2020/09/23 のログ
ご案内:「異邦人街『桜之都』」に不凋花 ひぐれさんが現れました。
■不凋花 ひぐれ > 異邦人街の中でも、特に和に傾倒した区画がそこにはある。
こちら側の世界に近しいものの、異邦人故にその世界基準ではそれこそ現代である場所は、景観から現代性の一切を排除し、次代を逆行したような風景が広がっていた。
桜の季節には花見でにぎわう楼閣に続く道。紅葉の季節にほど近いそこは、背の低い木造の建物や瓦が敷き詰められた街並み。現代人からすれば博物館で展示されているような世界を、異邦の格好をした娘が歩く。
「………」
からんと下駄を鳴らし、腰元に着けた鈴が規則正しく鳴る。
通りには飛脚が走っていたり、お侍の格好をした警邏らしき人物が見回りをしている。
■不凋花 ひぐれ > 時代からしてここは江戸をイメージして作られたのか、生活様式のすべてはそこを基準としているらしい。
それでもこの景観に合わない式神使いが現れたり、戦に明け暮れる武者が現れたりするらしいのだが、すべてに対応していたのではキリがない。
特に時代に親和性があり、『自分』のような異国の装いをした人が闊歩していても好奇の目で見られることで済むこの土地は、ある種苦肉の策とも言えよう。
「……おむすびをひとつ」
腹を満たそうと通りで市を開いている店を覗き込む。稗と粟と玄米で作られた握り飯のにおいを嗅ぎつけて、そちらを注文。代金を支払うと、目が見えない自分の事を案じて団扇で冷ましてくれたそれをゆっくりと手に取る。
「……あむ」
白米のそれとは明らかに違う、ぷちぷちとした触感が面白い。
通りを歩きながらゆっくりとおむすびを食べる。
■不凋花 ひぐれ > 今日は風紀委員の活動を完全に停止して休日を満喫している。こちらに来る都合上、武器の類は所有せず、杖一本で足を運んでみたのだが、盲いた身でも存外一人で遊びに行くことはできるものだ。
特に異邦人街を歩く手前、分かりやすいように黒布を巻いて外出しているから、然程奇異の眼で見られる機会は少ない。
どうせならここの土地に合わせて虚無僧にでもなりきってみようとも思ったが。何軒か先に着付け屋もあったような気がするが、それなら綺麗なお着物でも着てみたいというもの。
「……んむ……あふ」
もそもそと小さな口で栗鼠のように小さく食む。大きな橋のかかった川の欄干に背を預けて、ほんの少し体を休める。
■不凋花 ひぐれ > 「ごくん……」
しばしおむすびを食べることに集中し、食べ終えたところで杖で地面を叩く。欄干を伝いながら、さらに休日を謳歌するために歩いて行くのだった。
ご案内:「異邦人街『桜之都』」から不凋花 ひぐれさんが去りました。