2020/11/27 のログ
ご案内:「常世神社」に日下 葵さんが現れました。
ご案内:「常世神社」にジーンさんが現れました。
■日下 葵 > 「じゃあ、人生の先輩には後輩として、
いろいろと趣味について教えていただきましょうか。
人には言えないような趣味については……すぐに直すのは難しいですけど」
きっと、彼女なら私のことをいろいろ考えてくれる。
師の真似をして、人に痛みを与えるくらいのことでしか悦を得られない身なら、
いっそ彼女とともに新たな趣味を探したほうが良いのかもしれない。
そうやって過ごす内に、この歪な性も綺麗になるのだろうか。
「こんな意地悪ばかりしてたら天界から追い出されてしまいました。
でも痛くはなかったですよ。
痛みには慣れていましたし、それに――」
素敵な王子様が抱き留めてくれたんですもの。
臭いセリフで反撃してくるジーン、しかしいつまでもやられっぱなしではない。
「ふふ、なんだかおもしろいですね。
ヤードポンド法の話で笑えてしまうなんて。
……正直わたし自身、師に対してどんな感情を抱いているのか未だにわかりません。
嫌悪も、畏怖も、尊敬も、挙句晩年には好意すらあった。
ジーンからすれば許しがたい相手だとおもいます。
それこそ、冷静でいられないほどに。
だから、私の”そういう部分”はゆっくり受け入れてほしい。
――言いません。録音もさせませんから」
彼女の自信なさげな様子を見ると、一度歩みを止めて真剣な眼差しを向ける。
きっと、ジーンも聞きたくない話だろうし、
私も自分で話していて気持ちのいい話ではない。
しかしいずれ話すことになるだろうし、
この話を有耶無耶にするわけにはいかない気がした。
この話を抜きに、自分を愛してくれなんてそんなこと、言えるわけがなかった。
そして一転、端末の録音アプリを起動させるジーンから目をそらして、
頬の朱をごまかすように紅葉の紅の中を歩いていく。
しかし次いででた惚れたという己の言葉に硬直すると、
端末の機械音声がお互いの間に流れる。
一瞬、時間が止まった気がした。
「まって、待ってください。
何もそんなに深刻に考えなくたって……」
途端に真剣な雰囲気で語るジーンに、やや気圧されるように後ずさる。
単純に理解できなかったのだ。
今まで”長く生きること”を求められたことがなかったから。
有り余る寿命を消費して、誰かのために身を削ることしかしてこなかったから。
長い寿命と回復力を持つ自分は恵まれていると思っていたから。
多くを持つ自分が他人の為に傷つくことは当たり前だと思っていたから。
でもジーンにとっては違う。
”ジーンの寿命は私より長い”
「さっき賽銭を投げてお願いしたこと、叶いそうにないなぁ……」
――私は神様なんて信じませんけど、
もし神様がいるなら、私が死ぬときは――――
――私が死ぬときは、ジーンがそばにいてくれますように。
■ジーン > 「うん、任せてくれたまえ、酒や煙草だけじゃない、黒魔術から切手収集、猫の肉球鑑賞まで、幅広く理解しているからね私は。
君に合った他の趣味もきっと見つかるさ。たくさん趣味があればその分だけ人生は楽しくなる。」
何せアイデンティティを探して様々なものに手を出した過去がある。面白いこと楽しいことへの関心は人並み以上に持っている。
趣味を探すのもまた楽しみだ、2人で一緒に出来るものがいい、例えば釣りとか、編み物とか、共に長い時間を過ごすのだ、穏やかな時間を味わうようなものが良いだろうか、と早速思案し始める。
「ふふふ、キミもやるようになったね。確かにキミを抱き留めたのは私だった。
だから、キミの体だけじゃない、過去も想いも受け止めないとね。
時間はかかる、けど約束しよう。キミの全てを受け入れる。」
同じく歩みを止めて深呼吸、包帯の奥へ向けられた視線。
応えるようにスマホを握った手で包帯をズラす、暗夜に浮かぶ月のような瞳がじっと見返す。
同時に、漏れ出した肉食獣の気配に、鎮守の森で羽を休めていた鳥が一斉に飛び立った。
「おっと、鳥たちに悪いことをしてしまった、でもいいものが聞けた。」
包帯にかけていた指を戻して、早速録音ファイルを保護状態にして例えうっかりでも削除出来ないように操作する。
「深刻になるさ、長いだけの人生が良いものとは限らないけどね、わざわざ自分から縮める必要はない。
キミが何を願ったかはわからない、聞いたら叶わないって言うからね。でも私はキミが殺し合いに身を投じて命を削るなんて決して長ってない。
戦うな、とは言わない、私はキミの仕事に誇りを持っている、でもキミの技量なら負傷を抑えて勝つことが出来るだろう。
自分の命を消耗品のように扱うようにキミは教え込まれた、でも、私にとってはかけがえのない命だ。」
まくし立てるような早口、薄笑いが消えて真顔になったジーンからは普段の人をからかって楽しむ余裕のようなものは感じられない。
「だから、自分を大事にしてくれないか。頼むよ、神へじゃない、キミへのお願いだ。」
肩に置く手が震えている。長くて数年、下手すれば数日で顔触れが変わる世界で生きてきて、初めて出会った長く共に歩める相手。
それが自ら命を縮めている、旅路を縮めている。それが酷く悲しく、そして恐ろしい。
自分の手の届かないところでその灯火を消してしまうのではないか、そんな予感すら訪れる。
――私の信じるあらゆる神へ乞い願う
もし願いが届くならば、彼女が死ぬ時は――――
――彼女が死ぬ時は、私が看取れますように。
■日下 葵 > 「そもそも、抱き留められることすら考えていませんでしたから。
何度も言っている通り、
私自身ちゃんと自分の気持ちに折り合いをつけられていないんです。
だからジーンには、私と一緒に私の過去と、これからについて考えてほしい。
代わり、というわけじゃないですけど、
その分ジーンのことも私にもっと詳しく教えてほしい」
――お互いを受け入れるには、これからを考えるには、
まずお互いの過去を知る必要がある。
包帯の奥に隠された、月のような瞳がこちらを見つめる。
私に恐怖を思い出させた眼。
原始的な感情を呼び起こすような眼。
周囲の鳥たちが一斉に逃げ出すほどの気配も、
私にとっては愛おしく感じられた。
「そんなものを保存するなんて、ジーンも変わってますね」
録音させて、なんて言わなければ、
心の準備さえできているなら、
何度だって気持ちを伝えるつもりでいるのに。
そんな愚痴は彼女へは届かないし、言わない。
言ってしまうのはなんだか無粋な気がした。
「……そう、ですね。
それも確かにそうですか」
そうか。
もう、この身体も命も、私だけのものじゃないんだ。
ジーンの真剣な語気は、それを自覚させるものだった。
自覚するくらいに、悲しそうな声色だった。
「いや、本当になんでしょう。
よくないなぁ……良くない。
ジーンはその身全てを捧げてくれたっていうのに、
私ときたら身勝手ですねえ……」
ちょっと自嘲気味に笑うと、ジーンの手を握りなおした。
包帯の奥に隠れた瞳を見据えるようにして、
改めて微笑む。
その笑みが何を意味するのかは、性格にはわからないかもしれないが、
確かに笑った>
■ジーン > 「キミみたいな美人が地面に激突しても構わないなんて、世の人間達は何を考えているんだろうね全く。おかげで私がチャンスをものにできたわけだけど。
さて、ではキミの師についてはこれからの話だね。キミのこれまでを知って、それでいつか決着をつけよう。
私については、そうだねぇ……。」
思考と連動するように、また歩き始める。歩みは林道の出口に向かってだが、ジーンの思考は過去に向かっていく。
「何を話そうかな、私の趣味でも語って参考にしてもらおうか、私の作者について知ってる限りを言っても良い、あるいは兄弟姉妹について聞きたいかい?数が多いから何人か取り上げてになるけど。ああ、あとは私の武器なんか興味惹かれたりする?どれでもどうぞ。他に聞きたいことでも、何でも。」
指折り数えながら話題を上げていく。自分について語る、というのはあまり経験がない、どういういった話題が適切かジーン自体もまだ把握出来ず、相手に任せる形になった。
「だってキミが惚れた、なんて貴重じゃないか。貴重じゃなくしてくれるなら録音なんかしないで済むよ。
私の愛の言葉はねだらなくてもいつでも聞けるからキミは録音しない、当然のことさ。」
まるで推理を披露する探偵のように、顔の前で指を振ってみせる。
葵が態度で好意を示してくれているのはわかる、しかし言葉にして言って欲しいというのは恋人ならば願っていても不思議はないだろう。
「良くないよ、だから私は忠告した。キミは受け入れてくれた。
これでOK、あとは実際に行動に反映するまでだけど、これは中々難しいよね。
戦闘スタイルを根本から変えることになる、訓練で付き合うよ。欠損も流血も、怪我すら無し、今度は訓練施設を使えるね。」
ぽんぽん、と握りあった手を空いた手で優しく撫でる。冗談めかしておどけた笑い方は、自責の念を抱かせないように。
■日下 葵 > 「私が美人ですか。
別に自分を卑下しているわけではないですが、
ジーンも物好きですねえ?
ええ、ぜひ一緒に考えてほしいです。
きっと私一人では答えが出ないでしょうから」
だから現にちゃんとした結論が出ていない。
でも今は、これからは違う。
一緒に考えてくれる人が居る。
「そうですねえ。
個人的に気になるのは趣味のお話でしょうか。
ジーンの食の好みとかは何も知りませんし、
バイクのことはからっきしですし。
ひとまずこれからのことを考えるなら、
ジーンの好きなものについての話を聞きたいかもしれません」
もちろん武器や兄弟のこと、作者のことも気になる。
でも一緒に楽しいことをしようと思えば、やはり趣味を聞くのが一番だろう。
好きな食べ物、好きな本、好きな音楽、バイクのことも。
「貴重ですか?
貴重って言っても、”まだ”貴重ってだけかもしれませんよ?」
私とジーンはもしかしたら好意の表現が対極的なのかもしれない。
正直、気持ちを言葉にするのはどうにも苦手だ。
というのも、行動に比べて言葉には嘘が混じりやすい。
ジーンの言葉に嘘があるとは思っていない。
ただ、ジーンへの自分の気持ちに、嘘を混ぜたくない。
だから、言葉ではなく行動で好意を伝えたい。
この行動に、言葉も含まれてくれればいいのだけれど。
「たしかに、行動に反映するのは難しそうです。
他の戦い方を知らないんですから。
でも、変えてみせますよ。
ジーンのお願いを聞き入れたことを、行動で示したいですから。
訓練に付き合ってくれるならなおさら」
思いのほか、直さないといけない部分が沢山あることに気付いた。
どれくらい時間がかかるのだろう。
そんな疑問が浮かぶ。
この身にべったりとこびりついた悪い癖を、
恋人を悲しませる悪い癖を払拭するのに、
この木々たちは何度朱に染まることになるのだろう。
「訓練場で手合わせできるような戦い方ができるようになったら、
それはそれでまた楽しみが増えそうですね」
趣味として格闘が上がるのは少し物騒かもしれないが、
私とジーンとの間なら、そういうのも魅力的に思えた>
■ジーン > 「そうかい?キミは贔屓目抜きで美人だと思うよ。少なくとも私の好みにはバッチリ、ストライクゾーンド真ん中。
わかった、一緒に考えていこう。やれやれ、キミの師は随分色々と課題を残してくれたね?夢枕に立つようなら文句の一つでも言ってやりたいよ。」
小さくため息、恋人の生死観を歪め、困難な問題をいくつも残して当人は死んでいる。勝ち逃げにも近い。
だがこれからそれを一つずつ解決してやる、死んだ後に負ける気分はどうだか墓参りに行けるようになったら聞いてやろう。
「おっと、私の食の好み、と来たか。これは葵、私が一番語れる話題だよ。
私はね、トウモロコシが大好きなのさ、茹でたのを丸かじりでもよし、コーンサラダでも美味しくいただける、
ポップコーンは映画鑑賞のお供、トルティーヤにしてタコスを作ってもらったら大喜び、
あとはコーン・ウィスキーとかバーボンも飲むし、まぁトウモロコシが関わったもので嫌いな食べ物はないと言っていいよ。
もし私の機嫌を取りたいならトウモロコシ、これを覚えておけば間違い無し。」
トウモロコシに饒舌に語り始めると、ステップを踏みながら踊るように体を揺らす。
その口調は喜びにとても楽しそうで、嘘やごまかしの一切ない好意、いつも葵に向けられているようなものがこもっているのが伝わるだろう。
「ほほう、それはそれは。私の耳が慣れるぐらい愛の言葉を囁いてくれる日が来るのかな。
私がキミの言葉に赤面する日が来るのかな、とても楽しみだ。」
トウモロコシの話題以上に楽しそうに、役者のように生きる禁書は笑った。いつもの何を考えているのか掴みづらい薄笑い。
しかし、その言葉に全く嘘がないことは明らかだろう。
幾度も季節が過ぎても、木が生え変わるほどの年月が過ぎても、この禁書のスタイルは変わらない、人付き合いに嘘偽りは無し。
「大丈夫、私が知ってる。私の戦い方の基礎は普通の人間のものだからね。
少しでも負傷を減らして、長く生き延びるための戦い方だ。幸いナイフの扱いもその中にあるから、教えられるさ。
ふふ、嬉しいね。キミをまた一つ、私色に染め上げられるわけだ。生き方を変えて、考え方を変えて、戦い方を変えて、次はキミの何を私色にしようか。
訓練場なら確か、ダミー相手に戦うことも出来る、2人で連携を磨くってのも楽しいよ。
ワクワクするな、キミと背中を預け合って戦うなんて望外の喜びだよ。」
小さく笑いを漏らす。物騒な話だが、ジーンもそれなりに闘争に喜びを見出すタイプだ。
それはそれは楽しい"遊び"の時間となることだろう。
■日下 葵 > 「もし私が本当に誰の目から見ても美人だったとして、
今までそういう相手がいなかったというのは、
私が怖がられていたのかもしれませんねえ……」
いや、声をかけてくる輩は居た。
公私に関わらずいわゆるナンパというものに遭遇したことは何度かある。
大抵、腕の一つでもへし折れば逃げていくし、
殴られても刺されても殺されても生き返る様を見れば
”化け物”と吐き捨てていくのが常だった。
この身体を受け入れてくれたのは、ジーンを含めてほんの少数だけ。
そこからさらに”真人間に戻そう”なんて行動するのはジーンだけだった。
「私の師は宿題を出すのが好きでしたからね。
もしかすると私を塗り替えるというのは、
師からジーンに出された宿題なのかもしれません」
小さくため息を吐くジーンを見ると笑ってしまう。
ジーンからすれば笑い事ではないのかもしれないが。
「トウモロコシですか。
じゃあ主食はお米よりもトウモロコシの方が良かったりするんですかね?
ウイスキー……!いいじゃあないですか。
よかった。一緒に楽しめるものがあって」
タコスもコーンサラダも日常的に食べるモノじゃなかった。
でもウイスキーは違った。
誰にも言っていないが、ウイスキーは好物だ。
それこそ(表立っていうことはできないが)風紀委員の慰安旅行で飲むくらいには。
「ええ、慣れるくらいに言えるようになって見せますよ。
これでも私は負けず嫌いな性格ですから。
さすがに言葉でジーンを言い負かすのは自信ないですけど」
トウモロコシについて語るときも、私について語るときも、
ジーンは好きなものを語るときには本当に楽しそうだ。
そこに嘘がないとわかって安心できる。
安心感からか、つられてこちらも笑ってしまうほどだ。
「禁書のジーンの方が、人間の私よりも人間らしい戦い方を知っているというのは、
些か皮肉が過ぎますねえ……。
でも楽しみですよ。痛みを伴わない戦い方なんて、正直想像もつきませんけど。
背中を預ける、ですか。
そうですね、ジーンのためにも、背中を預ける戦い方は学ぶべきかもしれません」
もう私だけの身体じゃない。
もう私だけの寿命じゃない。
気に掛ける物が増えた分、他人を頼る必要はあるのだろう。
でもそれは決して悲しい事じゃない。むしろ喜ばしいことだ。
まさに”命がけ”の信頼なのだから>