2020/09/11 のログ
ご案内:「異邦人街」にレオさんが現れました。
> 『――――――』
『――、―――?』
『――――――――――――』
『――!!―――……――――』

レオ > 何か、騒がしいな…
まだ聞こえるのか

レオ > 大丈夫、忘れてないよ。
忘れないから。

覚えているから、大丈夫だよ。

でも、少しだけ…もう少しだけ、眠らせてくれないかな。

> 「―――…から、………だろ!」
「でも…‥‥‥、……が…………」
「…………」
「風………服……、………‥‥…うが!」
「それも…、‥‥‥‥‥」

レオ > ………?

ちがう、これは…彼らの声じゃない……?
違う誰かの声だ

…ここ、どこだ…?
今、何時だろう…


……あぁ、そうか
急に頭が痛くなって、落第街で倒れて…
持流先輩を斬りそうになって…
あのままとにかく歩いて……

それから、どうしたんだっけ
そこから先が思い出せない………

レオ > …目が見えるようになってきた。

まだ視界がぼやける……
頭が少し痛い。



風吹いてるな。
ちょっと冷たいし、耳にノイズがかかったような……、……違う、これ、雨の音か。
濡れた感触がする。
……外、かな。

まずいな、風邪ひくかも。
はやく起きて、体、乾かさないと。
体、重いな……
でも、起きないとな。

レオ > 雨の降りしきる異邦人街に、傘を差した異形、亜人たちがぽつぽつと一点を訝し気に見て話をしている。

視線の先には、一人の人間がいた。
まだ早朝、それも雨だというのにそこにいた人間は、鞄から飛び出た荷物と共に、地面に倒れ込んでいた。


亜人たちがその姿に近づかず、何もしなかったのは、いつもの事だからという訳でも、ましてや善意でもない。
その人間が、常世学園風紀委員会の制服を着ていたからだ。

皆、一様にその人間をどうするか決めあぐねているようで、少し遠巻きから見ていた。


「―――ん、ん……」

そうしていると、倒れていた人間がゆっくりと、起き上がる。

レオ > 「ここは……」

起き上がった人間は、周りを見て状況を確認しようとする。
視界に入るのは、多種多様な建造物。
まるで西洋、東洋、アジア、中東…その他諸々が雑多に混ざり合ったかのような奇妙な街。

そしてそこにいる、街と同じかそれ以上に多種多様な『住人』達。
人間に比較的近いものもいれば、怪物と見まがうような歪な外見をした、自分を見る『異形』。


何処だ、ここは…?
異世界に迷い込んだみたいな感覚。
でも、怪異の影響という訳でも、ない。それなら、何となく感覚で分かる。
だから、ここは現実にある場所の筈。

「と、あっ…ちゃー…」

そこまで考えて、自分の身にようやく気が付く。
服はずぶぬれ、鞄からは自分の所持品が道に散乱していた。
鞄の中身と道に落ちてる荷物を確認しながら回収して、少し落胆する。




「財布、なくなってる…」

当然だ、こんな所で寝ていたんだから。
むしろ財布だけでよかった。学生証もある。
衣類も、濡れてるけどはぎ取られていない。
右手の手首を確認する。

…よかった、無くなってない。
手首に結び付けられていた水色の、ボロボロの布切れを見て、ほっと安堵した。


とはいえ、ここは結局何処だろうか…

レオ > 時間を確認する。
午前6時28分。
朝までここで寝ていたのか……。
空は厚い雲で覆われているせいで、まだ暗い。

…朝まで、それも雨が降ってるのに寝続けるなんて、我ながら図太いな。
そんなに効いたのだろうか、昨日の事。
……ここ最近思い出す暇がなかったせいもあるか。

「……くしゅんっ」

体が冷えてる。早く温かい所にいこう。
できるならシャワーを浴びて、服を着替えないと。
学校からここまで、どのくらいだろう。

靴は脱げてない。後でソールの下を確認しておこう。
確か5000円くらい隠してた筈だ。

そう思いながら、見知らぬ街を歩く。
兎に角駅に行ければ、寮に戻れる筈だ。

レオ > 道が分からないなら、人に聞くか案内板があれば楽なのだけど…
案内板は見つからない。
人は……普段だったら、自分から近づいて来ていない、死の気配のしない人に話しかけるけど……異形、亜人っていうのかな…ばっかりで、少し判断がつかない。

何より……僕が珍しいのか、それとも別の理由があるのか。
どうにも全員あまり近づきたくなさそうな様子だ。

「…参ったな」

騒ぎになるのは嫌だし、とりあえず…案内板を探そう。

レオ > 「……、っ、と……」

体が重い。
服が水を吸った分もあるが、それを差し引いても鉛かなにかになった気分だ。
妙に寒い…いや、暑いのか?
なんだかよく分からない感じだ。目が回る。

あぁ……これは、風邪、引いたかも。

早く体を拭かないとな。


当てもなく、おぼつかない足取りで人間は歩き続ける。

ご案内:「異邦人街」に伊伏さんが現れました。
伊伏 >  
まだ寝ている者もいるであろうこの時間帯。
雨の中をまばらに、モザイク状に行きかう異人・亜人・人間の中から、一つの傘がレオの方へ寄っていった。
色のついた大きな丸眼鏡をかけた青年だ。

早朝から雨を楽しむために異邦人街の薄暗い景色を眺め歩いていたのだが、風紀委員にぶつかるとは思わなかった。
こちらはあまり風紀委員には近寄りたくない人種なので、放っておこうかなと、最初は見て見ぬふりをしていた――のだが。


「おい」


なにしてんだとばかりに、ぶっきらぼうな声がレオにかかった。

レオ > 「――――」

声をかけられたことに遅れて気が付く。
普段ならもう少し人からのアクションに敏感だが、雨に濡れ体力を喪った青年にそんな余裕はなかった。
ゆっくりと振り向いて、そちらを見る。
よく見えない。


「―――あぁ、すみ…ません。
 すぐに……立ち去り、ますから」

顔は赤く、目はぼんやりとしている。
傘を差してすらいない青年はずぶ濡れで、水が青年を伝って落ちる。

「寮…戻ろう、思って………
 すみません‥‥…ここ、どこです……か?」

そうだ、道を確認しなくちゃ。
ぼんやりした頭で思い出したように聞く。

伊伏 >  
素人目に見ても、相手が弱っているのは理解出来た。
ちらっとレオの全身に視線を走らせたが、怪我があるようにも見えない。
どっかで大きな事件が続いているとも耳に入っていない。となれば、眼の前の風紀委員が単純にポカをやらかしたのか?

「寮?ここは異邦人街だぞ。寮があるような区は、もっとずっとあっちじゃないか。
 そんなびしょびしょのまま、タクシーでも捕まえるつもりかよ」

青年は傘を寄せながら、ずぶ濡れの相手の腕を掴んだ。
どうせろくな抵抗も無いだろうと、シャッターのしまった軒先まで引きずっていくつもりで。

レオ > 「いほうじんがい……」

回らない頭でそのワードを巡らせる。
いほうじんがい 異邦人街…
そういえば、落第街の北に、異邦人の住む居住区があるんだっけ……
そうか、落第街を出て、そこに迷い込んで、そこで気を喪ったのか。
なんとなく、理解した。

「えき、までいけば……どうにかなる、かなって……
 
 ―――と」

腕を掴まれる。
普段なら相手を見て必要であれば対処する。
だが今は、そんな力はない。力が出ない。
捕まれた手は濡れているのもあって、ひどく冷たい。


掴まれたまま、されるがままに連れていかれる―――

伊伏 >  
歩く途中、その冷たさにギョッとして軽く振り返った。
顔が赤いのに冷たいとなれば、見た目通りの人間ならば…よろしくはない。決して。

「駅ったってキミさぁ…その様子じゃあちょっと雨に濡れただけじゃ、済まないんじゃないのか?」」

相手を屋根の下まで引っ張りこみ、傘を片手で畳んで横に放った。
とはいえ、自分が分厚いタオルを持っているわけでもない。
とりあえず上着ぐらいは脱いで絞れと促しながら、問いかけを続ける。

「人間か?薬にアレルギーは?」

自分の胸ポケットを無意識に触り、こちらではないなと腰の方に手を伸ばす。
小さな革のウェストバッグをパチパチ鳴らしながら、内容を確かめ、小瓶を一つ取り出した。

レオ > 「ん…っ、ぁ…」

屋根まで引っ張り込まれる。
足元がおぼつかないのか、ふらふらとそのまま壁に寄り掛かるだろう。

迷惑かけてるな……
そう思いながら、言われた通り上着を脱ぎ、びちゃびちゃに濡れたシャツとズボンだけになる。
腕に力が入らないが、上着を絞るくらいは、出来る。

「…にんげん、です。アレルギーは…特に
 ……」

ぼんやりと返事をしながら、出された小瓶を見る。
薬……?………流石に、言われたままに飲む訳には、いかないな。
少しだけ、ちゃんと薬を見た。

青年には、危険…特に死に直結するようなものを察知することのできる特殊な感覚がある。
それが危険物、毒の類であるなら、視界、聴覚、嗅覚、感触がそれを察知する。
それは朧気な意識でも変わらない。

善意を信用できない訳ではないが、念のため。

伊伏 >  
「無いならいい」

青年が中身を透かす時、チャカっと錠剤がガラスを叩く音がする。
どうやら、ただの解熱剤らしい。大量に飲めば、薬とて毒となるから死を見る事はあるかもしれないが。
レオの感覚にそれが引っかかるかは、分からない。

水は持ってないがお茶のボトルは持ってたかなと、荷物も確認していたものの。
力のない上着を絞った音に、なさけない眉のしかめ方をした。

「解熱剤をやろうと思ったんだが、その上着をきちんと絞るのが先だな。
 …いや、絞るよりは能力使っちまったほうが早いかな」

薬の瓶をポケットへ入れ直し、眼鏡を外す。
ハシバミ色の眼で相手を眺め、まあいいかと軽く手に力を込めた。
それから、この青年は――レオの事を自分の腕の中に収めようとしている。

軽い熱を感じる手が、ふっとそちらに伸ばされた。

レオ > 「―――」

死の気配はしない。ふつうの薬だ。
それが分かると、そうか……と服を絞る。
服に沁み込まれた水が、行き場を失い地面へと落ちていく。
…あまり絞れてはいない。

そうしてると青年に見かねられたのか、手を伸ばされる。

「―――?……ぁ」

心地よい熱さ。身に染みる。
冷えた体がゆっくりと熱を取り戻していくのを感じる。
冷たい、死んだような体に、体温が戻ってくる。

「……あったかい、です」

真っ赤な顔で少し微笑んで、腰を落とした。
立ち続けるとフラフラする。
普段なら大丈夫と言うところなのだが、体が動かない。去ろうとしても、引き留められるだろうし、しばらくここにいる事にした。

「…すみません、わざわざ……
 …この街の人……です、か?」

伊伏 >  
「いや、感動的な行動ではないから勘違いはナシだぞ」

青年が異能を発した。青白い火がぽつぽつと宙に咲き、足元へ落ちる。
落ちた火は風に巻かれ消え、熱だけが青年に戻っていく。
その熱は抱きこんだレオにも与えられ、風魔術がそれを補い、熱を巻き上げ水を払い――
――ありていに言えば、人間乾燥機である。

徐々に熱風が雨水でぐっしょりの制服を乾かし、肌と布の間に柔らかな熱を残す。
1分もかからずに、人間乾燥機は終了する。対価は、青年が背中に汗をかくくらいか。


「これでちったぁマシになったか?後で服が焦げてたらごめんな。弁償しねーけど。
 それと、俺は異邦人街の住民じゃない。キミが授業に出るなら、そのうち学園の方で会うだろ」

レオ > 火と風が青年の濡れた服を乾かす。
火…は、異能かな。魔力を感じないし。
風は……魔法だ。魔力を感じる。
火の異能と風の魔法を、応用してるのか…器用な人だ。

服が乾いて、体温が奪われなくなった事で幾分か体が楽になる。
とはいえ既に冷えて免疫が落ちた体がすぐに戻る訳でもなく、頭は未だにぼーっとする。

「いえ……ありがとう、ございます。
 大分楽に…なりました。……そっか、がくえんの……」

学園の生徒と言われて、じゃあ何で朝からこんなところに?と思ったが、痛む頭がすぐにそれをかき消してしまった。
そのまま暫く、温風の温もりに身をゆだねる。

「…いえ、十分助かってますから、これ以上おせわになる訳にも…いきませんから。
 ……レオ・スプリッグス・ウイットフォード‥と、いいます。あなたは…?」

伊伏 >  
背中がじっとりと気持ちが悪い。
自分を乾かす分には冷風で良いので、相手を解放した。
また少し、風の魔術が通っていく。レオの事は撫でず、青年だけを撫でて行く。
 
小瓶をポケットから出して、中の錠剤をフタへ転がした。

「…………」

この後は薬を与えて、さっさと駅へ置いていけば良いと思っていたのだが。
名乗られてしまい、これはどうしようかなと口がへの字になる。

素直に名乗っておいた方が一般生徒らしくはあるだろが、風紀委員に名前を覚えられてもな。
いや、それを言ってしまったら、こうして手を出してしまった事が失態なのだ。
相手もまさか、自分が"薬"を持って歩いているとは思うまい。…思わない、よな?

青年は僅かに間を置いて、口を開いた。

「伊伏、伊伏 カオル。伊伏の方で良い。
 キミの名前はレオでいいのか?それともウイットフォード?」

そう聞きながら、薬とお茶のボトルを差し出した。
お茶の方は見る限り、口が開いている。飲んだ形跡はない。

レオ > 「レオ…って何時も、よばれてます。」

そう言いながら薬を受け取り、すみませんわざわざと言いながら口に含む。
薬の効果が出るのはもう少ししてからだ。

「…じゃあ、伊伏先輩…ですね。
 学園で会ったら…よろしく、おねがいします」

熱で火照った顔で、ふんわりと笑う。
相手が難しい顔をしてるのにも気づかず、ありがとうございます、と感謝しながら。

「……あんまり、ここにいるのも…ここの人達に、迷惑だと思うので……
 ……もう少ししたら、いきますね。
 本当…いろいろ、ありがとうございました」
 

伊伏 >  
「よく上の学年だって分かったな。1年?」

熱が出てるだろうに、よく表情を変えられるなとレオを僅かに見下ろす。

「もう少ししたら行くのは別にいいけどよ。
 またびしょ濡れんなって道を歩くつもりか、キミ。死にそうじゃん」

死にたがりなの?と眼が語っている。
携帯端末を取り出して、ぱちぱちとどこかに連絡を取りながら、半目をそちらに向ける


「金は?持ってんの?」

レオ > 「1年ですけど…まぁ…
 僕、この島にきて……まだにしゅうかんくらいなので…」

なので大体の相手は、先輩のようなものだ、と。
そういう事らしい。

「…大分楽になったから、大丈夫ですy……
 ?…えっと、あぁ……
 財布は……ぬすまれた、みたいですけど……一応」

と言いながら、靴を脱いでソールを外し、ちいさい密封袋に入れられた5千円札を取り出す。
いざという時、財布が盗まれても問題ないようにと常に入れている、保険袋だ。

伊伏 >  
「盗まれたのかよ、大丈夫かよ……っと、ああ、あんのね」

風紀委員だろという言葉が喉まで出かかったが、来島してまだ2週間と聞くと流石に頷くしかなかった。
所持金を分散させているのも、レオなりの保険だと理解できる。
まだヨタヨタのヒヨコ風紀員なら、そのうち事件の忙しさに巻き込まれて、
こちらの事もぽこっと忘れてくれるかもしれない。

「そのくらいあるなら問題ないな。
 傘はやるよ。俺は別に濡れても構わねーし…」

シャッター近くに放っていた傘を拾い上げ、レオにそれを押しつける。
普通のビニール傘だ。そこらへんで売っているような、ただのビニール傘。
レオが取りこぼそうが拒否しようが、傘はそこに置いてかれてしまうだろう。

自分が出せる最低限の善意は出せた。
こんな気まぐれはあまり起こすものでもない。静かに遊ぶなら、特に。


「じゃ、生きてたらどっかでな」