2020/07/24 のログ
ご案内:「異邦人街」にアルヴィナ・コトフさんが現れました。
ご案内:「異邦人街」に雨見風菜さんが現れました。
アルヴィナ・コトフ > この世界に生まれ落ちてから、幾つか分かった事がある。
唐突に人の前に現れると警戒しやすいという事、この小さな体は同時に警戒を解かれやすいという事。
純粋な人間以外の『混ざりもの』が存在している事。
ここまで面白い夢も珍しい、人は相変わらず脆弱ではあるが、おかしな可能性の海に入り込んだらしい。
ある意味、この場所は海流の交差点ともいえるのかもしれない。

アルヴィナはさまざまな海の混じりあったこの『異邦人街』という区画がそれなりに気に入っていた。
此処は退屈することがない、今のところは。

「狼さんに、あっちはトカゲかしら? あれは、オークというのよね? 
 えぇ、混ざり合った海というのは、たくさんのものが見れて退屈しないわ。
 そうでしょう? 彷徨の貴方。」

中空を見つめ、此処ではない何処かにいる誰かに話しかけた。

雨見風菜 > 他人の死体を目撃してしまった風菜。
そのまま自室に戻る気にも慣れず、ふらふらと異邦人街までやってきて。
可愛らしい少女を見つけた所に、声がかかる。

「そうですね、様々な種族の生き方を見ることが出来ますし」

少女は不思議な雰囲気で。
本当に自分に声をかけられたのか不安になりながら。

アルヴィナ・コトフ > 「あら……? ふふ。そう、人はあれを種族と呼ぶの?
 私は、彷徨の彼は可能性と呼んでいたわ?
 あったかもしれない、一つのカタチ。
 本来出会わないはずの可能性たちが、道に迷い込んだかのように同居している。
 この海は、えぇ、本当に不思議ね。」

どこか、覇気がないとでもいうべきか、無気力というべきか、少女は自分の言葉に反応した。
それは彼女に向けた言葉ではなかったけれど、それもまた縁というのかもしれない。
アルヴィナは少女の様子に少し興味がわいた。

「こんにちわ、怯える貴女。 なにか、不安なことでもあったのかしら。 それとも、怖いことでもあったのかしら。
 私はアルヴィナ、アルヴィナ・コトフ。
 安心して、怯える貴女、私は貴方を微睡から見ているだけ、壊したりしないわ?」

自分は敵ではない、という表現はこれであっているだろうか。
学んだばかりの笑顔という表情を使って話を繋ぐ。
なにか、別の事柄に気を取られている少女は何と返すだろう。
また、妙に警戒されなければいいのだけれど。

雨見風菜 > 「あったかもしれない、一つのカタチ。
 出会わないはずの可能性……そうですね、もしかしたらそうだったのかもしれません」

反応された。
ならば自分の返答はおかしなものではなかったと安堵して。
続く言葉に、内心を見透かされてるのかと思いつつこちらも微笑みで返す。

「私は雨見風菜といいます。
 不安なこと……そうですね、人の死体を見ました」

おそらく、彼女はきっと尋常のものではないだろう。
それでも、気を使ってくれているような気はする。

アルヴィナ・コトフ > 「あぁ……。 そう、風菜は人間の壊れる瞬間を見たのね?
 私は、えぇ。 私はそれも美しいと思うけれど、感じ方は『人』それぞれ、というものね。
 それで元気がないのかしら。 
 あぁ、そうね? きっと、『怖い』という感情が、貴方の中に渦巻いている。
 そういう事?」

風菜と名乗った少女は死を視たという。
微睡から見るそれは、私にとっては芸術のように美しく見えるけれど。
彼女にとってはそうではないのでしょう、多くの生あるものにとって、『終わり』というものは恐ろしいものであるということぐらいは知っている。

「でも、不思議ね? 風菜にとってそれは、大事な何かだったのかしら?
 宝物だったのかしら、欠かせない何かだった?
 そうでないなら、何か気にする理由が、あるの?」

概念として、理解することは出来る。
しかし、その感情が飛来するメカニズムまでは分からない。
分からないことは知りたい、ならば目の前にいる少女がきっと答えてくれるはず。

雨見風菜 > 「『怖い』。
 きっと、それもあるんだと思います」

けれども、それだけじゃない。
焦がれてもいる。
けれども、それだけじゃない……もっと別の、何かが。
自分でも、よくわからない。

「いえ、いいえ。
 それは通りがかりで見つけた、知らない人でした」

それが見知っている人ならば。
悲しみが見抜かれているだろう。

「気にする理由もありません。
 きっと、普通の人が抱くものではないと思います」

死んだ彼女の事情は知らない。
それとは別に、何か。
何かが私の中に渦巻いている。

アルヴィナ・コトフ > 「普通の人は、抱かないもの?
 怖さとも違う。
 あぁ、そうね。 それならいくつか推測ならできるわ。」

アルヴィナは少し楽し気に、推理をするのが楽しい子供の様に口を開く。

「ねぇ風菜? 怖いと同居する感情っていくつかあるというわ?
 でもあなたの場合、そうね、悲しみじゃないなら。
 えぇ、エネルギーにあふれているというわけじゃないなら。」

「思い浮かぶのは、羨ましさ?
 えぇ、楽しいかったら笑顔になるし、怒っているなら目はもっとつり上がるでしょう?
 悲しみ、というのもあり得るけれど、ふふ、他人にそれは余りするものじゃないものね。」

くすくすと、あぁ、これは面白いものを見つけたというように。

「ねぇ風菜? あなた、死を体験したいの? それとも、死を与えたいの?
 つまらない答えになるけど、助けたいでも私は構わないわ?」

アルヴィナは無邪気にのぞき込む。
そこに悪意も善意もない、あるのはただ興味と、悦楽。

「無力感、という可能性もあるものね?」
 

雨見風菜 > ずけずけと言われる中、やはり何かちょっと違う気がして。
でも、問われたことには答えよう。

「体験したい方ですね。
 でも、命は一つだけですから。
 死んでしまえば、それでおしまいですから、私はそれが怖いのです」

自分で自分の落ち着きように驚いている。
本当に死んでしまえばそれで終わりなのだろうか?
何を馬鹿なことを、私の異能は不死の異能ではないのに。

「私の異能は、他人を助けるための力でした。
 でも……無力感、とはなにか違うような気がするんです」

アルヴィナ・コトフ > 「体験したいのに、怖いの? ふぅん、この世界の人間は不思議な感性を持っているのね。」

なぁんだ、という風に笑いながら。
まぁそれでもいいわと小さい歩幅で近づいてくる。

「怖いという割に、えぇ、すごく静か。
 まるで終わりを感じることができていないみたいな。
 何処か欠けてしまったの?
 ううん、でもそういうわけでもないのよねきっと。」

首をかしげて、彼女の感情の不可思議を考える。
目の前の少女の感覚を覚えれば少しは人間に近づけるかもしれない。
そうすればきっと、この微睡が与える楽しみはもっと増えるはずだから。

「助けるための力? 助けるのに、無力感がないの?
 それはもう助ける気がなかったともいえるけれど。
 うーん、そうね。 助ける、とは少し違うけれど。
 ふふ、そういえば、あの子が昔面白いことをしていたかしら。」

今でも遠い彷徨にいる、もしかしたらこの海にも紛れ込んでいるかもしれない。
無貌をふと思い出して。

「終わりじゃないなら、えぇ、私の知っている子は、複製を作って遊んでいたわ?
 泥人形、スワンプマン、あなた、知っているかしら?」

別の海では、そんな呼び方をされていたのを思い出す。
あれは、世界を塗り替えてしまうから好きではないけれど。

雨見風菜 > 「……正直な所、私にもわかりません」

きっと欠けては居ないのだろうけど。
彼女はそう言うが、自分自身その言葉が気になって仕方がない。

「助ける気がなかった。
 いえ、助けを求められるのならば助けてあげたいのですが」

あの彼女からは、それを感じ取ることは出来なかった。

「複製、スワンプマン……
 ある人物の記憶を持った複製体は、果たして本人と言えるのか、ですね」

捜し物に、一歩近づいたような感覚。

アルヴィナ・コトフ >  
「えぇ、えぇ。 良く知っているわね!
 貴方はとても勤勉なのね風菜?
 貴方はどう思うかしら、そう例えば、あなたの家族が死んだとするわ?
 貴方はどう思うのかしら、悲しい? 苦しい?
 あぁ、そうね、恋人でもいいわ!
 大事な人、知り合いの人。
 その誰かが『壊れて』でも代わりを作れるの!
 えぇ、記憶も、人格もそのままよ?
 でも確実にその子は死んで、死体もすぐそばにあるわ?
 魂っていう概念がこの海にはあるのよね?
 えぇ、でもそれだけは違うものよ?
 あなた、それを作れたとして、貴方はどう思うの?」

「あなたは、お人形遊び、好きな人かしら?」

目の前に近づいて、胡乱などこを見つめているのかわからない瞳で、風菜をみつめる。
焦点の無い瞳、底の無い暗闇に引き込まれるような、悪意のない狂気が風菜を覗く。

雨見風菜 > 捲し立てられる。
でも、それはまるで、スポンジに水が染み込むように風菜の心に入り込んでくる。
目を瞑って考えて。

「わかりません」

そう答える。

「きっとそれは単なる自己満足でしか無いのでしょう。
 でも、それが出来るならやってしまうのが人間です。
 ……きっと、今何を言ってもその場その時その状況になれば、そうする選択肢を取るのかもしれません」

悪意のない狂気を覗き込む。
もしかしたら私は──私も、狂気に飲み込まれているのかもしれないと思いつつ。

「でも私は。
 私一人ではきっと出来ないでしょう」

捜し物に一歩近づいたような気がした。

アルヴィナ・コトフ >  
「ふふ、そう、そうなのね。」

あはは、と楽しそうに、嬉しそうにくるくるとドレスを翻しながらアルヴィナは笑って。

「風菜、あなた。 えぇ、貴方は、壊れているのね! 欠けているのね?
 だってあなた。
 死に嫌悪を持っていないのだもの。」

アルヴィナはそう言って笑う。
私と同じね?と、友人を見つけたかのように、手を取って。

「終わりを畏れないのなら、それはもう生き物とは違うものよ?
 えぇ、死なない者もこの世界にはいるけれど。
 貴方はそうじゃないのでしょう?
 それでも怖くない、なんて。
 あなた、壊れているわ。」

「でも勘違いしないで? 私はそういうのも、好きよ。」

だってそれも、可能性というカタチに過ぎないのだから。

雨見風菜 > ああ、やはり。
私は壊れているのか。
すうっと納得できた自分が居た。

「でも、やっぱり死ぬのは怖いですよ。
 そして、知り合いが死ねば悲しむでしょう。
 それでも、私は壊れている……ええ、しっくり来ます」

でも、捜し物の方向を見失った気がした。
まあ、のんびりと探せばいいか。

アルヴィナ・コトフ >  
「ふふ、えぇ、ならそれが答えではないのね。
 不思議な貴女、壊れた貴方。
 答えを知らないなら、もっと触れるしかないわ
 死に、終わりに、自分の壊れた場所を探すしかないの。
 貴方がそれを望むなら、だけれど。」

あぁ、楽しかったと、少女は少し離れてくすりと笑う。
理解はできなかったけれど、真実には届かなかったけれど。
これで終わりというわけでもないのだから。

「あぁ、壊れた貴方。 あなた、とっても美しいわ。
 まるで砕けた宝石の原石のように、煌めくの。」

「ねぇ、風菜。壊れた貴方? またお話してくれるかしら?
 答えが出たら、教えてもらえるかしら。
 あぁ、ふふ、答えを出せなくて、ごめんなさいね?」

雨見風菜 > 彼女は軽く言うが。
果たして、それは一体何処なのだろうか。

「自分の壊れた場所……」

心当たりが思い浮かばない。

「ふふ、ありがとうございます。
 ええ、また会えたらお話しましょう、アルヴィナちゃん。
 答えが出せるか、自信はありませんが……私は、有意義であったとは思いますよ」

そう言って、笑顔を向ける。
探しものを探し出すには、まだかかりそうだ。

アルヴィナ・コトフ >  
「えぇ、えぇ。 それはきっと素敵な事ね。
 でも風菜? 答えは必ずしも必要ではないわ。
 答えなんて、後からついてくるときもあるのだから。」

アルヴィナは笑って、カーテシーを風菜に向けた。
それは微睡に彩をくれた彼女に向かっての敬意。

「それではおやすみなさい、綺麗な貴女。
 微睡の縁に、また交わることがあったのなら、お話ししましょうね。」

最後に微笑んで、ドレスを翻して振り向くと最初から何もなかったかのように消えてしまう。
アルヴィナがそこにいたと証明できるのは、風菜の記憶だけ。
微睡の中に、少女は還ってゆく。

雨見風菜 > 何もなかったかのように消えた彼女を見送り。

「そうですね、そういうこともあるでしょう。
 それでは、また会いましょう、アルヴィナちゃん」

そうして、風菜もまたその場を後にしたのだった。

ご案内:「異邦人街」から雨見風菜さんが去りました。
ご案内:「異邦人街」からアルヴィナ・コトフさんが去りました。