2022/09/01 のログ
ご案内:「常世神社」にクロロさんが現れました。
ご案内:「常世神社」にセレネさんが現れました。
■クロロ >
「大丈夫だよ、何か起こるワケでもねェ」
悪い予感だろうと起きなければ杞憂に過ぎない。
気にかけるだけ今は無駄だから気持ちを切り替えることにする。
気だるそうに溜息を吐き出し首をさすった。
…ただ、聞いた所によればこの常世島の海底には遺跡群があるらしい。
もしかしたら、それが胸騒ぎの原因なのかもしれない。
尤も、現状では調べようもないし海になんて近づけない。
機会があればその時は、だ。
────そうこうしているうちに帰ってきたら花火が上がっていた。
花火の音に驚いたのか、彼女は何処となくぎこちない。
「なンだ?急になッてビビッたか?」
からかうように言ってやれば腕を組んで空を見上げた。
夜空を埋め尽くす鮮やかな炎が黄金色に乱反射。
爆音に負けないような、周囲のざわめきも聞こえてくる。
ああいう炎は人々にとって娯楽になるらしい、覚えておこう。
「いらねーよ。食うッつーか燃えるだけだし」
一般的な食事とは違う。
クロロの場合は全部燃えて魔力に変える牧燃料だ。
そういう意味では、綿あめもその辺の雑草も変わりはしない。
デブ猫は実に奔放なので還る気配はない。それどころか、彼女の足元で丸くなっていた。
花火はどうした、花火は。猫ちゃんは興味ないそうです、はい。
■セレネ > 「それなら、良いのですが。」
大丈夫ではないならその時は素直に言うだろうし。
小さく頷けばそれだけを告げる。
「……。」
揶揄われ、苦笑を浮かべた。
花火は苦手だ。
蒼を閉じると、鳴り響く火薬の音と共に。
戦火に包まれ傷付き、苦しみ、悲しむ人々の光景を思い出す。
――思い出してしまう。
「…そう、ですか。」
人間体なら兎も角、今は炎の身体だ。
仕方ないと思いはすれど、やっぱり少しだけ寂しかった。
ふる、と僅かに震える手を引っ込めると、
膝を折り己の足元で丸くなっている猫に伸ばす。
ふわふわした毛並みは、今持っている綿あめと同じくらい。
一口分に綿あめを千切ると、口元に運ぶ。
ふわりとした飴は熱ですぐに溶けてしまう。
甘いけれど、儚い食べ物。
■クロロ >
からかってはみたが如何にも反応が悪い。
花火は苦手だったのだろうか。
人間好き嫌いはあるのは当然だがちょっとそれにしても、と思った。
「なンだ?花火嫌いか?」
それを遠回しに、なんて気の利いたことのできる男ではない。
直球に問いかけた。はぐらかすならそれでいいし
彼女との関係を続けるには知っておくべきだろう。
「……ンだよ。食えねェからしょうがねェだろ。
大体食ッても味もなンもわかンねェッての」
そんなに寂しそうにされても困る。
やれやれ、と後頭部を掻いて肩を竦めた。
食べさせてもらう、と言うのも意地汚いし
何より口元に持って言ったら溶けるか焼けるかだ。
風情も何もあったものじゃない。
何となく言いたいことがわからないでもないが、此方にとってこれが"普通"だ。
普段いるあの姿こそ、幻のような特別だという事を忘れてはいけない。
そんな気の利かないご主人とは裏腹に、デブ猫はてしっ、と肉球で彼女の白い足を小突いた。
相変わらずふてぶてしく、ごろんごろんと寝そべり尻尾を振っている。
"気にするな"、と慰めているつもりらしい。
大きなお腹は器の大きさの証。
「なンでテメェが慰めてンだよ。つーか、還れよ」
主人のイライラ、何処吹く風。
なんて自由な使い魔だ。
■セレネ > 「…まぁ、その。あまり良くない事を思い出すので苦手ではありますね。」
綺麗だとは思うし、人が惹かれる良さも分かりはする。
ただ、火薬が爆ぜる音はどうしても。
「幼い頃に、転移魔法に失敗して丁度戦時中の国に行ってしまった事があったんです。
その時の敵国の砲撃とか、人々の悲鳴とか、酷い光景を目の当たりにしてきたので…。」
未だにそれを夢に見る。だが、その経験のお陰で人を癒す道に向かおうと決めたから
決してマイナスではなかったと思っている。
「…。」
何かを言おうと口を開いたが、結局何も言わずに噤んだ。
彼の体質を分かっていて付き合っているのだから、あまり困らせるのも宜しくない。
無理矢理己を納得させては、困らせてしまってごめんなさいと小さく告げよう。
「…?」
足に小突かれる感触。
蒼を向ければ寝そべった猫が尻尾を振っている。
どうやら慰めてくれているようだ。
その愛らしさに、ふ、と口元が僅かに綻んだ。
「猫ちゃんは自由な子ですからねぇ。
そこが可愛い所でもあるのですが。」
うちの子も自由だし、と白い愛猫を思い出す。
また一口二口、綿あめを千切って、ラムネにも口を付けよう。
カラリと鳴るビー玉と、シュワシュワした感覚。
…普段炭酸は飲まないから、口の中がちょっと痛い。
■クロロ >
「…………」
茶化すわけもない。腕を組んだまま真剣に聞いていた。
余り穏やかな話ではない。記憶はないが、なんとなく身に覚えはある。
体が覚えている、とは少し違うが、似たようなものだ。
戦争、争い。それがどれだけ悲惨な事か白紙の記憶が覚えている。
その結果どうなったかは、きっと白紙なのが答えなのかもしれない。
こんなもので、と思う人間もいるだろう。
だが、人にとってどうしても苦手なのものだ。
ガシガシと自身の後頭部を掻けば、くるりと踵を返した。
「可愛くねェよそのデブ。どッちかッつーと"ドン"だぜ?
ホラ、さッさと夢の国還れよデブ。テメェ何時までオレ様の魔力食ッてンだ???」
いー、と口元歪めて大ブーイング。
何なら親指下にしてやるわ。
それでもデブ猫、何処吹く風。
ぶみゃぁ、不細工な声を上げてのそりと立ち上がると、クロロの方へと歩いていく。
「食べ歩き位出来ンだろ?オレ様飽きたから、もう行こうぜ」
それはそれとして、そういう事情なら人にとって彩でもこっちにとっては澱みだ。
祭りの楽しみ方は人それぞれだ。くぃ、と顎で指せばゆったりと歩き始める。
これ以上辛い事を思い出させたくはない、クロロなりの気遣いだ。
■セレネ > 己の話を真剣に聞いてくれる彼。
静かな場には似つかわしくない話ではあったが、
己を知ってくれようとした事は嬉しかった。
もっと知ってもらいたい気持ちはあるし、同時に彼の事ももっと知りたい。
背を向ける彼の大きな背を、蒼に収める。
「ドン…?」
デブとは流石に言い過ぎでは、とは思ったものの。
ゆるりと立ち上がった猫は彼の下へと歩いて行った。
「…あ、はい。」
そう時間は経っていない筈、と思ったが。
彼なりの不器用な気遣いだと気付くと蒼を細め、腰を上げて彼の隣へ。
カラコロと軽やかな音を鳴らす足音。
「次はどこに行きます?」
聞きながら、蒼が金を見上げた。
■クロロ >
歩みは合わせて、ゆっくりとした動き。
手を繋げないし、近づけはしないがつかず、離れず。
先導するように迷彩柄は夜を歩く。足元にはふわふわ猫もよたよた歩いている。
「ドン。猫のボス。夢の国……だッたか?の、ボス」
伊達に太っていないらしい。
その見た目の愛嬌と貫禄は実際ボス猫らしいと本人(本猫)の弁。
此処とは違う猫たちの国の元締めなのだ。
ぶふぅ、不細工な鳴き声はなんか誇らしげ。
クロロは嫌な顔してた。
「さーなァ。アテはねェよ」
徐々に祭りの喧騒から離れていき
辺りは静寂の街道。川沿いなのか、何処からともなく水の音は聞こえる。
文字通りアテなんかない。祭りの雰囲気は十分味わったとは思う。
何気なしに見上げた夜空に彩はないけど、いつも通りの星空はなんとなく安心感があった。
自然とニィ、と口角が吊り上がる。
「アテはねェが、テメェはついてくるンだろ?
だッたら適当に行こうぜ。行きたい場所があればよッてやる」
帰り道か寄り道かは知らない。
だが、コイツといれば退屈しないのは本当だ。
目的地なんてとっくに無いような人生だが、彼女が望むならこうやって歩くのも悪くない。
誰かを照らす篝火の特等席。火の持ちて位はやらせてやる。
かっか、と喉を鳴らして笑いながら気の向くままに闊歩していった。
「あ、言い忘れてたけど口にワタついてンぞ?」
なんて冗談を零す、良い夜だ。
■セレネ > 身体の大きな彼は歩く歩幅も大きい。
けれど、今は己の為にゆっくりと歩いてくれている。
触れられないのは残念だが、次に己の部屋に来てくれる時に目一杯触れよう。
「夢の国…?ボス、という事はとても偉い子なのですね?」
見た目はふわふわした大きな猫。
夢の国と言う場所がどこかは分からないが、どうやら凄い子らしい。
誇らしげに声を上げる猫とは別に、彼は嫌そうな顔。
対比が面白くてクスクス、と小さく笑ってしまった。
「えぇ、勿論。
宛てが無くともお散歩をすれば良いですし。
…何より、貴方と一緒に居られればそれだけで良いのです。」
一人より、二人。
ただ歩くだけでも、充分嬉しい。
目的地はなくても、こうして一緒に寄り道が出来る人生の方が楽しい筈だ。
目的地を、共に作って共に目指していけたら。
――それは己にとって一番幸せだろう。
「――えっ、」
なんてそんな事を考えていたら、口に綿が、との言葉に
慌てて口元に手をやる。
…それが冗談だったと気付けば不服そうに唇を尖らせて彼に異を唱えるだろう。
そんな夏の夜の一幕――。
ご案内:「常世神社」からクロロさんが去りました。
ご案内:「常世神社」からセレネさんが去りました。