2020/09/26 のログ
ご案内:「Law order shadow『草葉の陰』」に****さんが現れました。
■ゴートン >
異邦人街エリアの一角。岩肌むき出しの荒野地帯。
異邦人ゴートンとその仲間は農作業に勤しんでいた。
彼等は地球人から見れば酷くやせ細っており、地球の空気に"適正がない"。
彼等にとって"酸素"は猛毒だった。
しかし、『門』によって飛ばされたゴートン一行は、此の島で生きる事を余儀なくされていた。
生活委員会と言う連中から差し出された専用のマスクの装着を余儀なくされ
厚手のフードの隙間から血走った眼が芽吹いた瑞々しい草葉を見ていた。
■ゴートン >
生きていく上で、此のテトラ状のマスクは必要不可欠だ。
酸素を吸わなければゴートンは死ぬことは無い。
だが、生きてはいけない。彼等は、自分たちの世界では、呼吸によって栄養を取っていた。
それにこの植物が必要だった。自分たちの世界では当たり前に生えていた名も無き草葉。
但し、この世界にとっては"猛毒"だ。空気を吸い込み、周囲に自分たちの"毒素(クウキ)"を撒き散らす。
生活委員会の連中は認可してくれはしなかった。
代用品も用意されたが、それでは"足りない"。
だからこうして、栽培する他は無かった。
「…………」
なんと、理不尽な話なのだろう。
自分たちの世界では、"当たり前"の事を、"生きる上で必要な事"をしているだけなのに
何故、こうもこそこそしなければならないのか。
理不尽が焦燥感を燻ぶらせ、草葉を埋める指に力が籠った。
■ゴートン >
「…………?」
ふと、足音が聞こえた。
目深に被ったフード姿。自分たちの同じ服装。
自分と同じ境遇の、同じ世界の異邦人……───────。
「……?」
……ではない、明らかに"体格が違う"。
■**** >
「───────くッせェなァ。こんな場所に妙なモン栽培しちゃッてさァ」
■**** >
フードを取り外した男は、明らかに異邦人ではなかった。
人相の悪く、目の下に濃い隈を残した地球人の男性。
上着を気だるそうに脱ぎ捨てれば、使い捨てマスクが付けられた口元を撫でた。
口元は見えずとも、その目元は酷く冷ややかにゴートンたちを見ていた。
「どーもォ……公安委員会……ッて、言葉通じるっけ?
まァいいか。とりあえず、ストップ。ストップね」
「御宅等さァ、何してくれてんの?これ、俺等の世界じゃァ、ヤバいモンでしょ。
要するに俺ってさ、此の島の秩序護ってんの。外でも仲間いるしさぁ、とりあえず指示に従ってくれる?」
軽薄な声が、辺りに響いた。
どよめく異邦人の群れに、男────東山 正治は肩を竦めた。
■**** >
異邦人達が何かを言っている。地球の言葉ではない。
恐らく、彼等の国の言葉。明らかに動揺の色が見える。
生活委員会からの情報によれば、翻訳魔術は使用済みであると報告されている。
なら、こっちの言葉が通じるならそれでいい。
マスクの下で薄ら笑いを浮かべたまま、東山は首を振った。
「通じてるんでしょ?とりあえず、さ。俺が来てる理由、何となくわかるよね?
ああ、そんな警戒してくれなくていいからさァ。ね、ちょーっと指示に従ってくれる?」
「別に取って食いやしねェよ。俺達も鬼じゃ──────」
軽薄な声を遮るように、重苦しい空気が周囲を包んだ。
メキメキと、異邦人の骨格が変わる音がする。
コートの裾から飛び出す鋭い爪。漂う敵意。
血走った眼に、正気は感じられない。
"生きるのに必死な目だ"。思わず、深い溜息を吐いた。
「──────此れだから、"侵略者"共は」
悪意を込めて、吐き捨てた。
■**** >
「最後通告だ。さっさとそれをしまって、俺の指示に従え」
そこに最早軽薄さも無い。
冷ややかな声が、秋風に乗る。
東山の声に、誰も彼も応えはしない。
……"知っていた"さ。
そんな"目"をしていれば、こうなる事は知っていた。
もう、なりふり構っていられないんだろう。
アイツ等はもう、生きる為なら何でもする。
生きるという行為は、もれなく他者の生命の上に成り立っている。
"そこに一切の例外は無い。生きる以上、誰もが同じ"。
「……やれやれ」
そう、例外は無い。
"目の前の侵略者にも、同じく適応される絶対の法律"。
東山の手には、いつの間には無地の本が握られていた。
■**** >
『塞翁の本<ブックオブメーカー>』
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『第375項目』
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「毒劇法違反及び違法武装により──────」
『──────白き去光<ホワイト・イレイザー>の刑を要求する』
その呼び声に応じるように、東山の視界が"白"に染まる。
全てを色を塗り潰す、白の閃光。破壊の力だけを持った、裁きの光。
まさにあっという間だった。"この本の法律を破った者に下される裁き"が
違反者たちの体を穿ち、あっという間に穴だらけにされてしまった。
血液さえ蒸発した。辺りに残るのは、肉片ばかり。
正しく、自分たちが生きるためにバイオテロを行おうとした異邦人は
その他大勢が生きるための糧として、この場に消えた。
「……馬鹿な連中だな」
そこに憐れみも悲哀もない。
侮蔑を以て吐き捨てた悪意を押し込めるように、煙草を咥えた。
■**** >
此の島の異邦人問題は山積みだ。
だが、"郷に入れば郷に従え"。出来る限りのサポートは幾らでもする。
当然、それが万全に成り得ない事だって知っている。
この様に、生きるにあたっての齟齬が発生する場合だってある。
東山にとって、それは"害獣駆除"と変わらない感覚だった。
「まぁ、因果応報ってお話さ」
最期の手は、差し伸べた。如何なる理由であろうと
此の島を土足で荒らすことは許されない。
手を取り合って生きれないなら、人の法律(イウコト)が聞けないなら
後に残るのは何方かだけだ。この世界は、酷く残酷だ。
咥えた煙草に火をつけて、白い煙を吐きだした。
■**** >
故に、誰にも知られることなく影に消えた生命があった。
草葉も残らず、後に残るは荒野のみ───────。
ご案内:「Law order shadow『草葉の陰』」から****さんが去りました。