かに震えているのがわかるかもしれない。

そうして自分は手早く、というより急ぐように手と口を清めてしまう。

日下 葵 > 「なるほど?信条だったり、拘りだったりですか。
 私が数ある武器の中から切り出しのナイフにこだわるものでしょうか」

この例えは少し違うかもしれない。
でも、もっと便利なものがある状況で、
あえてこの選択肢を選ぶというのは似ているのかも。

「そういうものでしょうか。
 でもジーンは普通とは言い難い出会い方をした、
 普通とは言い難い私のことを普通の人間にしてくれるんですよね?」

この島にいて普通って何だろうか。
今まで幾度となく思い浮かべて答えが出なかった疑問が脳裏に浮かぶ。

「嫉妬……まぁ嫉妬でしょうか。
 嫉妬だけじゃなくて、
 ジーンが今までどんな風に生きてきたのかが気になったので」

狩人としてどんな世界を見てきたのか、
禁書としてどうして封印されたのか。
兄弟姉妹はどんな狩人だったのか。
疑問は尽きない。

「おっと、それはちょっと意外というか、びっくりというか」

(……そのうち私も何か初めてを捧げなきゃいけないですかね)

ファーストキスの話をサラッと暴露されると、素で驚いてしまった。
対して私は身体が治ってしまうせいで、
その辺の貞操観念だったりが全くなかった。
別に売春してたとかではないが、
仕事や任務で必要となればこの身体は道具の様にいくらでも都合よく使ってきた。

そこまで思考が廻ったとき、心の奥から浮かんだのは罪悪感だった。

「まさかノッてくるとは思っていませんでしたか?
 私はジーンが思っている以上にいろいろやってきましたし、
 ジーンが思っている以上に負けず嫌いなんですよ?」

少しだけ声が震える彼女。
さっと口を濯いで清めれば、彼女に向き合って顔を寄せる。

「お姫様は存外いたずら好きなので」

耳元で囁くように言葉を発すれば、
今度はこちらが手を取って進んでいこう>

ジーン・L・J > 「似ているかもね、ナイフより強い武器、ナイフより便利な武器、あるいはナイフよりキミに合ってる武器があるかもしれない、でもキミはナイフを選んだ。私も同じように数ある乗り物の中からバイクを選んだ。」
出てくる例えが剣呑なもので、まだまだお姫様はお転婆なようだとくすりと笑う。

「そうするつもりさ、普通の基準は難しいかもしれないけど、要はみんなと同じってこと、この島は少し特殊でその範囲が広いから少し楽かな。
みんなと同じように学生として授業に出て、お昼は時間が合えば一緒に食べて、休日はたまにこうしてデートでもする、とりあえずはそんなとこじゃないかな。そしてキミは風紀委員だからそこに少し血腥いことが入る。
風紀委員は警察も兼ねてるからそれも多分普通だ。ああ、でも、キミの戦闘スタイルは普通じゃない、もうちょっと自分を労って欲しいね。キミが怪我をすると私は悲しい。」
特異な異能者、特殊な異邦人、あるいは後ろ暗い過去を持つ者、そんな人物が目立つが、そうでもない者の方が圧倒的に多い。誰も自分の人生では主役だが、他人の人生まで出張ることが出来るほどの役者ではないのだ。そんな人物を見習えばいい。

「いやはや、隠せなかったか、予想外の反撃に面食らったよ。好きだよ、そういうの。一方的じゃつまらない、恋も戦いもね。」
そして耳元でささやく声に、ぞくぞくと背筋に走るものを感じ、囁かれた耳の火照りを冷ますように、清めたばかりの冷たい手で押さえながら笑う。

「私の過去が気になるかい?ファーストキスも済ませないような書生だし、あまり楽しくない話もあるけれど、キミが聞きたいなら、包み隠さず話すとしよう。歩きながらね。」
本堂へ向けて引っ張られながら、さっと手を振り上げれば、落ち葉が散らばる参道に一直線に風が吹き、かつて預言者が海を割ったように道が開けた。

「あまり自分について話すのは得意じゃないんだよね、とりあえず私が何なのかについて話そうか。知っての通り私は禁書、これは常世財団での分類もそうだけど、私がいた魔術結社でも同じ分類名で呼ばれていた。多分偶然の一致だね。
なぜ禁書と呼ばれるか、それは魔術と魔力の塊とも言える禁書は一度制御を離れればどれほどの災厄をもたらすか知れないから、これについては《大変容》後の歴史書も方が詳しいね。
だから私達は制御手段を組み込まれて生まれてきた、第一に《誓約(ギアス》の呪文、キミを殺しかけた時に発動したのがこれ、幾つかある禁止事項を破ると私達は自己崩壊するように出来てる。第二に人格、今話してる私だね、人間の精神をコピーして一緒に封じることで人間に似た考えを持ち、御しやすくする。これはある程度の改変が認められてるし、知識と経験で差異が出るから、私と同じ禁書は2人と居ない。」
歩きながら、時折考えにふけるように髪を指に巻き付けながら、自分という存在を明らかにしていく。

「あとね、自分を明かすっていうの私が使ってる方式の魔術師にとって首輪付けて縄を相手に渡してるに等しいから言いふらさないでね。」
またさらりと爆弾を投下。