2023/01/08 のログ
黛 薫 >  
「構ってもらぇなくなんのも困るしな」

呟いてまた紙コップに口を付ける。ふと漏れた
本音を深掘りされないための時間稼ぎ。貴女の
興味が別に移ったため、小狡い仕草を弄する
必要も早々に消えてしまったのだが。

「大分前……メロウが教室棟の見学をしたときに
 ちらっと触れたコトあったっけ。おんなじ寮に
 住んでる女の子。あーしと一緒で落第街上がり。
 あ、いぁ、それは言ったらマズぃのかな……」

当人は隠しても気にしてもいなかった雰囲気だが、
黛薫の方が落第街に悪い印象しかないので二の足を
踏んでいる。

「あーし的には魔術関連の話が出来る貴重な相手。
 なんだけぉ、あーしは魔術以外からっきしなのに
 対して、その人は色々手ぇ伸ばしてんの。珈琲も
 そーだけぉ、料理も得意らしくて。料理はむしろ
 フィールが興味持ってる分野だから、あーしが
 学ぶとしたらコーヒーの方なのかなって」

要するに、友人の話に付いていってみたいという
ちょっとした背伸び。とことん魔術一本の彼女が
そういう歩み寄りを試みるのは珍しい。

メロウ > 一度では、解きほぐせなかろう。二度三度、繰り返す
こちらで言えば、その『三度』が早かったのかは、比較のしようもないが

常盤寮に共する程度と知り合うのなら、幾度も機会はあったのだろう
順当に重ねて行けば、本人の性の良さも垣間見えていくもの
貴女がコンタクトを取りたいと働きかけるとはつまり、それほどを許している、と

「なるほどね。だったら私も、同じなのかな
 学園には居ないけれど、落第街の記憶があるのなら」

それが瞳を閉ざし、目線を切った理由にただ1つを選べはしない
確かなのは、『悟られないように』と確かに思っての行為だった事

心の一拍を置けば、また普段通りに開かれよう

「その人も香りの事、興味持ってくれないかなぁ
 合わせる事も良いけれど、合わせてもらう事も、悪くない気がするよ?

 話題の手土産って言うのかな。普段聞いてばかりの、私が言うのもなんだけど、ね」

黛 薫 >  
「結果論だけぉ、な。あーしがメロウの調香する
 香りに惹かれたのは落第街の経験にシンパシーを
 感じたからじゃなくて、路地裏に漏れた香りを
 好ましく思ったからだもん」

また甘酒を一口。ほぅっと吐いた白い息を目で
追いかけたのは、また思考の時間を稼ぐためか。

「……あーしが紹介するってのは、まぁアリ。
 クリスマスに、結構なプレゼント貰ったから、
 何を返すかも悩んでた。メロウのお店での
 体験は、あーしん中じゃこの上なぃ物だから、
 お返しとしても見劣りしなぃって自信もある」

「まー、独り占めしたぃから渋ってんだけぉ。
 メロウのお店に繁盛してもらぃてー気持ちは
 あるし、友人から見たあーしの話がメロウへの
 報酬になるんなら、それはそれでイィよ」

「でも……メロウはあーしのなんだもん。
 紹介はイヤじゃなぃ。メロウのためにもなるし、
 友人のためにもなる。なのに、会わせる前から
 ちょっとヤキモチ妬いてんの」

くしゃりと自分の髪を手のひらで弄りながら溢す。

「……紹介したら、その後であーしのために1日
 使ってくれる……ってのは、アリ? ダメなら
 "お願ぃ" を1枚使ぅのも視野に入れっけぉ」

ご案内:「常世神社」からメロウさんが去りました。
ご案内:「常世神社」から黛 薫さんが去りました。
ご案内:「常世神社」に黛 薫さんが現れました。
ご案内:「常世神社」にメロウさんが現れました。
メロウ > 「分かってる、初めは誰でもお客さまだった
『三回目』も未だ健在。普段だったら素直に聞くんだけど

 うん。それを願うなら、使って貰おうかな?
 だって最近、『お願い』が無くても何でもしたくなる
 どんな理由でも良い。貯めた物を使う機会は、大事にね」

ヤキモチを焼くことも、自分の事をこの上ない思い出と言ってくれる事も
諸々に、落ち着かない態度の貴女に対して、静かな笑みで受け入れていた

私の抱く『心配』は、きっとすぐに意味がなくなる
だからこれは、出会うまでの短い間の、ほんの時間稼ぎみたいなものだった

「私と出会う前にそんなに考えこんじゃうなんてね
 その人はきっと、いい人だ。私を奪われることも当然
 私に奪われることも、ちょっとは考えてるのかも

 さっきの欲張りか、それ以上に、なんだか面白い顔してるもん
 大丈夫。私もきっと、すぐに信じられるようになるからさ」

いつの間にか、自分が買った物よりお互いに多くを飲んでしまってそうな紙カップ
お汁粉を改めて、貴女のほっぺに押し付けてみるとしよう。やっぱりまだ、暖かい

黛 薫 >  
「面白がってんじゃねーーですよ、もー。
 結構真剣に悩んだんだかんな、あーし」

膨れっ面アピールもほっぺに押し付けられた
温かい紙コップのお陰で形無し。子供のように
いじけた表情で甘酒を返却し、八つ当たり気味に
お汁粉を呷って咽せた。

「……じゃ、コレ『お願ぃ』の分な」

3枚溜まったスタンプカードを1枚だけ手渡す。
『お願い』を要約すると『友人を紹介した分だけ
独り占めで構ってもらえる日が欲しい』になる。

「それと。コレはカード使った『お願ぃ』とは
 別の話だけぉ。その友だちが受けたサービスの
 代金はあーしが払ぅから。先に払って、もし
 過剰だったら後からお釣り返すってカタチで。

 単なる代金の立て替えにすっと、遠慮して
 安く済ませよーとか考ぇるかもしんなぃから。
 既に払ってるって言や回避出来んだろ」

回りくどいことをするくらいなら『お願い』を
もう1枚使って無料で応対してもらうという手も
あるだろう。それが出来ないのはまだ会わせても
いない相手にすら妬いてしまっているから。

自分のために『お願い』を使わず『酷いこと』を
要求した当時と比べれば、成長しているのやら。
ちゃんとお店にお金を落としたいから無料での
サービスは避けたいという魂胆もあろうけれど。

メロウ > 「分かってるよ。これは薫さまのお返しだって
 だから紹介したいのは『私』であるに留まらず
 お店の香もまた、あなたが用意したいものってコト」

一枚を受け取り、甘酒も受け取る。返還を以て、諸々の注文を承諾する
そうして甘酒を口に運ぶも...1つ感情が揺らぐたび、紙コップに逃げ続けたあなたの事
そろそろ無くなってしまうのだろう。こちらも一度傾けて半分ほど、もう一度で全部の飲み干す

「それにしても。溜め込んだ分も持ち歩いてるのは、ちょっと予想外だったかも
 うん、あっさり受け取った私も私だけどさ。慣れてきたね

 私としては、薫さまは今年も大丈夫そうだと思った次第
 とすると期にしていた事も、フィールさまくらいかなぁ
 ...彼女は本当に、忙しそうだね。何かちょっと、差し入れを考えたくなるくらい」

黛 薫 >  
「落としたりしたくねーから全部は持ち歩ぃて
 ねーけぉ、貯まってる1枚と使ぃかけは財布に
 入れてんの。『お願ぃ』を思ぃ付ぃたときに
 待ち切れなくなんのもヤだし、余程なぃとは
 思ぅけぉ、緊急で頼まなきゃいけなぃコトが
 出来るかもだかんな」

さっき一度に呷ったお陰でお汁粉も残り少ない。
図らずも飲み終えるタイミングは揃ってくれそうだ。

「フィールに関しては……あーしが手伝ぇんの
 勉強くらぃだかんなぁ。学園の手続き上では
 "危険な怪異と監視要員" なんだもん。

 下手にあーしが口出すと同情から抑止の役割に
 不適って見做されかねねーんだ。だから入学の
 要件満たす方は全く手ぇ出せねーの。

 いちお労ぃとか発散に付き合ぅコトは出来るよ。
 んでも、そーやって甘やかすと依存一直線ってか、
 どんどんあーし以外から離れて、余計に入学が
 遠退きゃしねーか、って」

「そゆ意味だと、メロウに頼むのもアリだよなぁ。
 あーし以外に頼れる先があった方がイィだろし、
 フィールって "社会の一員として" 嫌われたの
 初めてだったから。折り合ぃを付ける経験も
 しとかなぃとまた同じトコで躓くかもだし。
 今度打診してみっかなぁ……」

どうも最近、フィールの話になると子供の自立を
心配する親に目線が寄っている気がする。家族愛も
愛ではあるが、方向性が迷子気味なのは否めない。

メロウ > 「お店でのお仕事、という話もしたもんね
 もちろん前向きであるし準備もするけれど、
 実際に始まったら、『お願い』の1つにはなるかな

 私が嫌いなのは、そうした彼女の裡の甘え
 強制的な力が、働かないとやっぱり、ね」

対面し続ける気持ちを保つのに、モチベーションの1つは欲しい
その点、メロウの決まりごとは随分と、都合よく働くもの
誰かの頼み、誰かの『お願い』。己を費やすのに、これ程便利なものはない

「これに関しては、すぐに渡してもらう必要はないよ
 フィールさまに通す話もあるだろうし。占いの事もそう
 私もいう程、『社会』に通じてる訳じゃないけどね
 この世界の根柢の学園とは縁がない。本当に社会に近い
 或いは、社会に近付こうと努力しているのは、薫さま

 ...いひ。でも、いいね
 本当に今日は、レアな薫さまばっかり、見てる気がするよ」

黛 薫 >  
「おっけ。じゃ、話がまとまったらそんときに
 改めてしっかり『お願ぃ』しに行くから」

どの道、今は1枚分の『お願い』を使ったから
手持ちのスタンプカードが残っていない。

互いを知り合い、前に進むために貯めた『お願い』。
それが心を許した相手同士を引き合わせるための
モチベーションに替わるのはなかなか感慨深い物だ。

「えー、あーしそんな特別なコトしてるつもり
 ねーんだけぉ。年初めだから? なワケなぃか。
 浮かれてんのかなぁ、あーし」

捻くれ気味なファッション不良もメロウの前では
形無し。普段の癖で飲み終えたお汁粉の紙コップを
『使い魔』に処理させようとして……そういえば
今は隣に頼れる相手がいるのか、と思い至る。

「どーする? もちっと屋台回ってみる?
 興味なければ切り上げて帰ってもイィけぉ」

空になった紙コップをメロウに渡しながら問う。
屋台に合わせてゴミ箱も幾らか設置されているため、
捨てる場所には困らないはず。

メロウ > 「これが普通になる事だからね。私が反応し過ぎかも?
 そう考えると、本当に慣れなきゃいけないのは、こっちでもある
 と、いうのを信念の抱負としてみようかな。そうしようかな」

折角この場所にやってきたのだし、と。受け取ったカップを自分のものと重ねる
『どっちも』の内の後半。初詣で楽しむべきことに、意識を向け直すとしよう

立ち上がった際に、スカートを直そうと宙を泳ぐ手付き。今はショートパンツにて

「興味はある。だからもうちょっと歩こっか
 おすすめと言う物は...ふふ、聞いても良いのかな?
 慣れてない事はお試しでも。過ぎたる事は、大きな負担に、なるかもね」

メロウは薫の恰好を見つめる。何故に苦しむか、敢えて伏せている様子

黛 薫 >  
「メロウだって慣れてねーんだから、お互いさま」

慣れなければならない未来より身近な不慣れ。
穿いていないスカートを探した手付きに小さく
笑みを漏らして手を引く。

「とりゃえず、初詣といえば……おみくじかな」

初めにおみくじを選んだのは正月らしいという
理由もあるが、もうひとつ。黛薫の "異能" にも
関連がある。異能による触覚反応は視線の主の
感情に強く影響されるからだ。

祝い事ゆえにネガティブな感情を抱く人は少数。
触られる不快感はあれど怒りや不機嫌に起因する
痛みは少ない。とはいえ、おみくじで悪い結果を
引いた人に関してはその限りではなかろう。
従って、疲れる前に通過してしまおうという魂胆。

◼︎おみくじ
←1(大吉/吉/中吉/小吉/末吉/凶/大凶)7→
[1d7→1=1]
黛 薫 >  
「……あ、大吉」

良い結果が出たのだから素直に喜べば良いものを、
想定していなかったとばかりに漏れる戸惑いの声。

「えっと……願望、口に出せば叶う。健康、地道に
 積み重ねるべし。学業、捗る。挑戦を躊躇うな。
 仕事、うまく行く。金銭、努力した分だけ実る。
 交流、今の縁を大切に。恋愛、迷うな。失物、
 傍にあるが気付きにくい」

「……要は、きちんと頑張れってコトか? コレ」

メロウ > 「大、というと。うん、確か一番上?
 くふふ、口に出せば叶うだって
 だったらそれは、丁度良かったみたいだね
 先に聞いてみた甲斐があったというものかな」

なんて、偶然を重ねては容易に得意げになれるもの
さて、今度はこちらが買ったおみくじを開く番
自分が行った占いは、成功へと向かう様にとのお祈り

それでは、完全に天運に任せたその末路は、いかに

■おみくじ
←1(大吉/吉/中吉/小吉/末吉/凶/大凶)7→
[1d7→1=1]
メロウ > 「大吉!!」

開いた内容の大文字に、下の内容に注視する前に貴女に見せる様子
偶然に偶然を重ねて、こちらは遠慮なく盛り上がれるのだ

懸念していた『感情』の類も、当然ながら好感触の強いこと強いこと

黛 薫 >  
「えっ、メロウも。えー、スゴ、こゆコトあるんだ。
 幸先イィな? あ、何かちょっと嬉しぃかも」

黛薫、旧世紀に照らし合わせればまだ義務教育も
終えていないお年頃。珍しい事象の連続に年相応の
興奮を見せる。彼女の場合、他人が引いた物だから
深く考えず喜べたというのもありそうだ。

「記念に写真撮っとこ。ちょっと寄せてみて」

ホロウィンドウを起動し、2枚揃った大吉を撮影。
新年早々に幸運に恵まれてご満悦。貴女の視線に
つられたのもあってか、大吉相応のレアな表情。

「悪ぃ結果だったらあっちで結んで厄祓いすっけぉ、
 今回は要らなかったな。じゃ、次はこっちか」

視線を移した先はおみくじ所の隣、お守りが並ぶ社。
新年の抱負に合わせたお守りは勿論、おみくじの
結果が良ければお守り袋に入れて記念にすることも
出来るらしい。

「……おみくじもある意味占ぃみたぃな物よな?
 メロウの占ぃもこんなカンジで、調香した香を
 お守り兼ねた匂い袋に収めるとか出来んのかな」

メロウ > 「ほらほらこっち、ちゃんと撮ろ!」

肩寄せ合って、くじを並べては撮影に興じる二人組
周囲からの目線がこころなしか温かくなるような、そんな姦しさ
メロウの喜びというのは受け取り分かち合うものだとすれば、
この瞬間は真に、憂いなく切り出せた幸福なのだろう

「私は、二人で引いたくじを置いて帰るのは嫌だからね
 どんな結果でも、持って帰るつもりだったけれど
 その内容に憂いが無いのなら、それが一番かな

 そうしてあそこで持ち帰れるというのなら、ふむ
 神社というのも中々、商魂たくましいものと見たよ」

少女の見解。店を持つ者の目。個人向けより大衆に特化した付録思想

「んひひ。袋に入れるとしたら、練り香の方が合うかもしれない
 それとも香水の為の小袋?どちらにしても、特別な仕入れになるかも
 普段から、仕入れを多くしている訳じゃないからね
『人が多いタイミング』を狙うような商いを、考えてなかったんだよね」

行事に対して、極端に疎い。そんな部分もあるのだろう

黛 薫 >  
「神社って、こーゆー行事でもなきゃあんまし
 儲かってる印象ねーもんな……こゆときくらぃ
 お金落として貢献した方がイィのかな?」

経営者側の視点はないものの、何せ一緒に訪れた
友人が店を営んでいるものだから、此方は此方で
客目線。賽銭と別に応援のお金を落とす意も込めて
お守り袋に刻まれた文字を眺める。

「おみくじには色々並んでっけぉ、お守りの方は
 特にどれを大事にしたいかってカンジなのかな。
 いぁ、別に学業成就のお守り買ったら金運が
 無かったコトに、なんてこたねーんだろーけぉ」

「全部大事にしたぃなら開運招福? なのかなぁ。
 商売繁盛、千客万来……この辺はお店やってる
 メロウにゃアリじゃねーかな」

物色の手を止め、商いの話にも耳を傾ける。

「こーゆー、特定の願ぃを込めた袋だと汎用性が
 無くなっから、メロウのお店の占ぃにゃ不向きか。
 あーしが貰ったアロマストラップ的な? そーゆー
 付属物の一環に含める程度なら行けたりしなぃ?」

案出しというよりは雑談の種。実現性はあんまり
考えていない。占いが恒常サービスに含まれるかも
知らないのだし。

メロウ > 「いろんな所でお金を使わないと
 そんな意識を持っちゃうと、大変だよ?
 ただでさえ私のお店で無理しちゃうんだから、さ
 あまり無駄遣いさせないように、見ておかないとだね」

無料で良いと言っても、あなたは頷かないだろう
安定した収入を持つとはいえ、余裕があるとは意味が違う
微妙な責任感こそ、売る側は一番突き易い部分
見事、引っかかっていそうな貴女に向ける、じっとりとした目線

「うーん。繁盛、に私ってあまり思い入れはないからね
 他に何かないかなって。例えば、『家内安全』とかどうかな
 これって分かりやすいから。ね、そう思わない?」

お守りを探す指先が、自然とその文字を追う
元々家内を守る物であれば、しっくりくるのはそこなのだろう

「私は、お客さまに合ったスタイルを求めているからね
 求められれば作るけれど、売り込むというのは...
 その辺り、詳しい人って意外と知らないんだよ」

そして、根っこに商売っ気が無い物でもあれば
経験として目線は持つものも、『そうしたいか』といえば、また別の話にて

前向きに受け取ろうとしていても、歯切れの悪い返事が多いのだとか

黛 薫 >  
「い、いちお、最近は委員会の仕事やってっから
 収入はあるし。いぁ、フツーの人ほど安定的に
 働けねーし、総額じゃ当分フィールの収入にも
 追いつけねーけぉ……」

今までは金欠に起因する貧乏性のお陰で財布の紐が
固かった黛薫。裏を返せばそれはお金の使い方を
学ぶ機会に乏しかったとも取れる。メロウの視線が
無ければまんまと正月商戦に引っかかっていたのは
想像に難くない。

しかし物色の手を止めさせたのは視線よりむしろ
言葉の方だろう。おずおずと貴女に目を遣った。

「それは、つまり……家族だと思ってイィ、のな?」

寮の部屋で「ただいま」と言われて「おかえり」と
返した仲。だから今更疑問を覚える関係ではない。
ただ、黛薫は未だにやっぱり幸せのキャパ上限が
低いのだ。はっきり言葉にして示すと照れが混じる。

「いぁ、でもさ……家内どーこーって話になると、
 神頼みよかメロウが自力で守りそーじゃない?
 あ、だから抱負ってコトになんのか?」

考え込みつつ、再度お守りに刻まれた文字を確認。
メロウが居れば家内安全は祈るまでもないとすると、
自分は別のお守りを買うべきだろうか。

「結局、メロウは客の為人の為っつー『好き』で
 お店やってんだもんな。そりゃ経営も必要だけぉ、
 稼ぐのが目的ではねーから違ぅのかぁ」

メロウ > 「どうだろう。抱負だとか、お願いだとか
 そういうのきちんと考えてる訳じゃないし
『いいよね』と思う以上は持っていないかな

 だから。私が思うように、思って良いよ
 家族だって、思って良いよ。これもまた、今更だけどさ」

指は既に『家内安全』とお守りを拾い、手放そうとする様子もない
今日の彼女は誤魔化そうとせず、言葉にしてくれる
だからこちらも、素直に答え続けるとしよう。時々、笑う声も交じりながら

「でも、ちょっとだけ考えてるんだ。たしかに、って思う事
 本当に時々、公園で香りを売ってみようとしたことはあるんだ

 結局、お店で調香するよりも不自由が多かったから、合わないなぁと感じたけど
 それでも時々、私の香りを知ってもらう為の行いもしてみたい
 その入り口として、私を知ってももらう為に、外に出してみたい気持ちも、ちょっとあるし

 悩むね。ここ、本当に悩むね、そうそう」

指が口元に。むぅ、と漏れる唸り声