2020/06/13 のログ
ご案内:「宵闇の街」にハルシャッハさんが現れました。
■ハルシャッハ > (空に星が遠く輝く夜は、地上には人の技が星を生み出す。
ポツポツと輝く街灯の明かりが、道に沿って並んで輝く遠い夜。
男は、ジーンズに濃紺の服という、よく夜に紛れる、
一般人としてはギリギリの服装で街道沿いを歩いていた。
スニーカーで叩く街道の足音は柔らかくも砂利を時々孕み、
ザラリという独特の音をコンクリートに交えて、夜の闇に響かせていた。)
「――なんでこんなところに流れ込んだもんかね……。
考えるのもバカ臭ぇ話だが・・・。」
(ポツリと舌に乗る愚痴に近いそれで、夜の澄んだ空気を震わせる。
理由など問うのも無粋なのかもしれない。
しかし、それでもいつの間にかここに居たのだ。
理由を問いたくなるのはヒトの性、なのかもしれない。)
■ハルシャッハ > ――遠い。 本当に遠いものだ。
思えば、思うほどに空は遠く。空気は澄んでどこまでも深く。
元の世界につながっているのかも、そうでないのかさえもわからぬこの空の向こう、
自分の故郷さえもどこに有るのかわからないという、この現状が歯痒くも面白い。
他にもそういうヒトが腐る程居る。
自分の他に問題や、悩みや、そして苦しみをどこかに抱えながら、
日々の忙しさに自分をごまかし、そして同時に生きるために動いている。
わかり切っていることだ。
しかし、それでもどこか、異邦としての寂しさは誤魔化しきれない。
――深い溜め息が、済んだ空気を吸って、反射に乗った。
「……帰れるのかね。知ったことじゃねぇが。
親方の口癖じゃねぇけど。
『やれることを、やれるだけ・・・』やるしかねぇか。」
誰しもに言うわけでもなく。
ただ心に整理をつけるように、舌に言葉を載せていく。
迷う暇はあってないのだろう。 現実はどこまでも忙しないくせに、
突然にトラブルを放り込むのが好きなのだから。
運命の歯車は回ってしまった。 後は天運を賽が決めるだけのことだ。
いずれ、賽は投げられるのだろうから。
■ハルシャッハ >
――そうして、割り切ってしまえば、体が軽くなる。
自身のクズさなどもはや折り合いをつけて久しい話だ。
悩む理由などあってない。
明日をこそ思い煩うな。今をこそ、思い煩え。
格言に良く載せて言葉を教えてくれていた、
自身を拾ってくれたギルドの親方の言葉がどこか思い出される。
自分は過去に生きては居ない。未来なんてものは不定形だ。
今をこそ、生きているのだと。
それは、盗賊という生き方において明日をもしれぬ立場だからこその、
割り切りだったのかもしれない。
要領はクソ悪く、そしてできの悪い弟子では有るが、
それでもいま生きられている。 そういう意味では、儲けものだったのかもしれない。
■ハルシャッハ >
――考えるのが馬鹿臭くなってきた男は、
歩みを止めることさえせずに、再度歩みを早めていく。
夜の闇は時に優しく、そして時に無情だ。
しかし、男の帰る場所としての闇は、ここでも有るのだ。
そう思えば、どこか優しく、包み込んでくれる場所なのだろうと思える。
――ゆらり。
街灯の影に暗い色がゆっくりと溶け込めば、
夜の闇に輪郭が紛れて姿が認識できなくなるまでに、そうかかることはない。
暴漢による襲撃を避け、穏やかに夜の闇を抜けるための盗賊の歩みが、
足音さえも消して宵闇に溶けて消えていく。
『影とともに有れ』(シャドウ・ハイド・ユー)
ポツリと。 別れの、そして生を願うような祈りを載せて。
男は、闇へと消える。
ご案内:「宵闇の街」からハルシャッハさんが去りました。