2020/09/09 のログ
ご案内:「異邦人街」に山本 英治さんが現れました。
山本 英治 >  
「ああ、そこなナイスガイ。すいません、この人見てなぁい?」
「ちょっと写真見るくらいイイじゃん?」
「あ、知らない? どうも……」

今日も写真を見せながらシスター・マルレーネの行方を探す。
今は風紀の仕事じゃないので腕章は外している。

ああ、情報がない。彼女の足跡は見つからない。
どこに行っちまったんだ、マリーさん。
アンタ、こんな手のかかる弟分を置いて帰っちまったとか言わないだろうな…

ぐしぐしとアフロを弄って深く重い溜息。

ご案内:「異邦人街」に水無月 沙羅さんが現れました。
水無月 沙羅 >  
「山本先輩、こんなところに居らっしゃいましたか。」

遠くから見えた人影、わかりやすいシルエットに駆け寄った。
大きなアフロがトレードマークの風紀委員の先輩は、わかりやすく聞き込み調査をしている様だった。
聞こえるに、シスター・マルレーネを探しているのだろう。
予想通り、というか、聞いた通りと言うべきか。

「あの、少しお時間よろしいですか?」

情報を共有するべく、自分の中に在るモノを生産するべく探していたその人を見つけられたことにひとまず安堵しながら、ぜぇぜぇと呼吸を乱している。
普段トレーニングでしているランニングよりも体力を消耗しているのは、きっと心情的な物によるものだろうか。

少しだけ、怯えるようにその先輩を見上げた。
自分のしたことに罪悪感があり、それを責め立てられることを覚悟しているからだ。

山本 英治 >  
「ん? ああ、沙羅ちゃん」

話しかけられると彼女の様子を見て大仰に肩を竦めて。
呼吸が乱れているのを落ち着けるように笑って見せた。

「どうしたんだいそんなに息を切らして?」

隣の自販機でミネラルウォーターを買って放る。
前にもこんなことしてもらったっけ。

「俺、今日非番だからさ。そりゃ聞けるよ、話は」

鼻の頭を擦って。何の話だろう。

水無月 沙羅 >  
「えぇ、山本先輩を、探していました。」

多きく深呼吸をして、とりあえず息を整える。
放られたミネラルウォーターを受け取って一息に半分ほど飲み干し、噴き出している汗を腕で拭う。
一先ずは、一番最初にするべきことは決まっていた。

「先日は、本当にすみませんでした!!
 大けがをさせてしまって、お見舞いにも行かずに。
 大変ご迷惑をおかけして。」

公衆の面前という事も忘れて、大きく頭を下げた。
それはもう90度、直角に体が曲がるぐらいの勢いで。

「その、当時の事は詳しく覚えてはいなくて。
 当時の記録映像で、先輩にしたことは大方把握しています。
 それなのに、その、庇っていただいて。
 ありがとうございました。」

あの時の、スラムで起きていたあの事件を清算しない事には前に進めなかった。

山本 英治 >  
「俺を? なんでまた……」

仕事頼みに来たのかな?
非番だけど人探ししながらできる仕事だったら聞けるかも……
と、思っていたら。相手が頭を下げた。

「え? いや、だってあれ椿にやられたことで……」
「沙羅ちゃんじゃないのでは………」

しかし、相手の言葉はどこまでも真剣で。
心を打たれる謝罪というのは、決して茶化してはいけない。
居住まいを正して、言う。

「俺は沙羅ちゃんを守りたかった。その結果、負傷したことは苦しかったが」
「一切後悔はしていない」

「……神代先輩に心を守ってもらったんだよな?」
「だったら、俺にとっては成功なんだ」
「反省点はある。怪我をしてレディに自責の念を覚えさせたことだ」
「だから、その気持ちを軽くするために言おう」

「許すッ」

ってね、とへにゃりと顔を緩くして笑った。

水無月 沙羅 >  
「……ありがとう、ございます。」

彼は許してくれるだろう、そのこと自体は分かっている。
しかし、自分を許せるかと言うとそれは別の話だ。
これから一生、この痛みを自分は抱えていく。
罪を忘れず、戒めとして抱えて行く。
それは、同じことを繰り返さないという誓いを果たすには必要なことだからだ。

「あの力の事、『椿』という人格の事は、これからゆっくり調べて行こうと思います。
 もうすこし、時間はかかると思いますけど、いつかきちんと話します。
 どうしてあの人格が産まれたのかも。」

彼にはその資格がある。

自分の気持ちを軽くする、その言葉をくれた彼の為に、やわらかにに笑顔で返す。
許すと言われたことを、何時までも目の前で悔やみ続けるのは失礼だろう。

「……では、この話はひとまずおしまいに。
 えっと、探していた理由は別件なんです。」

持ち歩いていた、風紀の仕事でよく使う茶色の皮のボストンバックから束になっている書類を取り出した。
それを、山本先輩に向かって差し出す。

「マルレーネさんのこと、理央さんから聞きました。
 私に出来る事を、出来る範囲でしてきました。
 読んでいただければ、おそらく分かると思います。」

そういって彼に渡したのは、シスター・マルレーネが何者かに拉致された可能性を示唆するいくつかの、情報。
『ディープブルー』に関する情報と、彼らに関するかこの事件をまとめたほぼすべての過去資料。
そして、ディープブルーの過去の違反行為を証拠とした摘発するための書類だった。

山本 英治 >  
「なぁ、沙羅ちゃん。俺が気にしてないって言ってるんなら」
「気にしすぎないのも大事だぜ……言っても、今は無理かも知れないけど…」

椿。そして黄金の瞳のこと。
まだわからないことは多いけど。
ただ、彼女と神代先輩の幸せを願う。

俺の感傷とは無関係に話題の転換は行われる。
書類を読んで顔を顰める。

「ディープブルーか……俺もこのセンには辿り着いた」
「だが異邦人や二級学生の人身売買をしている『黒倒福』や」
「スナッフビデオを金持ちに流してる『抹殺者たち(ニゲイターズ)』」
「異教者の儀式にかけた後の殺人を目的とした『ネガ・クルセイド』」

「どれも怪しいと俺は睨んでる」
「いざとなったら全部、潰すくらいに思ってはいるが……」
「ううむ……」

書類を見る。よく調べられている。確かに、こいつらなら。
そう思うと、表情が険しくなる。

水無月 沙羅 >  
「確かに、人身売買や裏の何かに巻き込まれたという可能性は否定しきれません。
 私もその可能性をいくつか視野にはいれています。
 ですが、今回の事件、『あまりに証拠が無さすぎる』んです。」

そこが何よりひっかかっていた、もし彼女が本当にいなくなっているのだとしたら、それは間違いなく手慣れた何者かの犯行で、異能を用いたとしてもそれは簡単なことではない。
一介の違反生に出来る事とは考えにくかった。

「それに少し妙だと思っているんです。
 シスター・マルレーネの失踪と、ディープ・ブルーが活発に活動し始めた時期が一致すること。
 偶然にしては出来過ぎているとも言えますが。
 ……必然にしても、今までの彼らからは考えにくい。
 まるで、『自分たちがやっています』とでも言いたいかの様に、視えませんか?」

今まで、機密性を徹底し、事故による壊滅するまで表に出る事の無かった彼らが、なぜ今になって目立つ行動を始めたのか。
そこがあまりにも、『不自然』に感じていた。

「まるで、此処に彼女はいると、意図的に伝えているように思えてならないんです。
 裏で彼の糸を引いている誰かが居る、そう言っているようで。
 ……確証はありません、証拠もありません。
 かといって、このままやみくもに探すのも時間の浪費を招くだけのように思えます。」

「だから、"虎穴"に飛び込んでみませんか?
 私に、賭けてみてはくれませんか?」

真剣なまなざしで、山本先輩を見上げた。

山本 英治 >  
「証拠が……無さすぎる?」

そうだ。手がかりがないから足を使っている。
足を使っているから可能性が多岐に渡っているきらいはある。
彼女の発想はそれらを逆手に取ったものだ。

チェス盤をひっくり返した結果、見えてくるもの。
相手の思考から推察する、それ。

「確かに不自然だ………」
「俺たちがやっていますと言わんばかりの…」
「残党が今になって動くのも妙だぜ」

追えるか。追えるだろうか、俺に。
迷う暇も、まごついている余裕もない。
相手の目を見る。

「信じるぜ、沙羅ちゃん」

書類を手に、意思ある瞳はまっすぐに彼女の双眸を射抜く。

「ディープブルーを探ってみる」
「ありがとう沙羅ちゃん、こいつは情報提供への感謝だ」

「絶対にマリーさんを救出するぜ…!」

水無月 沙羅 > 「……。」

こくりと無言で頷く。
自分に出来る事はこの程度しかない。
脚を使う彼らに変わって、書類に埋もれてきた経験と、人より少しは働くこの脳を使うぐらいだ。

「理央さんにも情報は伝えてあります、葵さんも、いざというときには手伝ってくれるとおっしゃっていました。
 私も、現場には一応、駆けつけられるように準備をします。
 まずは理央さんと合流して、ディープブルー発見に努めてください。
 私も、彼らを見つけられるように方々に当たってみます。」

これまでの、いくつもの事件や出合って来た人々に、その人影を訪ねて回る。
必要とあれば協力も要請するかもしれない。
言うほど簡単なことではないし、少なくとも関係のない一般学生には頼れない。
細い、細い糸を辿っていくしかない。

「マルレーネさんは、私の大切な人たちの恩人でもあるんです。
 どうか、お願いします。」

謝罪ではなく、今度は激励と懇願を込めて。
ゆっくりと頭を下げた。

よく見れば、眼には隈ができているし、服には皺が寄っていて、随分長い間その書類の為に時間を尽くしているのが見て取れる。
沙羅も、彼女の為に一所懸命に働いていたのだと、山本にもわかるだろうか。

山本 英治 >  
「神代先輩に日下先輩か、ありがてぇ……百人力だ」

何とかなる。光明は見えた。
絶対にマリーさんを助けられる。
そう信じるんだ、山本英治。

「そこに沙羅ちゃんも含まれるなら尚更さ」

くしゃり、と表情を歪めるように笑って。
厚い胸板を叩いて力強く答える。

「任された! 俺には俺のできることが、沙羅ちゃんには沙羅ちゃんのできることが絶対にある!」

少女の肩に手を置いて。

「キミの一生懸命はひと目でわかった」
「その気持ちが今は何より嬉しい……俺達で」

「絶対にマリーさんを救出しよう」

そう力強く答えて、書類の要点を携帯デバイスでスキャンし。
書類を返して踵を返す。

ディープブルー。その名を刻んで。

水無月 沙羅 > 「……はい。
 健闘を、お祈りしてます。」

頭を上げて、彼が立ち去るのを見送った。
もう少し自分も働かなくてはいけない。

まぁしかしその前に。
心配性の母親の為に一度自宅に戻るとしようか。

彼女の日常を守るのも、また風紀としての務めだろう。

ご案内:「異邦人街」から水無月 沙羅さんが去りました。
ご案内:「異邦人街」から山本 英治さんが去りました。