2021/04/29 のログ
ご案内:「異邦人街」に神代理央さんが現れました。
■神代理央 >
『自由』であるということは、簡単な事ではない。
異邦人の自治によって運営される異邦人の為の街。
この世界の常識や生活様式とは何もかもが――とまでは言わないまでも、随分と趣の異なる場所。
此処は、個人的には落第街よりも厄介な場所だった。
此の街そのものの治安が悪い訳では無い。
犯罪者をかくまったり、違反部活の拠点があるという訳でも無い。
決して、イリーガルな場所では無い。学園から認可された場所。
だからこそ――その『自由』が何時体制の敵となるのか。
(まあ、考え過ぎかも知れないが…)
同僚に率いられ、街の見学に訪れた新入委員達を遠くから見守る。
一応護衛、という事になってはいるが、まあ自分が必要な場面は無いだろう。
しかし公務だから煙草も吸えず、寂しい口元を飴玉で誤魔化すしかない時間は少々苦痛でもあった。
■神代理央 >
実際、此の街の空気は何と言うか…不思議な感じだ。
見た目だの雰囲気だのが学生街とは全く異なるのは仕方がない。
折り目一つない風紀委員の制服を纏った己に向けられる視線も、ちっちゃいのが何か居るな、程度のもの。
中には、険しい視線や厳しい表情を向けて来る者もいるが…落第街に比べたら、大した事は無い。
(……自分が少数派になった気分というのかな。ちょっと違う気もするけど)
『余所者』
此の街での自分の立ち位置はそんなものなのだろうか。
歓楽街や落第街では、明確に『敵』であって余所者ではない。
ステージの上の役者として、役割が与えられている様なもの。
しかし此の街では、そもそも自分の居場所がない。
人間がとか、風紀だからとか、そういう事では無く――
(自由を縛る側、だからなのかな。分かんないや)
自分だけが感じている様な奇妙な違和感に首を傾げつつも、ハイキングさながらの新入委員達を少し離れた物陰からぼんやりと見守る。
此の街で異形を出す事も無いだろう。というかこれでは、自分の立ち位置は完全に不審者ではないだろうか。
■神代理央 >
まあ、そんな風紀委員も怪しまれない大らかな街…と言えばいいのだろうか。
様々な見た目の住民達は、不思議そうな顔をする事はあっても此方に声をかけて来る事は無い。
『人間のやる事は不思議だな』くらいにしか思っていないのだろう。
「……それはそれで、気が削がれるというか何と言うか…」
『鉄火の支配者』としての威光も自負もあったものではない。
本当に見た目相応の、ただの子供扱いというのが一番正しいのだろうか。
口の中で転がす飴玉の甘さだけに慰めを覚えながら、小さく溜息を一つ。
■神代理央 >
やがて引率を終えた同僚の姿を見送って、此方も異邦人街を後にするのだろう。
ご案内:「異邦人街」から神代理央さんが去りました。