2019/02/04 のログ
ご案内:「異邦人商店街」に清姫 藍紗さんが現れました。
清姫 藍紗 > 今日は、完璧。
その蠱惑的なスタイルを存分に隠し、艶やかな黒髪も存分に隠す。
ふわふわもこもこの灰色セーターに白黒ツートンのマフラー、白いニットキャップにその上から黒いコート。
そのポケットには前回暖かかったから携帯カイロ。
ああ、今日は完璧だ。

そんな彼女は比較的インドア派ではあるが、外を歩くことだってままある。
店舗は気分で開くが、品物は自分で揃えなければならない。

異邦人街や歓楽街を回ることもあれば、歓楽街に住む知り合いを頼ることもある。
そうそう足は運ばないが、落第街にも知り合いはいる。
まあ、この手の価値があるもの、は、人の少ない場所で見つかることも多いわけだ。
時折転移荒野にまで拾いに行くことだってある。
そう言う意味で、己の体力、膂力に頼り、危機意識が少し薄いところもあるかもしれぬ。


……さりとて、今日は休みのお昼時。
異邦人商店街をゆったりと歩く、長身のモノクロームな毛玉。

ご案内:「異邦人商店街」に九重夢子さんが現れました。
九重夢子 > 日曜日。安息の日。授業の無い日。冬空に坐す陽光が頼もしくも、時折吹き抜ける風には負ける日。
私は小さな風呂敷包みを持って異邦人街を歩いていた。理由としては興味半分、実利半分。
未知の世界である異世界の文化が色濃い地区は、さて如何なる人外魔境なのか?
未知の世界である異世界の文化が象る物品とは如何なる文様を現すのか。
後者は主に、不幸そうな人物に向けての商品補充だったりもするのだけど。

「ふぅーん……思ったより普通ね。建物の形が所々……違うかな?
後はお店。特に食べ物系ね……何の匂いかしら、これ」

その戦利品たる風呂敷包みを手に提げて右を見ては歩き、左を見ては歩く。
お昼時とあって彼方此方に屋台が出ていたり、ちょっと読めない店名を掲げる飲食店らしき店が開いている。

「……んがっ」

そんな折。もとい、だからこそ。
よそ見をしながら歩いているものだから目の前の何かにぶつかって変な声が出た。
瞳を白黒させて目の前を見ると生憎と真っ暗、ではなく真っ黒で、恰も黒い楕円形のもこもこのように見えた。
尤も良く見るとそれは随分と大きい誰かの後ろ姿で、随分と綺麗な黒髪が目を惹きもしたのだけれど。

「……と、御免なさい。ちょっとよそ見をしていて……」

脚に力を入れてから、謝る。
もし振り向いた彼?彼女?が狂暴そうな御面相だったら走って逃げてしまおうっと。

清姫 藍紗 > とはいえ、今日はあまり目に適う物は無い。
次は手袋も持ってこよう、なんて考えながらコートのポケットに手を突っ込んでしまえば、完全に卵型。

ぽふん。

やわらかなふわふわ感触と共に何かがぶつかった感触を感じれば、すう、と後ろを振り向いて。
頭一つ、……程ではないにしろ、そのまま振り向けば見下ろす形になることは分かっているのだけれど。どうしても与えるイメージは、「マフラーで口元を覆った冷たい目の女性」。
威圧的オーラを放っているかのような状況で、悠然と一秒見下ろして。

「……ごめんなさいね、こちらもゆっくり歩いていたものだから。
 怪我は無かった?」

マフラーをちょい、と引っ張って口元を露わにすれば、膝を少しだけ折り曲げて。
目線の高さを合わせて、申し訳なさそうに眉を寄せて声をかける。

九重夢子 > 豈図らんや黒いモコモコの正体は同性から見ても吃驚するような美女だった。
つい、目を瞬いてまじまじと彼女の顔を見上げてしまうのも、余人があれば無理からぬ事と思ってくれたに違い無い。
或いは、その氷細工のような眼差しに凍らされてしまったとも。

「……あ、いえいえ此方は大丈夫。其方こそ……大丈夫そうね、良かった。人様に怪我をさせたらコトだもの。」

彼女が目線を合わせてくれた所で我に返って表情を緩ませるけれど、目線は未だ不躾に顔を見ている。
子供のようで、大人に見えて、年齢が読み辛い顔だ。ただ、何処となく幸薄そうにも視える。

「ただー……んー、そうねえ。貴方、何処となーく不運そうな、そんな風な気配がするのだけど、どう?
急に御免なさいね?ただ、職業柄どうしても気になってしまうというか……あ、私こういう者で」

よし、やってみるか。と「怪異相談、万承ります。九重夢子」と書かれた名刺を取り出し、差し出す。

清姫 藍紗 > 「ふふ、………私は頑丈だもの、大丈夫。
 貴方が走ってぶつかってきたとしても、貴方の方が怪我をするわ、きっとね。
 おかげで大木だとか言われたものよ。」

じい、と見つめられれば、怖がらせてしまったかな、などと考えつつ、冗談を混ぜて渋い顔をあえて見せる。
…と、唐突な言葉に首を傾げて、相手の言葉に耳を傾けて。

「………まあ、そう、なのかしら。
 自分ではあまり気にしたことは無いけれど。………ぉ、ぉ。」

思わず変な声が出る。彼女は元は妖の類。
怪異を解決されるということは、それはつまりええと。

「………どういう意味かしらね?」

改めて尋ねた。一瞬「私に見つかってしまうとは不運な奴だ」的ムーヴかと疑ってしまう。
少しだけ警戒するオーラが見えるかもしれない。

九重夢子 > 「ふふん、一言で言えば祓い屋。ほら、大変容以降色々とあったでしょう?私は敵性怪異を追い祓う事を生業と──と、言っても今は大半は魔除けを施すくらいなんだけれど、兎に角まあ、その道のプロよプロ。そういう力があるの」

本当は敵対的な異邦人をとっちめたりもしていたのだけど、昔の話だし何より此処は異邦人街。
耳敏い誰かに聞きつけられるのは不味いし、何より目の前の彼女がそうじゃないとも限らない。
なのでその事は言わず、ちょっとだけ胸を張るようにして得意げな顔。

「……で、例え話としてもよ。幾ら物理的に頑丈だろうと怪異は心を蝕むモノ。霜は陰のはじめて凝るなり。その道を馴致すれば堅氷に至る。
なんて古人の言もあるくらいに大変な事。つまり大きな変化は先ず小変、微かな兆としてまず現るものよ。
今の内に備えておく必要が、あるんじゃないかしら!」

あるんじゃないかしら!
大事な事なので心の中でも言いました。
名刺を彼女の手に握らせて、そっと手を引き道の隅へと移動しましょう。
何処ぞの店先の不可思議な香辛料の香りが強く鼻に香る中で、風呂敷包みより桐の箱を取り出して、いざいざと出てくるは小さな青灰色の壺。
如何な不思議か文様が笑う人の顔にも見えるこの壺こそ、何を隠そうついさっきその辺で買った謎の壺なのである!

「……と、言うわけで霊験あらたかなこの壺を如何?今なら安くしておくわよ……」

そんな代物をこれでもか、と口端を曲げた笑顔を添えて御提案しましょう。

清姫 藍紗 > 「………そ、そう。そうなのね?」

少しだけ動揺したまま、視線を右に、左に。
祓い屋と激闘を繰り広げたことは、過去に何度もある。

「………………そうねぇ。
 小さな変化、小さな変化………。」

体調不良を小さな変化とするのならば、年間360日くらい小さな変化があるのだが。
それっても平常運転じゃなかろうか。
とはいえ、手をきゅっと握られればずるずると引きずられるように道の隅にまで連れて来られる。
指先は、カイロを握っていたにもかかわらず冷たかったが、人の手はやはり暖かい。

「………霊験あらたか、ね。………まあ、値段にも拠るけど。」

相手の言葉に少しだけ首を傾げ、微笑み。
……その上で壺をマジマジと見やる。本当に怪異を払う力があるとなると、それはそれで所持はまずいのだけれど。

九重夢子 > 「小さな変化。例えば冷え性なんかもそうでしょう。貴女の指、とても冷たいわ?
病は気からと言うけれど、身体が弱ると自ずと怪異にも付け込まれやすいのよ」

怪異だって筋肉モリモリマッチョマンを相手にするより、儚げな美女の方が戦うに易しと思うでしょう。
と、引き摺った先で人差し指を立てて御高説もとい御説明をしてあげて、
相手が壺に食いつきそうな気配を見せたなら、瞳を弓のようにして壺を掲げるように差し出すわ。

「今ならなんと〇〇〇〇〇円!(5桁単位)そして、証拠がこれよっ」

壺を手にして意識を手先に集中する。
汗が噴き出る直前の、肌が熱で粟立つような感覚を伴って私の体から藍青に煌めく粒子状の光が立ち上がり
光の悉くが手先から青灰色の壺に集まる。
これが生命起源の厳かなる力。霊力と呼ばれる異能の力であり、そうした力の満ちた壺は白昼にあっても眩い輝きを
その人が笑ったような顔の文様の、目っぽい部分からこれでもかと放っていた。

「……どーお?綺麗でしょう。これを家に置いておけば雑魚な怪異なんか寄って来やしないわ」

翻れば雑魚じゃない怪異には全然効かないのだけど、それはそれ。私は嘘は言っていない。

清姫 藍紗 > 「…ふふ、儚げねぇ。」

苦笑を浮かべながら、口の上手い人、なんて言葉が出そうになる。
調子のいい人しかいないのかしら。

「………確かに、体は弱っていることが多いわ。
 どうにかならないかと困ってここにやってきたのも事実。
 よく分かるのね?」

言いながら、目の前の壺がキラキラと光り出せば………それが悪意の無い、純粋な力であると理解は及ぶ。
そして、それが己を害さないことも。

「………身体に効くなら、考えようかしら。
 そのまま払えばいいの?」

目の前の女は僅かに微笑んで、言葉をそのまま受け入れようとする。
体についてはほとほと困っているのは事実は事実。 アンティークや骨とう品を買いにきたのもまた事実。

九重夢子 > 「そりゃあまあ、不幸そうな人を見つけて色々売りつけ──じゃなくて、余人が怪異の恐怖に怯える事のないようにすることが務めだもの」

多分きっと、褒められた。そう判断をしてちょっと浮かれて口が滑りかかって急制動。
後は上手く一押し二押しどう畳みかけようか──なんて、思っていた所にあっさりと購入の意思を告げられて変な声が出る。

「んへぇ?……ああ、いえ。うん、まあ……」

あれ?ちょっとこの人、人が好過ぎる?と眉が僅かに顰められる。
聞けば病弱な体を治す為にこの島に来たと言うし、ある意味では私と同じ目的の来島者だと言えなくもない。
そういった人に、怪異は祓えるとしても、少なくとも体調が良くなる効果が無い物を売るのは、流石の私も──

「御支払い頂けるなら、はい」

どうかと思ったけれど、それはそれ、これはこれ。人間お金を稼がないと生きては行けないので、微妙に目を逸らして商談成立としましょう。

「……あーただ、そのね。壺は別として。やっぱり身体は資本だし?その、科学的なアプローチも考えてみるといいんじゃないかなあって
ちょっと思ったりもするのよね?ほら、此処、学園島でしょう?実は私もそこの生徒なんだけど、色々こう…施設とか充実してるし?」

後に続く言葉は後ろめたさの証左かもしれなかった。

清姫 藍紗 > 「じゃあ、良かった。」

ゆっくりと胸をなでおろす。今の自分は誰かに恐怖を与えるような怪異ではない。
ただただひっそり生きながら、とりあえず快適に日々を過ごせるようになればそれでいいという、ほどほどの希望を抱く普通の人である。

「じゃあ、……これで。」

不思議なお店に、妙な骨董品が追加された。
相手が視線を逸らすのを少しだけ首をかしげて、相手の言葉を聞く。

「………ああ、そうなのね。 私もそうよ、二年生の清姫。
 訓練施設とかは、まあ、行かなくもないのよね。
 身体が虚弱というより、そうね、病気にかかりやすい体質みたいなものなのよ。」

あ、今は大丈夫だけれどね、と安心させるような言葉を繋げつつ………。

「……先輩? 後輩?」

首を逆に傾げて、尋ねてみようか。

九重夢子 > こうして壺は女性の手に渡り、私は代金を手にする。経緯はともあれ収入があるって素晴らしい。
と噛み締めかかった私の顔が一寸だけ苦虫を噛み潰したようなものになる。

「……あ、あはは。へ、へえー貴女も。しかも2年。そう……」

不味い。
まさか学園の生徒で、しかも形式上とはいえ先輩だとは思わなかった。
こうなるとアフターケアを一歩間違えると、私の学園内の風評が非常に宜しくない事になるのは必定。
私は清姫と名乗った先輩の事情を半ば聞き逃しながらどうしたものかと考えて、考えて、考えて、
問われた所で錆びた玩具のように顔を向ける。

「……えーと、ついこの間入学したばかりの、一年よ。で、でも?歳は私のが多分上よね?
だからまあえーと敬語とか使うべきなのかしらって違うそうじゃなくて、お近づきの印的な?
ほら、コンゴトモヨロシク的な……あっお昼、お昼ご飯まだなら一緒にどう!?」

出会いの記念に御馳走するわ。と壺を持つ彼女の手を取り提案するわ。
丁度直ぐ其処に来歴不明の不可思議な香辛料的な香りを漂わせる店があるし、と目線で追うと■■■■(※読めない)寿司と書いてある。
えっ、寿司?寿司屋ナンデ?と思うも話の終着点は其処である。覚悟を決めねばならない。

清姫 藍紗 > 「あら、そうなのね。
 ………別にいいわ、私もただここに一年いるだけの存在だし、敬語は堅苦しいもの。」

妙に表情と動きがぎこちない気がする。
先輩ということで、気にしているのだろうか。 まあ、見た目も怖いとよく言われるし。
大丈夫、大丈夫、と微笑みながら手をひらひらと目の前で振って。

「………そうね、そうしましょうか。
 でも、形式的には先輩なんだし、出して貰うのも………

 ……じゃあ、九重さん、でいいかしら。 私は清姫でいいわ。」

言いながらも、ぐい、と手を引っ張られれば、これまた引きずられるように不思議な店へと突貫していく。
ああ、行動力のある子なのね、なんて勝手に感心しながら、不思議なお寿司屋に入っていって。

今日引きずられてばっかりだな、と思うも、悪い気は不思議としない。

九重夢子 > 「いいからいいから。臨時収入で懐は暖かいし!」

敬語の行方は冬日に消える吐息のようなもの。
私が後輩と知れて幾分か気安くなった清姫さん──もとい清姫に、表情やら動きやらを悟られないように店内へ。
中はカウンター席と4人掛けのテーブル席が複数あり、カウンターの向こうでは赤銅色の肌と4本の腕を持つ屈強な男性が、包丁を4刀流にして魚を捌いている所だった。

「……あ、注文は先にどうぞ」

先輩を毒見役、ではなく先輩に先を譲りつつ私は思考をハムスターに乗られた回し車のように回す。
この後の顛末はまた別の話。

ご案内:「異邦人商店街」から九重夢子さんが去りました。
ご案内:「異邦人商店街」から清姫 藍紗さんが去りました。