2020/07/02 のログ
■シャーリー > 「あ、う……か、彼女は、ヒーちゃん、で、です……。ご、ごご、ごめん、なさい……」
そう言って彼の言う相棒―――触手の魔物を懐から出すと、両手に持つ。触手の魔物は暫しじっと少年を見上げた後、やがて謝るように頭を、もとい、触手を垂らした。
「ヤ、ヤヤ……、ヤナ、セ、さん……。わ、わわ、わたしが……?で、でで、でもっ……わ、わた、わたし、なんて……い、いえ……あ、あの、な、仲良く、し、し、たいです……」
望むなら、という言葉に視線を彷徨わせて引き攣った笑みを零す。
重々しい雰囲気を悪化させているのはどう考えても少女の方で、申し訳なさに猫背を丸めて頭は上げられずにした。だが不意に人差し指を掲げられると、ビクリと体を揺らしてその言葉に首を傾げた。
「……あ、あああ、ご、ごご、ごめんなさい……ごめん、なさい……」
気分が悪くなるという言葉に必死に謝って、視線を泳がせる。
「……ぶ、ぶどう、か……?え、え、っと……は、は、はい?」
ぶどうか、という聞きなれない単語に首を傾げた。だが証拠とやらを見せてくれるのであれば、見れば分かるかと思って、首を傾げたまま頷いた。少し疑問形になってしまったが。
■矢那瀬陽介 > 「ヒーちゃんとやらも謝ってるみたいだから俺ももうさっきのことは忘れる」
手の中で頭らしきものを垂れる触手にもひらひらと掌を振ってから。
謝るばかりの少女にも平素な表情のまま言葉を続ける。
「君は治癒できるって言ったよね。それならヒーラーだ。
そして俺は剣は扱えないけれど二本の腕と足で戦うことができる。所謂武道家とか、格闘家だね。
ゲームの中じゃどちらも勇者にはなれないけれど。
極めれば勇者より強くて輝ける存在になれると思うよ。ヒーラーだってね。」
合点がいかぬ様子の少女にクッと喉を鳴らしながら、くぅるりと黒瞳が周囲を巡らす。
やがて葉が生い茂る身の丈より大きな大樹を見つければそれを拳で叩きつける。
「俺が武道家の証拠と、そして勇者よりカッコイイところがあるってこと。
これで証明してみせるよ」
頭上からはらり、と舞う葉っぱ。数えること10枚。それを捉えた黒瞳が紅く輝く。
「ハッ!」
鋭い発声と同時に木の幹を蹴りつけて跳躍。天地逆転の姿勢で舞い落ちる木の葉を掴み取ろうと風斬る鋭さで拳を放つ。
(※ダイスの目。掴み取れた葉っぱの数) [1d10→2=2]
■矢那瀬陽介 > 宙空で身を反転して着地した少年の拳の中には葉っぱが2枚。
「え……えっと。まぁ、アレだ!
俺は極めてる途中だから!
頑張ればシャーリーも憧れる勇者より凄い人になれるんじゃないかなってお話!」
赤くなる目元を掻きながら困ったように黒瞳を左右に彷徨わせた。
■シャーリー > 忘れるという少年の言葉に安堵したように少女は吐息を漏らした。とはいえ悪いのは此方だからそれで安心しきるという事は無いけれど。
「……は、はい。そ、そうです……ひ、ヒーラー、です……」
「……あ、あぁ……。な、なる、ほど……。で、でも……」
武道家というものがどういう事かを理解したものの、相手の最後の言葉には疑問を覚えたように首を傾げて眉を寄せた。
武道家が勇者より強くて輝けるというのは分かるが、ヒーラーが?癒す事しか出来ない、戦えない存在なのに?絶対そんなの無理だと唇を噛みしめる。
だが急に少年が大樹に拳を叩きつけるのを見れば、驚いたように体を弾ませて意識が其方へ逸れた。
鈍い音をたてて、大樹はわさわさとその枝を弾ませては葉を落としていく。少年がさらに大樹を蹴り、逆の状態で拳を放つのを少女はただ黙って見ていた。そして最後には、拳の中に納まった2枚の葉っぱを見て―――
「…………ふ、ふふっ。」
口元に手をやって小さく笑った。目元を紅くして懸命に告げる少年の言葉と、全然格好付いてない様子に、嬉しさとおかしさがこみあげて来て思わず声が溢れてしまった。
「……あっ、ご、ごめっ、ごめんなさっ……。……あ、ありがとう、ご、ございます。」
笑ってしまった事を謝った後、頭を下げる。
それから少年に両手を伸ばして、その手をそっと包むように取る。
「……ゆ、ゆ、……勇者は、む、無理です、けど……。わ、わた、わたし……わたし、にも、出来ること、あ、あります……」
そう言って彼の手を両手で包んだまま、少しだけぎゅっと力を入れる。そうすると少しだけその手が暖かくなると同時に、淡い光が一瞬だけ灯る。
強化の奇跡。相手の身体能力を向上させる、ヒーラーの基礎だ。
それが終わると両手をパッと離して背中へ回して、奇跡の代償を受けて痛む左手を隠す。
「も、も……もう、一度……や、やって、みて、く、くだ、さい……。す、すこし、だけ、だけど……つよく、なって、ると……お、おもい、ます……」
■矢那瀬陽介 > 「笑った。そっちの顔の方がよっぽど良い」
あはっ、と明朗な声をあげて笑った少年は然しすぐに顔が強張る。
自ずから伸ばしてくる手にどうしたものかと頭の上か、反対の手にいるだろう魔物、と相手の表情に目を配らせ。
結果、無骨な掌をそのまま細い五指に預けることになる。
「そうそう。勇者って一番注目される存在だけれど、それを支えるパーティーがいなければ魔王を倒せないからね。
――ん、なんか温かいね。ヒーリング?」
手の皮から、内なる肉。そして体の奥底、へ。
…魔術の類は知識なくとも、接触はどれも柔らかく、淡く。効果も分からずに思わず緩む心の、儘。
眼差しを臥せて大人しく待つ―― その声がかかるまで瞼を下ろしていた。
だからこそ彼女の代償に気づくことなく、続く言葉に唇を尖らせ。
「もう一度?あれ、結構キツいんだよ?宙に浮いた体を支えるのってしんどいし、ちょっと力加減間違ったら頭から落ちちゃうし」
並べる不服の最後は引き絞り微笑む唇。
「でも、ま。何か魔術?を施してくれたんでしょ?
ならばここで物怖じしたら男が廃るね」
その場で屈伸をし始める。
■矢那瀬陽介 > 「ハッ!!!」
一声、地を、幹を、蹴って高らかに長身が宙を舞う。旋子転体で姿勢をの天地を逆転させながら。
眼下の虚空に舞う葉、そのうち10枚を見定める瞳が紅く燃え。
拳が奔る。 [1d10→4=4]
■シャーリー > 「…………っ!!」
少年の言葉に顔を真赤にして左目を見開き、鮮やかな緑色の隻眼を逸らした。
魔物はといえば、手首に絡みついている。触手の魔物だ。触手を使えばどこにでも居られるようだ。だがどことなく触手で丸まっている辺り、触るのを見ないようにしているようでもあった。
「ま、まおう……ですか……?―――あ、は、はいっ。わ、わたし……き、傷を癒し、たり……み、味方を強化、するのならっ……と、得意、なんですっ……そ、それしか、出来ません、け、けどっ……」
魔王という言葉は馴染みが無かった。彼が連想するようなRPGの世界から来たが、魔王と言うのは居なかったからだ。もし居たとしても、そんなパーティーに自分は絶対に入れない。その理由の左手を、背中に隠したまま右手でぎゅっと掴む。
魔物はのんびりと頭の上に戻って、少年を見下ろしていた。
「……あ、あわわ。ご、ごめっ、ごめんな、……さい?」
思わず謝ったがそもそも宙返りでする必要性があるのだろうかと、謝っている途中で思ってしまって最後が半音上がってしまった。万が一にも失敗して頭から落ちたら、即座に治すとして……
「が、ががっ、頑張ってっ……くださいっ……」
これは魔術でも奇跡でもなく純粋な応援。両手を胸の前で握りしめて声援した後、両手を重ねて握り、ぎゅっと唇を結んで彼を見守る。
■矢那瀬陽介 > 「……」
手の中を見ずとも分かる、掴んだ木の葉の数。
確かに枚数は先ほどより増えたが彼女の声援と異能を添えたにしては少なすぎる。
音小さく着地した後、心許なさを縋るようにスカートを握る姿を見た少年は。
衣服に纏い付く葉を払うように手を動かしながらそれらを手の中に収め。
「すごいよ、シャーリー。見定めた10枚の葉っぱ全部取れたよ」
誇示するように手の中に溢れる葉を見せつけ。
「そしてそれよりも凄いのは君の成長じゃない?
さっきは背中を擦られただけで喘息みたいに慌ててたのに。
自分から俺の手を握れたもの。
勇者って勇気がある人のことを言うんじゃないかな?」
細めた瞳に浮かべるのは先ほど一瞬見えた紅潮した隻眼。
そして今はどんな顔をしているだろうと茜色差す夕日に染まる貌を見て。
「……もうこんな時間か。そろそろ帰って勉強しなきゃ。
テストが近いんだ。それじゃあね。また遊ぼう」
ぱちり、と片目を瞑るを別れの挨拶に、彼女が教会か家に去るのを見届けてから異邦人街から去っていくのだった――
■シャーリー > 「……え、あ、す、すごい、ですっ……!」
手の中の葉っぱの数に僅かに首を傾げた後、すぐに取り繕うように笑った。確かに少女は強化の奇跡を掛けたものの、だからと言っていきなり10枚も取れるだなんて思わなかったから呆気にとられてしまったのだ。
然し少年がそう言うのならそうなのだろうと、ぎこちない笑みを浮かべていた。その上褒められるとむず痒そうに口元を歪ませ、首を左右に振った。
「そ、そんな……」
「…………あ、ありがとう、ござい、ます。」
気遣われている事を理解して、肩を落とし、ぎこちない笑みをまた繕う。
それが奇跡の行使に必要だったから触れただけに過ぎなかった。彼の言う勇気とは程遠いものである事を知りつつも、それを告げる勇気も無く、へらへらと笑って誤魔化した。
「は、はい……ご、ごめんなさい、おひき、とめ、し、して……」
いつの間にかすっかりと良い時間になっていた事に気付いて、頭を深く下げてから踵を返し、教会へと入っていった。
ご案内:「異邦人街 とある教会」からシャーリーさんが去りました。
ご案内:「異邦人街 とある教会」から矢那瀬陽介さんが去りました。
ご案内:「異邦人街【異邦喫茶わがや】」に藤巳陽菜さんが現れました。
■藤巳陽菜 > 異邦人街の隅っこ大通りから外れた場所にこの店はある。
異邦人である店のマスターが『故郷から離れた人たちに少しでも故郷を思い出して落ち着ける空間ができるよう』
そんな思いで建てられたのがこの店だった。
内装は様々な客の意見を聞くたびに次々と改造が加えられてかなりごちゃごちゃとしたものになっている。
席にも工夫がされておりラミアのこの身体であっても苦なく座れること、人も多くない事、メニューの量も多いことなど
から陽菜にとっても割とお気に入りの店であった。
そんな店で陽菜はノートを開いてタブレットでなにやら配信を見ていた。
「どこでも勉強できるのは本当に便利よね…。」
何かしらの授業の様子らしい。
■藤巳陽菜 > …ノートを広げていたはいいものの書き込むことはあんまりない。
無さ過ぎて隅っこによくわからない動物を書き込む余裕すらある。
そこに…
『ハイ!ヒナチャン!オムライスオマチ!ヒナチャンベンキョウガンバッテルカラオマケシトイタヨー!』
「ありがとうマスター。」
注文していたオムライスを全身布に包まれたマスターが運んできてくれる。
以前は全く違うものだったオムライスも何回か注文するうちに陽菜が今まで故郷で食べていたものと遜色のない出来までクオリティが上がっている。
オムライスを食べながら授業を見ようとするとタブレットに広がっていたのはあまり食事時にはふさわしくない光景だった…。
「はあ…」
またかあ…と思いながらため息をつくと意識して画面を見ないようにしてオムライスを食べ始める。
■藤巳陽菜 > 初めのころはケガするたびに心配していたが知り合ってこれだけ経てば流石に心配は…いや…まだ心配ではあるけども…。
…ていうか何でそんな怪我してるのに配信してるんだ。
見ていられなくなってタブレットを机に伏せる。授業の内容を伝える声がくぐもって聞こえる。
「とりあえず。冷める前に食べますか…」
目の前の大盛に盛られたオムライス。
ケチャップで100点!と書かれてるのはマスターの気遣いだろう…良い人だなあ。
具材はとてもシンプル、輪切りにしたウインナーと輪切りにしてないそのままのウインナーそしてミックスベジタブル。
ケチャップが濃い部分と薄い部分があるのも飽きにくくなる助けとなっている。
■藤巳陽菜 > 喫茶店で出てくるオムライスというよりも家のオムライスといったテイスト…やはり、落ち着く。
…ここのマスターは異邦人のお客さんにとっての故郷のメニューを再現してメニューとして出すのが生きがいで
今まで何人もの異邦人を泣かせてきたというのは流石に伊達ではない。
そうやって食べていると大の男が3人いても苦戦しそうな量だったオムライスの山は既にその姿を消していた。
口の周りを軽くふくと今まで閉じていたタブレットを表にする。
「先生、身を削りすぎでしょ…」
自分の身体について雑に扱いすぎている感じがある…あの先生はもう少し自分の身体大切にした方がよいのでは?
そんなことを考えながら早口で聞こえてくる内容を聞き流して授業の時間は過ぎていった。
ご案内:「異邦人街【異邦喫茶わがや】」から藤巳陽菜さんが去りました。