2020/09/29 のログ
ご案内:「異邦人街喫茶店『ローズ・ロマネスク』」に山本 英治さんが現れました。
山本 英治 >  
ローズ・ロマネスク。

異邦人街にある古き佳き佇まいと形容するべき喫茶店。
喫茶店文化保存部という部活の部員である眼鏡の女性が店長をしている。
豆から厳選されたコーヒー、思わず微笑むような完璧な料理。

難点があるとすれば、可愛いものに目がない店主がアルバイトのヒメを着せかえ人形にしていることだ。

ご案内:「異邦人街喫茶店『ローズ・ロマネスク』」にヒメさんが現れました。
山本 英治 >  
店長とあれこれ談話をしながら。
ヒメを待つ。

ヒメは異邦人だ。強大な力を持つ龍でもある。
来た時にこの世界のルールがわからず、人の飼馬を食べてしまうというアクシデントを発生させた。
そして三者面談を行ない、二人で謝った。
こうしてヒメはこの世界でアクティブに生きていく覚悟をした。

と、勝手に俺は思っている。

「コーヒー美味いすね、さすがですよ吉田さん」

あ、今のは店長の吉田灼光(よしだ ひかり)さんに向けて。

ヒメ >  
人の似姿になってから、しばらく時が過ぎた。
そう長いわけでもないが、いい加減少しは慣れてきた。
といっても、このサイズ感だけはいまいちなのだが贅沢は言えない。

「……うむ!」

ふぁさり、と髪を流す。
テンチョウ、に選ばれた服を身にまといだいたい準備はできた。

勇んで店内に戻ってくる。

「エイジよ、よく参ったのじゃ!
 まあ、ゆっくりしてゆくがよい。
 ……おっと、貴様は客ではなかったか。」

自分が認めたニンゲンの雄であるところの、エイジ。
この者の訪問を迎えたのであった。

山本 英治 >  
お、その声は。店内に戻ってきたな、ヒメ。
…………はい?

「吉田さん………喫茶店文化保存部の部長に言いつけますよ」

ヒメは可愛らしい、某ファミレスチェーンのような感じの。
言ってみれば派手な。
言ってみれば行き過ぎた少女趣味の。
給仕服を着ていた。

「あー……ヒメ、よく似合ってるよ」
「さすがヒメだ、着こなし完璧。でも……」

「店長に変なことされたら通報してくれよな…」

コーヒーを口にする。
酸味と苦味のバランスが良い、香り高いコーヒーだ。

吉田 > 「言いつけるって、なにを? 完璧な店構え! 至上の珈琲! ノスタルジックな食事メニュー! 非の打ちどころのない、この布陣のどこに言いつける要素があるというの?」

吉田さんはメガネを光らせながら、自らの城を誇った。
若干ドヤ顔なのがうざい。

ヒメ >  
「まあ、世は世であるからな。
 例え人の姿であろうと、我が威厳が溢れ出るのもやむを得ぬことじゃな。」

なんだか意図を勘違いしていた感はある。
皇は実にご満悦であった。
そして――

「うむ? 変なことじゃと?
 テンチョウは、『ローズ・ロマネスク』国の国王として立派に努めてあげておるぞ?」

なにか誤認識が起きていた。

山本 英治 >  
額を手で押さえてため息を吐いた。

「吉田さんがバイトの女の子を着せかえ人形にするところです」

これいいの? いいんだよね?
何かしらに抵触しない?

「あ、うん」

ヒメの言葉に言いよどむ。どこからどう見ても可愛い。
つま先から頭の先まで可愛い。
何なら角と尻尾まで可愛い。
猫も杓子も可愛い。

「確かにそうなんだけどなぁ…」

手を上げてパンケーキを注文した。

「仕事ぶりを見に来たわけなのでパンケーキが完成したらヒメに持ってきてもらおうかな」

バターとメープルシロップのほうで、と付け加えて。

吉田 > 「なに言ってるの山本くん。可愛い女の子は輝くために。着飾るべきよ。それが世界の理。世界の真理なのよ。分かる? わっかんないかなー。」

やれやれ、これだからむさ苦しい男は……とでも言いたげに大仰に肩をすくめる。

ヒメ >  
「ふむ。パンケーキじゃな?」

割と大真面目に注文を聞く。
これが気高い龍なのだろうか……

「聞こえるか、テンチョウよ! パンケーキ一つ、バターとメープルシロップをつけてじゃ!」

紙に何かを記入し、パタパタと奥へ持っていき戻ってきた。

「しばし待つが良いのじゃ。
 ところで、エイジよ。最近はあちらこちら走り回っていたようじゃが、どうした。」

どかりと目の前に座り込んで問うた。
給仕としての態度としてはいかがなものか、ではあるが。らしいといえばらしい。

山本 英治 >  
「理解はできるけど納得はしかねる」

吉田さんを手短に拒絶してコーヒーの液面に視線を落とす。
今日は比較的調子が良いみたいだ。
まだ親友の幻影を見ていない。

「おおー………板についてるな」

仕事に慣れたのかなぁ。
パタパタと動くのがなんとも可愛らしい。

「ああ……親しい人が違反部活にさらわれて…」
「それで探し回ったり、戦ったり、怪我して入院したりだ」

ヒメの態度にも慣れたもので。微笑んで事情を話した。

吉田 > 「だいたい、こんな可愛い洋ロリ連れてくる山本くんが悪い……っていうか、どこから拾ってきたの。ひょっとして誘拐……っ!あ、パンケーキ焼かなきゃ」

言うだけ言って奥に引っ込んでいく女であった

ヒメ >  
「うむ、だいぶ慣れてはきたのう。
 しかし、なんじゃな。こうしてやってみると色々と見えるものもあって興味深いものじゃな」

意外と最初から乗り気だった皇であった。

「人の営み、というのも存外面白いものじゃしな」

そもそもが異邦人街。
普通の人間だけではなく、様々な存在が入り交じるのだ。


「……で、ふむ。なぜ、笑う?
 親しきものを奪われ、 争い、怪我をし……何故じゃ?」

目の前の少女然としたソレは首を傾げた

山本 英治 >  
「誘拐した女の子を働かせる風紀委員がいてたまるか!」

奥に引っ込んでいく先輩を見てガルルと唸る。
無実だ。俺は誰がなんと言おうと無実なんだ。

そしてヒメの興味深いという発言に小さく手を叩いて。

「そりゃあいい。働いていれば色んなものが手に入る」
「しばらくは働かせてもらうといいさ」

人の営み。異邦人街。
そして………この街にいれば好奇の目に晒される機会も減るだろう。
できればヒメにはヒメという存在のままでいてほしいから。
そのために……ん?

 
「ここが良い喫茶店だからさ」
「落ち込んだ表情はパンケーキに似合わない」
「悲しんでいたらコーヒーが不味くなる」

「だから今は笑ってる」

今は。普段は、苦しみながら仕事をしている。
呪われて、いるから。

ヒメ >  
「そうじゃな。まず、世はこのトコヨ、なる地を。
 この世のヒトを知らねばならぬのじゃ。
 そのための一歩じゃな。まあ、狭いとはいえ国であり、城であると聞けば悪くはないのじゃ。」

認識にやはり何か齟齬があるらしい。
皇は面白そうに、満足そうに口にした。

「なんじゃ、貴様。空気にそぐわぬから、取り繕っている、というのか?
 実にバカバカしいものじゃな。まあ……矜持というなら、それはよかろう。」

譲れないものがある、というのはどこの世界の誰にでも共通するものだ。
そうであれば、この程度であれば咎めるまでもなかろうか。

しかし

「違反部活……じゃったか。以前、トコヨの説明の中に出てきておったな。
 いまのところ実物に出あっておらぬが……
 ちょうどよい。その話……少し、詳しく聞かせるが良い。」

ただの好奇心。
そういった体で皇は問いただした。

山本 英治 >  
「確かに店を構えている人を一国一城の主と呼ばなくもなくもなくもないな」
「だがヒトを知るってのは大事だ……」
「社会を動かしてるのはだいたい人だからな」

視線を落として、力なく笑う。
確かに、空元気というにも虚しいシロモノだった。

「バカバカしいな。漢をやるのも楽じゃない」
「男のプライドってのは、大体にして大多数の価値観から外れた部分にある」

本当は俺だってつれぇんだ、と言ってコーヒーを飲む。
苦い思い出が蘇った。そして、思い出にすらなっていない生傷も心にある。


「ああ……ディープブルーっていう、悪党の集団さ」
「研究のために人をさらって薬物だの洗脳だの実験だのをするらしい」
「違反部活は悪党の集団の総称だ」

「間違っても関わらないでくれよ。ガチの龍種だなんてあいつらに知られたら何をされるか…」

吉田 > 「ヒメちゃーん、変態アフロにパンケーキねー」
ヒメ >  
「うむ、できたようじゃな。少々待つが良い」

パタパタとまた奥に引っ込んで……

山を、持ってきた。


「エイジ、注文のパンケーキじゃ!」

どすり、と重みを伴ってソレは置かれた。


「ふむ、ふむ……妖術師の類か。
 面白そうな奴らじゃな……」

一瞬、邪悪な顔が浮かんだように見えたのは気のせいだろうか。

「いや、それは今この際は語ることでもなさそうじゃな。
 ……それで」

表情を切り替え、思案げにしながら

「親しきものは、死んだか? エイジ。」

山本 英治 >  
「オオウ……」

目の前に山のようなパンケーキが積まれた。
だが芳醇な香りと出し惜しみのないメイプルシロップが食欲をそそる。
食欲減退気味の今であってもペロリと食べられそうな。

「ああ、妖術師と言って差し障りのない連中さ」
「なーんにも面白かないさ……サイテーの悪党だ」

パンケーキを食べながらコーヒーを飲む。
甘みと苦味。最強だな、吉田さん。

「生きてたよ、色んな人の協力があってなんとか助けられた」

生きてた。生きてたけど。色んな人が傷ついた。
そんなことを思う。

「世の中、生きてりゃオールオッケーとは思わないけど」
「親しい人が事件から生きて帰ってくれば嬉しいもんさ……」

ヒメ >  
「……ふむ。
 どうも、エイジの言葉には悪意があるようじゃな?」

違反部活、という言葉に対して圧、というか憎しみのような気配がある。
法の番人としての意識、というだけでもなさそうな……

「なるほど、エイジの親しきものの無事を祝福しよう。
 それは嬉しいじゃろうな。」

皇は冷徹ではあるが情は知っている。
ゆえに、見知らぬ誰かの無事を喜んだ。
しかし

「では、改めてじゃ。
 それならば、取り繕うような辛さは何処から来ておる?
 先程の笑みが浮かれた笑顔、であればそれもわかろうが。
 笑みにしてはささやかに過ぎた。
 貴様……なにがあった?」

皇は家臣や従僕にも目を配る必要がある。
それが世を統べるということだから。

山本 英治 >  
「個人的な恨みがあるな……風紀委員にあるまじき、感情が」

あんなことをしたって書類を見せられてから。
どうにもディープブルーへの憎しみを捨てきれずにいる。
それが……男伊達から遠いと思っていても。

「ありがとな、ヒメ」

パンケーキを口に運ぶ。
頂点のバターが溶けて流れていった。

「…………」

黙秘を続けようと思ったが。
どうにもヒメの視線には弱い。
そして何があった、とシンプルに聞かれれば誤魔化しづらい。

「……ディープブルーの構成員を殺した時に、異能で呪われた」
「俺には親友がいる。遠山未来っていう、今はもういない大切な友が」
「今は気を抜くと未来の幻影に罵られる」

「精神的にくるし、解除はできない。体は弱る一方だ」

自分の顔に触った。
どこか、無表情な。空虚な顔。

窓から吹き込む秋風が、髪を揺らした。

ヒメ >  
「感情自体に悪いことはないのじゃ。
 それは内より出づるものであり、正も邪もない純なるものじゃ。
 そこに問題が起こるとすれば、扱いじゃな。」

どのような感情であれ、その発露自体は罪科を問うものではない。
運用にこそ罪が生まれる。


「呪われた、じゃと?
 なるほど、貴様に見える濁りはそれであったか。」

久々に見た漢は、何処かおかしかった。
それがわかり、納得をする。

「辛いか、エイジ。
 では、いま少し問おう。
 これから、どうするつもりじゃ?」

じっと……紅い瞳が漢の目を見据えた。

山本 英治 >  
「俺は………この感情を御しきれるだろうか…」
「いいや、弱音なんて言ってられねぇ…!」

ばくばくとパンケーキを食べる。
これは夕飯はいらないな。入らないな。
窓から、金木犀の強い匂いが入ってきた。

 
「濁ってると言われればそうだな……」
「今の俺は今までの俺じゃないのかも知れない」

それでも、負ける気はないと言い切って。
負ける……何にだろう。
勝つことも、あるのだろうか。

「完全に弱り切る前に、以前戦った悪党と決着をつける」
「個人的に気に入らないやつで、ディープブルーじゃあないぜ」

「私闘やって、後のことは後で考える」

紅の瞳を見て、メイプルシロップがついた口元を親指で拭う。

「見損なったか?」