2023/01/15 のログ
神樹椎苗 >  
 
「実はしいも同性経験はねーですからね。
 この際、二人で未知の探求も面白いかもしれません」

 などと、慎ましいことこの上ない受け答え。
 なんだか押せばいけそうだなあ、なんて思いつつ、流石に恋人のいる少女に大変容を起こさせるわけにもいかないと、最期の良心が働いたような、そうでもないような。

「ふむ、料理ですか。
 まあほどほどの料亭程度のものは作れますし、教えてやるのもいいかもしれません。
 とはいえ、自分で言うのもなんですが。
 しいの面倒を見るのは、それはそれは、大変な事だと思いますよ」

 自分が面倒くさい人格であることは、とてもよく理解しているのである。

「それに、近頃体力も落ちて来てますしね。
 まあ、その年から、介護の練習をしておくのも、将来役に立つかもしれねーですが」

 なんて言いつつ、さっさと大凶の御籤は結んでしまおう。
 帰ったらタリスマンの一つでも作っておくべきだろうかなんて思いながら。
 

光奈 > 「じょ、じょーだん…だよね?たぶん…、あ、そうそう。
しいちゃん料理も美味しいあら、それは教えて貰いたいなー」

この友人、なにせ表情がわかりにくいので本気かからかわれているのかわからない
ただし顔は良いので、誘われたら大変容してしまう…可能性も、無きにしも非ずだ

「んー。大丈夫じゃない?めんどくさいことはわかってるしさ~
……あーもう、聞いちゃお。何か、あったの?近頃ってことは最近にさ」

介護が必要になるかも、というセリフにも特に驚くことは無い
そうなるかもしれない、というくらいにはこの友人を取り巻く環境は複雑だろう
だからそこは気にならないのだけど…、少し手を引いて、道を逸れてから聞いてみる

「私にできることなら、頑張るからさ
…何かあったら、言ってよ。実はちょっと寂しい!なんだかつらそーなのになーんにも言ってくれずにいつも通りだから!」

そんなストレートな言葉
どれだけ重くても、ちゃんと受け止められる、とアピールして
か弱い手を両手で包み込み、じい、と見つめる

神樹椎苗 >  
 
「冗談にしておきましょうか――今は」

 大変容が起きたらそれはそれで面白いかもしれないと思ってしまうのは、きっと椎苗の謙虚さが足りないからだろう、おそらく。

「料理よりは、お菓子作りの方が得意ですけどね。
 む、堂々と面倒くさいと言われるとそれはそれで――ん」

 手を引かれながら道を逸れて。
 少し人の流れから離れたところで、まっすぐに素直な好意を向けられる。
 それが嬉しく、素直に喜べるようになったのはいつからだろうか。

「気持ちはとても嬉しいですよ。
 ただ、しいにもよくわかってねーんです。
 わかってるのは、体力が落ちている事と、眠ってる時間が増えた事くらいですか。
 研究室の人間も、色々仮説を立てては検証してますが、今のところ、原因不明なんですよ」

 特別、隠していたわけじゃない。
 直ちに存在に関わる一大事、というわけでもないのだから、と、わざわざ言わなかっただけなのだが。
 やはりまだ、椎苗は自分の事となると、どうしても軽視しがちなのだろう。

「まあ、今すぐどうこうなる、というわけでもなさそうですし。
 完全に寝たきり、となるにはまだ余裕はあるでしょうから。
 でも、そうですね――」

 だから心配するな、と言うのも無理な話だろう。
 とは言え、あまり世話を掛け過ぎるのも申し訳なく感じてしまう――なんて考える所は、少々、謙虚さが芽生えてきたのかもしれないが。

「――原因がわかったら、お前にもちゃんと教えますよ。
 それと、自力で出来ない事が増えてきたら、遠慮なく頼ります。
 だから、元気なうちは、一緒にしっかり、楽しみましょう」

 そう、自分の手を包む両手を胸元に引き寄せて、真っすぐな視線を、どこか儚さの滲む微笑みで見つめ返した。
 

光奈 > 「そっか……」

しっかり思いは伝えられたものの、研究室…自分より数段賢いはずの人たちが原因不明というなら
それはもう、自分にはわからないことが起こっているのだろうと
何とかしたい気持ちだけが募るが、無理に言っても仕方がない

けれど、友人から…前向きな言葉を貰えば、うん、と笑って

「そーだね!もしかしたら単純に運動不足だったりするだけ…かもしれないし!
それなら、元気な間は私が連れまわすよ!
お正月はまだまだ始まったばかりだから…無理しないくらいに、色々たのしも!」

外に出るのが辛いなら室内でもいいのだ
楽しみ方なんて、そこら中に転がっている
胸元に寄せられた手、それを包む暖かさを感じながら

「勝手にいなくなったりしちゃ、ヤだからね。地獄の底まで探しちゃうんだから」

ふふーん、と虚勢…に見えないようにまた大袈裟に
顎を上げて、わざと偉そうに宣言する

「よし!じゃあ今はしいちゃんと楽しむぞ~!
帰り道も、別にどこか寄らなくても…色々見てるだけでたのしーよね!」

なんて言いながら、軽く手を引いてにぎやかな方へと誘導しよう
体力も、長く眠ることも心配だけれど…今を楽しむために――

神樹椎苗 >  
 
「ふふ、運動不足どころか、運動したら多分たおれますよ?」

 元気いっぱいの少女に、くすくすと笑みをこぼす。
 きっと連れまわされる体力がなくなっても、部屋まで遊びに来てくれるのだろう。
 それを確信出来てしまえるのが、素直に嬉しかった。

「――ええ、勝手にいなくなったりはしません。
 黙って消えたりは、しませんよ」

 地獄までこられたら大変だ、と笑い。
 けれどその言葉は――いつか『友人』が去って逝った微かな記憶を呼び起こすようで。
 遺書はしっかりと用意しておこう、なんて――どうせ死なないのにと、苦笑してしまう。

「ええ、しいもお前とたっぷり遊ぶつもりです。
 帰りはタクシーを呼べばいいだけですから、出店を制覇するつもりでいきますよ。
 とりあえず、金魚すくいで勝負と行きましょうか」

 そう、引かれる手をしっかりと握って。
 例え疲れて眠ってしまっても、少女なら大丈夫だと、助けてくれると信頼を寄せて。
 甘える事を覚え始めた椎苗は、精一杯、この時を楽しんだ事だろう――。

 

ご案内:「常世神社」から光奈さんが去りました。
ご案内:「常世神社」から神樹椎苗さんが去りました。