2021/12/24 のログ
■フィスティア > 「あっ…こんばんは
参拝、と言う訳ではなく…
あ、もしかして立ち入ってはいけなかったでしょうか?
こんな遅い時間に…申し訳ございません」
人が居るとは思っていなかった。
思っていなかったはずなのにどこか安堵感を得たような気がした。
しかし、それをかき消すように何かしでかしたのだろうかという焦りと、逆にそっちもなぜここに、という困惑に支配された。
あからさまに冷静じゃない様子で白い髪の少女に一人合点して謝罪した。
■セレネ > 「あぁ、いいえいいえ。
多分立ち入ってはいけない訳ではないと思いますよ?
そもそも私も此処に来ている訳ですから人に注意出来る立場でもありませんし。
…だから、貴女は何も悪くないのです。
うん、少し落ち着きましょうか。大丈夫、私は貴女に危害は加えません。」
人が居た事がそんなに驚いたのだろうか。
何だかパニックに陥っているように見え、彼女にもう少し近付いてみる。
傍で立ち止まると、己の纏うローズの香りがふわりと漂うことだろう。
「落ち着いて深呼吸してみましょう。
…ゆっくりで良いですからね?」
明らかに冷静さを欠いている彼女へ、己は落ち着いた口調で話す。
彼女が従ってくれるようなら、緩やかな声色で息を吸って、吐いて、と言葉を投げかけようか。
■フィスティア > 「ご、ごめんなさい。
誰かいると思わなかったもので驚いてしまいました…
少々…失礼を…」
驚いたのは誰もいないと思っていたからか、それとも誰かいてくれないかというささやかな願いが叶ってしまってくれたことへの驚きか。
ローズの香りと少女の言に落ち着こうと、ゆっくり深呼吸。
白い髪の少女の声かけに合わせ、数度息をすってはいてを繰り返すだろう。
最後に大きく息を吐き、少女の方に落ち着いた様子で向き直った。
「…落ち着けた、と思います。
ありがとうございます。
申し遅れました、風紀委員のフィスティアと申します。
お名前を伺っても…?
あ、尋問や職務質問というわけではありませんよ」
最近では見回りの回数もめっきりと減ってしまった。
からだを動かすことはやめていないため、衰えは少ないが。
久々に見周りをやっているような気分で、本来の役割を果たしている気分にわずかに前向きな感覚を覚える。
白い髪の少女への問いかけも、どこか慣れたようなものに聞こえるかもしれない。
■セレネ > 「夜に神社に行こうと思う人なんてあまり居ないでしょうからね。
しかもこんな寒い時期に。
気にしてはおりませんよ、大丈夫です。」
彼女の言葉にそれもそうだよね、と共感。
己だって人が来るとは思っていなかったのだから。
数回大きく深呼吸をする彼女に、蒼を細めて。
「それなら良かった。いいえ、お気になさらず。
あら、風紀の方だったのですね?フィスティアさん、ですか。
私はセレネと申します。こんな寒い中でも警邏とは…お疲れ様です。」
白い子の名と所属している委員会の名を聞けば、驚いたように蒼を瞬かせ。
という事はこんなところまで巡回しに来たのだろうか、と。
手慣れたように尋ねる様子を見るに、嘘でもなさそうだ。
■フィスティア > 「ああ、いえ。今は非番で…というよりは…
…さぼっているというべきでしょうか
少し気分が悪かったので一人で風にあたろうとでも思って…」
役目を持たせてもらえない役立たずである現状に苛まれている少女にとって、
さぼっていると口にするのはそれなりの苦痛ではあったが、中々嘘や隠し事は得意な方ではない。
誤魔化すような乾いた笑えていない笑みを浮かべ、視線を泳がせる。
「えっと…セレネさん、でよろしいでしょうか?
セレネさんはどうして此方に?」
この島に住まう者が見た目に左右されない能力を持つことは理解しているが、
目の前の少女は非力な一般的な少女のように見えた。
そんな彼女がここにいるのは危ないようにも感じれた。
■セレネ > 「ふむ。偶にはサボりたくなる事もありましょうね。
風紀のお仕事も色々と大変なのでしょうし。」
彼女の表情と泳ぐ視線。もしかして何か抱えているのだろうか。
良ければお話でも聞きましょうか、と勝手ながらに申し出を。
愚痴でも良いし、何でも良い。恐らく、彼女は抱え込んだものを吐き出せないタイプなのかもしれない。
だとしたら、いや、そうじゃなくとも。何だか放っておけないような感じがして。
「えぇ、それで宜しいですよ。
あぁー…まぁ、そろそろ年の瀬なので神様にご挨拶をと思って。」
年末はきっと自室でゆっくりしているだろうし。
だから少し早いけれど、と己が此処に居る理由を説明する。
挨拶をしに来たのは本当だ。ただ、人の言う挨拶とは少し違ったものだけど。
■フィスティア > 「少し早めの参拝、でしょうか。
信心篤い、というのでしょうか?良い事だと思いますよ。」
かつて居た世界にも宗教はあったがこちらの宗教観は何というか混とんとしていて基準がつかみづらい。
だが、まだ日にちはあるのに挨拶に来るというのは殊勝な行いのように感じられた。
間違っていたら申し訳ありません、と付け加えて。
「まあ…いえ、今の私は大変と言えるような働きは出来ておりません…
もしかすると最初から出来ていなかったかもしれません。」
元よりやっていたことは警らと事務仕事。ほかに何かしていたかと言われれば…
二、三度トラブルなりなんなりに巻き込まれた程度だろうか。
重々しい面持ちで視線を落とした。
白い髪の少女、セレネに話を聞くと申し出を受ければ…
逡巡した後、「大した話ではないですが…」と弱弱しい語気で問うた。
■セレネ > 「ふふ、そうですね。」
彼女の謝罪にはいえいえと首を横に振る。
そう思われてくれた方が己としても有難いし。
他の国の宗教とくらべ、確かにこの国の宗教は色々とややこしい。
異世界から来たなら猶更分かりづらいだろう。
己でも分からない事の方が多いのだ。
「……おや、それはどうしてでしょう。」
事実なのかもしれないし、彼女に自信がないせいかもしれない。
最初からだなんてと緩く首を傾げて問いかける。
何を以て大変と称するのかは人それぞれだろうけれど。
落ちる視線と弱々しい言葉に、それでも構わないと優しく答えて。
■フィスティア > 「…セレネさんは風紀委員会の仕事はご存じでしょうか…?」
白い髪の少女の言葉に、この苦しみをゆだねることにした。
ああ、私は誰かと出会いたくてここに来たのだと、私を知らない誰かに話を聞いてほしかったのだと
そう、確信した。
ゆっくりと、渦巻く感情を、混とんとしたこの悩みを言葉にして伝えるべく、紡いでいく。
「風紀委員会は、言うならばこの島の平和を守る組織…
…少なくとも私はそう思っています」
目の前の少女もそうであるといいのだが。
「平和を守るためには、脅威を取り除く必要があります。
その為には…
殺しだって厭わない、殺して止めることも辞さない、というのが…恐らく風紀委員会の大部分の考えだと思います」
少なくとも、私の知る彼らはそうです。
そう付け加えて。
「セレネさんは…どう思いますか?
…必要とあらば命を奪う選択をとることを…おかしく思ったりしませんか?
生かせる命かもしれないと、殺す必要は本当はないかもしれないって」
怖い。また自分の考えを否定されるかもしれないと。
初対面の彼女も渡しに呆れたような、見下すような表情を向けるのではないかと。
バカバカしいと一蹴されないだろうかと。
視線を下ろしたまま、紡いだ言葉は震えていた。
寒さとは違った震え、心が凍えていた。
■セレネ > 「えぇ、まぁ。日々あちらこちらで警邏している風紀の人達を見ておりますので。」
この間行った落第街でも、巡回していたらしい風紀委員の人物から注意喚起を受けたくらいだ。
この島の殆どを毎日警邏し、問題があれば解決している。
凡そそのような組織だと認識している。
「えぇ、そうですね。」
島の平和の為ならば殺しも辞さない。
それはそうなのだろう。話し合いだけで丸く収まるのであれば
風紀委員が毎日警邏する必要もないのだろうし。
「…貴方は人を殺したくなくて、誰かが死ぬのも見たくはない。
そういう事でしょうか。」
己にそれを問うてきた彼女の声は震えている。
己は彼女とは逆だし、どちらかと言えばその風紀の大部分の考えに賛同するくらいだ。
ただ、これを伝えると彼女がもっと傷ついてしまうのは自明。
「貴女は優しい人なのですね。
風紀の人にも貴女のような人がいるとは…驚きました。
…貴女のように心優しい人だけなら、世界も平和になるでしょうに。」
真の善人とは彼女のような事を言うのだろう。
見目通りの清らかで美しい心の持ち主だと感じた。
彼女と比べれば、己の心などどす黒く汚れているに違いない。
どう答えれば良いのだろうか。悩んでしまった。
■フィスティア > 「ありがとうございます…
でも、私は優しいのではありません。」
優しい。その言葉に身をゆだねてしまいそうだ。
その言葉に酔えば、きっと私はこの考えを持つだけで満足してしまう。
本当に誰も理解できない、してくれない存在へとなってしまうだろう。
そして、実現した思想すらも叶わぬものに…
だから、甘えてしまわぬように拳に力を入れて、強く握った。
かじかんでいてうまく力は入らないが、心はもった。
「セレネさんの言う通り、私が人を殺したくないだけなんです。
私が死なないで欲しいというだけなんです。
私の望みを周りに望んでいるだけなんです。」
「私が優しい訳ではないのです…
死を望む人や人を救えるであろう死も…私は拒んでいるのですから…」
少女の嫌う死に分別は無い。すべて、等しく、なくしたい。
その結果世界が滅ぶとしても…きっと誰かの死を望むことは無い。
「ですから…私みたいな人ばかりの世界は…すぐに崩壊してしまうような気がします」
誰も冷徹な判断を下せない世界は、回らない。犠牲合って回る世界だから。
「でも…やっぱり私は誰にも死んでほしくないんです。死はいつだって…悲しいから
私は、この考えを…風紀委員会に…人を殺せる人達にもわかって欲しいんです。
殺さないようになって欲しいんです」
それでも、自分は…。
とびっきり甘ったるいことは理解している。それでも、この思想を広めたい。
「でも…誰もわかってくれないんです。私がこんなのだから…せっかくやり方も教えていただいたのに…
私は…何もできなくて…
それが…つらいんです…」
必死に言葉を紡ぐうちに、言葉の端々に嗚咽が混じるようになっていた。
涙が一筋頬をつたい、わかって欲しいと顔に書いてあるのではないかという表情で、セレネを見つめながら両の手を伸ばした。
■セレネ > 優しくはない、と。そう言う彼女。
己自身も自分自身を優しいとは思っていない。他者からはよくそう言われるが。
彼女の言う通り、人にとっては死も救済になる。
それを、嫌という程見てきた。だから、己は人を殺す事も人の死も受け入れている。
必要ならば、親しい友人も、愛する人も、手にかけるだろう。
その覚悟はとうの昔に出来ている。恨まれ憎まれるのも全て承知の上で。
「貴女の望みを叶えるなら、不老不死の妙薬でも作るしかなさそうですね。」
誰も死なない世界。難しい話だ。
「死は悲しい。そうですね。遺された側は悲しいでしょう。
遺していく側も、人によってはそうかもしれません。
…うん、そうだなぁ。理解してもらうのはなかなか難しいですね。」
嗚咽交じりの声と、上がった頬に伝う雫。
伸ばされた手を優しく握る。
冷え性だから、きっとお互いに冷たい手同士だろう。
「言葉で伝える事が難しいなら、行動で示すしかないとは思います。
人の心を変えるのは長い時間が必要ですからね…。」
彼女の思いを、理解はした。だが、賛同できるかと言われるとそれは否になってしまう。
平和は犠牲の上に成り立っているものだから。
彼女の涙を拭おうと、ハンカチを取り出してはそっと目元にあてがおうとした。
「人に理解してもらうなら、強い心を持つほかありません。
何も出来ない、ではなく、何か出来る事があるかと自分で探すしか…。
とっくにしているとは思うのですが…だからこそ、今こうして悩んでいるのでしょうし。」
言葉に詰まる。価値観の違いを埋めるのは大変な事だ。
複雑そうな顔で、彼女を見つめた。
■フィスティア > 「寿命は…仕方ないと割り切ってます…
不老不死は…かなわないと思ってますから…」
みんな死なない種族だったりすれば…とつぶやくが小さく頭を左右に振って。
寿命は思想や努力でどうにかなるものではない…そう割り切っているつもりだ。
「でも…それ以外なら…分かり合えば…難しくてもきっと…」
握った手は冷たいが、少し安心する。
セレネの優しさがしみ込んできた気がした。
「行動…私は…どうすれば良いのでしょうか…
一度…教えていただいたことはあるんです…
同じ志を持つ者を集めて…死者をださないように実績を出せばいいって…」
以前、あの少女に教えてもらった方法。
そう教えてもらったのだと、ハンカチで涙を拭いてもらいながら、
嗚咽を抑えながら、伝えた。
「まだまだ出来ることはあると思うんですが…怖いんです…
また昔みたいに…私の甘さで…みんな…死んでしまったりしたら…」
前向きな要素などない弱音。
かつて自分の隊員を殺してしまった自分の甘さが怖かった。
また同じことをするのじゃないかと、そんな弱音。
■セレネ > 「不老は兎も角、不死者ならこの島だと居るかもしれませんねぇ。
ほら、だってこの島には色んな人がおりますから。」
異能とか、そういう特殊体質とか。探せば案外居そうなものだとは思う。
寿命の死は割り切っているらしい。だけどそれ以外の死は割り切れないと。
「根絶する事は難しいかもしれませんが、
もしかしたら殺される人が減るかもしれないですね。」
お互い冷たい手同士。
温かな飲み物でも買った方が良かったか。
「…確かに実績を出せば文句を言う人は減るでしょうね。
言葉より行動の方が目に見えて分かりやすいですし。
実績を出せば、貴女の思想に賛同する方ももしかしたら出てくるかもしれませんし。
一番は行動しながら仲間を集める方法が良いのでしょうが、流石にそれは難しいですから…
貴女一人でも、少しでも実績として残す。
まずはそこから始めた方が良いかもしれません。」
行動する事で、少なからず周りに噂が広まるかもしれない。
広がれば、その分良い事も悪い事もあるかもしれない。
けれど本当にその思想を広めたいなら、覚悟は決めねばならないだろう。
「一度自分のせいで人を亡くした経験が…?
成程、それなら尻込みしてしまうのは無理ないのか…。」
ふむ、と考える。
「…失敗を恐れていては何も出来ない。
と、言うのは簡単ですが、まずは少しずつやっていきましょう。
私で良ければまたお話を聞きますから。」
以前の失敗をもう一度してしまうのではないか。
その恐れは実によく分かる。
けれど、そのままだと前に進めないだろうから。
少しでも進んで欲しいと、言葉を掛ける。
ふと、相手が嫌がらないのであれば
首に巻いていたマフラーを取り彼女の首にかけてあげようとした。
マフラーからはローズの香りが香るかもしれない。
「寒いと気持ちも落ち込んでしまいますから、暖かくしないといけませんね。」
良ければそれ、差し上げます、と。安心させるように微笑んだ。
■フィスティア > 「一人からでも…そう、ですね
無理に仲間を増やす必要もない…ですね。
盲目過ぎたかもしれません」
あの少女の言っていたことが間違っていたとは思わない。
悪いのは鵜吞みして考えなかった自分なのだ。
ハッとした様子で一瞬瞳を大きくした。
「私は異邦人なのですが…以前いた世界で…」
…はい、ありがとうございます。
その言葉だけでも…とてもうれしいです。」
セレネの言う通り、到底忘れられるものではない。
だが、吐き出せる相手がいるという、聞いてくれるというその言葉が少女の荒んだ心の安寧となった。
「話…聞いていただいてありがとうございました。
おかげで少し落ち着きました。
まだ耐えて…いえ、折角ですから前に進めるように頑張ってみようと思います」
マフラーが首に巻かれれば、ぽつりと暖かいとこぼす。
セレネの体温と、ローズの香りに心が落ち着いたようで、
寒さと泣いたことで顔は赤くなっているが、表情はすっかり落ち着いていた。
「そろそろ、戻ります。少しでも、何か行動しなきゃいけないですし。
それに、あんまりサボってると叱られてしまうかもしれないので」
覚悟は決めた。一人でも、いくら時間がかかっても成し遂げたい。
何度目かはわからないが…そんな覚悟が確かに宿ったような気がした。
そんなたしかな視線でセレネを見つめてみせた。
「マフラーありがとうございます。お話も、突然でしたのに聞いていただいてありがとうございました。
セレネさんも暖かくしてくださいね。あ、それと危ないですので出来るだけ早めに帰宅してくださいよ。
それでは、失礼します」
マフラーをぎゅっと握りしめ、セレネに深々と礼をした。
顔を上げ、セレネにはにかんで見せてから、鳥居をくぐり、闇の中へと姿を消した。
ご案内:「常世神社」からフィスティアさんが去りました。
■セレネ > 「えぇ。行動していけば、自然と人も集まってくるものでしょうし。」
彼女の思想に賛同してくれる人や手伝ってくれる人も居るかもしれない。
そこは、彼女の行動次第になるだろう。
頑張ってほしいと思う。
「あら、私も異邦人なのですよ。
ふふ、ある意味お仲間ですね。」
悩む彼女の力となれただろうか。
何か少しでも前に進んでもらう為の助けになれたなら良いのだけど。
「いえいえ、大した事はしておりませんよ。
…辛い事もあるでしょうが、その時はまたお話しましょう。」
先程より落ち着いている彼女に内心安堵しつつも、笑みを浮かべて頷く。
「そうですね、こんな寒い中ずっと居ても風邪引いてしまいそうですし。
身体は資本ですから。」
覚悟を決めたような、そんな強い光が彼女の瞳に灯っている。
蒼を細めてそれを見やれば立ち去る彼女を見送ろう。
「何かお力になれたなら良いのですけど。
…えぇ、其方もお気をつけて。」
深く己に礼をし、はにかんだ顔で去っていく白い背を眺めては。
『…色んな思想を持つ子が居るのねぇ…。』
なんて異国の言葉を呟いた。
感心しながら、今日は歩いて帰る事にしよう。
己も鳥居を潜り、寮への道を進んでいくことと。
ご案内:「常世神社」からセレネさんが去りました。